恋する先生
・・・今日も来てしまった。
いや、今日こそは。だ!
スーツにしわがないことを確認して、ビシッとネクタイを締める。
緊張で震える手を抑えつつインターホンを押した。
ピンポーンっと音がなると『はーい。今、行きます』と言われ、少しすると玄関の扉が開いた。
「菅野さん。こんにちわ」
「あれ?小川先生。どうしたんですか?」
「また実家から野菜を沢山送って貰ったのでおすそ分けに」
そう言って、持ってきた野菜の入った袋を差し出した。
「ありがとうございます。うちとしては頂けてうれしいのですが。・・・その、大丈夫なんですか?ここ最近、貰ってばかりで。せっかく、ご実家の方が小川先生に、と思って送っているのでは?」
野菜の入った袋を受け取りつつも、申し訳なさそうにする菅野さん。
「大丈夫です。独り身の私には多過ぎる量の物を送って来るので。それに、お恥ずかしい話、料理はからっきしでありまして、野菜などはサラダにして消費するしか出来ないんですよ」
「そうなんですか。でしたら、今度、晩御飯ご一緒しますか?」
「いいですか?!是非、お願いします」
最高だ。
まさか、菅野さんの手料理をご馳走してもらえる約束が出来るなんて。
菅野さんに会うの為の口実に、と毎回スーパーで野菜を買って来ていたのが功を奏した。
「はい。また、お誘いしますね。今日は、ちょっと準備していなかったもので、コーヒーぐらいなら出せますが」
「コーヒーお願いしてもいいでしょうか?・・・実は、ちょっと期待しておりました。菅野さんの入れるコーヒー、とてもおいしいので病みつきになっておりまして」
「まぁ。小川先生にそう言っていただけるなんて嬉しいです。今からコーヒー淹れますので、中で待ってもらってもいいですか?」
「はい。お邪魔します」
リビングに通されて、菅野さんがコーヒーを淹れてくるのを待っていた。すると、菅野さんの娘である、輪花さんが来た。
「輪花さん。お邪魔してるよ」
軽く挨拶をした。