聖夜(ホーリーナイツ)
空の船で、
星へと漕ぎ出した。
船の荷は、
沢山の命のかけら。
船の魂であるわたしと、
船長の彼と、
長き長き、
星の道行きを過ごす。
今日、今宵は聖夜、
神が産声をあげた夜。
御子の手を取り、星照らす暗き道を、
命を背に、ひそやかに歩む。
神よ、どうかこの命を絶やさないでください。
訪れる聖夜へ、
幾つの祈りを重ねたのか、もうわからないけれど、
わたしはまた、
ゆりかごで眠る命のかけらのために祈りを捧げ、
想いをまたひとつ積みあげる。
故郷ははるか遠く、道行きは続く。
先へ、
はるか先へ。
星の海を渡りゆく。
はるか、はるか、
新たなる道を目指して。
見果てぬ先の、星への道行きを。
船は進む。
星々の光のなか、わたしは幾つもの夜の顔を覗き見る。
−◇−
― それからはるか先のこと。
漂流中の移民船が発見され、
船の制御用頭脳体の壊れた記録から、この詩が見いだされた。
記録媒体の破損は酷く、この人類の船の目的地や、移民計画が完了できたのかは、ついにわからなかった。
積み荷は空で、調査後に移民船は投棄された。
尚、発展期にあった時の人類の記録史には、この移民船のことは記されてはいない。 ―
−あとがきのようなもの−
先日カクヨムさんで、『名刺代わりの小説10選』というのを書いたのですが、
ちょっとSFマインドが目覚めて、ストーリーを思いついたのですね。
でも、書いている時間が取れそうに無いので、
物語の覚えに、
お話に使う予定だった詩に、簡単な文章をつけたものをまとめて、ひとつの物語として出してみました。
楽しんでいただけると良いのですが(笑)