第三十話 俺達・・・死ぬのか?
「五十嵐がそいつと話をしている内に俺達はそいつがいる所へ向かった。俺達が付く頃には会話もほぼ終了していた。その後、五十嵐がそいつが何者なのか、俺達が一体何のために戦っていいたのかわかった。」
『こいつ等は、今はもうない国の代表者だ。俺達を金で買い敵対する国と戦わせてたんだ。』
康太達が、そこに着くと俺達の仲間に頭を銃で突き付けられた人が両膝をつき、まるで拝むかのように手を合わせそいつに命乞いしていた。
「つまり俺達は、こいつ等のために戦って来ていたと言うのか?」
『傭兵よりもひどい扱いだ。日本人同士で他の国の争い事を代理で請け負っていたって事だ。・・・俺達は何も知らないでだ』
「・・・・ふざけやがって」
銃を構えていた男は、命乞いする奴の足に弾を撃ち込んだ。
足に銃弾を撃ち込まれた奴は叫び声をあげ横に倒れ、より一層命乞いする声の大きさが大きくなった。
「俺達は!!何も知らないでこんな事のために戦ってきたって言うのかよ!!おい !!今から俺が言う事、こいつに言え!!」
無線を倒れる奴に放り投げた。
「訳も分からないで戦っていた俺達の気持ちがわかるか?何も知らないで死んでいった奴等の気持ちはわかるか!?てめぇ等みたいな、しらねぇ国のために戦っていたつもりなんて毛頭ねぇっ !!俺達は自分の家族のために戦ってきたんだ!てめえ等の争い事なんてどうだっていいんだよ・・・勝手に争って人殺して、金も武器もなくなったから、はい停戦。挙句の果てには俺達巻き込んでこの国で戦争おっぱじめやがって、だったら最初から争い事なんてやってんじゃねーよ!!」
五十嵐は通訳し終わったのか無線からは何も聞こえなくなった・・・
その瞬間、銃声が何発も鳴った。倒れる男の頭に何発も弾が尽きるまで引き金を引いた。
弾をすべて撃ち尽くしたときには足元に血が溜まっていた。
「・・・・おぃ!!街に戻るぞ!!俺達の所にも、こう言う奴等がいるかもしれない。見つけてぶっ殺すぞ」
けど、街に戻る頃には、ヘリが一機逃げるかのように飛び立っている所だった。
「くそっーーー!!」
仲間は全員、ヘリに向かって意味もないとわかっているのに引き金を引いた。
全てを知った俺達の怒りは無情に叫び空に向って撃ちまくる・・・それしかできなかった。
その日の酒は盛り上がる事もなくただのやけ酒に終わった。
「俺達は次の日から敵地で武器と足を見つけて移動を始めた。ここからの脱出を試みた。
けど、それをこの国は許さなかった。砂漠地帯を走ればヘリや見た事ない戦闘機で爆撃され住宅街に逃げ込めば、住宅街に火柱が何本もたった。爆撃で仲間が乗ったトラックが火だるまになりながら宙を舞う所を見た瞬間、恐怖に駆られた俺達はトラックから飛び降りた。全員がそれぞれバラバラに走って逃げた。それで捕らえられこの様だ」
「・・・だから、俺を置いて逃げれば良かったんだ」
「腹から血を出した五十嵐を放っておいて逃げる事なんてできるか」
康太達の説明を悠二はただひたすら聞いていた。
「それで?悠二はなんでそこにいるんだ?」
「・・・・俺も一応は岸辺だ。お前達に処刑命令が出された。執行するのが俺に決まったんだ」
「・・・・えっ?」
「すまない・・・上からの命令だ」
銃をとりだし檻の中にいる康太達に銃口を向けた。
康太達は置かれている状況が理解できないのか、口を半開きにしたまま動く事が出来なかった。
「・・・・結局、あんたは2割以下を取ることはないって事か・・・」
「そうだ。俺は結局、自分が一番大事なのさ・・」
悠二の引き金を引く指に力が入る。
カチっと言う音が鳴り悠二は銃をホルダーに戻した。
「おぉ・・・弾を入れるの忘れてた。別に今日殺せとは言われていない。明日また来るとしよう」
悠二はそう言うと、出口に向かって歩き出した。
「悠二ー!!」
康太が牢屋から顔を出しこっちを見てくる。
「・・・俺達、死ぬのか?」
「あぁ、そうだな・・」
そう言い残し、出口の扉が閉じた。
「こちらがあなたの個室になります。」
「ありがとう」
従業員が悠二を案内し、そこまで来ると従業員はどこかへ行ってしまった。
部屋には机と布団以外何もなかった。
ただ机の上に大きなラジオが一個置いてあった。
スイッチを入れると康太達の会話が聞こえてきた。
『俺達、どうしてこんな事になっちなったのかな・・?最初はただのテレビゲームだったよな。それが次第にガンズショップに行って、チーム作ってゲームやって、気付けば本物の銃で殺しあいをしてる。』
『引き金を引くのに今じゃ何の躊躇もない・・・目の前で人が死のうが殺そうがなんとも思わねぇ・・知らない間に俺達、普通の人間じゃなくなってたんだな』
『最初の頃なんて、そんな人間になっても生きてていいのか?とか言ってたよな・・・まぁいいんじゃねーか、周りで人がたくさん死ぬのに俺達は生き残っちまった。ここら辺が潮時なんじゃね?』
『けどさ・・・別に命乞いじゃねーょ。学校にいた時はさ、くっだらねぇ事で盛り上がって、くっだらねぇ事にムキになってさ、馬鹿ばっかやって。こんな事やって何が面白いんだろ?とか思ってたけどさ、今思えばさ・・・・あれが一番面白かったな
・・・失ってからわかる大切な物ってこう言うもんなんだろうな・・・出来れば、みんなの所に帰りてぇなぁ・・・』
『あ゛ああぁあぁーー!!帰りてぇーー!!』
『チキショウ!!帰りてぇ』
無線からは康太達の涙ぐむ叫び声と鼻をすする音が聞こえてくるが、その部屋には悠二はもぅいなかった。
「おぃ、お前等!!」
牢屋に悠二がズカズカと近づく
「なんで、俺を恨まねぇんだ!!恨めよ!!憎めよ!!」
「また盗聴かよ悠二。サイテーの奴がやる事だぞ」
「俺に殺される奴等は、全員俺を恨んで死んでいった。それが俺の生きる糧になってたんだ。俺が生きている証拠だったんだ。」
「恨んだって何も変んねぇだろ・・・恨んだってしょうがねぇんだよ・・」
「駄目だ。恨め!!俺は生きている実感が欲しいんだ」
「生きてる実感だなんて俺にだってねぇよ。生きてる実感だなんて死んでみないとわからないもんだ。死んでみてようやくいい人生だったか、駄目な人生だったかわかるもんだろ」
「・・・くそっ・・駄目だ。そんなてめえ等殺してもなんも面白くねぇ」
頭をかきむしりながらそう言い、悠二は突然、牢屋を開けた。
「逃げるぞ。その方が面白くなる」
牢屋が開いた途端、館内に非常ベルが鳴りはじめた。
「悠二、お前マジで言ってんの?」
「この状況でもぅ後戻りはできねぇよ。」
「どうしました?何かありましたか?」
そう言いながら入ってくる警備員二人に悠二は銃口を向け引き金を引いた。
倒れる警備員から銃を奪い、康太達に投げた。
「出口までの道案内はする。だが自分の身は自分で守れ」
康太達は銃を取り、警備員から他に使えそうな物を奪い取った。
警報が鳴り響く中、康太達は廊下に何個も牢屋が並ぶ部屋から飛び出した。
しばらく長い一本道で出くわすのは警備員の服を着た人達だったが、次第に黒い服、黒いヘルメット、背中には黄色い文字で何かが書いてある。とにかく全身フル装備の人たちが増えてきた。
「おぃ、こいつ等見た事あるぞ。警察の特殊部隊とかでテレビで特集してた。」
物陰に隠れ応戦しながら裕大がいった。
「当たり前だ!!ここは一応は食糧生産所で、警備クラスは特Aだ。だから警察署と連結してるんだ」
「はぁっ?食糧生産所?俺等、囚われてて飯と言えるような飯は喰えなかったぞ!!」
康太がそう言いながら放った弾は敵に命中し後退を始めた。
「はっ、大した事ねぇーな。特殊部隊!」
康太達は先に進み倒れている奴から武器を拾った。
先に進んで行くうちに今度は敵は後ろから追ってくるようになった。
「この渡り廊下を渡りきれば、残り半分だ」
一本の廊下を渡りながら後ろに威嚇射撃をしながら少しずつ進んだ。
「くそっ、キリがねぇ・・」
「残段数は?」
「残り少ない」
全員からそう返ってきた。
「俺がしばらく持ちこたえる!!その内に廊下を渡りきれ」
五十嵐がそう叫び、康太達はそれに従い後ろを振り向かすに一気に渡りきった。
「五十嵐、早く来い!!」
五十嵐は廊下の凹凸部分に身を隠し動けないでいた。
「俺はいい、置いてけ!!」
「何言ってやがる !!いつまでもクール気取ってんじゃねーぞ!!」
「うるせぇ !!こいつを見ろ!」
五十嵐がそう言いながら自分の服をまくり上げると傷口が化膿しまた新たに出血を始めていた。
「俺はもぅ無理だ。足手まといにはなりたくねぇ・・・・」
五十嵐の額には脂汗がにじみ出ていた。
「俺がしばらくここで持ちこたえる!!その内に早く建物の外に出ろ!!」
「あぁあ゛?ふざけんなよ!!てめぇ、死ぬぞ」
「死なねぇよ !!俺は団体行動が苦手なだけだ!!康太!!いいか?お前が親父の事どう思っているのかはしらねぇが、今はお前の親父の所に行け」
「俺の親父だと・・?」
悠二は自分が持っている連射銃の残りの弾倉を五十嵐の方に放り投げ、五十嵐はそれを足で止めた。
「お前等、行くぞ!!」
「くそっ死ぬなよ。五十嵐」
「・・・そいつは少々無理な注文だ。」
隠れる壁の後ろから敵の足音が近づいてくる。五十嵐は壁から飛びだし引き金を引いた。
敵が何人も倒れて行く・・・・五十嵐は少しずつ後退しながらも射撃を止めなかった。
向こうからの威嚇射撃は五十嵐の肩や至る所をかすめていった。五十嵐は痛みを紛らわすために思いっきり叫んだ・・・叫びながら銃を撃ち続けた。
悠二から貰った弾も撃ち尽くす頃には、五十嵐は廊下を渡り切り横の壁に身を隠した。
弾がないか、自分の服の中を探すがやはりなかった。だが、五十嵐の足元に康太達が置いて行ったのか、弾倉が一個置いてあった。
「・・・おぅ・・ありがてぇ・・」
五十嵐は新たに弾を詰め直すが、五十嵐は手りゅう弾を取り出し、しばらく見つめた。
体の至る所に出血部分があり、体がもぅ無理と悲鳴を上げている事に気づいた。
五十嵐は深く息を吸いこみ、手りゅう弾を強く握り安全ピンを抜き、手りゅう弾を掴んだ拳で二回、自分の胸を叩き前に突き出し強く握っていた手りゅう弾を地面に落とした。
渡り廊下で大きな爆発が起き渡り廊下が崩れていく頃、康太達は建物から脱出し爆発する所を目の当たりしている所だった。建物の外は夜になりかけていて薄暗かった。
「くそっ・・あの野郎・・・」
「死なねぇーって言っただろうがーー!!」
「立ち止まるな!!行くぞ」
悠二がそう言うのと同時に康太は、五十嵐が「いいから早く行け!!」と叫んだような気がした。
「悲しむのは死んでからにしろ!!」
悠二の声に康太達は動こうとしない、自分の足に鞭を打った。
悠二を先頭に康太達は壁に向かって走った。
周りでは弾がはじける音が鳴り響くたんびに頭を低くかがめた。
「悠二!!行き止まりだぞ。どうする気だ」
「そもそも出口は、一個しかないんだ。そんな所から出れるわけねぇーだろ!!」
悠二は壁を背に張り付き両手を足かけのように組み康太達を待った。
「オラッ来い!!」
「おぃ悠二、マジかよ」
「・・これしか方法はないんだ」
康太が悠二の手に足をかけた途端、悠二の「フンダラっ!!」と言う掛け声とともに康太は上へと投げ飛ばされた。
康太は何とか壁の上に片手をかけ上によじ登ると目の前に有刺鉄線が張りめぐらされている事に気づき、自分の上着を脱ぎ有刺鉄線に引っ掛け下に押しつぶした。
後からやってきた勉と裕大を先に跨らせ悠二を待った。
だが、悠二は上をずっと見るだけで一向に上によじ登ろうとはしてこなかった。
「悠二!!何やってる、早く上がって来い。あとはお前だけだ」
勉と裕大は先に下に降り、康太は悠二に手を伸ばした。
「わかってるだろ。康太・・・この高さを一人で登るのは無理だ」
『出口までの道案内はする』悠二のさっきの言葉が頭をよぎる・・・
「なっ・・・悠二!!お前、最初から」
「うるせぇ!!」
悠二は康太に銃を向け一発撃った。
「うわっ・・・」
康太はバランスを崩し外側に落ちて行った。だが、それを勉と裕大がキャッチした。
「早く行け!!そのままを下にまっすぐ下れば、住宅街だ」
壁をはさんで悠二の声が聞こえてくる
「くそっ!!ふざけやがって!!さっきまで俺達を殺そうとしてたくせになんで俺達を助けるんだ!」
「知るか、んなもん!ただ今めっちゃいい感じなんだ。生を実感してる。そうか、俺はこんな事がしたかったんだ!!」
「何言ってんだがわかんねぇよ。お前が死んだら帰り道がわかんねーんだよ!!」
「大丈夫だ。なんとかなる!!五十嵐も言ってただろ。親父の所に行け !!いや、あっちからおそらく来る。こんだけ騒ぎを起こしたんだ、嗅ぎつけなかったらお前の親父はカスだ !!」
「全く理解できん!!悠二、お前もいいから上って来い」
向こうで銃声が聞こえ悠二はそれを応戦する
「悠二!逃げろっ!!」
「いいから、早く行け!!早く・・早ギャ・・・」
「悠二・・・く、くそがっ!!」
壁をはさんで悠二の頭が弾き飛ばされる音と倒れる音が聞こえてきた。
暗闇を抜けると高いビルが立ち並ぶ場所に出てきた。
後ろからは足音と横からは奇声な声を上げる車が俺達を追ってきた。
「くそっ・・・逃げるぞ」
「逃げるってどこに・・」
そう聞かれても、ここの場所もどこに行けばいいかも全く分からなかった。
「とにかく生き残るんだ」
そう言って前に走り出すと目の前に突然ヘリが現れ地面すれすれでホバーリングを続けている。
ライトが眩しくて何も見えないが、一人、細長い銃を持っているように見える
「ここまでかよ!!・・・くそっここまで来たのに」
「早くヘリに乗れ」
あきらめムードになる中、ヘリからそう言われた。
ライトが消され、銃だと勘違いしていた物は松葉杖でヘリに乗っていたのは康太の親父だった。
「親父・・・」
「康太!!早くヘリに乗るんだ」
「・・・乗り込め、みんな」
康太はそう叫び、訳も分からず親父のいるヘリに乗り込んだ。
扉を閉めるとヘリは急上昇しだし、ヘリに気づいた敵はヘリに銃を撃ち始めた。
「一応、ヘリの中だから大丈夫だと思うが全員、念のため耳を閉じてろよ」
井上がそう言うと何か丸い機械のスイッチを押した。
すると突然、下にいる敵は耳を押さえながら苦しみ始めた。ヘリの外からは何やら黒板を爪でひっかく音の大音量版のような物が聞こえてきた。
「このヘリの外から人間がまだ聞こえる程度の高周波を大音量で出してるんだ。耳はどんなに鍛えようがこの音には耐えきれない。脳に直接攻撃を出来る場所だからな」
「わかった。わかったからもぅこの音を止めてくれ」
耳をどんなに塞ごうと音がまるで手を通ってきているかのように音は鳴り響いた。
「先生、もぅ離陸に問題はありません。止めても大丈夫です」
パイロットがそう言うと井上は機械のスイッチをオフにした。
「子供には効き目がいいらしいな」
井上がそう呟く中、康太達は感動の再開に勤しむ事もなく、緊張の糸が切れたのか三人は一気に倒れた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。お陰さまで三十話まで書く事ができました。
三十話まで書く事ができました、と言っておきながらなんですが、次で最終話とさせていただきます。
最後まで楽しく読んでいただけたら幸いです。