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第十七話 どうする事が、幸せか?

「大樹ってあの大樹か?・・・えっ大樹が、死んだ・・・?」

康太の記憶の中に大樹の顔が蘇える。

「あぁ、あいつ部活連中と仲良かったからな」

「でもガンズショップでは見てないぞ」

実際、そんな事は意味がないのに等しかった。ガンズショップはコンビニのように点々としてる。

「店なんてどこにでもある。初参加か、厳しいな・・」

「とにかく、俺。あいつ等にこの大会について説明する」

「俺達の事は隠しとけよ」

裕大の助言に康太は一度頷いた。



とりあえず、一通りの説明が終了した。

「だから、俺達は家族や周りの人を人質に取られてる。もちろんお前たちもだ」

『そんな・・そんなのってある訳ないじゃないですか』

「現にお前達の仲間は死んで俺達は、この大会ですでに戦ってる」

『・・・・』

「しばらく、そっちで話し合え。こっちも少し話し合いをする」

『はい・・』

そう言うと無線は切れた。降る雪は、段々と地面を白くさせていた。

「どうにか、出来ないかな」

「どうにかってどうさ?」

「いや・・助けられないかなって」

「正直、俺達もこの大会でこの性格ってのはキツいね・・・俺達もいつか、先生みたいな性格になっちまうのかな?」

しばらく、沈黙が続き、五十嵐が口を開いた。

「助けるにしても、どういう意味で助けるかにもよるんじゃないか?」

「意味って?」

「普通に助けると言う意味なら方法は一つだ」

その瞬間、全員がグッと息をのむ・・・誰もがその方法しかないと思ったからだ。

「けど、それをするとあいつ等をこっちの世界に放り込む事になっちまう。お前らだってその辛さは知ってるだろ?俺達だけじゃなく周りにも影響する。どっちにしろあいつ等に幸せはない。もちろん、俺達にも」

五十嵐がそう言うとまた沈黙が始まった。そして、次に口を開いたのは康太だった。

「・・・戦おう、どっちも決めれないなら、こっちの方が楽だ」


康太が無線を取り向こうに伝えようとした。だが、それを五十嵐が止めた。

「俺が言う」

五十嵐が無線を取りスイッチを押した。

「おぃ、聞こえるか」

『はい・・聞こえます』

「そっちの結論は出たか?」

『いえ、まだちょっと・・』

「そうか、ならこっちの結論から言う。お前達を殺しに行く」

『え・・』

驚いたのは向こうだけじゃなくこっちも驚いた。なぜなら、言い方ってものがある。

「これは、悩んだ結果、俺達の結論だ」

『え?・・・・・でも・・』

「いいか?今から30分後、俺達は移動を開始する。わかったか?30分後だ」

『ちょちょ、ちょっと待ってください』

「話し合いならそっちでやれ。お前たち、初参加の勝率何%か知ってるか?」

『よ、40%だと岸辺から聞いてます』

「どうしてそんなに低いかわかるか?原因は、通信が終わったあと、パニくるか、引き金を引けないかだ。だから、お前達が引き金を引かなくても、悪いが俺達は引く互いに命は惜しいからな。・・・・いいか?今から30分後だ。以上通信終わり」

無線の向こうから待ってくれと言う声も聞こえたが五十嵐は、無線を地面に叩きつけ壊した。

「お前、言い方ってもんがあるだろ!!」

五十嵐にキレる勉

「事実を言ったまでだ。それに強く言った方がいいだろ。向こうからの反論は一切聞かないですんだ」

「だからって一方的な俺達の結論を受け入れろって言ってるようなもんじゃないか」

「その通りだ。それに、もし俺達全員が自殺したとしても、向こうに一方的にこじつけたのと同じだろ」

言い争う二人を止めるかのように裕大が突然、口を開いた。

「もしかしたら、説明書マニュアルも同じ気持ちだったのかな?きつく言ったのは、俺達への配慮だったのかもしれない」

「お前な・・・あの動画見たろ?楽勝とか言ってるんだぞ」

「でもさ、あれって誰が言ってたのかな?一人とか二人だけがそう思って言っただけなんじゃない?俺だって正直、初参加って聞いて楽勝とか一瞬思っちゃったもん」

「てめっ・・・人を殺すのに楽とか辛いとかあるのかよ!!」

裕大に掴みかかる勉

「じゃぁ聞くけどさ!!勉は、命乞いする人や死にかけた人に引き金を引いた事はないのかよ!!・・・俺達だってそう言う人を殺してるじゃないか!!」

心当たりのある勉はそれ以上言えなかった。もちろん勉だけじゃなく康太にも心当たりがあり胸に深く突き刺さった。

「おぃ、止せ。他のチームなんて関係無い、俺達は俺達だ」


そうしていると、またしても遠くから銃声が聞こえた。

「どういう事だ?まだ時間には・・」

ただ、銃声は一発では終わらなかった。まるで銃撃戦が、始まっているかのようだった。

「まさか・・あいつ等」

勉が、音がする方に走り出し全員が後を追う。腰まである草をかき分け前に進む銃声は、大きくなるが数が減っていく。そして下りの斜面に差し掛かりその先の草が生えていない白と黒が混ざる地面は血で赤く染まり七人の死体が転がっていた。

「何があったってんだよ・・」

その時、死んでいたと思っていた一人がうつ伏せから仰向けになった。

それに気づき勉が駆け寄る。

「おぃ、大丈夫か?・・・テル?テルか?」

「勉・・?なんで・・なんでお迎えが、お前なんだよ」

「何があったんだよ」

「お、俺達また話し合っててそしたら、秀がまたパニクって抑えようとしたら撃ってきて全員で反撃したんだけど・・・・なかなか秀が死ななくて、でもこっちがどんどん死んで・・」

「おい・・テル?テル・・」


テルは静かに目を閉じ、また細かい雪が降り始める中、俺達が一発も撃つことなく試合が終了した。




「おぃ勉、聞いたか?」

「んぁ?何」

「大樹もそうなんだけどサッカー部の奴等。集団で家出したらしいぞ」

教室では、サッカー部数名の集団失踪の噂が飛び交っていた。

「ふ〜ん、そうなんだ・・」

「あぁ、でもどこに行くかとかも誰にも言ってないらしい。勉、何か知らない?」

「えっなんで俺?」

「そりゃ、お前、元サッカー部だろ?それに大樹とかとも仲良かったじゃん」

「そうかもしんねーけど、俺も知らね」

「ん〜そっかー、他のサッカー部に聞いても手掛かりないんだよ」

「お前、そう言うミステリアスなの好きだよな」

「ん?まぁな」

「変な所に首突っ込んで、首引っこ抜かれても、しらねぇぞ」

「うわっ、勉からそんな言葉が来るとは思ってなかった。けど実際、俺達の学年呪われてんのかな?」

サッカー部の失踪事件により知らず知らずのうちに『俺達のクラスは呪われてる』から『俺達の学年は』に変わっていた。

もしくは、俺達のクラスの呪いが感染し始めたと言われるようにもなっていた。




『目標物より10m手前です』

「なんで?いいじゃない10mぐらい」

「いや、駄目だろ。・・・っていうか、ここに何の用だ」

ある日、洋子がまたガンズショップに来ていた。

「えっ?いやーちょっと暇つぶしに」

少々テンパリ気味に洋子は言った。

「康太に用があるんじゃないのか?」

「いいの、康太には、ほぼ毎日会ってるようなもんだから」

「じゃぁ一体何の用だ?」

「何か用ないとここに来ちゃだめなの?」

「・・・別にそう言う訳じゃないが」

「・・あっそうだ。五十嵐君ってまだあの本読んでるの?」

「いや、もぅ読み終わった。今は違う奴を読んでる」

「え?なに」

「どうして教えなくちゃいけない」

「康太にこの前まで読んでた本、バラすわよ」

「今、読んでるのはこれだ」

「うわっ即答?」

そう言いながら五十嵐が出した本のタイトルを見ると『国際社会と法』と書かれていた。

「・・・読んでて理解できるの?」

「いや、全く」

「ところでさ、どうして本なの?アナログじゃないと何かだめなの?紙の本って今、高いでしょ?」

「これは無料だ。ゴミ捨て場に落ちてた」

「・・・・ゴミあさってるの?」

「おぃ、嫌な表現するな」

「うわ〜簡単に想像できそう」

「そういや、この前のジャンケンなんだが・・」

「うっ・・・さ〜てと、そろそろ練習始めるかな?」

「おぃ、いい加減俺の銃を返せ」

「いいじゃない、もぅ少し貸して」

「駄目だ。下手くそ」

「なによ、センスあるとか言ってたくせに」

「あれは言葉のあやだ」

そう言って無理やり銃を取ろうとしていると向こうから岸辺がやってきた。

「ちょ、ちょっと・・あっ店員さん。この人、痴漢です。俺の銃はどうとか言って襲いかかろうとしてます」(下ネタ)

「おぃ、何言ってやがる。俺の銃は、そんなのよりもっと立派だ」(下ネタ)

「あっヤバい、この人本当に変態だ!」

そんな事を言ってると岸辺が五十嵐達の所にやってきた。

「おぃ、五十嵐」

「なんだよ、言っておくがこれはジョークだぞ」

「そんな事、どうでもいい。俺と勝負だ」

「はぁっ?」


と言う事で急きょ、ライフルで飛んでくるフリスビーをどちらが多く撃ち落とすか、勝負することになった。

フリスビーを飛ばすタッチボタンを押すのは洋子。

今のところ勝負はほぼ互角なぜなら、一枚ずつ交互に撃ってるから。

「・・・っと言う訳なんだが・・どう思う?」

ライフルで撃ちながら五十嵐に問いかけた。

「どうって何が?」

「・・お前、人の話聞いてた?」

「言いたい事が遠まわしすぎて、意味が全然わからない、ハッキリ言え」

「言えるわけないだろ」

『一般人がいるって言うのに』

飛んでくるタイミングがまちまちなフリスビーに岸辺は、痺れを切らせた。

「おぃ、お譲ちゃん。もっと規則的にフリスビー飛ばしてくんないかな?」

「だってつまんないんだもん !!」

そう言って画面をバンバンと叩く

「わっ馬鹿・・」

画面に大量のフリスビーが飛び交う。慌てて撃ち落とすが、ここで遂に差が出て五十嵐がリード!

「おぃ、彼女は一体誰だ?」

「康太の彼女だ」

「違います !!幼馴染 !!」

そう言って、またしても画面を叩くここで少し岸辺が追いついた。

画面を叩くと大量に出る事を知った洋子は面白おかしく画面をバンバン叩くが、機械に『画面を強く叩きすぎないようお願いします。故障の原因になります』と怒られた。

「おぃ、知らないのか五十嵐。幼馴染は彼女になれないんだぞ」

「幼馴染は一生幼馴染ってか?」

「そうだ。だから、今のうちに唾つけとけ。意外と彼女がお前に気があるんじゃないのか?」

「違います !!そんなんじゃありません」

またもや、画面を叩くと

『おぃ、いい加減にしろよ!!もっと優しく叩け・・・てかお願いします。もぅ少し優しく叩いてください』

と、きつく怒られ?機械の反応に戸惑う洋子。

その機械と岸辺の言葉に動揺した五十嵐に追いつこうとした岸辺だったが、なんとか最後まで五十嵐が逃げ切った。


『五十嵐選手VS岸辺選手。勝者五十嵐選手』

そして、洋子は「私を心理戦の材料として使うな」そう言って帰った。

「・・で、どう思う?」

「ん?洋子の事か?」

「違う、さっきの事だ。本当に遠まわしすぎてわからなかったか?」

「なんで俺に聞く?っていうか年下の俺に相談って正直どうよ」

「うるさい。この際、プライドなんて関係無いんだよ」

「別にいいんじゃね?あいつ等にも聞いてみろよ。もぅみんな部屋に戻ってるはずだ」



部屋に入ると全員がいた。だが、全員が岸辺が入ってきた事に驚いた。

「なんだ、岸辺。なんか報告することでもあるの?」

康太が問いかける

「おぃ、みんな岸辺から重大発表がある」

五十嵐がそう言い席に着き、後につられ全員が座る。

「いや・・・重大発表と言うよりこれは、お前等に頼みたい事があるんだ」

髪をかき照れながら岸辺は話を続ける。

「お前達は、俺に聞こえてるとは知らずにだが・・えっ・・とだな、こう言った。

あいつは向こうの人間になるにはその性格ではきついとそれと、性格だって変っちまうとも言ってた。それでだな・・俺は、この性格でこのまま行こうと思ってた。

けど、それは勉に殴られてわかったんだが、気付かないうちに変わり始めてるって事がわかった。

・・・つまり、俺はあっちの人間にはなりたくないんだ。だから・・あっちを選ぶなら、俺はこっちの方がいい、・・・この性格を保つためならこっちの世界にいた方がいいと思う・・・」

なんとか、頑張って聞こうとしていたが途中から集中力が切れ始め目が虚ろになる全員。

それに気づいた岸辺は一呼吸置き、言いたい事を一気に吐き出した。

「だからだな !!率直に言うと、俺をお、お前達のチームに入れてくれ」

「はぁっ!?」

五十嵐以外の全員が驚き、開いた口が閉まらなかった。

「もし、入れてくれるなら、俺は今日で岸辺を辞める」

「岸辺が岸辺を辞めるとしたら俺達の担当はどうなる?」

「もちろん、俺が続ける。岸辺にも色々といるんだ。お前達が言ったように間近で試合を見る奴もいるんだから俺みたく試合に一緒に出たって問題ないだろ。俺が死ねば、担当が変わるそれだけだ」

全員が答えに困る中

「まぁ、良いんじゃねーの?狙撃センスで言えば五十嵐と同じレベルだし」

康太がそう言った。

「確かに、俺もいいと思う」

「賛成」

「五十嵐はどう思う?」

康太が聞くと

「俺が反対なら、ここに岸辺を連れてくると思うか?」

「なら、満場一致だ。よろしく岸辺」

「言ったろ、入れてくれるなら岸辺を辞めると・・・俺の名前は、悠二、浅野 悠二だ」

「悠二か・・なんか違和感あるな。よろしく悠二」

そう言って握手をしようと手を出した。

「ちなみに二十歳だ」

それに答えようと悠二も手を出したが、いきなり手を引かれた。

「はぁっ?二十歳?」

「な、なんだどうした」

全員が疑うような目つきでこっちを見てくる。

「ざっけんなよ!!おめーが二十歳なわけねーだろ!優しく見ても三十路は超えてる」

「そうだ!!俺達と三つしか変わんないってのは絶対に嘘だ。このおっさん顔」

「なわけねーだろ!!誰がおっさん顔だ。お前等のノリにだってついて行ける」

「ついてくんな、おっさんが!!」

「おっさんじゃねー!!」



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