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第三話 引き金を引け

これ・・本物?

どうして、地面に穴が開く

なんで、本物の銃がここにあるんだ

「康太、落ち着け、向こうに無線を入れろ」

全員が、呆然とする中、五十嵐だけが、落ち着いていた。

「あ、あぁ・・そうだな」

五十嵐の言う事を素直に聞きいれ、カバンの中に入れてある無線を探す。

だが、探す手が震えてうまく動かない


「なんで・・なんで、え?どうして」

状況を段々と把握していくと段々と声が出てくる

「落ち着け、龍之介 !!」

「落ち着いてられるか、なんで君は、落ち着いてられるんだよ」

「ここで、パニくったって何も始まらない。みんなもだ、とにかく向こうに無線を入れてみないと 何も始まらない。とにかく落ち着くんだ。」

五十嵐が、みんなを落ち着かせる中

俺は、ようやく無線を見つけ

共通の周波数に合わせた。

「こちらチーム1、応答してください。こちらチーム1、応答してください」

しばらく、雑音が聞こえていたが、返事がきた

『こちら鷹の目、どうした?』

返事が、来た事に安心しまた逆にパニックになってきた。

「お、俺達の、武器が本物なんです。だから、どうしたらいいのかわからなくて」

『なんだって?すまないがうまく聞こえない もう一度言ってくれ』

もう一度言おうとスイッチを押したが、五十嵐が、俺から無線を取った。

「俺達、この大会に初出場なんです。それで、武器を調べたところなにかの手違いか本物が入っていたんです。そちらの方は、どうですか?」

簡潔に五十嵐が、今の状況を向こうに伝えた。

すると、向こうから不気味な笑い声が聞こえてきた。

一人だけでなく、無線の後ろからも笑い声が聞こえた。

『なるほど、お前ら何も知らないで この大会に参加したのか?

バッカじゃねーの、これは本当の殺しあいだ。

本物の銃があって何がおかしい?』

先ほどとは、違う口調で喋る向こう側の人に

俺達は、全員血の気が引いた。

『いいか、俺達はあと10分後にお前たちを殺しに行く。別に泣き叫んでてもいいぞ。カンケー無いから』

わけがわからない

俺は、パニくる頭の中で脳みそをフル回転させた。

五十嵐から無線を取り

「だったら、俺達のコードを教えます。コードを教えたら、試合は終わるんでしょ」

無線からしばらく応答がなかった。

コードとは、アルファベットと数字からなる

番号で、コードを入手し入力すると

武器にロックがかかり、その時点でゲーム終了となる

『だが、それを聞いてもコードを携帯パソコンに打つかどうかは俺達の判断だ。俺達の判断は、打たない。お前たちを殺す。以上、通信終わり。安心して泣き叫べ』

それからは、一切通信は繋がらなかった。


それからは、みんな今、置かれている状況を理解し

その場に座り、誰も口を開こうとは、しなかった。

「ちょっと、聞いてください。お願いです。応答してください」

ただ一人、無線に必死で話しかける康太を除いては

「康太 !!ウルセーよ もう、繋がらないんだ諦めろ・・ってか、少し黙ってろ」

痺れを切らせたのは大次だった。

「なんだと、諦めてどうする。お前らみたく、黙ってうつむいてろってのか?」

「そうだ、少し黙ってろ」

「黙っててどうする、そのまま殺されろってか?」

「そんな事言ってないだろ」

「なんだと・・ そもそも、お前があの時この大会について言い出さなければ・・」

続きを言おうとすると

勉が、途中で割って入ってきた。

「おぃ !!康太 それは、違うだろ。大次が言い出さなくてもきっと、俺達のどちらかが言い出してた。とにかく、これからどうするかだ」

「ぼ、僕は、降伏する。死にたくない」

龍之介の降伏と言う言葉に心が揺れたが

無線でのやり取りを思い出し また、どん底まで落とされる。

「無線聞いてただろ、あいつ等・・俺達がどんなに命乞いしても殺す気だったぞ降伏したって意味ねーょ」

俺は、涙声ながらそう訴えた。

「じゃぁ、どうすればいいんですか?僕は、死にたくない、人も殺したくない」

「俺だって死にたくねーょ」

「俺もだ」


みんながバラバラに言い合う中、一発の銃声が鳴った。

銃を撃ったのは、五十嵐だった。

「みんな、落ち着け。全員、死にたくないのは誰でも一緒だ。もちろん、向こうもな・・だったら、やることは一つだろ」

五十嵐は、立ち上がり、右の拳で自分の胸を二回叩き、拳を前に突き出した。

「いつも通りだ」

今の動作は、俺達が試合をする前にする

決まりの動作だ『心を一つに』

五十嵐は、そのまま全員が立ち上がるのを待った。

最初に立ち上がったのは、勉だった。

胸を二回叩き、拳を突き出す。次に裕大が立ち上がった。

龍之介、大次が立ち上がり拳を突き出した。


「リーダー」

立ち上がろうとしない康太に勉が声をかけた。

康太は、立ち上がり胸を二回叩き拳を突き出し深く深呼吸した。

「俺達は、一心同体、必ず生きて帰ろう」

これも決まり文句だ。

それを言い終わると、みんなで突き出した拳をぶつけあう

ピピピと腕時計が鳴った。

ちょうど、試合開始の時間だ。

「行くぞっ!!」

全員が、みんなを信じ持ち場につく


『敵は五人だ。理論セオリー通りなら、向こうは、五人一組ファイブマンセルで来るはずだ。俺が中央の指示係ポイントマンをやったら合図だ。全員で撃ちまくれ』

全員が、持ち場に移動する中

耳につけた無線から、五十嵐の声が聞こえてくる。

今までなら、声もなかなか聞けない奴の声を聞くとなんだか落ち着く


『敵発見、正面から近づいてくる。このままだと俺達の巣には、入らない』

勉から無線が入る。

「わかった。俺が行く」

康太は、立ち上がり

右の少し坂になった所にいる勉の指のサインで敵の位置と武器を把握する。

俺は、敵の方へ進み向こうから見えそうで見えない位置を保ちながら巣におびき寄せる。

敵は、俺についてくる。

巣の前まで、おびき寄せると俺は、急いで姿を消す。

あらかじめ用意しておいた草の中に身を潜め、銃を構え息を殺した。

敵は、ジワジワと巣に入ってくる。



車にかれそうになった時、一秒が十秒に感じることがある。

だが、今それを俺は感じている。敵の動きが、すごく遅く見える

遅いせいで、嫌な考えまで、浮かぶ・・

俺は、本当に引き金を引けるのか?

他のみんなは、引けるのか?

例え、俺が引けてもみんなはどうか?

引き金を引くと言うのは、人を殺すと言う事だ。

俺が、人殺しになる。

人ってそんな、簡単に殺していいものなのか?

俺にそんな事は本当にできるのか?

見ず知らずの人を殺せるのか・・

『みんな、黙って聞け』

五十嵐からの一本の無線で我に返った。

『今、本当に引き金を引けるのか?もし、俺が引かなくても他の奴がやってくれるんじゃないのか? ・・とか、思っている奴がいると思う。けどな、一人が引き金を引かないことで、そいつが死ぬのは仕方がない。でも、俺達のこの戦術では、一人が引き金を引かないことで死ぬのは、俺たちじゃない、康太だ。

それを肝に命じておけ』


そうだ、誰かが引き金を引かないことで撃たれるのは俺だ。

なぜなら、敵を正面で待ち構えるのは、俺と五十嵐だが、あいつは、300m先にいる。

そして、他の奴等は、左右にいるが、40m以上離れている。

俺は、15mもない・・・狙われるとしたら、俺だ。

『死ぬのは俺たちじゃない康太だ』

その言葉が、重く木霊する。

もし、誰も引き金を引いてくれなければ俺は死ぬ。

俺は、みんなに命を預けているようなものだ・・

俺はそれでいいのか?

『大丈夫だ。康太は死なせない。全員死なせない』

勉の声だ・・

この声で俺は、救われた。

大丈夫だ、みんなを信じろ・・何のための決まり動作と決まり文句だ。


この一瞬のためだ。



「チェック」

五十嵐のカウントが始まった。

大丈夫だ。やれる

「チェック」

みんなを信じろ

みんなを信じるんだ

「チェック」


銃声が一発鳴った。

中央にいた人の後頭部が、色々な物をぶちまけながら仰向けに倒れた。

それを合図に、左右に待ち構えていた勉達が一斉に撃ち始めた。

今だ、引き金を引け、引け、引け !!

引き金を引くんだ・・俺も身を乗り出し

引き金を引く・・・引け!!

「うわぁぁぁーー !!」

覚悟を決め引き金を引く

サブマシンガンは、一発一発、手に振動が、伝わってきた。

俺が撃った人は、大次も横から撃っていた。

弾丸を浴び、その場で、しばらく立ち尽くし倒れた。

また一人、ハンドガンを取り出し俺を狙って引き金を引こうとしていた。

そんな、あいつは他の奴がやっているはずだ。

俺は、銃口をそいつに向けたが間に合わない


一発の銃声が聞こえた。

弾丸が高い音を立てながら俺の耳の横を通り過ぎたのを感じた。

その瞬間、そいつは俺以外の全員から一斉射撃を喰らい

体を赤く染め服はズタボロになりその場に倒れた。


「康太 !!」

そう叫びながら、大次達が駆け寄ってくる。

「康太、大丈夫か?」

俺は、無事だが呼吸がかなり乱れていた。

目は大きく開き、ある記憶がフラッシュバックした。


台所で母親が、倒れてるのを見つけ

駆け寄るとその場には、大量の血が溜まっていて

片手には包丁、もう片方の手は、切り落とされていた。

俺は、とっさに包丁を母の手から離し、握り締めた。

すると、そこへ父親が息を切らせながら

やってきた。俺は、父親に向かい何かを言った・・



「康太、しっかりしろ !!」

大次が、俺の体をゆすっていた。

「あ・・・大丈夫だ」

「よかった・・」

俺の横では、涙を流している裕大がいた。

「勉と龍之介は?」

疑問に思った俺は、大次達に聞いた。

「あそこだよ」

その声には、何やら怒りが混ざっているように聞こえた。

目をやると勉が、龍之介の胸倉をつかみ叫んでいた

「なんで、引き金を引かなかったんだ」

「ごめん、ごめんょ・・わざとじゃないんだ」

「そのせいで、康太は死にかけたんだぞ」

「そ・・それでも 僕は、僕は人殺しなんかしたくない」

「てめぇは・・」

勉は、拳を強く握り龍之介を殴ろうとした。

だが握った拳は、龍之介に届く前に

五十嵐に手首を掴まれ、止められた。

「よせ、必ず一人は出ると思ってた。そう言う奴は、殴ったって変わらん」

「だからって・・」

「だからだ、おぃ、康太 お前は、こいつに命預けられるか?」

突然、俺に振られ驚いた。

俺は・・

「む、無理だ」

「なら決定だ、龍之介をチームから外す」

五十嵐からそんな言葉が出るとは思わなかった。

一番胸に突き刺さっているのは、龍之介だろう。背中を丸め、俯いてしまった。

それを見た大次は、弁護に回った。

「お、おぃ、いくらなんでもそれは、ないだろ」

「もともと、俺達は5人のチームだ。何も支障は出ない」

「本気で言ってんのか? ジョークでも通じねーぞ」

「もちろん本気だ。」

口を詰まらす。大次に代わって俺が続けた。

「仕方ないよ」

「あぁ、俺もそう思う。あいつはもぅ、俺達の仲間でもなんでもねぇ」

勉は、龍之介に指をさしながら憎しみをこめて言う

「みんな、落ち着けよ・・龍之介だって・・」

大次は、助け舟を求め裕大に目をやる

だが、裕大も首を横に振るだけだった。

「大次、いいか、俺達がこれからやろうとしている事は、ああ言う事だ」

五十嵐は、そう言いながら指をさした。

その方向には、なるべく触れたくなかった。

そう思い、誰も口には出さなかった光景が映し出された。


5人の死体だ・・俺達のすぐ横に転がっている。

なるべく見たくなかった、目を覆いたかった。

体の原型は、留めているが所々、肉片が飛び散り、グニャリと折れ曲がった体

俺達が、俺が、こいつらを殺した・・

そう思うと、突然、胃がひっくり返った。

俺だけではない、おそらく全員吐いていた。

ただ、五十嵐だけは、立ち尽くしているだけだった。

俺達が、こいつらを殺した。

自分が、生き残りたいがために・・口の中は、胃液まで出てきて酸っぱい味と匂いがする。

目には、涙があふれてきた。

「多分、これからも続くぞ」

五十嵐がそう呟く中、

「お、おぃ、こいつ・・」

勉が死体の一人に指をさした。

死体は、全員が覆面をしているが指をさした奴は、顎が無くなっていて覆面がめくれ上がっていた。

そして、そいつの顔は見た事のある顔だった。


説明書マニュアルだ・・山岸先生だよ」



なんとか前書きを追い抜く事に成功しました。

これからもよろしくお願いします。最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。

ご意見や感想、お待ちしています。

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