たんこぶみたいな月
たんこぶみたいな月が空にあって
夜が頭をおさえてベソかいてたから
どうしたの?
聞いてみたら
あたしの声なんか聞こえてなくて
ずっと横を向いて泣いている
夜は大きすぎるから
あたしなんかには気づかないんだね
でもたんこぶみたいな月は気づいてくれた
あたしの存在に気づいてくれた
あなたはそこにいるよって
あなたはそこで生きてるよって
認めてくれたから
あたしはお願いした
夜にあたしを見てくれるように言ってって
そうしたらきっと
夜も一人ぼっちじゃなくなって
あたしとお話できる
たんこぶみたいな月は痛さのかたまりだった
あたしのお願いどころじゃなかった
自分のことで精いっぱいで
いっぱいいっぱいのいっぱいになってた
だからあたしは月の下にそっと手をかざして
手のひらに乗せて
撫でてあげたの
痛いの
痛いの
とんでけー
って
そうしたら夜が笑ってくれて
あたしもにっこり笑ってあげて
たんこぶはただの月になって
夜もただの夜に戻って
正しいよそよそしさを身に纏って
三人それぞれにこにこ歩いて行った