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最終話 俺達は生きている

こんな昔話を知っているだろうか・・・

とある山に仲のいい赤鬼と青鬼が住んでいたそうだ。

鬼として人里からは恐れられ、山奥にひっそりと住まう二人の鬼の話だ。


二人は大の人間好きだった。

人間をどんなに助けようが人間達はそれに気付いてくれない。

角があるから、肌の色が違うから。人は自分と違う物を忌み嫌う。

だが、二人の鬼はそれでも人間を愛し続けた。


そんなある日。青鬼が突然人里に下りようと言い出した。

俺達に害はない。そのことを人間達に話せばわかってくれるはず。

だが、そんなことは今までも散々やってきた。

今更やったところで答えは目に見えている。

渋る赤鬼の手を引き青鬼は人里へと向かったのだ。


あと少しで人里だというところで、結局渋る赤鬼をその場に置き青鬼は一人で行くから後で来い。

青鬼はそういって赤鬼を一人残し人里へと降りていった。


未だ帰ってこない青鬼が赤鬼は心配になり物陰に隠れながら人里の方を覗いた。

するとどうだろう。青鬼が人里を襲っていたのだ。

人々は混乱し逃げ惑う。

そんな人間達を何度も何度も追いかけ、建物を破壊し続けていた。

驚いた赤鬼は急ぎ人里へ降り、青鬼を追い払った。

あんなに大好きな人間を襲う青鬼が許せなかった。

馬乗りになり何度も何度も殴り続けた。

仕舞いには青鬼の頭に生える立派な一本角までもぎ取り、青鬼は逃げるかのように山へと逃げ帰った。


青鬼を追い払った赤鬼は人々に歓迎され、人里で暮らすようになった。

赤鬼は大好きな人間達とようやく一緒になれ幸せになったとさ・・・・めでたしめでたし






何故、私がこんな昔話を冒頭に述べたのかは最後に述べることにする。



再び繰り返されてしまったリアルウォー。

再結成された同志。

一つの国を混乱させた同士の首謀者、岸辺港。別名、五十嵐。

一つの国をこの破壊者から救った対テロ組織長官、井上康太。

二人とも私のかけがえのない親友である。

私は記者として、二人の親友としてこの事件の概要を私の知っている全てを書き記していこうと思う。




「やめろ、撃つな」


ネットに流出した映像はごらんになっただろうか・・・

懐に手を入れた五十嵐に対し、井上の部下が発砲した映像を

誰もが見ている中、倒れる五十嵐を目の前にして井上はその場で膝から崩れ落ち大声で泣き崩れる井上康太の映像は大きな反響を呼んだ。

自らの仕事で友人を追い詰め自らの手で過てしまった。

しかし、やってしまったことに対する罪悪感。後悔全ての不の感情をあらわした『いい』映像だった。


この後の話は早かった。

同志と組んでいる。クーデターを起こそうとしているとレッテルを貼られた井上康太だったが

友人をも仕事だといって殺してしまう人間。

だが、殺めてしまった親友を前に泣き崩れる人間味のある人物。

彼の発言力は急速に回復していった。

そして、井上康太はある調査結果を世間に公開した。


『リアルウォーは存在していた』


井上康太のその言葉は、誰もが覚悟していたことだが聞きたくなかった言葉だった。

同志達が体内無線の中枢を破壊した時、至る所でプレイヤーと名乗る人たちがリアルウォーが存在すると騒ぎたて、誰もがその言葉を信じていた。

だが、信じたくなかった。受け入れたくなかったのだ。

国民は、いや、私達は同志の首謀者五十嵐が死んだことにより、この事件はそれで終わらせようとしていた。

全てを知る必要がない。むしろ、知りたくなかった。


だが、井上康太はそれを許さなかったのだ。

真実を受け入れようとしない国民に井上康太は真実を押し付けたのだ。

政府もリアルウォーが存在していたことを認め、リアルウォーに関わった人物は井上康太の手によって確保された。




こうして、井上康太は滅びたこの国の実権を手に入れ、新たな政府を作り上げたのだ。

新しいとは言っても、地盤は前の政府とほぼ変わらずただ単に顔ぶれを一新しただけでそれ以降、井上康太は表舞台に現れることはなくなった。




さて、事件の概要はこれで全て。

ここからは私の私見を含めたことを述べて行こうと思う。

この物語の中盤、井上康太はクーデター、反乱者の疑いがかけられ政府から追われる身となっていた。

それは世間にも公開され、この国全体から敵視される存在となっていたはずだ。

今になって思えば、リアルウォーの存在を公表されることを恐れた政府が井上康太を捕らえるための口実だと納得できる。

しかし、それは今だからこそ言える事柄であって、クーデターの嫌疑を掛けられた井上康太が何故、国民の信頼を得るほどまでに伸びたのかが疑問に思う。

前述でも述べたとおり、人間味のある井上康太に国民の信頼を得た。


実際は違う。


ハッキリ言おう。物語はそんなに単純に転がるわけがないのだ。

誰かがそうなるように仕向けない限り、物語はうまく進まないのだ。

そう、冒頭で述べた青鬼のように


ここからは本当に証拠もない、ただの私見である。

井上康太の発言力が回復した理由。

それは紛れもない。五十嵐を自らの手で裁いたからだ。

井上康太は同志と手を組み、反乱を企てた。

その噂を一蹴するために井上康太は五十嵐を手に掛けたのだ。

いや、表現方法が違う。

井上康太が五十嵐を手に掛けるよう五十嵐が仕向けたのだ。


赤鬼を人里で暮らせるようわざと人里を襲った青鬼のようにだ。


そう、その昔話は根気よく待つことで赤鬼のように人里で暮らせるようになる。

青鬼のように堪え切れず人里を襲うような奴には絶対になるなという諦めない事の重要さを謳った物語だ。

だが、青鬼の一件がなければ赤鬼は永遠に人里で暮らせることはなかっただろう。

人里を襲う鬼から人里を守った鬼という名目がなければ鬼は人里で暮らせることはなかっただろう。

同志からこの国を守った人間。その名目がなければ井上康太も世間に受け入れられることはなかっただろう。


その為に、青鬼と五十嵐はその大罪を背負ったのだ。赤鬼と井上康太を救いたいが為に彼等は人里を襲った。

その結果、青鬼は角を失い、五十嵐は命を落とした。


こうして人里で暮らせるようになった彼等は本当に幸せだったのだろうか・・・めでたしめでたしで終わらせることは出来たのだろうか・・・

唯一の同胞である相手を殺め、彼等は本当に幸せだったのだろうか・・・


答えはわからない。

だが、唯一いえることはめでたしめでたしで終わることはないということだ。

なぜなら、彼等の物語はまだ続くのだから・・・人里で暮らせるようになったから終わり、ではない。リアルウォーを壊滅させることが出来たから終わり、ではないのだ。

一つの分岐点を、一つの通過点を越えたに過ぎないのだ。

彼等はまだ生きている。


私もまた生きている。この事件は終わったのかもしれない。だが、これで終わりなどではない。

私達全員が生き証人なのだから。

私達はこの事件を、歴史的事件を伝えなければならない。

また再び繰り返されぬよう、後世に伝えなければならないのだ。

そうでなければ、再び同じことは繰り返されてしまう。

同志は壊滅した。だが、新たな同志が生まれるかもしれない。

リアルウォーは終わった。だが、また新たなリアルウォーが出てくるかもしれない。


また誰かが救ってくれる。誰かが止めてくれる。

ではない、私達が全員で止めるのだ。







さて、まだまだ書き足りない所もあるが、それはまた次の機会にしよう。

最後までご愛読ありがとうございました。

また次の事件でお会いしましょう。


記者 中村洋子







洋子は全てを書き終えると深くため息を漏らしパソコンを閉じた。

「よっ、お疲れさん」

そういいながら洋子の横に現れたのは編集長だった。

洋子の横にコーヒーを置き、編集長は閉じたパソコンを再び立ち上げた。

「ちょ、ちょっとまだ駄目です。まだ終わってないんですから」

「いいだろ、どうせ見たって減るもんじゃないんだし」

「もぅ、相変わらず勝手なんだから」

そういって編集長が持ってきてくれたコーヒーに手を伸ばすが、その前に編集長がコーヒーを奪い取り何事もなかったかのようにコーヒーをすすり始めた。

思わず「ちょっと」と口ずさむ洋子を無視して編集長は原稿を読み始めた。

そして、ある部分で「おっ」と声を漏らした。

「どーしたんですかー、誤字脱字でもありましたかー」

「そんなもの、どうでもいい。やっぱりお前も早いと感じたか」

「はい?」

「はい?じゃねぇよ。五十嵐が死んだ後の話だよ・・・やっぱりお前も速いと思ったか」

「えっ?いや、まぁなんとなくですけど・・・でも、今までがかなり進展なかったんで早いと感じただけですよ」

「そうなんだよ。今までかなり進展がなかったのは井上康太がかなり慎重な人間だったからだ。だが、五十嵐が死んだ後、彼の行動は早かった。まるで予定されていたかのようにだ」

「予定されていたって・・・私が五十嵐君に聞いていたのは康太に殺されるまでの話ですよ」

「そう、重要なのはそこなんだよ。五十嵐が死ぬ予定だった。・・・それを井上康太が知らないとでも思うか?」

「もし、知ってたら康太だったら、なにかむちゃくちゃなことをして、五十嵐君を助けようとしてましたよ」

「その通り。あの最終局面で井上康太が何かむちゃくちゃなことをやらなかったとでも思うか?」

「はいはい、編集長は井上康太大好きですからね」

「そういうお前は五十嵐大好きじゃないか」

「ちょ、そんな訳ないじゃないですか!!」

「かぁ~これだから自分に素直になれない奴は・・・俺達の戦争の第七作目見てないのか?」

「あぁぁぁぁ!!止めてください!その話はしないで!」

「えっ?何?なんか赤面してるけど大丈夫か?」

「小早川兄弟に吹き込まれてから、その話を聞くたびに顔がものすごく赤面しちゃうんです」

「小早川兄弟か・・・彼女等も悲惨な過去を持っていたな」

「えぇ、だから私はそれを全て書き記す義務があるんです」

「・・・同志の最後の生き残りとしてか?」

「違います。私は同志じゃない・・・私は一人の記者としてそれを書くんです」

「そうか・・・なら今日はこれであがれ。気付いてないと思うがお前、二日間寝てないぞ」

編集長の言葉に自分の腕時計を見ると、日付が二日間進んでいたことに気付いた。

驚きのあまり事務所で悲鳴を上げ、洋子は事務所から出た。





コンビニで夕飯を買った買い物袋を片手に帰路を進む洋子はポツンと佇む街頭の下に立つ男の姿に気が付いた。

その男は、辺りをきょろきょろとし、片手には小さなメモが木を持っていた。

道にでも迷っているのだろうか・・・

茶色の分厚いコートとよれよれの帽子をかぶり顔も見えない男。

見るからに怪しいので洋子は彼の前を素通りすることにした。

「あの、すみません」

そうはいかなかったらしい。

「な、何ですか・・・私、急いでるんです」

「ちょっと、道を尋ねたくて・・・中村洋子という女性がここら辺に住んでいると聞いたのですが」

「えっ?」

思わずその男の顔を見上げるとその男はなんと五十嵐だった。

嘘・・・

「ご存じないですかね・・・」

「何で・・・」

「えっ?」

どうやら、まだ私には気付いていないらしい。

「な、何でその人に会う予定なんですか?」

「あ、えぇっと・・・そうですね。昔の約束があって・・・まぁ向こうは忘れているかもしれないけど、必ず戻ってくるって約束してから・・・かな?」

「その人に会ってどうするんですか?」

「んー・・・すぐに戻ってくるって約束してから何十年も経ってるからな・・・すぐに戻らなきゃ奴隷になるって約束だったし、やっぱ会わないほうがいいのかな?」

「・・・・そんな約束。向こうは覚えてないですよ」

「そうかもしれない・・・でも、会わなきゃならない。そんな気がするんです」

「な、なんで?」

「なんでかな?・・・もしかしたら俺は彼女のことが好きなのかもしれない・・・いや、多分好きだ」

「・・・・」

「うん、好きだ・・・昔も今も変わらず好きだ」

「・・・私も」

「えっ?」

洋子は有無も言わさず五十嵐に抱きつき、それが夢ではないと確信した。

「私も!ずっと待ってた。ずっと待ってたんだから!」

「えっ?えっ!・・・まさか、洋子か?」

「何で?何で生きてるの?夢じゃないよね?五十嵐君だよね?」

「あぁ、待て待て。俺の名前は五十嵐じゃない。今は岸辺港だ」

「違う。そうじゃなくて何で生きてるの?」

「・・・康太だよ。康太にやられた」

「康太が?」

「あの野郎。部下にゴム弾を持たせてたんだ。公衆の面前であいつはまたむちゃくちゃなことをしたんだよ」

「だって、あの場で五十嵐君死んでたじゃない」

「仮死薬だよ。俺が懐に手を入れたとき仮死薬を投与してたんだ。それで撃たれても失血死はなくなるからな。銃弾が頭とかを傷つけない限り康太が助けてくれると思ってた。だが、実際はゴム弾だった」

「嘘・・・それじゃぁ」

「あいつは全世界を騙したんだよ。最後の舞台をむちゃくちゃにしやがった。五十嵐死亡で事件を終わらせるために奴は全ての収集を急いだ。たいした野郎だよ」

「これから・・・どうするの?」

「お前にも会えたしな。今度は小早川と矢吹に会ってくる。あいつ等、俺がいなきゃなにしれかすかわかったもんじゃないからな」

「もぅ、行っちゃうの?」

「大丈夫だ。必ず戻ってくる。今度こそ戻ってこなかったら・・・そうだな」

「奴隷!一生奴隷!どこかにフラフラしない様に首輪もつけて手綱を引いてやるんだから!」

「あぁ~そいつは参ったな・・・必ず戻らないとな・・・」




そう。事件は終わったのだ。

五十嵐死亡により、事件は終息したのだ。

だが、物語は終わるわけではない。

なぜなら、私達はまだ生きているのだから




最後まで読んでいただきありがとうございます。

いかがでしたでしょうか?ぞくに言う俺達の戦いはこれからだエンドです。

いや、ほんとごめんなさい・・・




これが一応最終話ですが、最後に下書きとして書いていた全く別の物語を載せようと思います。

話は飛び飛びだし、え?なにがどうしてこうなった?ん?みたいな物語です。

まぁ読んでいただければうれしいですが全く別なので期待しないでね!



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