思わぬ再会
なんかよくわからないほどの、二人の激突。
それは訓練室を壊してしまうほどだと思われたが、全然そんなことはなかった。
中の様子を見ることが出来るモニターは、真っ黒になってしまった。
死亡した最後の二人は、光に包まれこの部屋に送られてきたが、それでも訓練室はしっかりと原型を残している。
その証拠にぼくがいるこの部屋には、まったく影響がなかったのだ。
もし訓練室が壊されていたのなら、その影響で同じ敷地内にあるこの部屋にだって、大きな物音ぐらいするだろうが、まったくもって静かなものだからだ。
「所詮は、一年生の強さってことだろうな……」
ぼくは少しだけ失望しながら、疲れ果てた様子の二人に近づいていく。
「訓練が終われば、元の状態に戻るんじゃなかったのか?」
二人は荒い息をついて、座り込んでしまっている。
「身体的にも、精神的にも完全に元に戻っているよ。でも、訓練していた時の記憶はちゃんと残っているからね。痛い思いをした記憶、疲れた記憶などが無傷の二人を苛んでいるのさ。でも仕方がないだろう? 様々な記憶を残しておかなければ、訓練をした意味なんてないからね」
「でもさ、部屋の外に出たら全てが元に戻るのなら何ていうの? 経験値はたまらないんじゃないの? ちゃんとレベルが上がるのか?」
ギースは苦笑する。
「空想と現実を一緒にするなよ。どれだけ頑張っても現実の人間にレベルなんてものはないよ。経験値は、まあ訓練や修行をすれば手に入れたことになる、のかな?」
まあその通りだ。でも本当にあったらわかりやすくていいのに。
そういう魔法でも作ったらどうだろうか?
あるいは、自分で名乗ればいい。
ぼくはレベル五十だ。
……誰も理解してくれないだろうな。意味が分からないと馬鹿にされそうだ。
「この二人は保健室に連れて行く。他にも精神の負担が強い生徒はついてこい」
最後にまとめるように、教師が生徒たちに声をかけてくる。
「元気な奴らは解散だ。ちなみに今回の訓練で成績の優劣はつけない。あくまでも試験的な授業だったと思えよ」
言いたいことだけを言って、フルーツたちを連れて出て行った。
ギースたちは元気だったが、二人が心配だから付き添うらしい。
ぼくも誘われたが、簡単に断っておいた。
表立った怪我もないのに何が心配だと言うのか。
とっとと熟睡して元気になってこい。
☆
この訓練室のある校舎には入ったことがなかったので、少しだけ探索することにしたのだが、簡単に迷った。
これはずっと思っていたのだが、この学院の校舎は外観から推測する広さと、実際の広さが違いすぎると思う。
外から見ると五階建て程度だったのに、既に登り階段を二十回は登っている。
「本当に、魔法ってのは迷惑なものだ」
だが、本当に色々な種類の部屋がある。
流石に中の様子がわからないが、外に出ている立て札にちゃんと何の部屋なのか書かれているから、それがわかるのだ。
多種多様な用途の部屋に溢れているが、どうやらこの辺りは教師の私室が多いようだ。
成程、ルシルが弟子をとっていない教師は校舎に住んでいる場合が多いと言っていたが、それはここだったのか。
どうやら、ワンフロアを一人の教師が独占しているらしく、とんでもなく豪勢だと思う。
まあ魔法でいくらでも建物の中身を改造できる以上は、大したお金もかからないのだろう。
いや、ルシルの家を作ってもらったときには大分値引いてもらったとはいえ、しっかりと代金を払っていたらしいからよくわからないな。
家賃ぐらいはとられているのかな?
そんな風に適当なことを考えている内に、ぼくの周囲に会った部屋の扉が開く。誰かが廊下に出てきたらしい。
生徒らしき誰からしく、こんな辺鄙なところに用事があるんだな、と思っているとその人物がぼくを見て大声を上げた。
「あああああああああ!」
突然上げた絶叫があまりにも五月蠅く、踵を返してどこかに行こうとすると肩を掴まれた。
「ついてこい!」
引っ張られた状態で下り階段を三つほど降りると、呼吸を落ち着かせたその男はぼくに怒り出す。
「なんでここにいるんだよ! 無限」
懐かしい顔だ。
だが、そんなことはこちらが聞きたい。
「お前こそ、なんでここにいるんだよ。アメリカにある名門の学校に行ったんじゃなかったのか? 鬼一」
ぼくが、赤子の時から世話になった親戚の家。
まるで家族のように思いながら、一方的にぼくに接してきた三兄弟の末弟。
こいつの名前は神崎鬼一。
昔からずっと、自由に動き回るぼくの後ろをついてきていた男だ。




