表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/534

一年生の頂上戦2

 


 ぼくたちが先の展開に期待していると、光に包まれた人間が三人ほど、この教室に現れる。


「なにがあったんだ?」


「熱い、熱いよお!」


「信じらんねえ、あいつらなんだよ!」


 発言を加味すると、どう考えても二人の戦いに巻き込まれて死んだようだ。


 情けないにも程があるので、ぼくとギースはそれを見なかったことにする。


「しかし、これじゃあフルーツが勝つな」


「確かにあのナイフ、水の涙は一定の火を全て消滅させる能力を秘めている。だが、確か回数制限があるはずだよ」


「何で知っているんだ? あれはフルーツが創ったものだろう?」


「どうやらフルーツの創造魔法はまだまだ未熟らしい。現実に存在するものしか創れないようだね。水の涙は武器図鑑に載っているほどの、メジャーな武器だ。凄いものだけどもちろん一点物ですらない」


 図鑑に載っている武器を作っているのなら、確かにまだ大したことがないんだろうな。


 あいつは、この世の全てのものを作る権利があると言ったが、頭の中にあるまだこの世に生み出されていない最強の武器が創れるのなら、それが最強に決まっているからだ。


「それと、あいつがホムンクルスだから白い魔力を出しても光属性じゃないってのは?」


「普通の人間でも、この世に存在しない属性を持っていると必ず白い魔力になるし、複数の属性を持っていたりすると組み合わせ次第で、白い魔力になることがあるんだよ。ホムンクルスというか、誰かが創った命だと創造主の都合で好きな属性にされてしまう」


 ぼくは何色か、気になる。


「勿論力量にもよるんだけど、創造主が化け物並みの実力を持っていれば、属性と魔力の色を変えることも出来るんだ」


 つまり、赤色の魔力なのに水属性だったり。


 光属性なのに、黒い魔力だったり。


「よほど凄い人ならね。サラサ・リベリオンか? いや、あの人は外部に自分の作品を出すことを極端に嫌うって本で読んだし……。リオ・ベンデュラムか? いや、あの人は自分の作品を完全な兵器として使うって聞いたし……」


 誰かの名前をぶつぶつと呟きながら、ギースは悩む。


 しばらくほっておこう。今はこっちが優先だ。



 ☆



「ギブアップしますか?」


「ふん、貴様はまだ炎というものの深淵を知らない」


 強気な態度を崩さない主席くんだが、とても強がりには見えなかった。


「ただ一つの魔法だとしても、術者によってはここまでのものになるのだよ。ゴッドフレイム」


 主席くんは、小さい炎を手のひらに作りだす。


「凍てつく炎よ、白き世界を作り出せ!」


 その炎をフルーツに撃ちだす。


 始めは赤かった炎なのに、次の瞬間には青い炎になった。


 その炎の軌道上にある風景は白銀に染まっていく、あの炎は炎でありながら氷だった。


 フルーツは焦ったようにナイフを消すと、今度は火を纏った杖を出し、その炎にぶつけるが一発で杖は一発で粉々になった。


「出鱈目ですね。それは炎なんですか? 氷なんですか?」


「炎であり、氷でもある。解釈は貴様の好きにしろ。そして、実際に当たったときにその対象は燃えるのか、それとも凍ってしまうかも貴様の体で確かめるんだな!」


 主席くんはもう一度氷の炎を放つ、フルーツももう一度杖を作り相殺するが……。


「甘いにもほどがある! 空に舞い、そして無数に落ちろ!」


 次の攻撃は、普通の炎を空に放った。


 それは遙か高くで無数の炎に分散し、隕石のように地面に落ちた。


 分散したようで威力は落ちている。それをフルーツは盾を作り防いだ。


 だが、受けてばかりでは勝ち目がないと、言う当たり前の現実に気づいたようだ。


 少々短めの槍を作ると、それを主席くんに投げる。


 当然のこと、主席くんは避けようとする。


 その槍のスピードは、決して遅くはないが早くもない。


 やはり腕力が足りないのだろう、主席くんは余裕の表情だが……。


「なに!」


 その槍は主席くんの至近距離で爆発した。あれでは避けられないだろう、地面すら抉れているようだ。


「爆発というのが、良くなかったようですね」


 止めを刺そうと、主席くんに近づいたフルーツがぼやく。


 何故ならかなりの爆発だったのに、主席くんの体には、大した怪我がないからだ。


「そういうことだ、炎で相殺できる」


「ですが、この距離です!」


 あと数歩で武器が届く距離、流石にフルーツに有利だと思ったのだが。


 フルーツの周囲には、様々な色の炎が浮かんでいる。


 相殺するには、全ての炎がどんな属性なのかを見極める必要がある。


「答え合わせだ」


 主席くんが手を叩くと、全ての炎がフルーツに襲い掛かる。


 フルーツは、懸命に炎を相殺できる武器を作り出す。


 黒い斧が白い炎を消す、水色の炎を茶色い指輪が消した。


 それでも間に合わずに、何発もの炎がフルーツの体に着弾する。


 まだ致命傷はないようだが、そのダメージは着実に積み重なっていく。


 そのうちにキリがないと判断したのか、フルーツは何メートルもありそうな長剣で周囲を吹き飛ばす。


 かき消したわけではないので、フルーツもダメージを負うが、長剣が消滅するとともにフルーツの姿も消えた。


 その姿は安全のために少しだけ距離を置いた主席くんの後ろ、そして……。


「油断、大敵ですよ」


 そのフルーツの敵の腹部には、呪われそうなほど、禍々しいナイフが刺さっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ