転生!チートスキル!?
「はっ! そりゃぁっ! ふっ! とりゃぁぁあ!」
俺は家の庭にて、木剣を小さな手に力一杯持って、必死に剣を振る。
俺の家はマリファーナ王国の伯爵家だけあって、屋敷はかなり大きいし、庭も緑に溢れて、面積もかなり大きい。
ちなみに俺はというと伯爵家の三男にあたる。
伯爵家ともなると専属の騎士団を持っており、さらにその中でも俺の家の騎士団は国の中でも、王家の近衛騎士団を除けば、国内最強と呼ばれている。
それには俺、カインの父や母がこの国の中でかなりの実力者だということによるものもあるらしい。
俺は最近、日課として毎日、自身の庭に出て、剣を振るうようになった。
それにはとても重要な……いや、特に重要ではないが、憧れというものがある。
やっぱり、異世界ファンタジーに来たとしたら、やるべきことは惜しまない鍛錬、もしくはチートを極める、もしくは魔法を駆使する、のどれかだろう。
けれど、俺にまだチートなんてものはないし、何故か魔法というものが一切ない。
何故だろうか、普通はチートをもらって、ひゃっはっー!ってなるのが普通だろ?
それに0歳から転生しているのだから、魔力を赤子ながら操作して、魔力増大チートのどちらかだろ?
なのに、魔法というもの、いや、そもそも、魔力というものが一切感じられない……
もしかして、この世界は俺にとってハードモードなのだろうか……
と、いった感じで、なんとか現状というものを受け止めて、腹いせに剣を必死に降っている。
と、そこに
「カイン様、そろそろおやめになったらいかがですか? もう始めてから、かれこれ2時間ほどは経っておりますよ」
俺が必死に素振りしているところを近くでずっと見守っていた女性、いや女の子が俺に声を掛けてきた。
「うん、わかったよ。サーニャ! あと100でやめにするね!」
サーニャは僕の専属の侍女、いわゆるメイドさんである。加えて、耳は三角で、もふもふしていて、尻尾までも生えている。
この転生してきたこの世界には獣人と呼ばれる種族がいて、サーニャはその中でも、狼人族と呼ばれるらしい。
狼人族は誇り高い種族であるが、サーニャは物腰柔らかく、とても優しい。
加えて、おっぱいもかなりある。
俺の専属侍女候補には他にも沢山いたのだが、俺はサーニャを見た瞬間に体にビビっと電流が走ったため、サーニャにだけ甘えて、サーニャが侍女になるように仕向けた。
結果、こうしてサーニャは俺のメイドをやってくれている。
俺は宣言通り、木刀の素振りを100回してからサーニャの元へと向かっていく。
「カイン様、これをお使いください」
と、サーニャが汗拭きを渡してくれる。
俺専属のメイドであるのだから、これくらいして当たり前ではあるのだけれど、やっぱり俺は元の世界にいた時の方が長いため、庶民的な感覚が咄嗟に出てしまう。
「うん、ありがとう。サーニャ、いつもありがとう」
「いえいえ、侍女として当然のことでございます。それで、この後はお風呂にいたしますか?」
「うん、じゃあ、そうしようかな」
俺はかなり長いこと木刀を振っていたので、かなり汗をぐっしょりとかいてしまった。
流石にこのままでいるのは健康にも良くないので、風呂場へと向かうことした。
と、庭から風呂場へと向かう途中で、
正面からペタペタと小さな体を一生懸命に使って、こちらに走ってくる女の子がいた。
歳は3歳で、まだまだとても小さい。
といっても、俺の歳も5歳くらいなのだが……
可愛いらしい、この子はアイシャといって、俺の母親から生まれた訳ではない。
言うところの腹違いの妹である。
アイシャの容姿は幼いながらかなりの美形である、お目目がくりくりで、瞳と髪が水色で、妖精の姿を彷彿とさせる。
「アイシャ! そんなに一生懸命走ってどうしたの?」
「(ピョーーーン!)」
と、俺なら完璧に受け止めてくれることを前提としているのか、アイシャが俺に向かって容赦なくダイブをしてきた。
俺も可愛い妹の信頼を失いたくないため、アイシャになるべく衝撃を与えないように、膝のクッション、および慣性力を掌握して優しく、そっと抱きとめた。
「アイシャぁ、そんな思い切り突っ込んできたら危ないでしょ? アイシャが怪我したら兄さん悲しいよ?」
と、優しくアイシャのことを諫めるも、
「にーにー! えへへへ〜」
俺の胸元に顔を埋めて、ひたすらニマニマしている。
グリグリと顔をすりすりするのでどことなくくすぐったくて、必然的に笑みが漏れてしまう。
腹違いであっても自分の妹ということに加えて、妖精のように可愛いいのでシスコン気質が特にない、俺でも無理矢理シスコン属性を押し付けられてしまう。
将来、アイシャが誰かと結婚するなんてことは許さないと、無駄に先を見据えながらも、愛くるしいアイシャの頭を優しく撫でであげる。
「えへへへへ〜〜」
そうすると、ニマニマにさらに拍車がかかって、気持ちよさそうにトロンとした顔をしている。
いかん、いかん。このまま風呂にも行かずに、アイシャといたら、臭くて嫌われてしまうかもしれないし、それに風邪を引いてしまうかもしれない。主な理由は前者にあるのだが、
しばらく、俺はアイシャとの時間を堪能してから、汗を流すべく、風呂場に向かおうとする。
別れ際にアイシャが可愛い瞳をうるうるとさせて、名残惜しそうにしていたのが、俺もアイシャ以上に別れを惜しんでいるので、とても心苦しい。
「カイン様、アイシャ様にはまた会えますよ。先にお風呂に入りましょう。でないと、風邪を引いてしまいます」
俺の様子を見ていた、サーニャは俺を諫める。
サーニャの言うことはとても正しいし、このままいくとダメなお兄ちゃんになってしまいそうなので、ここは必死に欲望を押し込めて、風呂場へと向かっていった。
俺が風呂場の脱衣所に向かうと、先客がいるようで、脱衣所に俺以外の服が置かれていた。
俺の家は伯爵家であるが、侍女たちが甲斐甲斐しく体を洗うなどの世話をすることはない。
俺もその方がありがたいと思ってるので、服を脱いで風呂場へと向かう。
先客がいても、風呂場へと入れるのは、浴槽が温泉並みに広いのにも理由がある。
平民は毎日お湯に浸かるということは経済的にも技術的にもできない。なので自宅の風呂で全身浴をするということは、一種の贅沢であって、見栄を貼るためにも貴族たちの家には大浴場があることが多い、
だから、俺の家にも見栄を貼りに貼った大浴場があるという訳だ。
俺の予想通り先に風呂に入っている人物がいて、
「おう、カインか。お前も風呂場に来たのか? それにしても、ちょっとだけ大きくなったか?」
と、筋骨隆々な男が俺に話しかけてくる。
この男こそ、マリファーナ王国グロービル伯爵家当主である、バラン・グロービルだ。つまり、俺の父親にあたる男だ。
その筋肉から連想されるものとは打って変わって、この男の声音は優しく、顔もかなりの美形である。髪もおよそ天然のものとは思えないくらい美しい金色をしていた。
「父上がお風呂に入っていらっしゃったのですね。それと、僕は大きくなりましたか? 自分ではあまり実感がないのですが……」
「あぁ、まぁまだ5歳だしな。大きくなるのは当たり前だな。あ、そうそう。そういえば、カインが木刀をもって庭で遊んでいると聞いてるのだが?」
「ち、父上! 心外ですっ! 僕は遊んでいるのではなく、稽古しているんですっ! 遊びなんて言わないでください。僕は魔法が使えないので、剣を振りしかないんですよ?」
これには流石の俺も反論しずにはいられない。俺はは父上に遊びと言われたことに抗議をするべく、頬を風船のように膨らませてやる。
そんな俺の可愛い抗議に、父として降参したのか……
「わるい、わるい。まぁ、カインは俺の子だからな、きっと剣も努力すれば、近衛騎士団団長くらいにはなれると思うぞ? あ、あとそれと、お前の歳で魔法が使えないのは当たり前だろ?」
俺はこの父親の子であるから、剣の腕は遺伝的にも保証されている。
なんたって、バランは王家の近衛騎士団団長と肩を並べるほどの実力者なのだから。
それを俺は知っているので、魔法が使えない俺は一種の望みを剣に掛けて、剣を振り始めたのだが、バランが何か気掛かりなことを言ったような———
「ち、父上! 気になることがあるんですけど、おr、ぼ、僕が魔法を使えなくて当たり前とはどういうことですか?」
このことを聞き逃すわけには行かない。
これは今後人生に関わることなのだから、俺がもし魔法を使えるようになったら、どんなに人生が楽しくなることだろうか。
「いや、カイン。どうもこうも、お前はまだ洗礼の儀すら受けてないだろ? 洗礼の儀も受けずに魔法が使えるわけがないじゃないか!? 魔法は神様からの恩恵、つまりギフトによる産物なのだから」
ん!? 洗礼の儀!? それと、神様からの恩恵!? なにそれ、聞いてないし、言われてないよ? 前、神様に会ったときは確か、「剣と魔法のファンタジーの世界じゃ」なんて言ってたよ。
ってことはもしかして洗礼の儀ってものを受ければ魔法を使えるようになるということなのか? だとするならば待ってはいられない。
さっさと洗礼の儀へと行かねばならぬ。
「父上! 今すぐ洗礼の儀に行きましょう! そうすれば、僕も魔法を使えるようになるんですよね? 僕はどちらかというと魔法の方がいいので、魔法を極めれるのでしたら、剣はいいです」
「ぅぐっ! それにしてもカインは正直なやつだな。父さんちょっと傷付いたぞ。まぁ、カインが魔法がいいっていうならお前の意見を尊重する。なんたってカインはあのリーファの子供でもあるんだならな。剣でも魔法でも努力次第では高みを目指せるのは確かだからな」
正直に、剣なんかより魔法と言ってしまったが、仕方がない。転生してから5年間、鬱憤がたまっていたのだから。
それにしても、もしかして俺の家族はなかなかのチート一家なのだろうか?
俺の父親のバランは【剣王】という二つ名を持っていて、名高い剣豪である。
加えて、俺の母様、リーファ・グロービルは元Sランクの冒険者で、【紅蓮の魔女】と二つ名が付けられるほどの魔術師だったらしい。
得意な属性は二つ名通りで、火属性らしい。
母様の武勇伝の一つには、千の魔物を軍勢を業火によって、一瞬にして焼き尽くしたらしい。
それだけあって母様はこの国の英雄として認識されている。
そんな女性が俺の母親だけあって、魔法の法の実力も保証されているということだ。
まぁ洗礼の儀ということを聞いたら、俺はいてもたってもいられないので、
「父さん、洗礼の儀にはいつ行けるのですか? なるべく早くがいいのですけれど……」
「まぁ、まぁ。落ち着けよ、カイン。まず、洗礼の儀というものは6歳になってからなんだよ? そして、お前はまだ5歳。つまり、カインが洗礼の儀を行えるのは来年だな」
「な、なんてこと……」
俺は上げて落とされた感じになり、膝からガクッと倒れ込む。
まぁ、魔法が使えるかもしれないという可能性が存在しただけでも今回は収穫とも言えよう。
と、父さんには洗礼の儀についてさらに細かいことを聞いた。
洗礼の儀を行っているのは、教会であって、6歳の時に洗礼の儀を受けると恩恵というものが神から下賜されるということだ。
恩恵というものは、いわゆる才能みたいなもので、父さんが持ってるギフトは、【剣鬼】というもので、剣術を極める上ではとてもすごい恩恵であるらしい。
リーファ母様はというと【大魔導師】という恩恵らしく、それはかなり魔法に特化した恩恵だということだ。
と、ここで恩恵というのが才能であるとすると、俺が頑張ったのに魔法を使えないというのには納得できないのだが、そこのところは謎が多いらしく、洗礼の儀を受けずして、魔法を使えるようになったものは今まで一度もたりとも存在しなかった、ということだ。
ここで俺ならばできる! って思うのが普通なのだが、流石の俺も5年掛けてもできなかったものが一年そこらで出来ると思うほど、傲慢ではない。
と、俺の誕生日は先月過ぎたばかりなので、神様たちからの恩恵をもらえるのは約1年後ということなので、今は魔法を諦めて剣の腕をを少しでも磨くことに決心した。
頑張ることを父さんに意気込んでお風呂をあがることにした。
お風呂を上がったあとは、体を疲れた体をサーニャにマッサージしてほぐしてもらい、アイシャと戯れて1日を終えた。
と、次の日から俺の宣言を父さんが聞いたせいか、俺は専属の騎士団のメンバーに混じって訓練をすることになった。
まぁ、別に特別俺だけということはなく俺の兄さん2人も俺と同じ歳くらいから、騎士団に混じって稽古をしていたらしい。
英才教育と遺伝子ドーピングによって、俺の兄さんたちは学園でも常にトップ層にいるらしい。
ということで、俺は5歳にしてはキツイものの、これも自分が将来ウハウハな人生を楽しむためには欠かせないことなので、弱音は少しだけ吐きながらも、体には鞭を打って剣を毎日振り続けて、俺はとうとう念願の6歳となった。
⭐︎⭐︎⭐︎
ガタガタガタガタ。
俺は父親、バランと母親、リーファと一緒に馬車に乗って、洗礼の儀へを向かうために王都の教会へと向かった。
母様、リーファは、赤毛に、ルビーのような瞳をしていて、かなり美人であった。
胸はそんなに大きくはないが、それでもないっていうほど絶壁ではなく適度にいいサイズといった感じだ。
どうしてこんな美人で、強い女性が父さんに惚れたのか不思議だったのだが、父さんは一応、母さんの恩人らしい。
ある時、十数万の魔物、魔物の行進が起こった。そこに母さんが当然の如く、対処に向かったのだ多勢に無勢で、母さんは死を覚悟したらしい。
そこで母さんの危機に軍を連れて、颯爽と現れたのが、父さんと言ったわけだ。
そこで父さんと母さんが出会い、互いに想いを寄せ、結婚するに至ったということだ。
と、回想に至ったのだが、本題に戻ると、俺は今とてつもなく緊張している。
昨日は明日からは魔法が使えると遠足の前の日の如くウキウキしていた寝れなかったのだが、当日になってはあら不思議……
何故か緊張が止まらない……
というよりも、不安で不安で仕方がない。
それもそのはず、この世界は恩恵
至上主義というものが一般的で、恩恵によって、その人生が決まると言っても過言ではない。
極端な話で、実例を挙げると、恩恵が【勇者】のものには5歳にして爵位が与えられるほど顕著なものなのだ。
それに、恩恵というものは才能であり、神からのプレゼントでもある。
だから、そこには必然的なものもあるが、偶然的なものもある。
と、そこで生じる危惧と言えば、父親と母親がどれだけ優秀でも自分にいい恩恵がくるとは限らないということだ。
だから、俺は洗礼によってどんな恩恵が貰えるのか不安で不安で仕方なかった。
きっとあの爺さんなら俺にいいギフトをくれるだろうと少しばかり期待も抱きながら……
まぁそれでも俺は不安なことには変わらない。
そんな俺の心中を察してか、母さんが俺の不安を取り除くように頭を撫でてくれる。
「カインは不安なのね? カインの気持ちはよくわかるわ。わたしもあのときはとっても不安だったからね」
「はい、母様。神様からどんな恩恵を貰えるのかとても不安です」
と、目の前にいる父さんは、
「はっはっはっは。まぁ、そう、心配するな! お前は俺とリーファの子だ。並大抵の恩恵なはずがないだろう。それに、もしもの話だが、恩恵に恵まれることがなかったとしても、俺はお前のことを大切な息子だと思っている。それと、大切なことはどんな恩恵であろうと他者のことを見下してはならない。どんな恩恵であっても、大切なのは努力をすることだ。だから、恩恵だけで人を判断してはいけない。いいか、これは肝に銘じておくように、わかったか?」
「……はい。わかりました」
と、父さんの言ってくれたことは少しばかりか心の支えになった。だが、それが一種のフラグではないかということを陰ながら思ってしまった。もし、この父さんの発言が一級のフラグ建築だとしたら、死ぬまで恨んでやろうと思ったが、そんなことを考えられるくらいには緊張も解かれ、過度な緊張はなくなり、昨晩のようにウキウキとした心持ちで教会へと向かっていくのであった。
と、馬車がゆっくりと減速していき、そして止まった。
おそらく教会へとたどり着いたのだろう。
と、馬車の扉が開いて、外へ出てみると、
「うわぁぁぁぁ!」
眼前にはシンデレラ城と同じくらい大きな白色の荘厳な教会が目の前に迫っていた。
無邪気な俺の反応を見て、母さんは嬉しいようで、
「ふふふ。カインはここに来るのは初めてだもんね。でも、王城はこれよりもっと大きいのよ?」
「えっ!? 王城はこれ以上なんですか? これ以上だとしたら、倒れた時どうするんですか?」
と、突然の母さんの言葉に驚いてしまう。
そうだ、こんなに大きいものが倒れたとしたらどれくらいの被害が出るのだろうか……
ましてや、王城がこれ以上だとしたら……
「まぁ、倒れたりなんかはしないわよ! ドラゴンでさえ王城を破壊できないような、結界が張ってあるからね!」
確かにそれなら破壊できないだろうな。
この世界にはドラゴンという竜種が存在しているらしく、長命であり聡明で気高く、最強の種族として名を馳せている。
1匹の竜が街を襲うだけで、一つの街は崩壊すると言われている。
「そうなんですね! いつか王城にも行ってみたいものですね」
まぁ、そんな竜が破壊できないのなら、王城が倒れるなんで心配はないのだろう。
「ふふ。カインはすぐ行くことになるわ。その時に存分に楽しんでおいで」
と、俺は母さんと話しながら、父さんの跡を追う形で真っ白な荘厳な建物へと足を進めていく。
と、大きな扉を開けて、入った先には真っ白な服に身を包んで男性がいた。
おそらくこの人物は神官にあたるのだろう。
「これはこれは、【剣王】のバラン様に、【紅蓮の魔女】のリーファ様ではありませんか。本日は何用で?」
「おう、すまんな、ルーク殿。今日は俺の息子のカインが6歳になったからな。カインの洗礼の儀にに来たんだよ」
と、神官の人がこちらに視線を向けて、
「貴方様が、カイン様ですね。始めまして、わたくしはこの教会の神官長をしております、ルークと申します。この度は洗礼の儀に来て頂き、誠にありがとうございます。カイン様に神々の加護が有らんことを」
「はい、始めまして、カイン・グロービルと申します。今日はよろしくお願いします」
と、そんな感じで軽く自己紹介を終えると、早速
「では、早速カイン様の洗礼の儀をはじめましょうか?」
と、神官長のルークさんに案内されるようにして、洗礼の儀の間へと向かう。
基本、洗礼の儀には本人とそれに付随して神官だけが洗礼の儀の間に入るのが習わしである。
流石にいくら権力があろうとま、神々の決まりの前ではそんなもの、アリの鳴き声の如く些少なことであるので、父さんと母さんも洗礼の気の間へとついてくることはない。
習わし通り、ルークさんと俺だけで洗礼の儀の間へと向かっていく。
と、洗礼の儀の間へと到着すると、目の前には10メートル近い石像が12体周りに立ち並んでいた。
あっ、あの爺さんがいた!
と、転生時にお世話になった爺さんを発見した。
ルークさんが言うことには、この石像は神像らしく、12神様というらしい。
俺は神様はあの爺さんだけだと思っていたが、そうではないらしい。
神様にもある程度部門や、階級があるということだ。
この世界では12神様というのがメジャーなのだが、魔族の中には邪神を加えて13神様と考えることもあるらしい。
創造神:世界、そして万物を創造する権能をもつ神様であり、この12神の中の最上の存在最高神。
破壊神:万物を一瞬にして破壊する権能を持つ神様で、その権能は一見怖そうに見えるがとても温厚で優しい神様。
魔法神:あらゆる魔法を司る神様。
武神:あらゆる武術を極める神様。
商業神:商業を司る神様で、加護を貰えれば商業で失敗することは滅多にない。
遊戯神:娯楽や遊戯を掌る神様。
鍛治神:鍛治の神様で、鍛治神の加護をもらった職人はかなりの等級の武器を生み出すことができる。
生命神:世界の命や愛を司る神様。
自然神:世界の自然を管理する神様。
死神:生き物の死を司る神様。
獣神:獣人たちを統括する神。
龍神:龍種たちを統括する神。
と、ある程度のことをルークさんに説明を受けた上で、
「じゃあ、洗礼を始めます。12神様の中心に入って、目を閉じて、祈ってください。そうすれば貴方に12神様から恩恵が与えられます。そして、運が良ければ加護をもらうことができます」
と、ルークさんのいうことに従って、輪の中心で俺は膝を折って、目を瞑って祈った。
その瞬間、目蓋を閉じていても眩しいと思える閃光が俺を包んだ。
12神の像がものすごい勢いで輝き出した。
と、それと同時に体にふわっとした、浮遊感を感じた。
恐る恐る目を開けると……
そこには、神殿同様の光景があった。
違うといえば、神々の姿があまりにも色鮮やかなことと、動いているということだ。
と、その中には転生時にお世話になった爺さんも存在していて、
「よう、久しぶりやな。元気だったか? 儂は12神の1柱、そして最高神である、創造神メルフェスだ。改めてよろしくな、神倉健斗。いや、この世界ではカインくんだったな」
白髭を上手に蓄えて、それを優しく撫でる爺さん。神々しいのだけれど、所作はやはり爺さんそのものだった。
「そうだね、久しぶりだね。それに、なんだよー。爺さん、最高神で創造神だったの? てっきりこの世界は1神制だと思ってたよ? それに、転生時に他の神たちとは会えなかったんだけど?」
「ほほっ! それはすまんのう。それに、儂のことは爺さんと呼ぶか。まぁ、新鮮でいいが。まぁ、前に他の神と会えなかったのは皆が皆、儂と違って暇ではないということだよ」
「えー! そうなんだ、まぁ、それはそうとして、創造神の爺さんって暇なんだね?」
創造神といえば、何か産み出すわけでしょ? でも、確かに産み出し切ったら、暇になるのかな?
「まぁ、正直。いうと暇じゃよ。なんたってもうやることがないんだからな」
「そうなんだね! まぁ、いいとして、他の神様たちとも話したいんだけど、いい?」
せっかく、12神様全員が集まっているのに、話さない手などはない。
と、そんな様子を察したのか、他の神様たちが自己紹介をしはじめた。
「私は破壊を司る破壊神のゾラよ。カインくんよろしくね」
破壊神のゾラ様は艶の良い黒髪をした、お姉さん系の美しい女性。
ルークさんのいう通り、怖い印象というよりも優しそうな感じがする。
例外なく怒らせたらとてつもなく怖いのだろうけど。
「私は全魔法を司る魔法神のリーナよ〜。あなたとっても可愛いわね〜。わたしがたくさん可愛がってあげるわ〜」
声高くそんなことを言ったのは、少女くらいの体格で、言動は幼い。けれど、女神であることには変わりなく美しく神々しいな女の子。
そして、
「我は全武術を極めしもの、武神のガイルだ。強くなりたいなら力をくれてやる。筋肉こそ正義」
と、父さん以上のムキムキな胸筋をピクピクと自由自在に動かす男たち。所々、戦傷がみえるいかにも強そうな漢。
「わたくしは商業を掌る、商業神のコマースと申します。以後、お見知りおきを」
と、優しげな笑みを浮かべてるおじさん。でも、その瞳の奥には虎の如く獰猛な力強さが宿っていて、侮ってはいけないと、神経の先からビンビン伝わってくる。
「僕ちゃんはねぇーえ。遊戯神のヘレネスちゃんだよ〜ぉ! 面白いものならなんでも大歓迎ぇ〜え! 君もなかなか面白そうだから力を上げちゃうねぇーえ」
緊張感はなく、少し抜けたようなチャラ男。容姿が神だけあって極上なので、おそらく女遊びも盛んなのだろうと伺える。
「儂は鍛治や錬金を掌る、鍛治神のドワンゴじゃ」
と、リーナと同じくらいの身長で、ガイゼル髭のお爺さん。体は小さいけれど、腕は武神のように逞しく、アンバランス感が半端ない。内容も口下手なのか端的なのものだった。
「私はあらゆる命を司る生命神のフィリネよ。私があなたを守ってあげるから、安心しなさい」
と、母様のように柔らかい表情をした女性。母性が体全身から溢れていて、俺も思わず子供へと戻ったような錯覚を得た。
「わたくしは自然を司る自然神のカリンですわ。ま、まぁ、別にあなたにき、興味があるわけではないけれど、し、しょうがないから力を貸してあげるわ。何かあったら頼ってくれてもいいわよ!」
と、ちょっとだけツンツンした少女。
態度はツンデレって感じだけれど、そのための必要条件としての美形は持ち合わせているので、とても可愛らしい。
そして、どんどん次々に神様たちが俺に挨拶を済ませる。
「わたし……死神……メス……カイン……よろしく」
と、片言の幼稚園児くらいの少女。
膝を抱いていて、無関心を貫いているようなのだが、そんなことはなく、こちらから見ると目を逸らしてしまうのだが、目を外すと俺のことをジーとを見てくる。
なんとなくだが、守ってあげたくなるようなそんな存在。
「妾は龍神のマリーダじゃ。カインよ、よろしくじゃ」
気高そうな佇まいに、見たこともない煌びやかな服、いわゆる着物をを着ている。
口調はなんだか、古びているのだが、それでいて違和感なく、彼女の品位を増長されるものとなっている。
「わたしは、獣神のネルルでしゅ、わわわ、噛んじゃった……か、カインくん、わ出しのことはネルって呼んでください」
神の品位はそこまで感じず、どちらかと言えば、どこらにでもいる町娘みたいな少女。でも、そうとは言え神なのでとても可愛らしく、愛くるしい。それでも俺かはかなり歳上らしい。
と、全員の自己紹介が終わり、内容を整理するとこんな感じだった。
創造神:メルフェス
破壊神:ゾラ
魔法神:リーナ
武神:ガイル
商業神:コマース
遊戯神:ヘレネス
鍛治神:ドワンゴ
生命神:フィリネ
自然神:カリン
死神:メス
龍神:マリーダ
獣神:ネルル
と12神の神様たちが目の前で自己紹介をしていったので、
「改めて僕からも自己紹介しましょう。どうも始めまして、12神の皆様。僕はマリファーナ王国、伯爵家バラン・グロービルの息子、カイン・グロービルと申します。本日は洗礼の儀のためにここにきました」
と、俺が自己紹介をすると、1番の年長者とであり、創造神のメルフェスこと、爺さんが
「ほっほっほ! 堅苦しいものはなしじゃ! お前には似合わんだろ?」
まぁ、創造神を爺さん呼ばわりしている時点で、形式ばったものは今更必要ではないのだが、一応貴族である身としてやっておきたかった。
まぁ、もう一応済ませたので、これからはいつも通りで行こう。
「ところで、爺さん。今日は洗礼の儀に来たんだけど、どんな何がもらえるの? 欲を言うのならすっごいやつがいいな? チート系の!」
そうだ! せっかく12神様が全員いるのだから駄々っ子のようにねだってやろう。
「ほっほっほ! 残念じゃが、お主にあげる恩恵はとうの昔に決まっておるぞ? それも遥か昔からな! はっはっは!」
な、なに……ここまで来て交渉の余地もないのだろうか。
せっかくチートで楽しい人生を謳歌したいと言うのに……
とそんなことを考えていると、
「まぁ、お主には恩恵を与える、下賜すると言うよりも、正しく言えば、返す、返還と言った方が正しいだろう。まぁ、そのギフトもおそらくお主の願望に沿うものだから心配しないでいいぞ」
ほう。そうなのか、いや、言っていることがよくわからないが、まぁいいだろう。
貰えるものはもらっておけ、彼は俺の流儀でもある。
「ふぅーん。なら、よかったよ。はぁ、これで俺は魔法が使えるようになるんだよね?」
「まぁな。6歳まで魔法が使えないのはこの世界ではしょうがないのだよ。6歳は体内の魔力が制御できないから、魔力があると体が異形化してしまったり、簡単に病気になって死んでしまうことがあるから、神の力で抑えておるのだよ」
「はぁ……そうなら、そうと早く言ってくれればいいのに。まぁ、今回は魔法が使えるようになったのだから、許すけどさ」
「ふむ。それは有難いのじゃ」
それにしても洗礼の儀って毎回こんな感じなのかな?
そうだとしたら神様大変だろうなぁ、なんて考えていると、
「そんなわけなかろう、儂はともかくとして、他の神達は暇じゃない。お主は特別であるから今回は全員を招集した」
たしかに、洗礼の儀で毎回ここに連れてこられたら、12神様たちは子供の面倒をずっと毎日見ていることになる。
「まぁ、俺は転生者ですしね。特別でイレギュラーと言われても納得するしかありませんが……」
まぁ、この世界には他にも転生した人も多数いるらしいのだが。
「はぁ……まぁ、今、その認識でも良い。じゃが、いつかは気付くことになると思うがのう」
はぁ、なんだか厄介ごとの匂いがプンプンする……
「もしかして、俺に使命とか口実を使って、厄介事を押し付けるわけではないですよね? そんなの嫌ですよ? 断固拒否しますよ?」
せっかくのファンタジー世界、自分からわざわざ面倒なことに突っ込もうとは思わない。
自分に不利益が起こるのなら、あくまで行動を起こすのだが、俺は聖人君主でもないし、過度なお人好し気質があるわけでもない。
だから、結論から言うと、俺の人生が楽しければそれでいいのだ。
そんなことを考えていると、
「ほっほっほ。儂らは別にお主に使命などの面倒なことを押し付けたりなんかはしないぞ? 儂らとしてはお主が無事に安全に楽しく暮らしてくれらばそれでいいのじゃ。言葉の表も裏もない。これは儂らの本心じゃよ」
まぁ、この爺さんの顔を見て、嘘を言っているようには見えないので、ありがたくその言葉を受け取っておく。
「じゃあ、お言葉に甘えて、俺はこの世界で順風満帆に楽しく暮らしますね?」
「おう、そうしてくれ! じゃあ、そろそろ時間が来たようだ! また、いつでもここに来てくれ! お主のためなら12神全員集まるからのう。別に、個人的に呼び出したいのであれば、そう念じれば、そうなる。要するに、お主が思うままじゃ」
「おう、爺さん。ありがとう」
「じゃあ、お主に創造神の絶対なる加護を」
「「「「絶対なる加護を」」」」
と、神様の皆が加護をくれたようで、感謝の意を込めて、12神様たちに別れを告げると、神々と居た間のような浮遊感が一切なくなって、目を開けると、元の洗礼の間へと戻ってきていた。
突然の閃光は収まったようだが、閃光に当てられたルークさんは驚きのあまり口をパカーンとだらしなく開けていた。
「あのー、って、あのー、ルークさん? おーい、ルークさん? 洗礼は終わったとおもうのですが?」
「……し、失礼しました。12神様の像が光り出すなどわたしでも初めてのことでございましたので、みっともなくと放心してしまいました。さすが、英雄殿の御子息ですね。さぞ、いいスキルをもらったのでしょう」
「はい! 神様たちに感謝しないといけませんね」
と、無邪気な笑顔をルークさんに見せると、
「いい心掛けですね。きっと貴方にはこれから沢山の幸せが待っておりますよ。それでは、ご両親のところへ戻りましょうか」
「はい。ありがとうございました」
と、俺はルークさんの後をついて、父さんと母さんの元へと向かった。
「お、おう、カイン。無事に終わったみたいだな」
「はい、父上。神様達に無事恩恵を頂くことができました」
「…………ふふふ。よかったわね。さすが、わたしの子かしら」
母様が自分の息子と強調したことに父上は不満に思ったのか、
「リーファ、カインは俺の息子でもあるんだぞ?」
「ふふふ。そういえば、そうでしたわね」
「まぁ、今日はカインの6歳の誕生日だし、夜は家でパーティをしよう。カインはその時にスキルプレートを見せてくれ!」
「はい、わかりました」
スキルプレートというのは、洗礼の儀の後に神様達から貰えるものであって、自分のスキルだったり、自分のステータスががわかるらしい。
父さんのステータスはというとはというと、
————————————————————
名前:バラン・グロービル
年齢:36歳
種族:人族
lv.73/80
【HP】50000/50000
【MP】5000/5000
【筋力】12000
【物攻】15000
【物防】20000
【魔攻】2000
【魔防】10000
【敏捷】8000
【知力】10000
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恩恵:【剣鬼】
加護:武神の加護 lv.6 鍛治神の加護lv.1
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【スキル】
剣王術 lv.5
身体強化 lv.8
筋力上昇 lv.6
魔力感知 lv.5
魔力操作 lv.5
魔鎧 lv.4
俊足 lv.5
鬼化 lv.3
気配感知 lv.7
————————————————————
称号
マリファーナ王国グロビール伯爵家当主
剣王
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と、いった形で、平民達の平均値は約1000くらいなので、父上はかなり強者の部類に入る。
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名前:リーファ・グロービル
年齢35歳
種族:人族
lv71/80
【HP】20000/20000
【MP】80000/80000
【筋力】5000
【物攻】5000
【物防】10000
【魔攻】20000
【魔防】30000
【敏捷】10000
【知力】50000
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恩恵:【大魔導師】
加護:魔法神の加護 lv.5 生命神の加護lv.2
自然神の加護 lv.1
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【スキル】
全基本属性魔法lv.7
火炎魔法lv.5
魔力感知lv.8
魔力操作lv.8
気配感知lv.7
気配遮断lv.7
俊足lv.4
隠密lv.3
料理lv.5
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称号
マリファーナ王国伯爵家第二夫人
紅蓮の魔女
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と、母様もなかなかというか、かなりすごいステータス値であった。
恩恵の他にもスキルというものが存在していて、恩恵はスキル習得に補正がかかるというものらしい。
スキルに関しては努力すれば手に入れられるらしい。
だから、恩恵だけが全てではないらしい。
また、スキルレベルに関しては
1. 初心者
2〜3 中級者
4〜6 ベテラン
7.8 英雄
9 人外
10 神
と言った形になるらしい。
また、父上の剣王術は剣術から派生して剣術lv.7から何故かしら変化して、剣王術lv1に変化したらしい。
スキルに関しては解明されていることもあるが、解明されていないこともたくさんあるという。
また、人族のレベルは一般的に80が最高とされていて、勇者と呼ばれるものはレベルの上限というものがなかったらしい。
獣人達や妖精族は人族よりも限界レベルが高いものが多いらしい。
こうして、俺は6歳の洗礼の儀を無事に済ませて家へと帰った。
⭐︎⭐︎
その頃神界にて、
「ようやく、渡すことが出来たなぁ。これで不自由なく楽しく暮らしてくれるといいなぁ」
と、メルフェスは髭を撫でながら、安堵した様子で息を吐いた。
⭐︎⭐︎
そして、自分の部屋に戻り、早速、お待ちかねの自分の教ステータスを確認してみる。
と、そこには……
(ステータス)
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名前:カイン・グロービル
年齢:6歳
種族:神人族
lv.1/∞
【HP】100000/100000
【MP】100000/100000
【筋力】100000
【物攻】100000
【物防】100000
【魔攻】100000
【魔防】100000
【敏捷】100000
【知力】100000
【神力】100000
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恩恵:【全神の恩恵】
加護:全神の祝福EX
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【エクストラユニークスキル】
神の宝物庫EX
神の意向EX
万物創生EX
【スキル】
剣術lv.3
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称号
全神に祝福されし者
マリファーナ王国伯爵家三男
マリファーナ王国最強
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あれ!? 神人族ってなに!? それに、lv.80が最大じゃないの? あとステータスの値が完全におかしい!
こんなの聞いてないよ? 確かに俺はチートでウハウハとか言ってたけど……
「なんだこれぇぇぇえ!」
⭐︎⭐︎
僕は自分の目を疑った……
もう一度確認してみてもやはり見えるのは先ほどのステータス。
「なんだこれぇぇぇぇえ!」
詳しくスキルや恩恵などをみていくと、神人族は神であり、人である種族であるとのこと。
さらに、【全神の恩恵】というのは全ての恩恵を統合し、さらに昇華させ、統合したもの。いわゆるチートをさらに進化させたようなものだということだ。
そして、【神の宝物庫EX】というエクストラユニークスキルは神界にある宝物庫から、制限なく持ち出しの許可があるというものらしい。
そして、【万物創生EX】はあらゆるものを創造し、生み出すことができるというものらしい。これは創造神の権能とほぼ等しいものあるのだが、創造神の権能でさえ、万物創生であって、EXには至ってないという。
そして、【神の意向EX】は全12神の権能全てを統合し、さらに昇華して強化したものらしい。この効果は神力を使用し、神の権限の下、自分の赴くまま、望むがままにすることができるというものらしい。
驚きのあまり、俺が先程大きな声を出してしまったため、俺の専属メイドのサーニャがすぐ俺の部屋へと駆け込んできた。
「どうしましたか!? カイン様……」
サーニャは俺のことを本気で心配して、ここに駆けつけてくれた。
そして、そんなサーニャを見て俺は自分のことを話すかどうか、ものすごく迷った。
どう考えても、このステータスは規格外であり、一つ間違えれば、自分が破滅することも簡単に予想できるし、身内を巻き込む可能性もある。
でも、本気で俺のことを気にかけてくれたサーニャに嘘をついたままなんて、不義理は俺にはできないので、俺は決心した。
サーニャには転生者であることはこの際は、ここまで来たら些末なことなので言わなくていいと思うが、このステータスは今後隠していくわけにもいかない。
たとえ、身の破滅に繋がろうというのなら、そして身内になにかあろうというのなら厭わず、力を使ってやろうじゃないか。
後の不安はなんとでもなる。
でも、ずっと尽くしてくれる人には誠実でありたい。
だからこそ俺はサーニャにステータスのことを相談することにする。
これを見せたら、サーニャは俺のことを怖いと思ってしまうかもしれない。
サーニャがこれをみたら僕のことをどう思うのか、不安で不安でしかたがないけれど……
サーニャならこんな俺でも怯えずに寄り添ってくれるとというささやかな期待を抱きながら、
「ねぇ、サーニャ。少し話がしたいんだけど、いいかな? それもものすごく大事な話なんだけど? いいかな?」
俺は真剣な顔をして、サーニャの方をみる。サーニャは俺の真剣な表情に一瞬、驚いていたようだが、
「は、はい……カイン様」
「これから言うことはまだ父上にも母様にも言わないで欲しいんだ。これは絶対ね。言ったら……まぁ、これからは一緒にいられないかも」
「は、はい。わかりました。命に変えましても、カイン様の命に従います」
サーニャが覚悟を決めた顔を見せたので、
「サーニャ。じゃあ、今から今日神様達にもらった恩恵とステータスプレートを見せるね。絶対に驚くと思うけど、驚きのあまり大声を出さないでね……」
「は、はい。かしこまりました」
「絶対だよ? 大声出したら……」
いちよ、念を押しておく。
事が事なので、慎重に。
「じゃあ、いくよ。『ステータス』」
と、俺はステータスと念じて、サーニャに自分のステータスを見せたところ……
サーニャは心ここに有らずと言った感じで、しばらくの間放心してしまっていた。
そして、我に返ってきた時に、ため込んだ驚きが吹き出るかの如く、大きな声を出そうとしたので、俺は容赦中サーニャの口を手で抑えた。
「もぉお! サーニャぁ、叫ばないで! ってあれだけ言ったでしょ?」
「は、はい。申し訳ありません……わたしの許容範囲を遥かに超えてしまっていましたので、叫ばずにはいられませんでした。はい、本当に申し訳ありません……あっ、それと、カイン様、良かったですね」
と、サーニャが屈託のない笑みを浮かべて、そんなことを言ってくれた。
「え、サーニャはさ。こんな化け物じみたステータスをみて怖いとは思わないの?」
こんなのを見たら、普通は怖いと思うはずだ。下手したら国一つが滅んだし、いや、世界一つが滅びるかもしれないのだから。
それなのに、サーシャはというと
「はい。怖くなんてありませんよ。だって、カイン様がそのお力を持っているんですから。カイン様ならこの力を悪用したりなんかしませんよね?」
「まぁ、悪用なんかはしないけどね……」
まぁ、サーニャの言ってることは間違ってないけど。
この能力を使って、別に悪いことをしようなんて思っていない。
「だから、わたしは怖くなんかありませんよ。カイン様ならこの力を誰かのため、人のために使うことができるはずです。みんなを幸せにできるはずです。私はそう信じていますから」
サーニャがいつになく、純粋な笑顔を向けてくれるので、言われるこっちまで恥ずかしくなってしまう。そして、サーニャの言葉によって俺の心配事は嘘みたいに晴れていった。
「ありがとう、サーニャ。サーニャのいうとおり、僕はこの力を大切な人たちを守るため、そして幸せにするために使うね。サーニャも僕が守るから」
と、僕はここで決心した。
「は、はい。是非、よろしくお願いします。カイン様」
と、サーニャの頬が少しばかりかほんのり赤くなって、尻尾も喜んでるのかフリフリと揺らめいていた。
と、その頃……
グロビール伯爵家屋敷の当主の書斎にて、
「ねぇ、あなた……カイン、あの子……」
と、リーファが心配そうな顔をして、
「あぁ、リーファも流石に気付いていたか……あの存在感、そしてあの膨大な魔力……」
あれはいったいなんなのだろうか?
あれは並の6歳の子供が出せるような気配ではない……
どう考えても、格上の存在。いや、それ以上の存在。
存在しているだけで、頭を垂れて、敬意を払いたくなるような存在。
近しい存在といえば神様だろうか……
「簡単に言えば、あの子は化け物ね…………でも、わたしはあの子がどんな子であってもあの子を守るわよ。わたしはあの子お母さんなのだからね、例え、あなたを殺したとしてもね」
リーファの紅の瞳に決意が固まってるのを感じて、
「リーファ、あまり俺を見縊っては困るぞ? 俺は例え国を相手したとしても、カインを守ってやる。それが父としての役目だ」
そうだ。カインは俺の大切な息子。
だからどんな存在だろうと俺はあの子を守ってみせる。
「ふふふ。よかったわ。あなたの結婚して。大切なカインを一緒に守りましょう」
「あぁ、そうだな」
と、カインが決意が決まった時、そのほかの場所で、2人も決意を固めるのであった。
⭐︎⭐︎
と、サーニャのおかげで吹っ切れてしまった俺はというと、神様からもらった恩恵をサーニャと一緒に楽しく検証していた。
やはり、せっかくもらったチート能力を最大限に駆使してみたいと思うのが普通だろう。
「サーニャ、どんなものがあったらいいと思う?」
俺はサーニャに便利なものを尋ねてみる。やはり自分だけで考えていても、楽しくないのでこういうのは共同作業という形で、チート開発をしていく。
「うーんと、そうですね。私だったらまずはこの世界のことが一瞬で分かるようなものがいいじゃないでしょうか? そしたら、知識の面で困るということはないでしょうから」
確かに、この世界の知識を全て掌握することが出来れば、便利なことこの上ない。
これさえあれば、勉強も正直しなくてもいいと思う。
ならば、サーニャのいう通りの能力を作ってみよう。
そして、サーニャの意見とさらに俺の考えを加えて、頭の中で確かなイメージを構築していく。
この世界の知識を漏れなく持ち合わせていて、さらに必要に応じてそれを伝えてくれる存在。いわば秘書のような存在。
そして、秘書である以上ある程度の人格を付与、それも秘書は女性が好ましく、グラフィックはやはり俺の理想系として———
って、こんな感じでいいかな?
【万物創生EX:
エクストラユニークスキル:智恵神EX】
と、やってみたけど、どうなんだろう?
「おーい! 聞こえるー?」
『はじめまして、マスター! わたしはマスターによって創られたエクストラユニークスキルの智恵神EXです。マスターの必要に応じて、あらゆる知識を授けます』
「うん! ありがとう、智恵神さん! って、智恵神さんってなんだか言いにくいなぁ……
他に名前はないのかな?」
『はい、名前はございません。と、マスター! わたしとの会話は念話というものなので、実際に会話しなくてもいいんですよ?』
(うーんと、こんな感じでいいのかな?)
なるほど念じることで思念を相手に飛ばすって感覚かな?
『はい、それで構いません……それと……マスター、できればわたしに名前を授けてくれませんでしょうか?』
(そうだね、せっかくだから名前をつけようか、うーんと、じゃあ、今日から君の名前は、チユキにするね、智恵が皆を幸せにするという意味を込めてのチユキ!)
『はい、今日からわたしはチユキ……ふふふ、じゃあこれからもよろしくお願いしますね』
(うん、よろしくね、チユキ)
と、おれがチユキと話していると、側から見たら、僕が黙っているようにしか見えないので、サーニャが心配した顔を覗かせて、
「あの、カイン様、大丈夫でしょうか?」
「あっ! サーニャ、ごめんね! あと、サーニャの言った通りのものが作れたよ!」
俺はサーニャにエクストラユニークスキル:智恵神の存在を話し、チユキについても話した。
「やはりカイン様のスキルは素晴らしいですね! じゃあ、早速そのスキルを試してみましょうか?」
早く試してみたいけど、どうすればいいんだろう?
「いいけど、どうやってやるの?」
「それはですね、私がこの世界に関してカイン様が知らないであろう問題を出すので、それについてスキルを使って答えてください」
そういうことか、クイズ形式で答えるって感じな。
「よし、じゃあやろうか!」
ということで、ここから圧倒的チートなクイズ大会が始まった。
最初は問題を全部聞いてから答えるという、正当なクイズだったのが、チユキが調子に乗り始めて、サーニャの思考を知るという暴挙に出て、問題文が出される前に回答。
そして、さすがのサーニャもそんなスキルには若干引いていたのだが、こんな時間も結構楽しかったので、すぐに過ぎさってしまって、
「あっ、もうこんな時間ですね! 今日はカイン様の6歳の誕生日パーティですから、私は準備のため戻りますね」
「うん、サーニャありがとう! また、一緒にスキルで遊ぼうね」
「はい、私も恥ずかしながらとても楽しかったので、またよろしくお願いしますね。私の方でも何か面白いものを考えておきますから。あ、あと、わたしはどんな事があろうと、カイン様の味方ですよ?」
最後はサーニャ優しく俺を包んでくれるような笑顔を見せて、
「うん、覚悟を決めて、家族にはしっかりと話そうと思うから。サーニャも応援してね」
サーニャにこのことを伝えて良かった気がする。
この力はサーニャのいう通りに大切なものを守るために、そして、大切な人たちを幸せにするために使おう、そう再び俺は決心するのであった。
「はい、もちろんですよ。それじゃ、失礼しますね」
と、サーニャは言って、部屋を出ていった。
俺は誕生日パーティーの時間が来るまでチユキと念話で会話して、どんなスキルがあるといいのかを話したそれらを作成していった。
と、時間は止まることなく過ぎていき、俺は覚悟を決めて、自分の誕生パーティが始まった。
⭐︎⭐︎
洗礼の儀を終えた日の夜、グロービル伯爵家ではカインの6歳の誕生日のため、家族内でパーティが催された。
「カイン、我が息子よ。6歳の誕生日、おめでとう! これでお前は念願の恩恵が貰えて、念願の《《魔法》》が使えるようになるな」
と、父さんの皮肉を皮切りに誕生日のパーティが始まる。
この誕生日パーティーにはグロビール伯爵家の家族全員が勢揃いしていて、
当主:バラン・グロビールに、
第一夫人:アイリス・グロビール
長男(15) ジーク・グロビール
次男(13) マーク・グロビール
次女(4) アイシャ・グロビール
第二夫人:リーファ・グロビール
長女(12) マイン・グロビール
三男(6) カイン・グロビール
俺の腹違いの兄である、ジーク兄さんとマーク兄さんも俺の誕生日を祝ってくれた、
「ジーク兄さん、マーク兄さん。僕の誕生日を祝ってくれてありがとう」
「あぁ、可愛い弟の誕生日を祝うのは兄として当然だからな」
と、金髪で美少年なジーク兄さんが優しげな笑みを浮かべてそんなことを言う。
「あぁ、カインもこれから頑張るんだぞ?」
と、銀髪の美少年、マーク兄さんも、優しげに俺の頭を撫でてくれる。
マーク兄さんとジーク兄さんは公爵家の次女アイリス・グロービル子供であって、俺とは腹違いの兄である。
そして、アイリスさんはなんと、僕の母、リーファ母様の大ファンであって、妻同士の諍いはなく、家族の仲は非常にいい。
ジーク兄さんが15歳で、マーク兄さんが13歳。そして、アイシャが今4歳。
そして、もう一人僕には姉がいて、
「カイン〜〜! わたしのカイン〜〜! お誕生日おめでとう! で、どんな恩恵をもらったのよ〜」
と、マイン姉さんが俺を強引に抱いてくる。
逃げようとするも、どうしてか捕まってしまう。恐ろしい女だ……
そんな様子を見た家族はほのぼのとしているものの、アイシャはというと、
「めーーー! ぁめーーー! にーにーはあいひゃのーーー!」
と、アイシャがポカポカとマイン姉さんを叩く、そうすると、マイン姉さんは見境がないので、アイシャはマイン姉さんの餌食になってしまう。
アイシャは楽しいのか、キャッキャ騒いでいて、幸せな空気が家族中に充満していた。
伯爵家の侍女や、執事たちとそんな様子を見て、思わず頬が緩んでしまっているようだった。
と、そんな時間を十分に堪能したのちに、父さんが真剣な表情を浮かべて、
「アイン、父さんたちにお前のステータスプレートを見せてくれないか?」
と、その瞬間。
アイシャ意外が唾をゴクリと呑んだ。
全員がこれからのことに真剣に向き合おうとしているように感じられた。
俺は自分のことを真剣に思ってくれる家族に嘘をついて、不義理になるようなことは絶対にしたくはないので、
「はい、それでは僕のステータスについて話しますね。かなり驚くと思います。ですので、これから話すことは他言無用でお願いします。じゃないと……」
俺もこの件に関しては真剣に取り組みたいので、真剣さを決しては忘れない。
「あぁ、わかっている。国王様だろうと神様だろうと、アインが言うなと言うのなら言わない……」
まぁ、神様はさすがにダメだろうけど、
と、父さんの真剣な表情を確認できたので、スタータスについて話すことにする。
「実は…………」
俺は家族全員にステータスプレートを何一つ隠さずに見せることにした。
アイシャはステータスプレートをみても何もわからないはずだが、すごいということだけはわかるようで手をパチパチと叩いていた。
家族のみんな、父さん、、母さん。アイリス母様、ジーク兄さん、マーク兄さん、マイン姉さんの全員が口をだらしなくパカーンと開けて、心ここにあらずと言った感じだった。
と、皆がようやく我に返ってきたときには全員が揃って、
「「「「なんじゃこりゃぁぁあ!」」」」
家族の叫び声が、王都のとある伯爵家の屋敷の中にこだました。
⭐︎⭐︎
叫んだことによって、ようやくみんなが落ち着いた時、父上が、
「俺とリーファはアインが教会から洗礼の間から出てきたときに、なんとなくこれに近いことを予想をしていた。出てきたときのアインから漏れ出る存在感が昨日とはとは比べものにならなかなっていたからな……」
ってことは、父上も母様もわかってて知らないふりをしてくれたのだろうか、僕のことを気遣って……
と、俺は俺を思ってくれる両親に再び感謝の念を抱くのであった。
「まぁ、ジークもマークもアイリスもそのことに気付いていたとは思うぞ? マインはどうだかな?」
と、父さんが付け加えていった。
「「「わかってましたよ」」」
と、3人が口を揃えて言った。
そんな中、マイン姉さんはというと、
「確かに、今日のカインは今までの100倍くらい可愛かったわ」
と、そんな変な基準で俺のことを分析する。
そんな分析で当てられた俺の身にもなってほしい。
正直、姉さんだから多少許せるのだが、怖いものは怖い。
でも、姉さんはいつも僕を可愛がってくれるから変化に気付けるわけで、ほかのみんなもそれは一緒でつくづく僕はいい家族を持ったんだなと感じるのであった。
「にしても、神人族かぁ。神であり、人であるってことは、俺たちはカインに対して頭を下げなくてはならないのか?」
神に対して、人族が敬意を払うのは当然。
だからこそ父さんがそういうのだが、
「いいよ、そんなことしなくても。僕は神である前にみんなの家族なんだから。僕はこの力は大切なものを守るため、大切な人を幸せにするために使う」
と、僕はサーニャのおかげで、考え出して結論をみんなの前で宣言した。
「そうか! まぁ、そうだからこそ、神様たちはお前にこんな恩恵を与えたんだろうな」
と、父さんが言う。
「はい、なのでこれからも慢心せずに努力していくつもりです」
と、宣言すると家族のみんなから笑顔で頑張りなさいと言われるのであった。
こうして、僕のステータスに関しては身内の中での極秘事項となり、6歳のパーティを終えた。
⭐︎⭐︎
パーティが終わって、次の日。
俺は部屋でチユキと楽しく念話をして過ごしていた。
と、そんなところに扉をノックする音が聞こえてきた。
「はい、どうぞ!」
「失礼します、カイン様。リーファ様がカイン様のことをお呼びしております。訓練用の服に着替えたのちに訓練上にくるようにとおっしゃっていました」
「うん、わかったよ。ありがとう」
俺はサーニャの伝言通り、動きやすい訓練着に服を変えて、訓練所へと向かう。
(ねぇ、チユキ。今、母さんに訓練着で訓練上に来るよう呼ばれたんだけど、どんなことだと思う?)
『そうですね……おそらく、魔法操作といったものではないでしょうか? 今もそうですが、膨大な魔力がマスターから放出されていますからね……このままでは周りに影響がかかってしまいますからね』
(確かに、昨日父さんも母さんも圧倒的な存在感がどうのこうの、みたいなこと言ってたっけ? それって、治そう思えば治せるんでしょ?)
『はい、マスターならば、もう、一瞬ですね! 望めばなんだって叶うんですからね! エクストラユニークスキルなんかは使わず、やってください。それでも成長がありえないほどなので、それだけでもチートだとおもんですけどね。まぁ、今回はお母様との交流を含めてってことで』
(うん、そうだね。何でもかんでも意向を振りかざしてたら傲慢の大罪でも取得しそうだからやめるね)
と、訓練場への途中で、チユキと母さんとの訓練についての方針を決定した。
「カイン、今日からあなたにはわたしから魔法を教えることにします。と、いっても魔力制御だけなんですけどね。他にもたくさん教えてカインにあげたいのだけれど、カインなら必要ないと思うからね、わからない事があればきいてくれればいいわ」
「はい、なんかごめんなさい。でも、わからない事があったら母様にも聞くことにしますね」
チユキがいるので、もはや教えを乞わずともなんでもできてしまう。
けれど、やっぱりチートで覚えるよりも、母さんと訓練して覚えて言った方がより楽しいに違いないはずなので、ここでは自重してなるべく母さんに教えてもらえるような形を作る。
まぁ、俺が自重しない時は、害意や敵意がが大切なものへと向いた時。
「まず、カインの周りからは膨大な魔力が漏れ出しているわ。他人の保有魔力を感じる事ができるのは、訓練を重ねてきた者たちだけだから、ある程度の魔力量なら、別に制御しなくてもいいのだけれど、カインの魔力量は規格外だわ。その魔力を撒き散らして過ごすと、環境に良くないから、それを防ぐためにもまずは制御を教えるね」
と、母様からの魔力制御の特訓が始まった。
「まず、魔力を感じるところから始めるわよ。魔力を体内にあるタンクのようなものよ。目を瞑って、それを感じてみて」
母様が言う通り、魔力を探してみると、自分の周りから膨大に吹き荒れている魔力を感じる事ができた。
(チユキ、これが魔力で間違いないかな? なんか感覚的にほかのものも混じってるような気がするんだよだ)
『はい、マスターの感じていることは間違っていません。まず、マスターからは魔力に合わせて、神力が混ざっています』
(なるほど、そう言うことだったのね)
と、目を瞑って魔力と神力を感じようとしていると、
なるほど母様たちが言っていたのはこの事なのか。
『魔力感知EXを取得しました』
『神力感知EXを取得しました』
と、初めて数分で魔力感知と神力感知がレベルと言う概念からはみ出てしまった。
「か、母様……感知することはできました……」
と、落ち込んで、母様にもステータスプレートを見せる。
成長チートはチユキの言った通り現在中なのだが、それにしてもヤバすぎる……
「ふふふ。なんだか、良いのか悪いのか複雑な気持ちね! でも、早く強くなることに越したことはないわ。じゃあ、次は操作をしてみましょうか。この調子だと操作も数分でできてしまうだろうけど」
「はい、頑張ります……」
と、魔力を感じて、それを操作しようとする、まずは体の中で魔力をグルグルと循環させるイメージで魔力を弄る。
そうして、だんだんと滑らかになってくると、体の局部に魔力を集約するイメージ。
そして、最後に大気中な魔力を自由自在に動かせるまでにいたった。
神力に関しても同様にして、
そんなこんなしているうちに
『魔力操作EXを取得しました。』
『神力操作EXを取得しました。』
と、大気中を竜のようにして遊んでいると、母様が
「す、すごいわ。凄すぎるわ!! さすがカインはわたしの子供ね!! 今の、アインが空気中の魔力を操作したのはマナゾーンというもので、昔いた大賢者さましかできなかった技術なのよ! 普通魔法というのは基本属性魔法は自分の体の付近から現れるのだけれど、マナゾーンを使うと、あらゆるところから基本属性魔法を自分のMPを使わずに発動できるようになるのよ」
確かに、感覚的にこの技術を使えば、そんなこともできるような気がする。
相手の死角から精密な魔法。
でも、それよりこの技術の凄いことはそんなことではない。
「母様、これの凄いことはこういうことだよ」
俺は母様から離れてから、母様に実演した。
「えっ!? なにこれ……わたしの魔力が動いてる……それに、カインにどんどん吸収されてる……なにも触っていないのに……こ、これは恐ろしいわ……これが真なるマナゾーンの力なのね……私はできるようになるかしら……」
そう、この魔力操作EXの怖いところは相手の魔力まで支配できるということであった。
これを使うと相手の体を魔法を相手の魔力で爆発させることも可能になる。
まぁ、そんなことはしないけれど、大切な人を守るためならそうすることも厭わない。
そして、そうして
『魔力制御EXを取得。さらに、魔力制御EXと魔力感知EXと魔力操作EXを魔力支配EXに統合します。統合完了。魔力支配EXを取得しました』
『神力制御EXを取得。さらに、神力制御EXと神力感知EXと神力操作EXを神力支配EXに統合します。統合完了。神力支配EXを取得しました』
と、脳内に無機的なアナウンスが流れ、こうして母様との関連が呆気なくも無事に終わった。
魔力操作が簡単に終わったので全基本属性魔法を母様が教えてくれた。
ステータスはというと、
————————————————————
名前:カイン・グロービル
年齢 6歳
種族:神人族
lv.1/∞
【HP】1000000/1000000
【MP】1000000/1000000
【筋力】1000000
【物攻】1000000
【物防】1000000
【魔攻】1000000
【魔防】1000000
【敏捷】1000000
【知力】1000000
————————————————————
恩恵:【神の全恩恵】
加護:全12神の祝福EX
————————————————————
【エクストラユニークスキル】
神の宝物庫EX
万物創生EX
神の権意EX
知恵神EX
取得経験値増大EX
取得熟練度増大EX
必要経験値減少EX
【スキル】
魔力支配EX
神力支配EX
全基本属性魔法EX(火、水、土、風、雷、闇、光)
剣術lv.3
————————————————————
称号
全12神に祝福されし者
マリファーナ王国伯爵家三男
マリファーナ王国最強
————————————————————
その後、1人魔法の訓練をして1日が終わった。
結果はこの有様だった。
ステータスやスキルに関してはまだまだ究極な高みには至っていない。
まぁ、実力で言えば神であろうと負けることはないのだろうけど……
⭐︎⭐︎
そして、次の日。
「おう、カイン! 今日からカインの剣術の稽古は俺が直々に行っていくがいいか?」
「はい、よろしくお願いします!」
と、父上が直々に剣術を教えてくれることになった。
と、サーニャに訓練用の服を出してもらい、急いで訓練場へと向かう。
「父上、お待たせしました」
俺の剣術スキルはlv.3あって、それはおそらく1年間騎士団と一緒に訓練した産物だろう。
「おう、カイン。じゃあ、まずは素振りから始めることにしようか」
と、父そんの宣言によって、剣術の稽古が始まった。
だが、ここでも神の全恩恵及び、いろいろなチートが偉いが働きをしてしまうので、
フッ。ビュッ。スッ。シッ。シーン……
と、木剣を10回ほど降ったあたりで、
『剣術EXを取得しました。これを進化させて、剣王EX lv.1話取得しました』
と、母さんに見せたように。同じように父さんにステータスを見せて、
「はっはっはっは。まぁ、強いにこしたことはない。それにしても、剣王の次はなんなんだろうな。もうちょっと、素振りして確かめてくれないか? その結果だけでもかなり価値があるからな」
父さんにそうやって言われて、素振りを続けていく。
回数を増やすごとに、剣筋は芸術品のごとく美化されていき、極まっていくごとに剣圧も徐々に大きくなっていき、さらにある一点を過ぎると全く出ず、無音の極意に至った。
そして10回繰り返したころ、
『剣王EXを取得しました。これを進化させた、剣鬼EX lv.1を取得しました』
そして、その後も続けて
『剣鬼EXを取得しました。これを進化させた、剣聖EX lv.1を取得しました』
そして、その後も父上に言われて続けると今度は100回くらい終わった時に、
『剣聖EXを取得しました。これを進化させた、剣神EX lv1を取得しました』
そして、200回終えた後に、
『剣神EXを取得しました。武神ガルスよりも剣術に秀でたため、剣神として君臨しました』
と、脳内にアナウンスが広がり、
そのことを言おうと父さんの方を見ると、
何故だか父上はハラハラと涙を流していた。
剣神である僕の剣術に剣の最終極点を見たのか、なんだかすごく申し訳ない気持ちになったが。
父さんは俺はまだまだだなといって、いつのまにか父さんの訓練が始まっていた。
⭐︎⭐︎⭐︎
と、神界にいるガルスはというと、
「ひっくしゅんっっ! 誰か儂の噂でもしとるんかのぉ!」
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父さんの訓練が終わり、一緒に風呂場へと向かった。
「さすがはカインといったところか、1日にして剣神として君臨してしまうとはな……もはやこの世界で規格外なだけではなく、神様の中でも規格外なのではないか? はっはっは。」
ははははは。
そんな父さんの言葉に僕は乾いた笑いしか出てこない。
(ねぇ。チユキ。どうなの? 僕は神の中でどういう存在なの?)
『そのことに関しては禁止事項に抵触しているため、お話しする事ができません。お許しください。まぁ、簡単に言えることだけ言いますと、マスターは神の中でも規格外の存在です』
(ぐはっ!! なんてことだ……)
『でも、守りたいものを守るために貪欲に強くなるのはいいことだと思います。力がなくて後悔するよりもずっといいと思いますよ』
(まぁ、そうだよね……)
と、体と髪を洗いながら、チユキと話していると父さんが
「あっ! そういえば言うのを忘れていたが、来週、王城で6歳のお披露目会があるぞ!」
「お披露目会……ですか?」
父さんが言うことには、貴族たちが集まって自分の子供達を自慢していくらしい。
その時に縁を結ぶためにも婚約をする人もいるらしい。
初めての社交界みたいなものらしい。
そんな、話をして俺はお風呂を出て行った。
と、夜になって後は寝るだけになった時。
『マスター、まだ使ったことのないスキルもありますし、使用してみてはいかがですか、
【神の意向】は使うのは怖いと思いますが、【神の宝物庫】なら危険性はないと思われます。どういたしましょうか?』
(うん。わかった。じゃあ、せっかくだから使ってみようか?)
【神の宝物庫EX】と念じると。
神界に行ったときのような浮遊感が体を襲った。
と、すると教会の扉の数倍はどの大きな真っ白で所々金色が混じった扉が立ちはだかっていた。
と、その扉には鍵あって、俺が目の前に立つと、俺の体の中から鍵がふわっと出てきて、かちゃりと鍵が空いたような音がした。
と、俺がそのまま入っていくと、扉は勝手に閉めった。
扉はオートロック式のようで他に誰も入ってくる事ができないようだ。
(チユキ、この宝物庫って僕以外に誰が入る事ができるの?)
『この宝物庫はマスターしか入る事ができません。他にはマスターが許可した人にしか入る事ができません。許可なく侵入しようとしたものは神であろうと関係なく、白雷に打たれて消滅します』
(なんだか、凄い物騒だね。でも、その仕組みはいいね! 神であろうと消滅っていうのは)
『まぁ、この宝物庫もマスターにとっては特に価値は無いんではないでしょうか? 参考くらいにしかならないと思いますし。マスターには万物創生EXがありますから、なんだって創る事ができます。宝物庫のメリットとしましてはマスターの創る作業が減るのと、ある程度のサンプルになるくらいだと思います」
(なるほどね、ちなみに宝物庫の中でチユキが僕にお勧めするものは何かある?)
『そうですね……マスターにおすすめするのは、眼ですかね?』
(えっ!? めって!? なんのめ?)
『それは顔のパーツの眼に決まってるじゃないですか!』
(なんで眼が必要なの? 眼を手に入れることでどんな事が可能になるの?)
『まず、手に入れる眼は神眼ですね。あ、あそこにある金色のやつがそうですね』
(なんだか、思ってた生々しいのと違って宝石のようなガラス細工みたいだね)
『まぁ、言われてみればそうですね。まず、神眼を持つメリットに関しては、とりあえずできる事が増える事でしょうか。たとえば、相手のステータスを隠蔽を度外視で確認する事ができたり、相手の真意を読み取る事ができたら、未来予知が可能であったり、眼の力で相手を支配する事ができたりとかですかね』
(でも、そうだとしたら、僕の眼でもできるんじゃない? 別に自分じゃない眼にしなくても……)
『確かに、そうかもしれませんが、眼に関してだけは自分じゃない神眼を自分に移植する方がかなりスペックが高くなり、加えて見た目もかなり煌びやかになります』
(でも、僕の眼は青色だけど、結構綺麗だと思うよ。この金色の神眼をつけたら、目が金色になるんでしょ?)
『まぁ、それは付けてみてからのお楽しみって事でいいんじゃないですか?』
(まぁ、そこまでいうなら付けてみたいと思うけど、で、これどうやってつけるの?)
『マスターがこの神眼に変えたいと念じれば、変えることができますよ』
金の神眼に目を変更っと。
(よし、出来たよ? どうかな?って……まだ変わってないけど?)
『はい、定着するには時間が掛かると思うので今日はこの辺にしてはどうですか?』
(うん。じゃあ、そうするね! じゃあ、元に戻ろうか)
こうして、僕はまた浮遊感に身を包まれ、元の場所へと戻ってきた。
神界に言っているとき、自分の体はそのままで、精神体だけが神界へと言っているらしい。
と、僕は父上との訓練のせいか、眠くなってその日はぐっすりと眠った。
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ぐっすり眠れたので、僕はうーんと固まった体を伸ばす。
ちょうどその時、サーニャがコンコンと扉を叩いて、中は入ってきた。
と、サーニャは……
「か、カイン様ぁ! 髪と眼の色が!!」
と、サーニャが慌てた様子で、俺に手鏡を見せて、自分で姿を見るように促してきた。
自分でもその姿を見て、顎が外れんばかりに驚きを示すのであった。
それに、髪と眼だけではない、面影はまだあるものの、何故違うイケメンというかとても美形になっていた。
眼の色は例の如く金色で、眼の目の中に辛うじて気づくくらい万華鏡や、魔法陣のような白色のライン。
そして髪の毛の色は銀髪から、色素が抜かれ、純白になっていた。
サーニャも僕の姿が変わって、驚きを示していながらも、どこか頬を染めていて、もじもじしているのがうかがえた。
『神眼EXを取得しました。神眼EXが定着しました。定着率1000%』
きっと、自分自身の目の定着率は100%なのだろうけど、他のものだと上がるのだろう。
と、神眼の能力を確認するためにも、サーニャに神眼を使ってみる。
サーニャのステータスを見ようとすると、それに応じてステータスが表示された。
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名前:サーニャ
年齢:17歳
種族:狼人族
lv.60/100
【HP】40000
【MP】20000
【筋力】30000
【物攻】30000
【物防】10000
【魔攻】10000
【魔防】10000
【敏捷】20000
【知力】30000
(【幸運】200
【魅力】1000)
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恩恵:【忍び】
加護:獣神の加護lv.4 死神の加護lv.4
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【スキル】
身体強化lv.6
隠密lv.6
気配遮断lv.6
気配感知lv.5
基本属性魔法 闇 lv4
短剣術lv.6
二刀流lv.5
家事 lv.6
暗殺 lv.5
俊足 lv.4
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称号
闇の暗殺者
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鑑定してみたところ、驚くべきことがわかった。
まずサーニャは中々の手練れであること、17歳にしてこれだけのステータスというのは中々にいないであろうということ。
また、裏ステ渡すというものがあって、幸運や魅力についてがあった。
幸運と魅力は生まれ持ったもので中々、上昇しないものであること。
それと幸運の平均値が100で、魅力の平均値が500ということから、サーニャは幸運と魅力に関してもかなりの数値を誇っている。
まぁ、魅力に関しては神眼で確認しなくても、魅力的であることはわかる。
と、こうして俺の神眼による実験が終わった。
サーニャにも眼のことについてはしっかりと話し、家族に会うたび容姿が変わったことについての説明をした。
アイシャは俺の眼をみて、
「きらきらぁ〜〜! あいひゃもそれあいい〜〜!」
きゃっきゃっしてた。アイシャの眼は神眼にしなくても綺麗だから、よしよしと撫でてアイシャの眼は誰よりも綺麗だよって言ってあげると、えへへとニマニマして満足そうにしてた。
目が馴染むようにと、父上の訓練にと模擬戦を行ったり、母様に魔法を教えてあげたり、魔法の知識についてチユキに教えてもらったりして、日々を費やしていった。
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名前:カイン・グロービル
年齢 6歳
種族:神人族
lv.1/∞
【HP】10000000/10000000
【MP】10000000/10000000
【筋力】10000000
【物攻】10000000
【物防】10000000
【魔攻】10000000
【魔防】10000000
【敏捷】10000000
【知力】10000000
【幸運】10000000
【魅力】10000000
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恩恵:【神の全恩恵】
加護:全12神の祝福EX
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【エクストラユニークスキル】
神の宝物庫EX
万物創生EX
神の権意EX
知恵神EX
神眼EX
取得経験値増大EX
取得熟練度増大EX
必要経験値減少EX
【スキル】
魔力支配EX
神力支配EX
身体強化EX→神体強化EX
気配感知EX→生命感知EX
気配遮断EX→完全遮断EX
全基本属性魔法EX(火、水、土、風、雷、闇、光)
全上級属性魔法EX(火炎、氷結、岩石、暴嵐、黒雷、暗黒、極光)
時空魔法EX
無限収納EX
回復魔法EX
聖属性魔法EX
剣神EX
二刀流EX
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称号
全12神に祝福されし者
マリファーナ王国伯爵家三男
マリファーナ王国最強
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身体強化は父さんと模擬戦をしている間に勝手に身について、気がついたときには神体強化と呼ばれるようなものになっていった。
気配感知や気配遮断はマイン姉さんから逃げたり、アイシャとかくれんぼしたりしたときに勝手に身についた。
と、ステータス値もどんどんインフレしているみたいで、どうやらまだまだ留まらないらしい。
もう、ステータス値に関しては諦めがついてきている。
こうして、日々を探しているうちに貴族たちの自慢大会こと、お披露目会へと向かうこととなった。
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