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魔法の社会の街

 


 この山は外から見ると、ハイキングには少し苦労する程度の大きさだが、それは結界によって隠されているに過ぎない。


 実際は標高千キロ級で、敷地としては世界で一番小さい国ぐらいの面積があるらしい。


 様々な問題は、結界や魔法などでなんとかしているらしく、裏でだが国の許可もちゃんと取っているらしい。


 入り口から山を登り、結界を抜けて一番最初に見えるのは魔法学院であり、それを盾にするように後ろには魔法社会の支配する土地が広がるようだ。


 学院の人間が街と呼ぶのは、大体が学院から一番近くにあるところだ。


 距離にして百キロは離れているが、これは学院の周囲が余りにも危険だからだ。


 利便が悪すぎるので学院には瞬間的に移動できる魔法陣が敷いてある。


 何かの動物にでも変身して、ゆっくりと街に行きたいと主張したのだが、買い物や街で遊ぶ時間が減るとのことで問答無用で却下される。



 ☆



 ルシルの家から出かけたのは午前十時だったが、今は正午になっている。


 その間、何故かぼくはルシルの着せ替え人形になり百着以上の試着をさせられていた。


 街について直ぐに、ルシルのお気に入りの洋服店に連れられて、好き放題にされていたのだ。


 フルーツも、ぼくのファッションショーにノリノリである。


「フルーツの買い物に来たんじゃないのか?」


「いいじゃないですか、たまには私に付き合ってくださいよ!」


 そんな風に押し切られたが、三軒目でようやく飽きたのか今度はフルーツの番になったらしい。


 余談だが意外とぼくは、こういう女性の趣味嗜好が平気だったりする。


 好き放題に着せ替え人形にされるのも、長い買い物に付き合わされるのも慣れている。


 今ではルシルだが、昔からこういうものが好きな人間に引っ張られるのだ。


 ぼく自身は何の興味もないが、嫌がることはなくなるぐらいには順応した。


 だが、疲れたことに変わりはない。


「ちょっと休憩してくる」


「わかりました。では一時間後に合流しましょう。連絡しますからちゃんと電話に出てくださいね?」


 ルシルに一言伝えると、現金をもらいぼくは洋服店から出て行った。



 ☆



 魔法使いの街だと言うから、興味を引かれていたのだが、どう見ても普通の街だ。


 いや、大きくて都会的ですらある。首都圏には及ばないだろうが、主要都市ぐらいの文化を感じる。


「学院が近いからか?」


 よく分からないし、真剣に考察するには情報が必要だと思うから諦めた。


 適当に歩いていると、近くにマジックゲームセンターと書かれている建物が発見された。


「よし、軍資金はあるな。全部使おう」


 こういうところが、大金を持たせてもらえない原因なのだろうと感じながらも、ぼくの決意は一片たりとも変わらないのであった。



 ☆



 中に入ると、日本のゲームセンターに近いものを感じた。


 筐体ゲーム、メダルゲーム、UFOキャッチャー、射的などもある。


 ぼくは早速札を両替すると、硬貨を持ってUFOキャッチャーに向かう。


 よくわからない人形を目的にすることにしてお金を入れる。


 だが、点滅するスイッチを押しても全く動きがない。


「あれ?」


 幸いなことに返金は出来るようだが、店員を呼んでみる。


 店員が操作すると問題なく動くのだが、ぼくが操作すると全く動かない。


 仕方がないので次のゲームをすることにした。


 だが、どのゲームも全く同じだった。


 終いには射的に使う模造の銃から弾が出ないので、いい加減にキレた。


「この店はどうなってるんだ!」


「す、すいません!ごめんなさい!」


 こうしてぼくの楽しみは、一円も使うことが出来ずに終わった。



 ☆



「全く……」


 町に来て初めてのゲームセンターは、不満だけが残る結果に終わった。


「貴様は無限ではないか? こんなところで何をしている?」


 店から出て直ぐに、誰かに声をかけられる。


「誰だお前らは? 気安く声をかけるな」


「……おい、まさか俺たちのことがわからないというのではあるまいな?」


 ぼくのことを知っている風だったので、よくよく顔を見ると主席くんたちだった。


 私服だったからわからなかった。


「まさかとは思うが、私服だったからわからなかったとでも言うのではないだろうな? 最近は毎日顔を合わせているだろう?」


「そんなことより、私服が似合っているなあ」


「誤魔化すのが下手すぎるぞ、貴様本気か!」


「まあまあ」


 激昂する主席くんをギースが宥める。仕方がないだろう、別にワザとではない。


「それで? なにをしている?」


「ああ、お客様は神様だってゲームセンターの店員に教え込んでいたんだ」


 何しろ、ぼくに遊ばせる気が全くなかったからな。


「? ああ、成程、そうなんですね」


 グリムが何かを理解した顔をし、ギースは苦笑いしている。


「えっとね、マジックゲームセンターは普通のゲームセンターとは違ってプレイヤーの魔力を使うんだよ」


「は?」


「プレイヤーの魔力の強弱で、アームの強さだったりキャラクターのスピードとかが変わったりするんだ。つまり、貴様の場合は……」


 聞きたくない。


「全てのゲームでまともに遊べないと言うことだ!」


 魔法社会は、本当に魔法を使えない人間に冷たいのであった。



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