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第四話 創られた戦争

「えぇ〜、突然だけど山岸先生は、実家の自営業を継ぐことになり、退職なされた。だから、しばらく日本史は、臨時の教員が来るまで、自習だ。以上、HR終わりっ」

担任が、教室から出て行った。俺は、なぜかわからないが、後を追った。

「先生っ・・」

「ん?どうした」

説明マニュア・・じゃなくて、山岸は本当にやめたの?」

「山岸『先生』だろ。あぁ、今日電話があった。まったく勘弁してほしいよな。

江戸時代から続く、伝統ある酒蔵だか何だか知らないが突然辞めやがった。こっちの身にもなれって感じだよ。・・・どうかしたのか?顔色悪いぞ?」

「いえ、何でもないです」

「そうか・・体調悪くなったらすぐ、保健室行けよ」

担任の名前は、先田 竜生、略して『先生』と呼ばれている。



その後の事は、覚えていない

とにかく、放課後になったらすぐに学校を飛び出した。

行先は、決まっている、ガンズショップだ。

「岸辺 !!」

「いらっしゃいませ〜、ミーティングルームに行け。みんな待ってる」

岸辺は、あの出来事が終わった後、あの場所にきて、いつも通りに学校に行けと言われた。

なぜ、その通りにしたのかわからないが、パニクっていた俺達は、そのまま従った。


ミーティングルームに行くと勉と大次、裕大がいた。

全員、軽く挨拶しただけで何もしゃべらない

しばらくすると、龍之介が、五十嵐に連れられやってきた。

龍之介は、今日は学校を休んでいた。

「龍之介・・てめぇ」

いつもなら、勉の後ろに隠れる龍之介が、勉からの睨みのきいた低い声に五十嵐の後ろに隠れた。


「やぁ、みんな集まったね」

岸辺が、軽い口調で扉を開けてやってきた。

だが、扉の横にいた五十嵐からの強烈なパンチを食らいロッカーまで吹き飛んだ。

「い、いきなりひどいな」

俺は、昨日の出来事があって抑えていた感情が爆発した。

「どういう事だか、説明しろ !!」

「まて、みんな落ち着け。これから、説明するのにタコ殴りにされたら喋れないじゃないか・・はい、みんな席について」

相変わらず、軽い口調にイライラしながらも全員席に着いた。

岸辺は、自分の鼻から血が出ているのに気づきティッシュを鼻に突っ込んだ。

「はい、じゃぁ説明します。 とにかく、君たちは別に逮捕されることもないから 安心していいよ。死んだ人たちも死んだことは公表されない。このゲームは、非公式だけど、政府公認の元で実行されてます。・・まぁ、そんな事説明されても君たちにはわからないか」

岸辺は、鼻を押さえながら上を向き鼻血が喉を通ったのか、咽ていた。

「それから、この事は無論口外してはならないよ。左手につけた位置座標特定機、外れないだろ?それ、盗聴器も入ってるから喋ったら殺されるし、下手したら君たちの家族も殺されるよ」

その言葉に、全員がグッと息をのむ

「それから、まだこの戦いは続くから。

次は、三週間後フィールドは、市街地と森林の合わさった場所だ。また、バスで移動するから」

「俺は、行かないぞ。あんな事、またやらされるのかよ」

大次が、岸辺にそう言う

「別にいいよ、来なくても。バスに乗らなかったら死ぬだけだから。もちろん君達の周りの人も。

まぁ、君達の中には、死んで欲しいと思っている家族がいるみたいだけ“ど〜”」

その言葉に、ピクリと反応したのは、俺と腕を組んだまま動かなかった五十嵐だ。

「はい、これで説明終わり。じゃね」


岸辺は、立ち上がり扉から出ようとしていた。

さっきまで飛びかかってやろうと思っていた気持ちは、どこかに失われていた。

「待てよ。まだ重要な事言ってないんじゃないのか?」

五十嵐の言葉にドアノブに手をかけようとしていた岸辺の手が止まった。

「お前は、国に俺達を売ったんだろ、いくらだった?」

「・・・一人頭十五万、まぁいい額だったよ。君は、二十万だけどね」

「俺達を売った?何のことだ」

勉が、五十嵐に質問をする。

何も喋ろうとしない五十嵐に岸辺が深くため息をつきながら話し始めた。

「参ったな、お見通しってやつか・・・まぁ、ここからは話す規則でもないが

話してはいけないって規則もないから、教えてあげるよ」

岸辺は自分の頭をなでながらゆっくりと席に座った。

「『偽りの戦争、創られた戦争』って知ってるかい?あれでこの国は、莫大な利益を得た。こんなど田舎に、こんな馬鹿デカイ、ガンズショップを作れるのは、そのお陰だ。

戦争をしている、国に、この国の最新兵器を売りまくったんだ。もちろん、両方にね。世間では紛争とか、内戦だとか言ってるけど、ありゃもぅ、ひどい戦争だ。激化の一途をたどってた。

まぁ・・激しさを増す原因は、俺達が武器を売っていたからだけどな。

だから、売らなくなれば、戦争はピタリと止み、今のような停戦状態が続いていると・・

・・で、リアルウォーの原因なんだけど・・この国は、戦争経済に依存しすぎた。

また、経済がどん底に陥るってな、そこでこのゲームができた。周りの国々から武器を貰う。

そして、この国でゲームとして武器兵器の威力を実演する。

その宣伝料を諸外国からもらうと・・・その役者キャストを俺のような人達が紹介する。

俺は、その紹介料を貰う。」

話を聞いてるだけで、腹の底からフツフツと怒りがこみ上げてくる。

それと同時に、今まで知らなかったこの国のあり様に、絶望を感じる。


「俺達の命は、そんなものなのかよ。・・人一人の命は、そんな物で買えるのか!?」

勉が、椅子を飛ばす勢いで立ち上がった。

「仕方ないだろ、僕だって命は惜しい。紹介しないと僕だって消されるんだ。

誰だって、自分の命が一番大事だ」

「ねぇ、お願い 僕だけでも助けてくれ。僕は、このチームから外されたんだ。

もぅ関係無いんだ。僕は、今聞いたことは誰にもしゃべらない。だから、バスに乗らなくてもいいでしょ?」

龍之介が必死に岸辺にしがみつき懇願する。

「だから言っただろ?別に乗らなくてもいいって。ただ、殺されるけどね」

「嫌だ、僕は死にたくない 死ぬのは嫌だ。嫌だ、嫌だ、嫌だ。ヤダよ〜」

「あぁ〜もぅ、うるさいな」

何が起こったのか、わからなかった。

必死にしがみつく龍之介が、見えなかったが岸辺が何かした瞬間、龍之介の後ろに回り腕を固め顔を机に押さえつけられていた。

「気付かなかったのかい?僕は、君達なんかよりもずっと強い。僕が笑顔のうちに、この部屋から出さないと殺すよ」

固めていた腕をさらに締め付ける。龍之介が叫び声を上げる。


「お前、頭おかしいんじゃないか?」

五十嵐が、岸辺の後ろに回り岸辺の髪を鷲掴みにした。

「お前が強いんじゃない、龍之介こいつが弱すぎるんだ」

五十嵐は、岸辺の顔を勢いよく机に叩きつけた。

岸辺は、鼻からだけじゃなく唇を切ったのか、口からも血が出てきた。

「そ、そうだよな君は・・」

続きを言おうとした岸辺に髪を掴んだまま、頭を持ち上げ

顔面にパンチを喰らわせた。

「ぎゃあ゛あぁぁ、歯が、俺の歯が」

気がつくと、俺の足元にも歯が一本転がっていた。

そして、五十嵐の血が付いた、拳にも歯が一本突き刺さっていた。

「チッ、おらっ返すよ」

五十嵐は、拳から刺さった歯を抜き、その場でうずくまる岸辺の顔をまた持ち上げ口を開かせた。

「お願い、やめ、やめて あ゛あぁぁぁ」

五十嵐は、持った歯を抜けた場所に無理やり突き刺した。


「うわ〜・・・」

ヒーヒー言う岸辺に俺は、完全に血の気も引いたが、俺みたく血の気が引いた奴もいるが、

逆に怒りがこみ上げている奴もいた。

「俺達が、笑顔のうちにここから出て行け。そうじゃないと、今度は俺以外の奴がお前に歯を突き刺すぞ」

岸辺は、俺達を睨みつけたが、すぐさま扉を急いで開け出て行った。

「よくやった。五十嵐」

絶賛するのは、裕大だった。

「ちょっと、やりすぎだった気もするけどな。あいつが可哀想だ」

同情するのは、大次

「いや、あれぐらいが、ちょうどいい俺はスッキリした」

そう言うのは、勉だ。


「それより、これからどうする?手首には、これが付いたまんまだ」

俺は、外れない発信器を隠すためにつけておいたリストバンドを外し指をさした。

「まだ続けるっていうのか?」

大次は、俺を睨みつけた。

「でも、続けないと殺されるって言ってただろ」

「だからって、あいつ等に従うのか?」

「でも、俺達は人質を取られてる」

勉は小さく呟き、そして続けた。

「あいつ等言ってたろ?家族や周りの人が殺されるって」

「はったりだよ。そんな事できないって」

「でも、実際にこのゲームは昔から続いてるし今も続いてる」

裕大は、そう言うと鞄からパソコンを取り出した。

「これ、見てくれ。これは、どこかのプレイヤーが、勝手にネットに載せてるんだと思う」



パソコンを開くと、ある動画を再生させた。それは、一人のプレイヤーの目線だった。

場所は建物の中で長い廊下だった。前には二人の仲間が映っている。

廊下の両端に立ち手で情報を伝える。

どうやら、本人は支持係ポイントマンらしい。こいつの手の指示で、前の二人が進む

突き当りに差し掛かり二人が同時に両側の廊下に銃を構え身を乗り出す。

その瞬間、銃声が上がり一人が倒れた。まだ生きている・・

自分も応戦に回り仲間の一人が、けがをした奴を連れていく。撃った銃弾は、敵の頭に当たり敵が倒れた。

敵は、徐々に後退していく、そして跡を追う

突き当りに、部屋が一つある。一人が、扉を突き破り、その瞬間一気になだれ込む。

一人、また一人、敵が倒れていく。

最後の一人になった時、そいつは、足を引きずっていた。

『お願いだ、助けて・・死にたくない、助けて、お願い・・助け』

命乞いをする、人を全員で一斉射撃した。こいつらは、必要以上に撃ちまくった。

もう死んでる。それなのに撃っている・・・

その地面には、大量の薬莢と大量の血が広がった。


次の映像も、同じようなものだった。命乞いする奴等も関係無く殺していた。

ただ違うのは、段々と命乞いをする奴の殺し方が残酷になっていく所だった。

そんな映像が、しばらく続く中

「これが、最後だ」

そう裕大が呟くと映像が、始まった。

『今回は、楽勝そうだな』

『あぁ、そうだな。楽勝楽勝』

そういいながら準備を始め、腕時計がピピピとなり始める。試合開始の合図だ。

初めは、一列に並び森の中を探索し始める。

『おぃ』

一人が、声を上げる目線を動かすと一人の影が映った。

『はっけ〜ん』

手を動かし、五人一列ではなく広がった隊形になった。

敵は、見えたかと思うとまた見えなくなり、それがしばらく続いた。

「おぃ、これってまさか」

康太が、言うまでもなく全員が感じ始めていた。


『くそっ、どこに行きやがった』

イライラを口に出した瞬間、そいつの目線は、一発の銃声と同時に上を向き、暗い夜空を映し出した。

『山岸 !?』

カメラは空だけを見るが、音声はまだ続く

『うわあぁぁぁーー』

敵の叫び声と、やられていく仲間の悲鳴が、パソコンから流れてくる。

カメラには、仲間の返り血が所々についていき、最後には、血でなにも見えなくなっていた。

『くそ野郎がー』

一発の銃声がなる。その瞬間、周りから一斉に撃たれる音がし、ドサリと倒れる音がした。

まだ映像と音声は続くが、康太がパソコンのスイッチを切った。



しばらく、誰も喋ろうとはしなかった

「これって・・」

俺が、重い口を開けようとしたが

「やめてくれ」

勉が、叫んだ。

「でもさ・・ !!これって」

「やめてくれよ」

「ごめん、俺がこんな物、見つけちゃったせいで・・」

裕大が、腰を下ろしながら呟く。ただ、俺は学校での出来事を思い出しながら続けた。

「正直、山岸が死んだなんて思いたくなかった。だって、学校ではそんな事言われなかった。

でも、この画像ってさ・・山岸じゃん。やっぱり、俺達、人を殺してたんだ。

俺達、こんな事続けられるのか?」


誰もしゃべらない中

「続けてもらわないと困る」

扉から五十嵐ほどの体格で、店員の制服をきた人が現れた。

「君達は、人質が取られてるんだ。戦わなければ、家族が殺されることになるぞ。

岸辺は、君達の担当から外されることになった。今度から、担当は私に代わる。

ちなみに名前は岸辺だ。大丈夫だ。君達が、戦いで死んでも家族は、死なない。それは、私が保障しよう。

ただ、戦わないなら、あまり気は進まないが、そうするしかない」

新しい岸辺は、まるで機械かのように言葉を棒読みする。


「俺は、やるぞ」

そう言ったのは、勉だった。

「他の奴等は?」

岸辺が聞くが、誰も口を開かない

「・・まぁ、いい三週間後だ。駅前にバスが来る。乗るか乗らないかはお前たちに任せる

それまでは、普通通りの生活を送ってもらおう」

そう言うと、新しい岸辺は部屋を出て行った。



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