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第二十話 偽りの戦争

「五十嵐!!どうしたんだ?」

「わからねぇ・・ただ、俺はこれまでこの光景を夢見て生きてきた。これを目指して生きてきた。これから俺はどうやって生きていこう?」

「五十嵐・・」

「山頂に着いたら後は降りるだけ。けど、俺には降りる理由もないし気力もない」

五十嵐は銃を取り出しゆっくりと自分の頭に持って行った。だが、その銃を康太が奪い取った。

「俺がそんな事を見過ごすと思ったか?」

「だったら、俺はこれからどうすればいい?俺はもぅチームにおけないだろ」

「どうしてそう思う?」

「あいつが言ってたろ?俺は昔、仲間を殺した。それは事実だ。そんな奴をお前は信頼できるか?」

「・・・・」

「俺はお前達を裏切るかもしれない。それでもいいのか?」

「お前は裏切らねぇよ。お前は、俺を二回も身を挺して助けてくれた。それだけで十分だ。 昔と今のお前は違う。そうだろ?」

「・・・どうなのかな?変わらないような気もするけど」

「とにかく、俺を助けてくれたそれだけで十分だ。帰ろう」

「あっ、待って・・・腰が抜けて立てないんだ。助けてくれ」

「これで、俺を助けてくれた事、チャラな」

そう言いながら康太は五十嵐の肩を持ち建物から外に出た。




「おぃ、誰か!!五十嵐みたか?」

校庭では紅葉が始まり葉が赤く染め上がる頃、朝の教室では、珍しくと言うか初めて五十嵐の話題で持ちきりになった。

「今日来てないんじゃないか?」

「そうなのかな?いつも来てるから、来ないなんて珍しいよな」

「えっ?五十嵐来てるだろ?俺、今日見たぞ」

「だけど、今いねーだろ。定位置に・・・ていうか本当に見たのか?」

「そう言われると不安だけど・・」

「おぃ、誰か出席簿見てみろ」

「んなもん、先生が職員室持ってった」

「くそー気になる。あいつが読んでる本も !!」

「おぃ、探すぞ!!俺達、全員で」

そう言って教室から飛び出すが、生徒指導教員に捕まり男子全員みっちり指導を受ける事になる。

お陰さまで一時限目はつぶれる事にもなり、結局、五十嵐は学校に来ていない事が後で発覚する。



「創られた戦争、偽りの戦争での被害者は各国々に逃げ延びる奴もいた。俺はその中にまぎれて日本に戻ってきた。仮の身分証明書を作って親父の親戚を探して北海道までやってきた。知らないかもしれないが仙台とか都市部では、未だに配給制で難民が食糧難で苦しんでる。北海道ではそんな事はないけどな・・・」

ガンズショップで五十嵐がこれまでのあった事を康太と悠二に淡々と話していく。

「俺の親父は親類の中でははぶかれたいや、忘れ去りたい家族の汚点だったんだろう。金を毎月払うから家には近付くなと親戚に言われ、ここで一人暮らし始めて、銃はもぅ絶対に持たないと誓ってたのに俺にはやっぱり銃しかないってわかって店に行くと康太達に会った。あとは、わかるだろ?」

「戦争の体験者って・・・いや、無理に言わなくてもいいんだけど」

「別にいいよ。創られた戦争ってのは、日本も含めて他の国が勝手に創った戦争の事だ。けど、死んでいったのはそこの国の人間は少ない方だ。一番死んでいったのは、俺達のような傭兵だ。国の名誉だ国のためなんて唄って死んでいくのは極わずか、みんな金のために戦いに行く。俺が体験した戦争は終盤の方だったからな・・・どの国も傭兵は喉から手が出るほど欲しい物だった。

どこの国かもわからない所に雇われて、そいつ等のために代理戦争を繰り返す。昨日まで雇われてた所と戦うなんて事もよくあった。

・・・それが、偽りの戦争だ。

長く続いた戦争の中、親父はどこかの娼婦に俺を身籠らせた。日本に俺だけ連れて帰り、しばらく日本で育てた後、俺を連れてまた戦地に戻った」




親父は、孤児や貧困層の子供を人種も性別も関係無く拾い銃を持たせ戦い方を教えた。

「いいか、お前達は仲間だ !!だが、死にそうになっても絶対に助けようとするな !!

助けようとするなら、頭に鉛玉ぶち込んで楽にしてやれ」

親父は向こうの言葉で子供達にそう教えた。そして親父は、言葉のわからない俺をその子供達の中に放り込んだ。孤立していた俺も知らないうちにその中に溶け込んでいた。

言葉の意味は大体理解し受け答えは出来るが話す事は出来なかった。

体中泥だらけで、風呂もなく地面にお互い身を寄せ合いながら寝る。遠くで爆発音やここまで響く地響きに怯えながら寝た。

基本的な戦闘訓練が終わると親父は、俺達に弾と銃だけ持たせ戦場に放り出した。

そこらじゅうで爆音や銃声が鳴り響き俺達は、崩れた家の中で銃を抱きよせながら身をかがめた。

親父からの命令は「ここで生き残れ」たったそれだけだった。

家中の窓ガラスが一気に割れた時、全員がパニくった。

割れた窓から銃を突き出し自分を守るため引き金を引いた。応戦されて仲間が何人も死んだ。家に侵入してきた敵は、落ちてるガラスを拾ってメッタ刺しにした。

夜になっても親父は迎えには来なかった。体中に敵味方の血がついて暗闇に溶け込む中、全員の眼だけがギロリと白く不気味に光って見えた。

次の日もまたその繰り返しだった。何十人もいた仲間は両手で数えるほどになった。


その夜中、親父が迎えにやってきた。そん時、俺達は何をしてたと思う?

俺達は空腹のあまり死んだ人の生肉を食っていた。それを見た親父は、俺達に一瞬おびえた表情をしたが、その後、薄っすらと笑っていた。

おそらく親父は俺達に人を殺すことに対する恐怖心を振り払いたかったんだろうが、俺達はそれよりも上を行った。

「お前達の訓練は終わった」とも言った。

それを何度か繰り返し何人も仲間が増えた。男女関係無く親父は拾ってきたが、訓練を終了するころにはいつも女は死んでいた。

けど、訓練が終了したときに生き残ったのは一人だけの時があった。

そん時、やってきたのは女だった。体の至る所に痣があったが、そいつは生き残った。

生き残った理由は聞くなよ吐き気がする。


新メンバーに加え俺達はそこら中の国に雇われ戦った。戦いに勝つと今までに見た事がないような大金が目の前に積まれた。

俺達は戦いに勝つ喜びと生き残った達成感を全て金に結びつけた。

そんな中、親父の命令でメンバーの中で特殊チームが密かに作られた。

俺と女、それと何人かそして俺達は深夜活動することが多くなった。重役の暗殺任務や情報収集が主になった。女の武器を使った事もある。

そんな活動が評判を呼び俺達は引っ張りだこになった。

親父が悪魔になったのは、それからだ。

・・・仲間を二つにわけ敵対する国に俺達を売った。

親父は双方の国から莫大な金を貰い「仲間と味方は違う割り切れ」そう言って俺達の前から姿を消した。


全員がその状況を飲み込み元仲間に銃口を向ける中、俺は全員に聞いた。

「仲間に引き金は引けるのか?」


俺と他の奴等は覚悟が違った。俺は大金が目の前に積まれようが使い道がなかった。

けど他の奴等は、その金で自分の村、家族が豊かになるよう毎回全額送っていたんだ。

俺は何も背負っていないが、あいつ等は背負っているものは大きかった。

そんな奴等の思いを曲げる事は出来なかった。

そう理解はしていても俺は引き金を引く事は出来なかった。親父から貰った銃のスコープには仲間の顔が映る。

引き金をどんなに引こうと頑張っても引く事は出来なかった。


そんな中、俺達は敵を捕虜として捕まえた。そいつ等は、元仲間だった。その中にはあの女も含まれていた。俺達の国からは、そいつ等の射殺命令が下された。

その次の日、実行される事になり、見張りとして俺が任された。と言うより俺が志願した。

俺は、元仲間に聞いた。

「俺はこの戦場から逃げるついてくる奴はいるか?」

手を上げる奴は、いないと思っていた。脱走兵はどういう仕打ちを受けるかわかっていたからだ。

むしろ俺達がやる事もあった。死にたいと本気で思うくらいの容姿にされて、でも死ぬ事が出来ない。

そう言う風に親父に教育され実際にやってきた。けど、女が一人ついていくと意思表示した。


抜け出すのは簡単だった。仲間が手助けしてくれたから

けど、境界線を抜けるとそこからは敵同士。次の日から俺達は、仲間からの逃亡生活が始まった。

仲間からの追跡を逃れる毎日、夜も休むことなく銃弾が飛んでくる

恐怖と緊張の中、銃を握る手がガタガタと震え治まる事はなかった。


遂に仲間に追い込まれた。女に銃口、俺にナイフで襲いかかろうとしてきた時、俺は初めて仲間を殺した。

追い込まれてた女を助けるのではなく俺にナイフで襲いかかろうとする奴に俺は銃を向けて引き金を引いた。

死にたくない・・・ただそれだけの理由で俺は引き金を引いた。

仲間は俺の上に倒れこんだ。生暖かい物が俺の体にしみ込んでくる。


そん時、俺の何か抑えのような物が外れた。上に倒れこんだ死体を放り投げ女に銃口を向ける敵を殴り殺しにした。

女が俺を止めなかったら俺はずっとそいつを殴ってた。

仲間からの追撃はなくなり、あとは戦場から逃げだすだけだった。

けど、どこにいっても戦争だらけ、死体の中にまぎれて死んだふりをすることもあった。

頭の上をキャタピラが通過した時は、さすがに死んだと思った・・・どこを歩いても戦場だらけ、俺と女の疲労はピークに達していた。

女は突然、俺の銃を松葉杖として貸してほしいと言った。

食い物もなく足は骨と皮になった状態で歩き続けるんだから仕方ないと思って貸した。

そして無駄な体力も使いたくないそう思い何も考えずに俺は先に進もうと前を向いたその時、後ろで発砲音が聞こえ振り向くと頭が吹き飛んだ女が倒れていた。

あまりにも唐突で何が何だかわからない・・・どうして死んだのか理由もわからない。

頭の中でいくつかの仮説が浮かび上がる。自殺、もしくは暴発?

そして、最終的に一番可能性のある仮説が出来上がった。

事故

俺はあの銃の安全ロックをかけていなかった。俺のせいで女は死んだ。

そう思うと言葉では表現できない感情が込み上げてきた。けど、涙も何も出てこない・・・

ただ沈黙することしかできなかった。





「その後は、さっき言った通りだ。高校に入ろうと思ったのは、あいつ等にも夢があった。『だた勉強がしたい』と、俺がこの国で出来る唯一の罪滅ぼしだ」

部屋には沈黙と言う静かな時間が流れる。

「まぁ・・その罪滅ぼしも、リアルウォーと岸辺の名前を聞いた瞬間、意味は無くなっちまったけどな」

五十嵐は立ち上がり部屋から出て行こうとした。

「おぃ、どこに行くんだ?」

「練習だ。大丈夫だ試合にはこれまで通りしっかり出る。俺を外したかったらそうしてくれ。別に拒みはしない。いつかはこうなるとわかってた」

「馬鹿、外すわけないだろ。俺達はお前の仲間だ。お前が外れるとか言っても満場一致でお前をチームに引きづり戻してやる」

「あぁ・・・」

五十嵐は部屋に二人を残し出て行った。




『目標物から50m左です』

「くそっ」

一回も当たらないまま扉を開け外に出ると洋子が立っていた。

「どうしたの?スランプ」

「いつからそこにいたんだ?」

「今日学校来てなかったね、ズル休み?」

「俺が出てくるまで、ずっと待ってようとしてたのか」

「クラスのみんな心配してたよ」

「おぃ、そろそろ会話が成立してない事を突っこんでもいいか?」

「実はね今日渡したい物があってさ」

鞄の中をかき回しカードを一枚取り出した。

「これ、私が今まで読んだ本で面白かったなって思う奴。カードに入れといたからよかったら読んで」

「・・・どうやって読むんだ?」

カードを受け取り、珍しい物を見るかのように五十嵐はカードを眺めた。

「えっ?知らないの?ノートの横に差し込み口があるでしょ?そこに入れたら読めるの」

「あぁ、悪い・・・俺、実は目に障害があってノートとか発光する物、眩しすぎて長時間見れないんだ」

「え?何その嘘」

「いや、ほんと」

右目のコンタクトレンズを外し洋子の顔に右目を近づけた。

五十嵐の目をよく見ると、瞳孔が開きっぱなしで、瞳は透明に近い色をしていた。

異様な目の形、色に思わず息をのむ洋子。

コンタクトをまた入れ直すと元の色に戻っていた。

「直射日光とか見ちゃうと失明しちまうらしい」

「そうだったの・・・ごめんね。そんなこと知らなくて」

「あぁ、だからこのカード、返すの遅くなるかもしれない」

「え?いいよ・・無理して読まなくて」

「面白かったんだろ?面白いんなら読むよ」

「本当?」

「嘘言ってどうする」

五十嵐は右目を必要以上にこす

「どうしたの? 大丈夫」

「いや、ちょっと眩しくてさ」

「え?ごめん、私のせいだね」

「いや、気にするな・・・あぁそういや、裸眼で人の顔見たのお前が初めてだ」

「・・・・五十嵐君ってさホストとかにいそうだよね」

「はぁっ?なんで」

頬を赤く染めながら言う洋子に五十嵐は過剰反応した。

「いや・・何となく・・・それでおばさんとかに大ウケみたいな感じ」

「・・・生憎あいにく、俺は熟女好きじゃない」


「それより、私にもやらせてよ」

洋子は、五十嵐から銃を奪い取ろうとする。ただ五十嵐が銃を上に持ち上げると洋子がどんなに努力しようが届く事はなかった。

「駄目だ。俺が成功するまで」

「どうせ、なんか悩み事でもあんでしょ。無心になろうとしてないから失敗するんだよ」

「・・・おぉ、それだ。忘れてた」

五十嵐は距離を2800にセットし中に入った。

「ちょっと、届く訳ないでしょ」

「なら失敗する方に賭けるか?一日奴隷だぞ」

「え・・待って、じゃ成功する方」

「んな・・・なんで失敗する方に俺が賭けなきゃいけなんだよ」

「じゃ両方とも成功する方で」

五十嵐は狙撃態勢に入り目標物を捕え心の中で3つ数え引き金を引いた。

『目標物から1m手前です』


「・・・これは完全なスランプですな」

残念そうにうつむく五十嵐を横に洋子が笑いながらそう言った。




最後まで読んでいただきありがとうございます。二十話まで更新しておきながらなんですが、本当にネタが尽きてきました・・・

これからも無い頭を振り絞りながら頑張っていきたいと思います。

ご意見やご感想お待ちしております。

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