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復活したはいいが何故か人食いのチート怪物と化した天外優人の奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第三章・人形狂想曲

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13・ヒトガタたちのバトルロイヤル

 自分を含め同類が全八体。

 全て女性形。


 壊し合って最後の一体になれという命令のみが頭にある。


 自分達アサルトマータを造ったのがどこの誰なのかは、わからない。

 最後の一体、『完全なる一』になったら何がどうなるのかも、わからない。


 以上。



 謎のベールに包まれてるのとほとんど変わんないねこれ。

 製作者不明の自動人形八体で情け無用のバトルロイヤルしてますってことしかわからん。


「もう少し知ってることないのか? 何でもいいからさ」


「そうだな……あと何があるかというと…………ああ、他の七体のことなら、ある程度わかるぞ」


「大事な情報じゃねーか」


 むしろそれを優先して教えるべきだろうに……。

 どこかズレてんなこいつ。


「いや、奴らと戦うのは私なのだから、他の者に教えたところで意味がないと思ってな」


「意味ないって……あのさ、俺も協力者として参戦することになりかねないわけだが、それについてどう思う?」


「天外君、教えてもらえるのだから、そんなに意固地になって食い下がるのはよしなさいな」


「そりゃそうっすけどね……」


「それで、私以外の七体についてだが」


「唐突に始めるなよ」


「なかなかのマイペースね」


 そういうことで解説タイムとなった。





「──というのが、かつての我々の容姿と性能だ。私の知る限りだがな」



 ディバイン。

 剣技に優れ、光の力を使いこなす。

 銀の剣と木箱を携え、機能性に優れた衣服を身につけている蒼髪の優美な剣士(本人談)。


 スパイラル。

 高い破壊力と再生能力を有する。接近戦が得意。

 金髪ロールで西洋のお姫様みたいな姿に不似合いなドリルを振り回す。


 フラッド。

 水を操る能力を持つ。その力は凄まじく、空気中のほんのわずかな水分すら大量の水にするほど。

 紫のツインテールに、可愛らしい喪服のような黒の衣装。


 ミスショット。

 狙撃に秀でており、当然、遠距離戦を得意とする。しかも自身への遠距離攻撃は受け付けない。

 肩にかかるくらいの緑髪を雑に伸ばし、丸眼鏡をかけ、下はズボンと革靴で上は前を全開にしたコートのみ。武器はライフル。


 チック・タック。

 生き物の時間感覚や、物体の加速減速を操ることができる。

 黒髪に装飾だらけの燕尾服という姿。


 ネヴァモア。

 カラスのようなしもべを無数に産み出し、意のままに命令する。

 長い灰色の髪に、白のワンピース。


 コラプス。

 触れたものを粉微塵に崩す能力の持ち主。

 軍服めいた衣装に黒のマントを羽織っている大柄な銀髪ショートヘア。


 ブレイザー。

 広範囲を焼き尽くす炎の玉を吐く。その炎の威力は八体中でも最大。

 赤毛をポニーテールにした、アマゾネス風の露出が多い衣服で、大斧を武器にしている。



 これがバトルロイヤルにエントリーしている可愛くも危険なお人形さん達の能力や性能らしい。


 らしいのだが。


「あのねディバインさん、ちょ~っと、よろしいですか?」


「どうしたユート、私の説明に何か引っかかるところでもあったか?」


「いや、その……私の記憶が確かなら、スパイラルとの一戦で、あなた……光なんか使ってなかったですよね?」


 剣の腕前は凄かったのは認める。

 それは疑いようがない。

 武術とかさっぱり詳しくない俺でもそれくらいはわかった。どんな原理かわからないが、あのドリルを剣先であっさり受け止めたんだからな。でもそれ以外は特に何も使ってないはずだ。


「うむ。その通りだ。光の力は一度たりとも使ってないぞ。私が用いたのは剣のみだ」


「なんで?」


「いや、それがな……」


 一体、どうしたのか。

 急にディバインの歯切れが悪くなってきた。


「?」


「その……つまり、だから……」


 もじもじし始めるディバイン。

 原因はわからんけど、恥ずかしがっているようだ。

 恥じらいってものがこいつにもあるんだな。その割には、俺みたいな健全な青少年には目の毒になりそうな格好してるが、そこは気にならないらしい。

 人形の羞恥心って複雑怪奇だな。


「恥ずかしながら、使うことができないのだ」


「え」


「再起動したときに何かしらの不具合が起きたのか、私の身体が本調子ではないのか、そこまではわからんが……とにかく、今の私は光の力を扱えない。認めたくはないがな」


「ならあのドリルお姫様に襲われたとき、ヤバかったのか?」


「不覚をとったからな。もし私が万全であったなら、あのような一撃など受けはしなかったはずだ…………なんだその目は」


「いや何でもない」


 万全でもやらかしてたんじゃないかと思っていたのが、目つきに現れていたらしい。

 まだ出会って一日も経過していないが、このレオタード剣士からはうぬぼれとポンコツを足して二をかけたような雰囲気がしてならない。

 強いけど残念。

 それが俺の抱くディバインへの率直な思いだった。


「貴重な情報をありがとう」


 根ノ宮さんが微笑んでお礼を言う。

 美しいが、うっかりしていると引き込まれそうな、夜の海みたいな笑み。

 この人独特の笑みだ。


「そう言ってもらえて幸いだ」


 俺がしつこく聞かなかったら、この情報もダンマリしたまま呑み込みっぱなしだったんだろうな。

 でも、根ノ宮さんのことだから、そうなっても後から聞き出していたとは思うが……。


 ……細かいことを気にするのはやめだ。


 今気にするのはこれからどうするか。こちらから動くのか、他の奴らを待つのかだ。

 その判断は当事者であるディバインと根ノ宮さんに任せるとしよう。

 ハイ、これで俺の責任なくなりました! ヨシ!

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ヨシ! 俺のせいじゃない! 俺は悪くない!
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