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13話:山積みの事後処理

「いやしかし、自身を陽動に使うとはお見事。ハックは凡愚ですが、やはりどんな物も使いようですね」


 こいつ、本題に全く触れようとしないな…… 後ろに振り返ると、権限を得たノルン達が起こした地割れにいくつもの車両がハマっているのが見える。


「端末自作して増やそうとしてましたよあの人達。無法地帯にあんな人が沢山いたらと思うとゾッとします。準備もせずに不確定要素の大きい場所に行くのはもう辞めた方が良いですね。脅威が計り知れません」

「貴女が、今話している御方も、貴女と同じでしょう?」

「模倣者だか何だかって話?」

「頼もしいブレインが居るならなお心強いですね」

「変な事言ってないで、とっととその赤い靴のロゴ使ってるイカレ野郎共について教えてくれない?」


 ヤクミはそれを聞いて満足そうに、ニヤリと笑った。


「ええ。ええ。そうしましょう。貴女は樹冠盟という名前に心当たりは?」


 視線を下にずらすと、端末からその組織の詳細が浮き出てくる。ボランティア団体…… 活動歴無し。現在は暴徒から避難した人々を束ねて様々な支援を行っているようだ。リョウの出したログだと、人を集めてローゼン地区へと避難した人も居るようだ。


「無かったわね」

「彼等が、赤い靴のロゴを使い我々を殺そうとした組織そのものですよ。赤い靴は彼等の裏の顔です」

「なるほどねぇ……」


 もし事実なら、凄く有用な情報だな…… マークしておくべきだろう。しかし、そんな繋がりをどうやって洗ったんだろうか。


「もし、彼等のトップに遭ったらどうしますか?」

「うん? もしも、ねぇ。まあ、なんとかして殺すかなぁ……」


 ヤクミは笑い顔のまま私に右腕を差し出した。私は特に反応しないことにした。


「そいつらと貴方の違いって、何?」

「中々痛い所を突きますね。ですが、それは説明ができます。私は恥ずかしながら、あの虐殺を生き延びたのは私だけだと思っていたのですよ。まさか生き残りが居たとはね」


 私の考えは既に察されているらしい。ノルンかリョウかは確認できないが、彼を包囲すべく機械が動き出しているのが、勘で何となくわかる。


「まあ…… そうですね。模倣者以外は人間では無い。とでも言っておきましょうか。貴女も分かっているとは思いますが。例えば、ハック。彼は私が、鍛錬を重ねた仙人であるかのように考えて、日々鍛錬に励んでいますが、実の所、身体能力は我々の半分かそれ以下…… 何というか、滑稽で笑えてきますね」


 出来る限り、貧乏ゆすりをしないよう努める。


「まあ、話は長くなりましたが、私の目的は樹冠盟を消し去る事です。身を護る意味もありますし、敵視してくる者がいなければ、有象無象など取るに足りません。分かり切った勝ち組として生きるだけです」

「あら、そう。樹冠盟について知ってることはそれで全部?」

「その通りですね」

「貴方が襲われた施設は? ローゼン地区?」

「いいえ。施設名は恥ずかしながら覚えていないのですが、コンフィー地区でしたね」


 情報としては結構良い事を聞く事ができた…… かな? まあ、ローゼン地区に放り込んで当分外出禁止にして貰おう。


「分かった。オッケー。どのみち、敵が同じなら、協力してるようなものよね」

「はは、どちらが先に始末するか、競争でもしますか?」


 今度は私の方から握手の姿勢を見せる。それに応じるヤクミの後ろから、音も無く迫り来るドローンが、彼の背中に張り付きそうなくらい接近していた。


「まあ、お互い上手くやりましょう。それでは、さようなら…… うおっ!?」


 振り向きざまにドローンと向かい合わせになり驚いた様子だが、そのまま通り過ぎて行った。


「なるほど」

「なるほどじゃないわよ、二人ともどうしたの?」

「遺伝子情報がデータベースに無い。これでは安全基準を満たす威力を計算できない……」

「ちょっと、もしかして計算できてない奴だと撃てないとかそういうパターン?」

「それもありますけど…… ご主人の友人もそうではありませんでしたか? キリ君という奴です」

「……なるほど?」

「なるほどでしょう? あと、一応聞きますけど」

「別人で確定で良いわよ。遠慮はしないでね」


 彼の言うことはまず真実として考えて良さそうだ。遺伝子情報が記録に無いのは、彼等の言う、模倣者の共通する特徴と考える事にしよう…… そうすると、合点が行くところがある。


「端末は回収しました。これで問題無いでしょう」

「……まあ、いいか」


 どうであれこれが有れば、この地域だけなら地割れだろうが動く床だろうが何でも使って治安を維持できる。これで安泰だな。


「じゃ、跳ね橋工業へと向かいましょうか……」

「食事にしてください。ご主人は燃費が悪いと何度もいってるじゃないですか」

「ん」

「だからってそこら辺の非常食ばっかり食べないでくださいよ!」

「私は10年以上こうだもん」

「次から弁当持参です」


 いいじゃん。と思いながら、災害の跡地と見分けがつかない大通りを突っ切る。ハック達はどこに行ったのだろうか。


 少し歩いた所で、元凶の老人たちが集まっているのが見える。私が歩いてきたのに目もくれず、盛んに言い合っているようだ。


「これはレスポンスが悪かったのが失敗だっただろう!」

「何言ってんだい! どう考えてもエネルギー変換効率が下の下なのが原因だよ!」

「そもそもデータを可視化がするのがヘタクソじゃったとは思わんか?」


 まともに聞き取れたのは極一部で、その他は専門用語が飛び交っていてついていけない。


「新しいのを作ろうとしない! やーめーろ!」


 周囲に目もくれず新しい端末を作ろうとする連中にリョウがウンザリしているようだ。


「機械いじりが本当に好きなのね?」

「そうじゃ無きゃ、もっとがめつい仕事をしてたろうさ」


 見た目は若そうだが、声帯の機械部分の調子が良くないのか、ノイズがかかった声をしたお婆さんが、私の目をみて語って食うr。


「そういうのはあるかい?」

「ある」

「早めに生き方は決めときなよ。100年働いて、良い脳を用意して寿命の無い人生を送るか、好きな事をやって寿命で死ぬか。……ただ、決めた所で、結局寿命が近づくとこうやってバタバタするんだろうけどね」


 これを自業自得と呼ぶ事はできず、私は黙って立ち去った。


「うーん…… このまま跳ね橋工業まで行っちゃおうかな…… 仮にも企業の本社だし、そっちに人が集まるから、その周辺には略奪するような人とかは比較的少ないと見てるんだけど」

「流石に考えが甘いですよご主人」

「でも、悠長に構えるのは性に合わないのよね」


 ただ待っているだけなら誰にでもできるしな…… それで後手を引いて状況が悪くなるのだけは絶対に嫌だな。


「車両とか使ってもいつ接続が切れるか分からないもんねぇ…… AI常駐させてもその子が異常おこしたらやばいし」

「何かあった瞬間事故死ルートでしょうね」

「やっぱ徒歩かなぁ……」

「はぁ…… 止めても聞かない! ほんっと聞かない! マジで聞かないッ!」


 ノルンの怒りゲージは50%弱といったところかな…… まだいけるな…… 私はそのまま知らん顔をして方角を確認し歩いていく。……瓦礫の下を潜り抜けるような視線を感じる。私は白衣を着て歩く速度をちょっと早めた。


「なんで撒こうとするんですか!」

「私が行くのにそんないっぱい連れてったらここの対処が遅れるでしょ! 何十機持って来てんのよ!」

「なんでこんな危機管理能力の無い人間に育ってしまったのでしょう…… 甘やかしすぎたんでしょうか……」

「はいはい、そんな事はいい! 一機だけは良いけど!」

「わかりました」

「……普通の量産品を、よ?」


 リョウの安堵の溜息が聞こえた気がする。そのまま話が拗れない内にさっさと進んで行く。崩れた建物や家具、店の商品までぐちゃぐちゃになっていて、大通りですら通るのも一苦労だ。あっちへこっちへ飛び移りながらの方がずっと早い。


「あ、なんか変な事をやってる。そこも抑えて…… うわ、あいつ!」


 若干みすぼらしくはあるが、銃のようなものを持っている男と、ナラクとか言ってた男がいる! 見た所ナラクが強盗に脅されているようにも見えるが、彼の動きに動揺は無く、落ち着いた動きで持ち物を渡している。


「銃持ち捕まえちゃって! ナラクは多分丸腰でしょ!?」


 ナラクが私に気が付くや否や、私を指して、男に逃げるよう促すような動きをした。そのまま二人は別々に逃げていく。


「くっそ、あいつ!」

「あぁ、くそ、こいつ威力抑えすぎて射程全然です! なんでこんなのを防犯用にしようと思ったんですかね! 椅子を振り回してた方が強いですよこれ!」

「知らないって! くっそぉ、どいつもこいつも!」

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