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復活したはいいが何故か人食いのチート怪物と化した天外優人の奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第四章・暗黒埋蔵金伝説

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6・埋蔵金

 間狩の分家筋、謎のカブトムシ型式神使いの加狩霧香が、わざわざ俺のところに来てまでお誘いをかけた儲け話。

 それは、まともなものではないと詳細を聞く前からわかる、危ない橋だった。



 ──埋蔵金。



 どこかに埋まってるかもしれないお宝というのが本来の意味だが、加狩が語ったものはそうではなく──大っぴらにできない、怪しい大金のことを指していた。


 一般人がちょっかいかけようものなら、怖い人たちによってこの世から消されかねない危険なお宝。

 世間に知られてはならない非合法な富。

 隠し通さねばならない財産。


 それを自分と共にいただいてしまわないかと、怪盗めいたことを加狩は言い出したのである。


 無茶な話だ。


 まともな女子高生が(同い年のはずだからたぶん高校に通ってると思う)口にするような金稼ぎの手段じゃない。

 いくらまともな蓄えではないにしても他人の金だ。

 盗めば泥棒になる。

 なのにこいつは軽いバイトやらないかくらいの感覚で言ってくる。


 イカれてるのかな。

 仮にそうだとしても、俺が気にかけることじゃないけどさ。


 俺はこいつの保護者じゃない。こいつの頭と将来の心配は、こいつの親がやればいい。


 俺が気にかけるべきは、その話がどんなものか、どう手に入れるのか、詳しく具体的に聞くことだ。

 その結果、これは良さげだと思えば一枚噛む。

 見通しが甘いなら遠慮する。

 こいつほっといたらまずいんじゃねえかな……となれば間狩に伝える。

 そんな腹積もりだ。

 お前にちゃんと伝えたから俺はもう知らんぞと、きちんと間狩のほうに責任をパスしておけば、もし大事になったときも俺は怒られなくてすむからな。

 保身保身。保身は大事。



「──事の発端は、今から十年以上前らしい」


 再び俺の隣に座った加狩が、ぽつぽつと語り始めた。


「俺やお前がまだ幼稚園児くらいの頃か」


「そーなるね。だから、当時のことはほとんど覚えちゃいないが……ある事件が起きた。それは確かなんだな、これが」


「ある事件?」


「詐欺。不動産系の。詳しいことは難しくてよくわかんねぇんだが、詐欺グループが土地の所有者を装って、大手の不動産会社と売買契約を交わしたとか」


「ああ、それっぽい話、見たことあるな」


 と言って、俺はコーラを景気よく喉に流し込む。チビチビ飲むような辛気臭いもんじゃないからなコーラは。


 詐欺事件については、これははっきりとした記憶じゃないんだが……なんか、ドキュメンタリー系の番組で、そんな事件を取り扱ってたの見たことあったような……。

 それが、こいつの言ってる事件と同一かどうか。

 それはわからん。断定はできない。


 携帯で調べたらすぐ詳細が出てきそうなんだけど……いいや。

 今はこいつの話を優先しよう。

 ネットにも載ってない生々しい事実を語ってくれるかもしれないからね。


「げふ」


 ついゲップが出てしまった。

 仕方ない。コーラを飲んだらゲップが出るのは確実だからな。


 加狩の反応は……特になし。

 嫌がりもしない。

 これがあの八狩とかだったら露骨に嫌な顔してただろうな。

 眉をひそめながらハンカチで口元押さえたりするかも。


「で、成り済ました奴らは、まんまと三十億近く騙し取ったんだとよ」


「三十億ときたか。へー」


「なんだ、あんまり驚かないんだな」


「いや驚いちゃいるよ。でも、現実味がないというか、金額の桁が多すぎていまいちピンとこない」


「あー、そっかそっか。わからんでもないなぁ」


 うんうんと数回頷くと、加狩はペットボトルの先を咥え、半分ほど残っていたミルクティーを、勢い良く全て飲んだ。


「……んぐ、んっ…………ふぅ。話を続けるか。え~と、それでさ、そいつらはうまく最後までやりおおせたかというと、そうでもなくてな。書類の不備とか、土地の所有者と契約に来た人物の顔が一致してないとか、色んな細かいミスや不運が積み重なって……後からバレちまったんだと」


「チリも積もればなんとやらって事か」


「そーいうことになんのかね。けど、騙し取られた金は全額戻ってはこなかった」


「ん?」


「どした?」


「いや、待て。その犯行グループはみんな捕まったんじゃないのか? テレビ番組だとそんなこと言ってたような気がしたが……それなら、その金だって、多少目減りはしても大半は取り戻せるだろ」


「そう、そこだよ問題は……」


 加狩が、言葉を区切り、ひと息つく。

 ここからがいよいよ本題ということか?


「グループ内で、資金洗浄とかの役目だった奴が長年捕まらなくてな。整形までして逃げまくって、こないだ、ようやく見つかった時には……死体だったらしい。お前が見た番組ってのが何なのか知らんけどさ、たぶんその辺についても一応は触れてたと思うぜ? まだ捕まってない奴がいるとかくらいは」


「あれま」


 もう始末されてたのか。

 ありがちっちゃ、ありがちな話だな。


「裏で糸引いてた奴に口封じされてたか」


「いんやぁ、違うんだなそれが」


 加狩が首をよじって、俺のほうに顔を向ける。

 人相の悪い笑み。

 話がキナ臭くなってきそうだなと予感させる、そんな笑みだ。


「糸引いてたもなにも、主犯も、土地の所有者を演じていた奴も、文書の偽造役も……この詐欺事件に関わってた奴らは全員お縄さ。ブタ箱行きだ。そのクリーニング役はさぁ、そいつらを見捨てるような形で、十億ほど持ち逃げしたそうだぜ」


「じゃあ誰がそいつを」


「そこが問題なのさ。私が、あんたを誘ったのも……そこに理由がある」


 今の今まで、おどけ、笑っていた表情が──真顔になった。


「その裏切り者はな、よりによって、逃げて逃げて十年近く逃げまくったあげく、まずいところに隠れ潜んじまいやがったんだよ」


「ふーん。まずいところか」


 まあ、猛獣がどうしたとか、治安が悪いとか、そうしたまずさじゃないんだろうな。

 俺を助っ人にしたいくらいなんだから。


「つまり、化け物の力を借りたいくらいヤバいと。そこは他の同業者もためらって手出ししないほどの難所……ってことで合ってるかな?」


 加狩の真顔が一転して、にたりと、怖い笑顔になった。

 楽しくて笑っているのではなく、それが正解だと伝えるための、仮面のような笑顔だった。


 悪い笑いから真顔になり、今度は怖い笑み。

 コロコロとよく変わるもんだな。


「ヤバい案件に関わるのは今に始まったことじゃないが……それはともかく、聞いておきたいことがある」


「なんだい?」


「分け前は?」


「おっ、前向きな姿勢になってきたか? そーだね…………なら、五億。五億でどうだい」


 半分か。

 それってつまり、俺とこいつ以外に人員はいないってことかな。

 だから二人で山分けできると。


「どうだ? 不満のでるような金額じゃねえだろ?」


「確かに不満はない。ぜんぜんない。高校生の身でその額は破格すぎる。だけどさ……その金って元の持ち主──不動産屋に返却しなくていいの?」


「ん? ま、いーんじゃね? その会社もう自己破産してるし。五年ほど前にさ。ハハ、返したくっても、もう無いんじゃ無理だろ」


「いいのかそれ……?」


 法律なんてサッパリわからんが、もしかしたら、やっと十億見つけたものの国が許してくれずに没収って結末もあるんじゃねえの。


「いいんだよ細かいことは」


「細かくねえだろ。ぬか喜びは御免だぞ」


「んな不安になんなよ。私とお前が黙ってりゃバレないって。あの星詠みには気づかれそうだが、私は機関と交流ないんでどーでもいいや」


「おたくはそうだろうけどよ……」


 こないだ人形を処分したときの事で小言を言われたばかりなんだぜ。


 上手くいって分け前を手にできたら、少しは根ノ宮さんに差し出したほうがいいかもな。奮発して一億くらい。

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