異世界GO!
よろしくお願いします!
序章
俺が気づいた時には俺を含め気まずいと思っているであろう男が5人自分の部屋とは全く違う場所にいた。
異世界転移というやつだろうか?現実逃避したくなるが、そんな場合じゃない。
とりあえず、自己紹介。
俺はタケル。
なんだかチャラい男は太朗と言った。名が体を表さない。
脳筋タイプの男はあきら。こっちの方がチャラ男っぽい。名前が。
頭よさそーな感じの男が龍一郎。
で、明らかに中二病だなーってのが隆文というらしい。
ステータスをみると……
俺、タケルは勇者。あきらは戦士。龍一郎は魔法使い。……だが、太朗と隆文は“変態”らしい。
“変態”ってなんだろう?
この異世界では成長に乞うご期待!なのかな?わからん。
隆文は中二病で変態がわかるような気がするけど、太朗はチャラいだけだもんなぁ?異世界よくわからん!
俺はとりあえず、この世界がどういったものなのかを調べた。
1.一夫多妻制である。
このことは太朗を喜ばせたが、多く妻を持つってことは全員誰も蔑ろにしないってのが原則だから。かなりの財力が必要ってのはわかってるのかなぁ?
2.王政である。
今はミネストロネ7965世が治めているが、評判が悪く民政にしようとしている。なるほどそれで“勇者”ってわけか。
ミネストロネ7965世はよく自分の名前を間違え宰相が訂正している。
このくらいはわかった。要はRPGっぽくレベルを上げて王政から民政にすればいいのか?
そうすれば元に戻れるんだろうか?……隆文はこの世界が気に入っているが。
1話 みんなの意見
Side 太朗
なんだかよくわからないうちに異世界にいるし。ステータスを見ると、俺は“変態”。
なんだそりゃ―――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!
タケルは『今後に乞うご期待って意味じゃないか?』って言うけど、意味わかんねー。
この異世界でグラッツェとサムアップしたくなったのは、一夫多妻制というくらいだ。財力?そんなもんこの俺が本気になればなんとかなる。
あとはもう元の世界がいいからどうしたら戻れるもんか。このPTに頭よさそうなやついたよな?是非とも解明してほしい!そして俺は元の世界に戻るんだ。
Side あきら
異世界なんて漫画とか小説とかアニメの中の出来事だったのになぁ。
よくわからんが、とにかくはやく戻りたい。俺はこれでもけっこうモテるんだよな……体育会系の男に……。『試合に出てくれ~』って。
そんなんで、俺にも予定ってものが存在するわけで、俺もただのアホな脳筋じゃないんだな。
戦士ってのは俺に合ってるんだろうなぁ。
まぁ、俺は流されるままに動いていればそのうち何とかなるだろう。アハハ。
Side 龍一郎
どうしてこんなことになったんだろう?
ここは異世界というくくりでまとめられた。
俺は魔法使いらしいが、魔法とは非現実的な……。
そんなことよりも、明日の学校はどうなるんだ?俺はずっと無遅刻・無欠席をしてきたというのに、欠席理由が『異世界に行ってました』はおかしいぞ。
ん?俺のステータス、確かに魔法使いだが既にレベルは99。
他の皆もだろうか?
レベルは99より上があるという事か?
それじゃないと変態レベル99どまりで真の変態が俺のPTに2人もいるという事になる。不名誉極まりない!
Side 隆文
ついにやった!願っていれば叶うものだな。我はずっとずっとずっと…(endless)異世界を体験したかったので、今回の事は諸手を挙げて喜ぶ。他の皆は何故選ばれたのかは知らないが、まあいい。もちろん我も知らないが。
ステータスを空中に表示させる近未来的な感じもよい。
あれ?我はすでにレベル99なのか?レベル99の変態?
我は今後どうなるのだろう?そんなところも異世界の醍醐味というものだろう。
3話 全員集合!
「俺は朝弱いんだよ……」うーんチャラ男っぽい太朗の発言だ。
「集合はよいが、俺は今日学校に行かなくてはならない」おー、真面目発言。龍一郎には学校よりも元の世界に戻る方法を考える事を期待しているのだが。
「皆の者、気づいているか?我らのステータス。既にレベル99ではないか?」隆文の発言にチャラ男、もとい太郎は崩れかけた?Why? 崩れる理由がわからない。
「この世界はレベル99がMAXとは限らない!」ふむふむ太朗はそんな理由で崩れたのか。
『レベル99ってことは事は結構強い?』と誰しも思ってしまう。
「否!レベル99がMAXではないとすると、周りのモンスターも強いという事だ!」ほう、隆文の話は理論的だなぁ。なんか意外ー。
「周りのモンスターについてなんだが、我もわからん!何せ『今後に期待』の変態だからなぁ。はっはっは」
笑うとこじゃないんだけどなぁ。なんか、あきらも笑ってるし。
とりあえず、王が挨拶をするというので広場に行った。
毎朝恒例らしい。ラジオ体操みたいなもんか?
「今日もミロストネ7966世に会いに来た諸君。頑張って税を納めるがよい」
こそっと宰相が「ミロストネ7965世です」と正した。あの宰相、苦労してるなぁ……。
王の挨拶、直接的だなぁ。これじゃあ、民衆の心はつかめないよ……。
王妃は妾さんも含めて10人近くいるらしい。それじゃあ、税金かかるよなぁ。この情報には太朗が憤慨していた。
しっかし、こんな挨拶のために忙しい朝によく民衆が集まるもんだよ……と俺・タケルは思う。どうやら、来ないと店を閉店に追い込むとからしい。そんなことしたら余計に税金入ってこないのに。朝に集合も商店には迷惑だし、店が潰されるのも迷惑。もう、王自体が迷惑?と思ってしまう。
我々は街を出て強さを確かめることにした。
変態の強さってなんだろう……?
「龍ちゃんレベル99だし、いろんなマホー使えるんじゃない?」
「誰が龍ちゃんだ!」
うーむ、太朗よ。龍一郎に当たるなよー。
龍一郎はリアリストのようで、魔法のような非現実的なものは信じないようだ。でも、ステータスで、魔法使いなんだよなぁ。
太朗と龍一郎以外は自分のステータスに不満はなかった。
街を出てみてわかった。強さの順位。戦士→変態→勇者→魔法使い。
魔法使い(龍一郎)は戦闘に興味がなく、魔法嫌いだからアテにならない。
戦士のあきらは動くのが楽しそうだった。
勇者の俺・タケルが変態に劣っているのはダメだろう。頑張ろう。―――というか、そもそも勇者ってなんだ?なんかを成し遂げた人を『勇者』というのではないのか?職業なのか?異世界って不思議だなぁ。
4話 みんなの意見 2
Side 太朗
毎朝王が挨拶するとか、王が自分の名前間違えるとか、何より、強さの順位で変態が2番目ってあり得ないだろう?確かに『今後に乞うご期待』だけど。龍ちゃんが元の世界に戻るの考えてくれると思ってたのに、今朝は「学校に行かねば」とか言ってるし、わけわかんねー。
Side あきら
異世界の事はよくわかんないけど、体動かすの好きだし俺には戦士が向いてるんだろうなぁ。って動いてたら、強さの順位で堂々の1位☆
動いてただけなんだけどなぁ。そして、他の誰かが元の世界に戻る方法見つけてくれるとなおけっこう。
Side 龍一郎
俺は元の世界に戻りたいだけだ。そして一日欠席という不名誉をなんとかしたい。どうすればいいのか?
ふと嫌な事も耳にした。この世界では変態の太朗が『俺が落ちた高校に通っている』と。しかも結構、いやかなり偏差値高い。解せない。あんなにチャラいのに。
Side 隆文
我はこの異世界に生きる。この世界に骨を埋めるのだ!元の世界に戻れないことも考え得る。むしろその確率の方が高い。ならば、ここで全力を尽くすまでだ。それが強さの順位で戦士に次いで変態が2位となった理由であろう。元の戻ろうとする輩よりもここで強くなろうと思う人間の方が強いに決まっている。……そうに違いない。
全く持って不可解だが、チャラい太朗の方が賢さあふれる龍一郎よりも偏差値の高い高校に通っているようだ。俺からしたら、どっちも高嶺の花って学校なんだけどな。
太朗が進学校……似合わない(笑)
変態として太朗はどう成長するのか楽しみになった。龍一郎は不本意だろう。案外太朗が元に戻る方法を見つけるかもしれないなぁ。ここの生活はここの生活として。
俺ら5人はとりあえず城下町の宿屋を拠点として活動することにした。5人……5人なんだけど、龍一郎が反抗期か?協力的じゃない。
4人で街の外に行くことはあっても、龍一郎は宿屋で勉強をしている。
5話 初めての喧嘩と和解
そんなだから俺ら4人がレベル110越えしても、龍一郎はずっとレベル99のまま。これではダメだろう。
龍一郎、コミュ力とか協調性とかないな。そこへ太朗がトドメの一撃。
「お前は他の人との協調性に欠けるの見抜かれて、あの高校落ちたんじゃねーの?だって学力問題ねーじゃん」
龍一郎は後半を聞くほど心のキャパがなかった。実際。
ついに龍一郎は一人で宿屋を出て行った。
帰る方法もわからないのに。この世界では役に立たない英語などを勉強し続けるのか……。
と、4人で後をつけた。というか、後ろについていった。「ついてくるな」と言われてもレベル99で街の外を一人で歩くのは危ないしなぁ。
龍一郎狙いのモンスターだらけだった。やっぱり無謀だった――。
俺達4人でモンスターを片付けながら、龍一郎の移動は続いた。
初・街の外でどんなに自分が弱いか分かっただろう。
でも、意固地になって龍一郎も俺達に頼らない。労うくらいしてほしい……。
‘魔法使い’とステータスでいわれても、ちっとも練習してないから全く使えない。こんな場所でも自分が負け組になった気持ちになってしまう。
そんな龍一郎を救ったのは隆文だった。
変態と言われようが、全てを受け入れる心の広さ。
龍一郎はそこは尊敬している。
そしてついに、「俺、やっぱ宿屋に帰る。勝ち組になりたいから元の世界に戻る方法を見つける」と言って太朗を見た。
太朗は自分が勝ち組だとは思っていないので、「手がかかるインテリだなぁ」と言っていた。
えーと、王政を民政にすればいいのか?RPG的にはそれでOKだよな?
難しいことは太朗と龍一郎が得意そうだ。
そもそも何で俺ら5人が異世界に来たんだ?
6話 みんなの意見 3
Side 太朗
全く龍一郎は世話が焼ける。レベル99で魔法の練習をクソもしない人間が街の外で一人で移動できるかっての!そんなのもわかんねーのかよ?ってわかんねーよなぁ、今まで一度も宿屋から出てないし。
Side あきら
よくわかんないけど、龍一郎もパーティーに纏まってくれて俺は嬉しい。そして、早く戻りたいな。
Side 龍一郎
一度はこいつらと離れるつもりだったが、自分の弱さを痛感した。意固地になってしまったが、誰に変態と罵られようとも屈しない隆文という男には負けを認めざるを得ない。
結局俺は宿屋に戻り、5人で過ごすこととなった。
この異世界から元に戻る時こそ真の勝ち組になるのだ。
Side 隆文
5人が皆、元の世界に戻りたがっている。と思われているようだ。否、我はこの世界に骨を埋める覚悟だ。
何やら龍一郎に尊敬されてしまった。さすが我!
翌日からは龍一郎も街の外に出るようになった。
さらに魔法使いとして、魔法の練習も始めた。やるからには極めるという勢いだ。ただ、心配性なのでケガ人を治療しまくっている。
街に戻ってもケガ人や病気の人のケアに余念がない。元来医者志望らしい。
驚いたことに、変態の隆文はクリスチャンだった。超イガイ!街の教会に週末にはミサに通っている。うーむ。
2人が民衆の心を掴んでいった。
7話 民衆人気が出た。
5人で街を通るだけで声がかかるようになった。
これも龍一郎と隆文のおかげだろうか?
2人は有名人でその他3人かな?
俺らはみんなレベルが上がった。ついでに変態は最終形態になった。
タケル レベル214 勇者
太朗 レベル209 賢者←変態
あきら レベル300 戦士
龍一郎 レベル159 魔法使い 主に治癒魔法
隆文 レベル221 神父←変態
変態組は意外な職業になった。
王は俺らが民衆に人気なのが気に入らないらしい。
毎朝の王の言葉でも“異端の者”と俺らを表現した。
まァ、保護はしてほしくないが、王が民衆の心を掴んでいないだけだし。とばっちりだよなぁ。
俺らでクーデターは楽そうだけど、今後の事を考えると民の中から新しいリーダー的存在を見つけ出すべきだなと思う。
と、俺・タケルは王政から民制に変えるにあたって思う事を4人に伝えた。
候補者はいるかな?龍一郎が治したケガ人の中とか、隆文が教会で会った人とか……。ん?他の3人は街の人たちとコミュニケーションとってない?
思えばひたすらレベル上げに勤しんでたもんなぁ。と俺は遠い目をしてしまった。
民のリーダー的存在を隆文は紹介してくれた。
名を‘ユダ’と言った。おーい、裏切らないかー?隆文は聖書を読み込んでいるだろうに。
とりあえず、ユダと王制をひっくり返す話を詰めた。
切り込み隊長は俺と太朗とユダ。続いてあきらと民衆が続く。
ん?隆文と龍一郎は?龍一郎はわかる。ケガ人と治療とかと後方支援。
隆文は?神父って何やるんだよ?
8話 みんなの意見 4
Side 太朗
俺は変態から賢者にジョブチェンジした。俺が賢者って似合わねー。攻撃魔法が使えればいいのか?
こんな感じか?――っとちょっとのつもりが威力がハンパねーな。
そっかぁ、こんな職業ね。寝ぼけないように気を付けよう。
Side あきら
太朗も隆文も変態からジョブチェンジしてよかった。俺、正直変態と同じパーティーって嫌だったし。
王制を民制とかの計画も固まってきたし。って俺はさっぱりわかんないけど!民衆以外でかかってきたらぶっ飛ばすのみ!
Side 龍一郎
隆文が紹介した人物、ユダと言ったな。裏切りはしないのか?
俺は計画だと後方支援で、城に入ったはいいがケガした人のケアをしまくるって仕事だな。
ユダを紹介した隆文が何をするのか不明だし、何だか不穏だな……。
Side 隆文
ユダはいいやつだ。名前はあの‘最後の晩餐’を連想してしまうが、そんな奴ではないと我は信じたい
このクーデターでの我の役目だが、女・子供の保護。教会に保護をする。どんなに頑張っても王側の人間がこちらの女・子供を人質にとることが考えられるので保護が目的。
殺生は好まないが、いざという時は弓矢を使える。我だってダテにレベル221ではないのだ。
クーデター当日、俺は隆文から“自分は教会で女・子供を保護する”と聞いた。俺は逆に「王を倒した後、俺らが人質取ってるみたいじゃん」と思ってしまった。気のせいだろう。
9話 レッツ クーデター!
俺と太朗とユダの切り込み隊長が城門に近づく。
訝しげな門兵が近づいてきた。「異端者とその仲間(笑)が何用だ?」……と言い終わる前に太朗が吹っ飛ばしたしまった。
「いやぁ、面白くて……。力加減難しいし」と言われてもなぁ。それを皮切りにドンドン進んでいく。
王の間まで行くと、情けないことに命乞いを始めた。
「まず宰相抜きで自分の名前を言え」と俺が言うと、「王に向かって……」と悔しそうに言った。そして今日も自分の名前を間違えた。情けないなぁ。
王の間は随分ときらびやかだな。民衆は質素に暮らしているのに……。
「いったい、いくら欲しいんだ?10億か100億か?」
金が全てのくだらない王か。しょーもない王だなぁ。
ユダは言った。「お前の命とここの所有権」。「言うなぁ」太朗はのん気だな。
王の間に集まった大勢の民衆の前でユダが王の首を刎ね、クーデターは終わった。
教会にはやはり王の手の者が来たみたいだが、隆文が守り切った。
もう王の手の者はいない。――王がいないのだから。
民のトップにはユダがなった。ユダの元で新政権が作られるだろう。
さて、王制から民制に変わったが俺たちは元の世界に戻れるのか?
10話 民制ミス?
その後しばらくは様子を見ていた。民制がどのように機能していくのか。
「なあ。頭をすげかえたみたいになってねーか?」by太朗
そうなんだよなぁ。民制っていうかユダの独裁政治みたいな?
「民制を理解してなかったんじゃねーの?」by太朗
鋭いツッコミです。でも、それは思うなぁ。地方自治はどうなっているのだろう?たーかーふーみー!
「我もまさかの展開。民制を知らないのかも知れない。何しろ生まれた時から、あのどうしようもない王の下で暮らしていたからな」
一理ある。
「では、地方自治も気になるし、王都は隆文とあきらの二人。残りの3人で地方都市に行こう」と俺は提案した。
「俺が思うのは海で貿易できそうなとこだな。クーデター前に逃げた貴族がそこでハバをきかせていそうだ。そこに暮らす民に迷惑だろ?」
うん、海産物も食べたいんだね。わかるよ。王都だと食べれないもんね。
そんじゃあ、二手に分かれるということで。
俺と龍一郎と太朗がロシナンテという貿易都市へと行くことにした。
「あきらは隆文に洗脳されないかねぇ?」
「隆文はそんな奴じゃない!」
人選ミスだろうか?戦力で考えたんだけどなぁ。
馬車の中のムードが最悪。あと3日くらい馬車生活なんですけど……。
11話 @ロシナンテ
俺たち3人はロシナンテに到着した。
「海鮮料理堪能しようぜ?」
「「……」」
ダメだ。太朗も龍一郎も無言だ。蟹食ってるからか?
「たこ焼きとかないのかねー?屋台も出てないし。治安悪いのか?」
俺はそこらの海の男を捕まえて、話を聞いた。
「あー、この都市に王都から結構有力らしい貴族が来てな?そんで、税率とかを勝手にあげたりしたわけだ。当然失業者も出て治安も悪化。屋台なんかしてたら、金をふんだくられるだけだ」
なるほど。そういうわけか。賢い有力貴族はクーデター前にここに亡命(?)してたってわけか。それで、地方自治を好き勝手やってるわけだな。
「情報助かった。取っとけ」
「まいど」
俺は男にチップを渡しておいた。その方が円滑に話は進む。今後にも繋がる。
「そういう話だった」
俺は太朗と龍一郎に告げた。
「「その中で一番有力なのは?」」
それが重要なのか。頭のいい二人がハモったのだから、そうなのだろう。
「爵位だと公爵ではないかと思う」
「そうだなぁ、ここわりと王都から離れてるし辺境伯とかいないの?」
「いたら厄介だな。私兵がいるよな」
ここに来た時点で厄介なんだけどね。
「情報、足りないかな?」
「そうだな。とにかく情報収集だな。俺は海辺で聞きこむ」by 太朗
「じゃ、俺は内陸の方」by 龍一郎
「うーん、俺は商店街」by 俺・タケル
この二人、本当に蟹食うのに黙っていたようだ。俺の気苦労を返せ!
12話 情報収集をしよう!
Side太朗
海辺は潮風が気持ちいいなぁ。ん?俺に絡んできたの?確かに俺、金持ってるけど、ほいっとちょっと火炎で絡んできた男の前髪燃やしたら、「覚えてろ!」と逃げてった。忘れるけど?正当防衛になるのかなぁ?
さーて、情報収集。海の男によると、増税とか厳しくなったのはクーデター前に有力貴族が街に来てかららしい。それまでは露店も出ていたということだ。
その有力貴族の爵位とかはわからないようだ。まあ、平民として暮らしていれば、爵位とか関係なく貴族ってひとまとまりだよな。
Side 龍一郎
内陸、歩くの疲れるなぁ。そもそも歩き慣れていない。そんな時に屋敷に招き入れてくれたのだ。爵位は伯爵。難しい判断だ。侍女が招き入れてくれたのだが、この伯爵は以前からここを領地としているという話だ。辺境伯ではないらしい。辺境伯なのかと聞くと、笑われた。辺境伯様は逆方向の内陸の隣国との境にいるということだ。領地の治安が乱れているという話も侍女にした。憂いているようだ。
というか、領地が乱れていることは知っていただろう?侍女として商店街に買い物に出かけなければならないし、この侍女も曲者だな。
Side タケル
商店街を歩く。物価が馬鹿みたいに高い!庶民は生活できないじゃん。こんなんでどうするんだ?
商店街の家主に聞いたところ、税率が上がり物価も上がってやってられない。ここで生きていけない。この国を捨てようか?とまで話している。国を捨てるのは待ってもらった。今調整中だから。と。
結果
・増税はクーデター前に有力貴族がここに来てから始まった。
・内陸にここを領地にしている伯爵様がいる。
・辺境伯様は逆の内陸で隣国と接する境にいる。
・庶民は『国を捨てる』ことも視野に入れている。
13話 情報収集まとめ
「結局黒幕はわかんないんだな?」by 太朗
「伯爵様の所にいた侍女は不審な点が多かったですけど」by龍一郎
「「何――――!!!!!それを言ってくれ」」
「まず、『俺を屋敷に招き入れた点』。侍女ですよ?身元が分からないものを屋敷にいれるなど考えられません。次に『侍女なのに領地の現状を把握していなかった点』。物価が上がったとかはわかるでしょう?そして、一番不審なのは『伯爵様をこの目で確認していない点』。伯爵様ならなおの事領地の現状把握をしていなければならないでしょう。そして、私は侍女に招き入れられているんです。ならば、屋敷の主人として顔を見せるものです。それなのに、姿を確認していないんです。不審でしょう?」
「うーむ。最有力貴族を探すよりも、その伯爵様をどうにかしたほうがいいかもしれないな。明日にでも3人でその屋敷に行ってみるか!」by 太朗
「口実は、『昨日龍一郎が世話になった』だ」by タケル
「では、宿屋にしましょう。今日も黙って蟹を食べましょう!」by 龍一郎
((蟹好きなのか?))
本当に黙って蟹食べるんだなぁ。食べ過ぎでアレルギーにならないといいね。
太朗はアワビとか食べてる。こっちの世界だと、シジミの方が高級食材だ。
街が解放されたら真珠の養殖を提案してみよう。海の男の中の有力者に。
14話 不穏な伯爵家
翌日俺達3人は龍一郎の案内でウワサの伯爵家に行った。
「先日、うちの龍一郎がお世話になりました。お礼に参りました。是非伯爵様にお目通りをお願いします」
「先日?我が伯爵家では誰も保護していないぞ?」
「えーと、歩き疲れていた所をこちらのお屋敷の侍女様が招き入れて下さったそうです」
「招き入れた?お前たちのような身元の分からないような人間を?」
「そうなんですよ!ありがたいことです」
屋敷としては『招き入れていない』ようだ。俺達は門兵にさりげなくチップを握らせて。
「流石、懐が大きいですね。では、失礼します」
そう言って、屋敷に足を踏み入れた。けど、門から屋敷本体まで長い!庭が広いって。
「あ、庭師の方ですか?見事な庭ですね。参考にしているのは東洋の庭でしょうか?」
「おぬしはわかるのか!!せっかく整えてもなぁ、なかなかわかってくれる人に巡り合えなくて……」
「いい趣だと思います。和洋折衷といいますか、いいですね」
「ここは内陸で幸い海風が当たらなく、植物も育ちやすい。方角で植物を変えているのだが。一部で不満を言う方もいてなぁ」
「そんな方はご自分でご自分の庭を作ればよろしい!」
龍一郎、怒ってるなぁ。
「誰かの指示でこの庭を作っているわけではなく?」
「完全にわしのオリジナルじゃ」
うーん、庭師から情報は引き出せないかなぁ?
「ただなぁ。不満なのか、最近給金が減ってなぁ。貯蓄してきているから生きていけるが、けっこう大変なんじゃよ」
「ということは、屋敷の中の使用人も給金が減っているんでしょうか?」
「一部の使用人はホクホクしているようじゃよ――っと話過ぎたな」
「いいえ、素敵なお庭を見せていただきありがとうございました」
一部?不穏すぎる……。
15話 伯爵様に会いたい!
伯爵……伯爵、爵位とか俺わかんない。龍一郎によると、上から3番目の爵位ということだ。結構偉い人ってのもわかった。
で、そんな人が自分の領地の事を把握していなくて、なおかつ顔も見せない。侍女は不審なのにもかかわらず、屋敷に招き入れる。
うーん、疑わしい3ストライクでアウトだな。
「庭師からが結構情報が引き出せましたね」
「そうだなぁ。一部の使用人だけ給金ホクホクって明らかにおかしいよな?」
庭が広すぎて、なかなか屋敷にたどり着かない。
やっと屋敷にたどり着いた。入り口でいきなり執事さん(?)に捕まった。
「何の用でしょうか?紹介状や先触れがありませんでしたが?」
「先日お世話になりました龍一郎のお礼に参りました」
「はて?先日は誰もこの屋敷には訪れていませんが?」
「確かにこちらの侍女さんにこの屋敷に招き入れていただいたので、おかしいですね?」
「侍女の顔は覚えていますか?」
「うっすらとなら。しかしながら、女性の顔は見分けがつきにくいです」
「化粧ひとつで変わるからなぁ」
「うちの侍女を並べますので、誰に招き入れられたのかを教えていただきたい。こちらとしても、そのような軽率な行動をする侍女を今後も雇い続けるのは憚られますのでご協力をお願いします」
並んだ侍女を龍一郎は見た。
「この中にはいないかと思いますが、これで全員ですか?」
「勤務交代とかありますから全員ではありません」
「昨日の午後に勤務していた侍女だ。そういう勤務表みたいなものはないのか?」
「……」
「杜撰だな……。伯爵様ならもっとしっかり管理をしてそうだけどな」by太朗
それは俺も思う。侍女の管理ができていないならば領地の管理もできないのだろう。しかし、有力貴族が流れてくるまでここの治安は良かったのだ。おかしい。伯爵様に面会したい!
「伯爵様に直接お礼を申し上げたい。面会の許可をお願いしたい」
俺は仕方ないので、革袋(お金が入っているよ)をドンっと机に置きながら言った。
「面会は2年後になりますが?当家の主人は忙しく、スケジュールが2年後まで入っているのです」
俺は仕方ないので、革袋をもう一つ追加した。
「面会の許可をお願いしたいんだが?」
「では、明日またいらしてください」
「仕事で忙しいんじゃないのか?金で釣られやがって」
「あぁ、アレは。「あげる」とは言ってないじゃん。見せただけ」
「お主も悪よのぅ」by 太朗
「明日はどんな伯爵様に会えるものか。本物だろうか?」
「あぁそうか。偽物ってこともあるわけか。面倒だな。それを見分ける魔法ないわけ?」
「明日だろ?開発するにしても時間が足りるのか?」
「頼むぞ龍一郎!」
16話 いざ、伯爵邸へ!
「本物かを見分ける魔法一応作った。嘘発見器みたいな?ちょっと太朗、嘘ついてみて」
「りょーかい。わかりやすいウソで。私は女です」
「「おおっ」」
嘘八百と太朗のデコに表示された。
「おい!この表示はいつまで表示されてるんだ?」
「試作はしたものの試したのは今回が初めてだから、何とも言えないけど」
若干笑ってる。いいのか?いや、笑いそうだけどさぁ。
「ま、完成ってことで、伯爵邸に行こうぜ!」
「俺のデコには表示されたままなのか?」
「表示が気になるなら、帽子とか深くかぶったら?賢者だし、フードを深くかぶるとか?」
「フードつきの賢者はそれっぽい!あと、杖とかあったら完璧だなぁ」
「俺……無詠唱派なんだよ。杖もなんか恥ずかしいし」
「表示隠しにフードはオススメだなぁ」
こうして俺たちは伯爵邸に行った。
「先日はどうもありがとうございました。今日、伯爵様と面会が叶うそうで、心待ちにしていました」
「では、こちらの応接室にどうぞ」
伯爵邸の中は普通の貴族の屋敷って感じ。使用人の応対も普通だなぁ。しばらくして、伯爵が応接室に入ってきた。複数の使用人を従えて。
「私がこの屋敷とここらの領地を管理しているスタリック・ロシナンテだ」
「私がタケルでこちらが龍一郎。こちらが太朗です。お初にお目にかかります」
「平民か?」
「そうなりますね?何か問題が?身分を厳しく気にする方でしたか?」
龍一郎に合図を送って、魔法を使ってもらった。
「おや、伯爵の額に文字が表示されていますよ?嘘八百と。貴方は本物の伯爵様ではないようですね?約束と違うようです。本物の伯爵様はどちらですか?」
俺たちがよほど気に入らないようだ。
これでもかというほどいた使用人が、戦いかかってきた。
困った。
「殺すわけにいかないから、適度にやりますか?」
「あとで龍一郎に治療してもらえばノープロブレムでは?」
「俺の体力と魔力が減るんだよ!」
「太朗、火事になるから火属性の魔法は使わないようにねー」
「そうだなー」
と、俺らが会話をしている間も向かってくるし。
全員のしてふんじばって、全員に龍一郎が嘘を見抜く魔法をかけたところで尋問開始だ。
17話
「ここにいる伯爵様は別人ですね?」
「何おう?伯爵様本人に決まっているだろう?」
嘘八百
「本物の伯爵様はどこにいらっしゃるのですか?」
「ここにいらっしゃるだろう?」
嘘八百
「あ、本物の伯爵様は有力貴族の屋敷にいるとか?」
「まさか~」
嘘八百
「しかも軟禁されてたりるするのかなぁ?」
「そんなことないでしょう?」
嘘八百
「そっかぁ、本物の伯爵様は有力貴族のお屋敷で軟禁されてるんだな。いやぁ、この魔法は便利だなぁ。拷問しなくても、口割るんだもん」
「それはどうも。今後はどうする?有力貴族の屋敷に乗り込むか?」
「そんじゃあ、この中で有力貴族と繋がっている人。全員いいえと答えて下さい」
その中で一人の額に嘘八百の文字が表示された。
「よし、君。有力貴族の家を案内してください」
「有力貴族なんて、縁がないし案内なんてできないですよ~」
嘘八百×2
本当に便利な魔法だな。嘘が簡単にバレる。こいつと4人で有力貴族の家に乗り込むか。……有力貴族が数多くこのロシナンテに来てるんだよな。
「どの有力貴族の家に本物の伯爵様がいらっしゃるのか知ってるよな?」
「だから、私なんぞは下っ端は知りませんよ」
嘘八百
顔中黒くなってきたけど……。こいつ大丈夫か?
18話 伯爵家~太朗の冒険
「あー、突撃の前に俺トイレ♪」
緊張感ないなぁ。緊張してるのか?
ふむ、ここ応接間と玄関付近以外は掃除してんのか?使用人はいたよな?トイレも臭くて汚いし。
伯爵様もいないけど、家令もメイド長も侍女頭もいないな、こりゃ。さて、三人はどこかなぁ?
幽閉といえば、離れとかだけど地下牢もありそうだよなぁ。行ってみよう。迷子のフリして。
太朗は地下への階段を進む。
「なーんで螺旋階段なんだ?伯爵様の趣味?」
―――そこは突っ込まなくていいところだろう。
地下牢に牢屋番みたいのいるのかな?誰も見てないし、のしちゃっていいかな?いいよね?のしちゃおう!――いたらだけど。
地下牢、存在するんだなぁ。あ、誰かいる。臭い。トイレ無いしな。風呂もないし。
「どちら様ですか?」
「ここの伯爵に入れられた。罠だ」
弱々しいな。後で本当の事を言ってるのか、龍一郎に魔法かけてもらおう。
「ここの伯爵っていつの話だ?」
「もう、2、3週間になるだろうか?」
うーむ、乗っ取られたあとか。偽物伯爵の罠?
「何された?」
「土地の所有権の権利書を取られた」
胡散臭い。税金取れなくなんじゃんか。
「後でまた話を聞くからよろしく~」
19話 太朗の報告
「地下牢に一人捕まってるやつがいた。家令とか家を管理してるやつがいない。おかげでこの辺以外は汚い。ということが分かった」
「トイレに行ってたんじゃなかったのか?」
「トイレにも行ったけど、探検もした」
太朗も有能だなぁ。
「地下牢にいるやつの話も詳しく聞く価値あり。龍一郎の魔法付きで。あと、ここの屋敷の家令、メイド長、侍女頭はいない。少なくとも家令がいない。寝返った?そこにふんじばってるやつらの中にいるのかねぇ?」
「『いいえ』と答えて下さい。自分はこの屋敷の家令である。若しくは家令をしていました。全員答えて下さい」
一人だけ‘嘘八百’の反応が……。
「寝返ったんですねー」
そういうことで、寝返った家令と、嘘だらけの男と俺らで突撃することに決めた。
「ちょっと待ったー!地下牢の奴は?話聞いてみようぜ?それからそいつも連れていくか決めようぜ?」
「無理だろう?」
龍一郎冷静だな。
「長期間地下牢生活してた人間、体力が我々とは全く異なる。敵になるのか味方になるのか現段階でわからないが、体力的に突撃に連れて行くのは無理だろう」
「―――そういえば、そうだな。骨と皮って体だったし。臭かった」
最後の一言は余計だ。
俺らは太朗の案内で地下牢に向かった。
「マジで応接間の辺り以外、汚ねーのな。使用人わりといたのに、何やってんだか」
「庭師さんの話を考えると、ろくに働かないで給金貰ってたんだろ?たんまり?」
「ウハウハだな」
地下牢に着いた。やはり、臭くて汚くて暗くて陰気。
「牢屋番いないんだよな。不思議だろ?いたらしばくとか思ってたのにさぁ、魔法の練習。あ、いた。さっき会った人。生きてた?また来たよ?」
龍一郎は魔法をかけて嘘がわかるようにした。
「今、魔法で嘘わかるようにしたから嘘ついても無駄だよ」
「うん。えーとねぇ。ほら、額に‘嘘八百’って表示が。これは俺で実験をしたの。俺は「女です」って嘘を吐いた。ちなみにこの表示がいつ消えるのかは今のところ不明。上にいる連中、嘘吐きすぎて顔中真っ黒になってるやついるぜ?」
「まず、どうして地下牢にいるんですか?」
「2,3週間前に伯爵を名乗る人物に入れられた」
「罪状は?」
「ないが、土地の権利書を取られた。俺は騙されたんだ!」
うーん、こいつは嘘吐いてない。しかしながら、突撃には連れていけないな。なにせ健康状態が酷い。
「うん。嘘吐いてないね。騙されて土地の権利書取られたってのは事実みたいだ。俺達と少数、これから黒幕の貴族の所にちょっと行ってくる予定なんだけど、貴方は連れていけない。牢からは出すけど、まずは健康状態をなんとかしないとね?」
龍一郎が牢に入ってたやつを少しは癒す。
「胃はまずは流動食から。いきなり肉の塊食べたりすると、吐きますよ?」
と治療をしていた。診察?
20話 黒幕に突撃!
えーと、ふんじばってるやつらの中で嘘吐きまくったやつが案内してくれるんだよな?そいつらが3人と俺らで黒幕の屋敷に行くことにした。黒幕というか、真の伯爵様がいるところ。
「いやぁ、素直に案内してくれて助かるー」
素直というんだろうか?身体的暴力ではないが、額に‘嘘八百’というのは精神的に結構きついのでは?
「‘サルと馬鹿は高いところが好き’だったっけ?真の伯爵様がいるって屋敷も高台にあるのなー」
「「‘馬鹿と煙’だ阿呆」」
アホと言われた……。サルも高いとこ好きじゃんか。
結構な山道。牢にいた人連れてこなくてよかった。あの人には無理だ。嘘吐きまくってた2人と元家令(寝返った)の3人は無理やりにでも連れていく。素直にも嘘吐いたからなぁ。
到着した。いつもは馬車で行くらしい。馬車は目立つじゃん。だから徒歩だよ徒歩。
門も顔パスみたいにこいつらがいるとスルーパス。額に‘嘘八百’って表示されてて不審なんだけどね。
「で、この広い屋敷のどこに真の伯爵様がいらっしゃるわけ?と、その前に屋敷の主に挨拶か?」
「この度、この屋敷への招待状をこの3人(嘘八百の人たち)からいただきました」
流石、顔色変えないな。
「初めまして、タケルと申します」
「同じく龍一郎と申します」
「太朗です」
「平民か?平民風情がこの屋敷に足を踏み入れたのか、汚らわしい!」
「あ、ロシナンテの領主様の屋敷のトイレも汚いですよ」
「面倒だなぁ、俺ら3人は異世界人だ。よってファミリーネームはない」
「噂の異世界人か……。クーデターを指導したらしいな?」
「そんなのしたっけ?」
「補佐はしたなぁ。それが何か?」
「平民と言ったのは謝罪しよう。我が邸には何用で?」
「ここに、向こうにある屋敷とこの辺りを領地とする伯爵様がいらっしゃると聞きまして、迎えに上がりました」
「それは面白いことを。ここにはそのような人はいませんよ?」
「えーと、貴方にも嘘を見抜く魔法をかけますね?嘘を吐くと、額に‘嘘八百’と表示されます。招待状の3人は皆さま表示されているでしょう?」
「……」
「貴方の爵位を教えてください」
「侯爵だ」
「それは、高位の貴族様ですね」
「あ、ちなみにここの私兵は太朗が予め使い物にならなくしていますからご了承ください」
「ここに伯爵様がいますよね?」
「何を言うのだ?伯爵なら貴方が連れてきた3人の中にいるでしょう?」
嘘八百
「彼は偽物ですよ。自分は伯爵だと嘘を吐いて、‘嘘八百’と額に表示されているのです。ここに伯爵様がいらっしゃるのですね」
21話
さーて、真の伯爵様を探しますか?
「本物の伯爵様は地下牢にいますか?そこの偽物の話はもうしないでくださいね」
「この屋敷に地下牢などない!伯爵もいない!」
嘘八百×2
「地下牢に本物の伯爵様がいるんですか?」
「あ、俺がちょっくら地下牢見てくる。牢番いても、俺は賢者だし~?」
「と言ってるんですけど、別にいいですよね?地下牢はないって言いましたよね?」
地下牢じゃなかったら、離れとか隠し部屋になるなあ。素直に案内すれば楽なのに。ふんじばるけど。
「地下牢に本物の伯爵様らしき人いたから連れてきた。牢番はちょっと吹っ飛ばした。ら気絶した(笑)」
「ではその本物の伯爵様らしき人にも魔法をかけましょう。嘘を吐くと、額に嘘八百と表示されます。いつまで表示されるのかはわかりません。ほら、あの人なんて嘘だらけで顔中真っ黒です。表示する場所がなくなったからでしょうね」
「あなたは本物の伯爵様ですか?」
「そうです。偽物がいたんですか?」
「はい、今はあそこに。貴方が捕らえられている間に、伯爵様の屋敷も乗っ取られて、領地の治安も悪化しています」
「考えてはいたが、そんなことになっていたか。感謝する。屋敷に戻り次第、領地の治安の問題やら屋敷内の問題やら問題が山積みですな」
「使用人の間でも給金の格差が広がっています。良く働く庭師よりもほとんど働いていない侍女の方が給金が高かったりと、屋敷内でも問題があります」
「ほら、あそこには家令をしていた男がいるでしょう?あの男は侯爵様に寝返ったんですよ。裏切りですね」
「信じて、家政を任せていたのに、このような仕打ちをするとは……」
22話
「あ、土地の権利書取られたやつが伯爵邸の地下牢にいたな。もう解放してます。冤罪だし」
「ソレドコ?」
太朗……怖いよ。普通に手のひらに火の玉あるじゃん。普通の脅しだよ。怖いよ。
「誰に聞いてるの?」
「誰が知ってるかわかんないからさぁ」
確かに。しかし、怖い。
「えーと、書斎の引き出しの中です!」
侯爵が言った。項垂れてる。さっきはそれほどでもなかったのに?
「あー、あった。ほう、伯爵邸の辺りの土地の権利書とな。へー、今俺たちが伯爵を戻しても、「権利書持ってまーす」って言って所有権を主張するつもりだったみたいねー」
「今みたいに素直に嘘吐かなければ額に嘘八百なんて表示されなかったのにねー」
「マジで、これいつまで表示されるんだよ?」
「わかんないって。一生だったらゴメン」
「それなら俺はまだマシだな。あの黒い人より。嘘吐きすぎなんだよ」
一生だったらどうするんだろ?
「わしは治安の具合を見て、屋敷に戻るかな?」
「それなら、俺らが護衛します。本当に治安悪いんで」
「そっかぁ……」
俺らはロシナンテで悪事を働いた侯爵もふんじばり、侯爵家で働く使用人は伯爵に忠誠を誓えるのならば、龍一郎の魔法付きで伯爵家に紹介状を持たせた。伯爵への忠義の心がないと感じられると、顔が黒くなるという恐ろしい魔法付き。
23話
その頃の王都では隆文がユダに民制について教えていた。
「まず、これはしちゃいかんという法整えるのだ。むやみに人を殺してはいけないとか、そういうな?
その上でだ。ユダがトップで構わない。
しかしな、ユダが全てを管理・責任を取るわけではないだろう?
なので、地方自治というものが出てくる。地方の有力者に地方の政治を丸投げだな。税金という形で国には貢献してもらう。国だって功労者には何らかの褒賞をあげないとな。ま、それは追々として。
民制は一つの議院だとなあなあで法案が可決しちゃったりするわけだ。だから、二つの議院があると国民は安心。議員は国民から議員になりたい人を選挙で選ぶ。議員は給料がいいけど、議会が夜中まであったり、休日も祝日もない!
今回が初めての試みになるわけだけど、議員の候補は選挙で大々的に行うのは時間がかかりすぎる。地方から議員になりたいやつを呼び込むべきだな。
地方から出てくるんだから寮がないと生活ができないな。寮の整備も必要だ。
そのくらいだろうか?あきらは何かあるか?」
「俺は体動かす方が主体だから、難しいことはわかんない!」
「所謂、脳筋というやつだな」
「道のりは長そうだな?」
「でも、やり遂げないと第二のヘタレ王が生まれかねないぞ?」
「それは困る(笑)」
「ま、我は相談役として動くからユダが主になって頑張るしかない」
「了解した」
24話 爵位消滅!
「で、侯爵家なんだけど、お家取り潰しね。っていうかね、今度のこの国のやり方は民制だから、貴族って制度自体無くなるんだよねー。あ、伯爵も同じ。伯爵は生きていけるかな?簡単に言うと、働かざる者食うべからず。って感じ?手に職があると便利だよねー」
「そうだなぁ。使用人の中でも料理人とか、庭師なんかは重宝するな。料理人は下町の食堂でも働けるし、宿屋でもいいわけだからなぁ」
「……っ。貴族はどうなるんだ?うーん、手に職があればねぇ?体を鍛えて日雇いの肉体労働?」
「無理だ」
「無理なら、餓死するだけだけど?」
「そんな甘っちょろいこと言ってるとマジで死ぬよ?誰かの恨みを買ってるなら、市井に出た時点で殺されるかもね~。身分はないし」
「あー、伯爵様は領地経営するだけの経理という武器がありますから、生きていけるでしょうね。あれだけの屋敷を維持していくのは無理かなぁ?市井の平民の家と同等の大きさの家で十分でしょう?料理が不安なら料理人を雇うのも手ですが、当然給料が発生します」
「料理長に料理を教わるのが最善だな」
「そうですね。まず、自分のことは自分で出来ないと生きていけません。衣食住について全てです」
「それらについて詳しいことは王都で友人が話し込んでいる事でしょう」
「貴方たちは転生者の集団?」
「ですよ?」
「なんで、独り暮らしもしてますし、自分の事くらい自分でしますよ。自分でしてない・できないのは赤子くらいのものですよ(笑)」
25話 爵位がない!
侯爵は赤子と聞いて、顔を赤くしている。恥ずかしいのか?怒っているのか?両方か?
「では、今後の我々の行動は?」
「それも自分で考えて行動してくださいよ~。他人に指示されたことしかできないんじゃ、この先生きていけませんよ?」
「うむ。わかった」
「あと、言葉遣い気を付けて下さいね。平民に偉そうな言葉遣いで教えを乞うても、誰も教えてくれないでしょうね。っていうか、今後平民に教えてもらうということを頭に入れて、言葉遣いに気を付けて下さいね。偉そうな人には制裁が下されるでしょうね~」
「制裁?」
「当然、多数での暴力?」
「私は侯爵だが?」
「んー。そういう態度が平民の逆鱗に触れるんですよ。爵位は消滅したんですよ。貴方は最早、侯爵ではありません。ただの平民です」
「平民……」
なにやらショックのようだ。俺達は生まれた時から平民なんだけどなぁ。
「ガラの悪い平民もいますしねぇ。人によって言葉遣いを使い分けるのは基本ですけど」
「誰にでも尻尾をふるのはダメだよなぁ?」
「かといって、居丈高に振舞い続けると、ねぇ?」
「使用人から教えてもらえば?」
「侯爵の私が使用人に教えを乞う……」
「そういう態度がまずいけないよね」
「爵位は消滅したと何度言えばわかるのでしょうか?」
「以後気を付けて下さいね~」
俺たちはしばらく元伯爵様の屋敷で様子を見ることにした。
元のように(元どうだったのか知らないけど)なったら、次の街に行こうって話になった。まぁ、この元伯爵様はしっかり領地経営していて、領民の信頼も篤いから、うまくやっていけるだろう。
見るのは―――クーデターの前にロシナンテに流れ着いた元貴族だ。
貴族根性丸出しだと、本当に生きていけない。いや、マジで。―――だからそれを見るのが主な目的になっている。
26話 導者ショック!
ふと俺はステータスの表示を見た。レベルに変化はあるまい。別にモンスターと戦ったりしてないし。
「なんじゃこれーーーー!!!」
「なんだよタケルうるさい!」
「うるさいですよ、他のお客様に迷惑でしょう」
「俺のステータス……勇者だったのが導者になってる。バグか?」
「いいんじゃね?俺なんて変態だったし」
「そうですね、タケルに導かれてクーデターも起きて、ロシナンテもこんなだし、いいんじゃないですか?」
「うーーー。勇者ってのも疑問だらけだったけど、何も成し遂げてないのに『勇者』って肩書おかしくね?って」
「そんならいいじゃん」
「そうですね」
受け入れ早くない?
俺たちは海岸沿いの海の男に話を聞いた。
「あー、今のところ税金を納めろとかの話は聞かねーな。一応家に貯蓄はしている。おかげさんで治安がよくなって家に強盗が入る心配も少なくなって家に貯蓄しておける」
ほうほう、中央でまだ税金をどうするか決めかねてるんだな?
「いやぁ、住みやすくなって万々歳。元・貴族とか貴族の屋敷に勤めてたやつらは海で勤めるには体力がねーなー」
やっぱりねー。
「専ら、商店街のカフェとかで給仕してるみたいだぜ?でも言葉遣いとか態度悪くて、よく問題起こしてる(笑)」
あー、やっぱそうなんだー。
「そこは気長に面倒見てやるしかないんだよねー。長年身に着けた言葉遣いだからねぇ。ほら、大将(海の男)だっていきなり王族ですって言われて、それなりの言葉遣いと態度を求められても困るじゃん?」
「極端だな?まぁそうだな」
「そういうもんなんだー」
こういうわけで、俺らはロシナンテはもうOKということで次に行くことにした。
まず地図を買おう。今、西端にいるわけだな?
「クーデター前に王都を出た貴族が権勢ふるってそうなところに行くんだよな?」
「鉱山があって、隣国に接している領地を持っている、わりと爵位の高い貴族狙いだな」
「そのこころは?」
「鉱山があるってことは、金持ち。鉱山資源で隣国に亡命できる。亡命後も鉱山資源をちらつかせて相応の身分が約束される。単なる領地で穀物だと、隣国と同じだから交渉としては弱いだろ?鉱山資源だと、話は違う。
で、隣国に接してる領地を貰ってるんだから、それなりに高い爵位ってことになるわけだよ」
「「おおーーー」」
俺と太朗は拍手した。太朗はわかってたかもだけど。
「ってことで、次に行くのはここだな。トマ」
「所謂、辺境伯がいるのか?ラノベだと、たいていめちゃ強いけど?」
「脳筋かもだ」
脳筋……俺もなのかな?
27話
何故だろう?この辺境伯……ガリガリなんですけど。
あの王に任命されて、周りの騎士が強かったし、自分は強くなる必要がなかったとか?
「辺境の解放?どうぞ。だって辺境だから、中央の政に見向きもされなかったんですよ?別に今更って感じです」
……そういうものなのか?
「それならそうで、爵位も無くなりますけどかまいませんね?」
「え゛それは……」
ふむ、爵位は好きなのか……。
「きっとこれからは納税をすることで中央に貢献すると思いますけど、そこらへんは、中央で改革を進めてる俺らの仲間が考えてると思いますよ」
「納税は変わりませんね。地方ならではの獣の討伐もあるんですけど……」
「それはここの龍一郎が……できる?」
「俺にできるだろう?多分」
多分……。
「恐ろしい言葉だ。半永久的に魔獣が侵入しない結界を頼むわ~」
結局龍一郎はできた。やればできる男だ。
「龍ちゃんやる~!!」by太朗
ん?龍一郎赤面してる?照れてる?
などと旅を続けなんとか国を民制にした。
異世界から元の世界に戻れると思ったが、甘かった。無理だった。
俺・タケルは隣国へ行くことにした。
太朗は賢者の弟子を募集中。生活魔法を普及させようとしている。洗濯機かわりになりそうな魔法とか。俺は魔法についてはよくわからない。
龍一郎は、異世界で医師として働くようだ。こっちには医師免許もない。かわりに衛生的施設も不十分な中での挑戦となる。太朗に衛生的な部屋とか作ってもらうんだろうか?二人がタッグ組めばいいのに…。
あきらはなんだかロシナンテの海の男と意気投合したもよう。タコ焼きを食べたいようだ。タコを食べる風習がない世界ではカルチャーショックのようだけど、そこはあきらの人柄でなんとかしているようだ。
隆文はもともと異世界から戻る気はなかったと聞いていたし、当初の予定通り(隆文の予定)神父を続けるようだ。ついでに、傷をいやすこともしている。
結局5人とも異世界人だけど、馴染んでこっちで暮らすようになった。
平和ならいい。なんかあったら集合する約束してるし。
了。
本当はもっと長くなりそうだったけど、収拾がつかなかったから強引に終わらせました。