第三十六話 生き残り達の生き様
人質となっていた集団が駐車場からいなくなると、銃をずっと構えていた矢吹は深くため息を漏らしながら銃をおろした。
「よかったのか?あんな別れ方しちまって」
同志の一人が、額にかいた脂汗を拭う矢吹に声をかけた。
「いいんだよ。・・・俺達は所詮悪役だ。俺達がこの戦いに勝とうがそれは変わらないし、変わっちゃいけないんだ」
矢吹はそういうと銃を手に持つ仲間達の方を向いた。
「さぁ、始めよう。俺達の戦いを・・・俺達の生き様を奴等に見せてやろう」
矢吹の言葉に全員が大掛かりな荷物を背負い各々の場所へと散った。
誰もいなくなった駐車場で、矢吹は深くため息を漏らした。
「情けね・・・こんな別れ方しか出来ないのかよ・・・」
自分の弱さを鼻で笑いながら、矢吹はさっきまで乗っていたトラックの下に爆弾を仕掛けその場から離れた。
「追跡部隊からの音信はここで途絶えた。十分注意しろ」
仲間の痕跡を追ってきた部隊が地下駐車場に警戒しながらやってきた。
そして、トラックを警戒するように回り込みトラックの向こうに横たわる仲間を目の前にして彼等は銃を下ろした。
「くそっ・・・酷い事しやがる」
「奴等全員見つけて皆殺しにしてやる」
「その前にお前等を全員食い殺してやるよ」
聞き覚えの無い声に敵の部隊は銃を構え、声のするほうに目を向けるがその前に側にあったトラックが爆発を起こし、部隊はその爆風に巻き込まれた。
彼等に悲鳴をあげる暇すら与えず矢吹は肉片と化した敵を目の前に「ざまあ見ろ」と唾を吐きかけ駐車場を後にした。
駐車場で起きた爆発音にそのビル付近は人でごった返し、その人の合間を縫って歩く矢吹は体内無線で仲間の準備完了という言葉に耳を傾けていた。
「矢吹。私達も準備OKよ。・・・さぁ始めましょう」
最後に小早川兄弟の無線を耳にし、矢吹はビルから一定の距離を置いたところでビルの方へ向きなおした。
「さぁ、俺達の最後の狼煙を上げよう」
矢吹は小さく呟くと人ごみの中で大声を張り上げた。
「諸君!我等同志は何ぞ!」
矢吹の言葉に周りの人々は矢吹のほうへ変な視線を向けるが、矢吹は気にせず仲間の無線に集中した。
「「我等同志は、この国を討ち滅ぼさんとする者也」」
「我等同志の手に持つ物は何ぞ!」
「「我等同志の手に持つものはこの国を滅ぼす武器也!」」
「我等同志の腰に差す物は何ぞ!」
「「我等同志の腰に差す物はこの国の首を取るための武器也!」」
「ならば問おう!我等の志は一体何ぞや!」
「「例え、一人になろうと敵の喉元に喰らい付く心也!」」
「総員、武器を持ち撃鉄を起こせ!・・・最後の戦いを始めよう!!」
矢吹は高々と手を上げ、手に持った装置のスイッチを入れた。
その瞬間、人だかりの出来ていたビルの一階部分が、音を上げ一瞬光ったかと思うと土ぼこりと黒煙を上げた。
大きく傾いたビルはそのまま倒壊し始め、辺りは逃げ惑う人々であふれかえった。
「戦争じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
悲鳴しか聞こえない中で矢吹は大声でそう叫び、逃げ惑う人の中に紛れその場から離れた。
人ごみの中、ビルの崩壊を遠くで見ていた元女子高生と元サラリーマンのおっちゃんも行動を開始した。
「おっちゃん、こっちにいいポイントがあるから付いて来て、あとこの時間帯は道が込む」
「ん?なんだやけに詳しいな」
「元々、ここに住んでたから・・・」
表情を変える様子は無いが、おっちゃんは彼女のことを思い「そっか」と短く答えた。
人でごった返していた場所だったはずが、彼女のあとを追いしばらく歩くと人影すらなくなり建物だけが密集する場所を二人は歩いていた。
「・・・ここよ。この建物なら辺りを一望できる」
「・・・了~解」
「それじゃ、ここでお別れね」
「あぁ・・・」
「しっかり援護してよ?」
「・・・・」
「ちょっと、返事ぐらいしてよ」
表情をひとつも変えない彼女におっちゃんはため息をひとつついた。
「なぁ・・・お前は逃げろ」
「はぁ?何言ってんの?」
「・・・俺にも娘が一人いたんだよ。奴等に全て奪われちまったが、お前と娘がかぶっちまうんだ。娘を戦いに行かせるだなんて・・・俺には辛抱ならん」
「・・・・」
「五十嵐さんだって、きっとそれを望んでる。確かにお前さんは俺なんかよりもずっと腕は立つ・・・だがまだ高校生だろ」
「元よ。元高校生・・・今は違う。私も同志よ」
「・・・・」
「心配してくれてありがとう。でも、おっちゃん一人じゃ心配だもん」
「こんな作戦、俺一人でも十分だ」
「でも、私も戦いたいの。娘の意思を尊重できないの?」
「お前、死ぬ気だろ」
「・・・・ばれてた?」
「当たり前だ。親父を馬鹿にするな」
おっちゃんの真剣な表情に彼女はため息を漏らした。
「私ね・・・全て奪われたの。家族も友達もみんな!!お母さんやお父さんにあんたは表情豊かねって褒められてたけど、今じゃ笑うことすら出来ない。居場所だけじゃない、表情すら奴等は奪った。
だから、私も奴等を全部壊すの。壊して壊して壊して壊しまくって・・・その為に私の体が壊れようが関係ないのよ」
「・・・お前の意思は変わらないのか?」
「女って結構意志強いのよ」
「わかった・・・もぅ何も言わん。ただし、絶対に死ぬな危なくなったらすぐに逃げろ。いいな?」
「はいはい、わかりましたよ」
ぶっきらぼうに答える彼女をおっちゃんは強く抱きしめ、思わぬ攻撃に彼女は思わず頬を赤く染め、振りほどこうとした。
「ちょっと!突然セクハラ?」
「頼む、目の前で娘を二度も失いたくない、死なないでくれ」
「わ、わかったわよ!死なない、死ななきゃいいんでしょ!・・・いいから離れろ、コノヤロー!」
彼女は、おっちゃんを突き放し乱れる息を整えた。
「あぁもぅ・・・死ぬつもりだったんだけど、やっぱりやめた。私が死んだらおっちゃん自殺しそうな勢いなんだもん」
「ハハッ・・・確かに自殺するかもしれないな」
「どうしてくれんのよ・・・」
「ん?何がだ?」
「・・・表情が一つ戻った」
不貞腐れる彼女に対し、おっさんは思わず笑い出した。
「確かに、そんな顔は始めて見た。いいものが見れたよ」
「私も死なないんだから、おっちゃんも死んだら駄目なんだからね。わかった?」
「あぁ、わかった。死ぬつもりは毛頭ない」
「・・・じゃぁね」
「あぁ、また会おうな」
少し小走りに彼女は去っていき、おっさんは南京錠で固定された扉を壊し、中へと入っていった。
厳重な警備体制がとられた官邸の周りには記者団が張り込み、野次馬達があふれかえっていた。
「総理!人質を乗せたトラックが破壊されたとは本当ですか」
「警備体制に問題は無かったのですか」
記者団が建物内にいると思われる総理に大声で問いかける中、周囲を警戒していた警察官の一人はヤレヤレといった感じにため息を漏らしていた。
「あの~すみません」
そんな警察官に一人の女子高生が声をかけた。
「はいはい、なんですか?」
「道を尋ねたいんですけど、議員宿舎ってどこにあるんですか?」
「議員宿舎は、この道をまっすぐ進んで、次の信号を左に曲がったらあるよ」
「本当?ありがとうございます。助かりましたー」
笑顔を見せる女子高生に思わず微笑み返す警察官だが、そんな警察官に返ってきたのは、一本のナイフだった。
「・・・えっ?」
サクッという音と共に、自分の胸に一本のナイフが刺さったことに信じられぬといった感じにその女子高生を見た。
笑顔の可愛らしい女子高生といった印象だった女子高生の表情は薄暗く冷たい視線が彼の最後の視界に入った。
異変に気がついた他の警察官が、横に倒れ動かなくなった仲間とその側に立つ表情の無い女子高生を見て腰に差してあった拳銃を抜いた。
「貴様!同志か!」
警察官の問いかけに彼女は答えることなく、そっぽを向く素振りを見せ警察官の怒りがこみ上げ拳銃にかかる指に力が入った。
パァン・・・
乾いた銃声と共に警察官の頭が赤い色を撒き散らしながら無くなった。
「銃声だ!」
「狙撃だ、遮蔽物に身を隠せ」
警察官は遮蔽物に身を隠し、壁から狙撃手を探そうとするが狙撃手から繰り出される弾は壁もろとも警察官を倒していた。
「遮蔽物は意味が無い!応援要請だ!」
「いた!南西の建物屋上!狙撃手!」
続々と建物の正面に集まる警察官だが、正面に待ち構える女子高生に苦戦していた。
「くそっ!どうなってやがる!全然当たらねぇ!」
女子高生は腰に差してある投げナイフを手に取り、銃を構える警察官を確実に仕留めていた。
警察官は女子高生に向け銃を放つが、まるでダンスを踊るかのようにして、女子高生は弾の一つ一つを避けていた。
女子高生は差してあったナイフを全て投げ終えると今度は脇差を両手に持ち、警察官に向かって猛突進していった。
「奴を近づかせるな!」
その動きは人並み外れた速さで、銃弾は彼女の足元で跳ね、脇差を一振りすると警察官の首から鮮血が吹き出た。
「化け物め!」
一人の警官がそう叫びながら彼女に向けて引き金を引いた。
だが、女子高生は飛んできた弾を脇差で切り落とした。
地面に落ちた弾丸を目にし、あまりの驚きに動くことを止めた警官は、狙撃兵の弾を食らい右肩から先を失い、その場に倒れた。
「駄目だ!正面が崩れるぞ、陣形を立て直す!小隊を作り、正面の敵と狙撃兵を両方叩くぞ!」
「前線にいる仲間を引き戻す!正面敵に向かって威嚇射撃!」
建物内にいた警官が正門で暴れる女子高生に向け、大量の銃弾を放ち、女子高生は飛んでくる弾丸を防ぎながら正門の外へと追いやられた。
「今だ!一度引け!11時の方向、狙撃兵のいる建物に制圧射撃!」
狙撃兵のいる建物に向かって弾を放つが屋上に構える狙撃兵は一切怯むことなく、建物内に逃げ込もうとする警官を撃ち殺した。
「だぁぁぁぁぁ!畜生、なんだってんだよ!・・・おぃ!ライフルをよこせ!」
建物内に何とか逃げ込んだ警官の一人が横にいた仲間から狙撃銃を奪い取った。
「よくも、俺達の仲間を・・・」
窓から建物の屋上にいる狙撃兵に狙いを定め、憎しみを込めた弾丸を放った。
放たれた弾丸は狙撃兵の頭を打ち抜き、狙撃兵は天を仰ぎながら仰向けに倒れるのをスコープで確認した。
「狙撃兵排除!ざまぁみろって・・・なんだ?」
撃ち殺したはずの狙撃兵は、再び立ち上がりスコープで覗き込む自分に狙いを定めてきた。
そして、スコープ上に映る狙撃兵の姿は、顔の皮膚がめくれ皮膚の下に銀色に輝く骨格が見えた。
「なんだよ、ありゃ・・・まるでターミネーターじゃねぇか・・・」
スコープに映るターミネーターは、ボンッという銃声と共に煙を巻き上げながら大型の弾をこちらに向けて放った。
建物内に入った弾丸は、その場で爆発し建物内にいた警官を巻き込んだ。
建物の外壁が崩れ、建物の下に逃げ込んだ警察官に瓦礫が襲い掛かった。
「建物の奥に退避だ!正門は明け渡す!・・・奴等、グレネードランチャーまで装備してやがる!」
「明け渡す?・・・ふざけるな!相手はたったの二人だぞ!機関銃もってこい!」
「機関銃だと?馬鹿!一般人にも当たるだろ!」
「構うか!この騒ぎを見ようと近寄ってきた野次馬なんて死んだって自己責任だ!それに、記者に紛れた同志がいるかもしれない」
再び正門に進行してきた女子高生に二階から機関銃を構えた警官が彼女に向かって引き金を引いた。
地面を飛び跳ねる弾丸は、飛び跳ね物陰に潜んでいた記者にも被害が出た。
「おぃ、止めろ!こっちには一般人もいるんだぞ!」
記者の数人が官邸から放たれる銃弾に向かって非難をあげるが、銃声でその声はかき消された。
「駄目だ・・・奴等、見境がなくなってる。みんな官邸から離れるんだ!」
官邸から背を向けて走る記者団に対し、弾丸を放つ警察官はどれが同志なのか見境がつかなくなっていた。
女子高生は記者団と共に官邸から離れながら、飛んでくる弾丸を脇差で切り落としていた。
だが、何発も弾丸を食らった刀は次第に刃こぼれが起き、飛んできた弾を切り落とすと同時に限界を超えた刀が砕け散った。
「くそっ・・・ここまでのようね・・・」
女子高生は全ての武器を使いきり、この場から逃げる算段を考えていた。
記者団の中に紛れて逃げるのが一番最良だと考え、建物から飛び出し道路を走る記者団の中に紛れ込んだ。
見覚えのある町並み。昔の自分なら頭上を弾丸が飛び交うだなんて決して想像しなかった。
だが、弾丸が飛び交うことが日常茶飯事になってしまった彼女にとって、この大惨事は日常と変わらないと感じ取るようになってしまっていた。
同じ方向へ進む人の集団。官邸から放たれる弾丸を食らい次々と人が倒れていく。
次は自分なのではないか・・・恐怖のあまり大声で泣きながら走る人の姿もあった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!嫌だ!嫌だ!死にたくない!」
自分だけが生き残りたい。そう思うと人は人を裏切る。隣を走る人を押し退け、倒れた人に弾丸が集中する。
集団真理から逸脱し、利己主義へと変わると感情や理性、道徳は失われ防衛本能だけが開花される。
同じ状況にあるのに自分が生き残りたいが為に人は人を殺しあう。
「ホント・・・下らない生き物ね。人間って・・・」
女子高生は周りの人間を見ながら小さくそう呟いた。
「うわっ!」
また一人、誰かに突き飛ばされ倒れた人間が出た。
次の犠牲者は彼か・・・・
そう思い横目で倒れる彼を見ると、見覚えのある姿に彼女の背筋に鳥肌が一気にたった。
「嘘っ・・・」
思わず足を止め、官邸から放たれる弾丸に目をやる。
弾丸は彼に向けて放たれ、地面を機関銃の弾が彼めがけて一直線上に走っていた。
「駄目!やめて!」
彼女は思わず、倒れる彼に向かってダイブし抱きかかえるようにして飛んでくる弾丸から彼を救い出した。
恐怖のあまり体が動かない彼の襟を両手で掴み、弾丸の飛んでこない路地裏まで彼を運び出した。
乱れた息を整えながら両膝に手を置く彼女と、彼女に救われた男性。
そして、腰を落とす男の前に彼女は前のめりに倒れこんだ。
「お、おぃ!」
彼女に異変に気づき、ようやく声を出せるようになった男は彼女の背中からにじみ出る大量の血を目にした。
「何で・・・なんで俺なんかの為に・・・」
もはや声を出すことも出来ず、彼女は最後の力を振り絞りうつ伏せの状態から仰向けに体をひねらせた。
そして、薄らぐ意識の中、彼のひざの上に頭を乗せ彼の顔に目をやった。
男は死に行く女性の顔に死んだと彼女の友達から告げられた彼女の顔が重なった。
「嘘だろ・・・アケミ?」
全てを失ったはずだった。家も居場所も家族も友人も・・・そして、彼女は自分の名前すら失っていた。
失っていたことに気付いていなかった。
だが、彼の言葉に彼女は失ったものの全てが戻ってくるように感じた。
創らなければ出来なかった喜びという表情を今では自然に作ることが出来た。
そうだ・・・。私の名前は・・・
彼女の顔から生気が失われるのをスコープ上で目の当たりにし、おっちゃんは守りきれなかったという悔しさのあまり、その場で大声で叫んだ。
涙も流したかったがプレイヤーとして戦って仲間と自分の体の半分以上を失い機械を埋め込まれてしまったおっちゃんには涙を流すことすら許されなかった。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!畜生!畜生・・・ちくしょう・・・」
目の前の脅威を排除したにもかかわらずところ構わず銃を乱射し続ける官邸に向かい、おっちゃんは再び銃を向けた。
「例え一人になろうと最後まで戦う。・・・志はそうだが、実際は失ったな仲間への俺たちなりの鎮魂歌だ」
おっちゃんは、自分の体ほどある大型のライフルを官邸に向かって撃ちまくり、弾丸は壁も人も構わず打ち砕いた。
再び狙撃が始まり、官邸からこちらに向けて大量の弾丸が飛んできた。
先ほども制圧射撃で飛んできた弾丸はおっちゃんの衣服を破き、体に当たっていた。
だが、体に当たった弾丸は金属音と共におッちゃんの足元に落ちていた。
今回も大量の弾丸はおッちゃんを襲うが、おッちゃんの体からは金属音しか鳴らず、怯むことなく銃を乱射し続けた。
弾丸を全て撃ちつくしたおっちゃんは今度は違う銃を取り出した。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
憎しみを込めた弾丸は、官邸に着弾すると同時に爆発し、その爆風でありとあらゆるものを吹き飛ばした。
「全部だ!全部なくなってしまえ!」
大声で叫びながら銃弾を撃ちまくるおっちゃん
だが、そんなおっちゃんの左腕を一発の銃弾が引きちぎった。
左肩からオイルが漏れ、飛んできた弾丸の方向に目をやった。
プロペラ音を響かせながら、こちらに向かって走ってくるヘリが一機、そしてその脇にこちらに銃を向ける敵が一人いた。
狙撃兵から放たれた弾丸はおっちゃんの胸を貫き、背中から黒い血を噴き出した。
「くそったれがぁぁ!」
おっちゃんはライフルを再び手に持ち、ヘリに向かって乱射した。
標準もあわせずに放った弾丸は、狙撃兵の左肩を打ち抜きバランスを崩した狙撃兵はヘリから悲鳴を上げながら落ちていった。
ヘリはその場に留まり、搭載された機関銃でおっちゃんに襲い掛かった。
おっちゃんのいる屋上は、銃弾と土ぼこりが舞い、視界は一気に見えなくなった。
「やったか」
パイロットはおっちゃんの生存を確認しようとするが、土ぼこりを引き裂きながら飛んできた弾丸がパイロットの額を打ち抜いた。
制御の利かなくなったヘリは辺りのビルにぶつかりながら地面に墜落し燃料に引火し大爆発を起こした。
土ぼこりが晴れ始め、屋上には四肢を壊されうつ伏せに倒れるおっちゃんの姿があった。
「ざまぁみろってんだ・・・くそったれ・・・」
肘から下を失った手を動かしながらおっちゃんは出口へと向かい動き出した。
「俺は死なねぇ・・・絶対に生き残って・・・生き抜いてやる」
額の皮膚はほとんどなくなり、銀色の額で悔しさを滲み出していた。
埋め込んでいた義眼が取れ、赤い光を帯びた機械の目が徐々に薄れ始めた。
「俺は・・・オレハ・・・ゼッタイニ・・・」
動きが鈍り始め、おっちゃんの視界も砂嵐が画面を揺らし始めた。
「ワ・・・ワタ・・・ワタシ ハ・・・」
機械なんかじゃねぇんだ・・・・