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第十話 命なんて、脆くて軽い

『我々は、コードを教える』

試合開始前に、向こうから一方的な無線が入ってきた。向こうは、どうやら二回目の出場らしい。人数は七人、全てに守るべき家族がいる。

こんな所で全員無駄に、死にたくはない。だから、向こうは降伏することを宣言してきた。

そんな向こうからの申し出に康太達はまだ、無線には返事をしていなかった。


「どう思う?また、罠か?」

康太は、全員に聞いてみた。

「でも、罠だったとして、向こうにどんなメリットがある?」

「こっちは、まだ裕大が、帰ってきてないんだ。向こうの意見をのもう」

「五十嵐はどう思う?」

しばらく、黙って考えていたが

「・・罠では、無いと思う。けど、誰がコードを打つ?」

「どういう意味だ?」

「コードを打って、武器のロック以外にも何かが起こる可能性があるってことだ。もし、この交渉を飲むなら、誰が電気椅子のスイッチを押すかだ」

「まさか・・考えすぎだろ」

「これは、あくまでも可能性だ」

全員が、黙ってしまった。

「・・・向こうにも、聞いてみるか」



康太は、無線に手を伸ばした。

「こちら、チーム1 応答してください」

『コードを打ってくれますか?』

「まだ、決まってません。もしかしたら、コードを打つとあなた方は、死ぬかもしれません。それでもいいんですか?」

向こうからは、理解できなかったのか返事が返ってこない。

『まさか・・ウォーゲームでは、武器にロックがかかるだけで』

「これは、リアルウォーです。何が起こるかは、わかりません」

自分の口から出てきた言葉だが、確かにそうだと思ってしまった。けど、俺は心の中で何かが、プツリと外れた。

「そちらも、よく考えてください。それでもいいのなら・・・俺がコードを打ちます。まだ、時間はあります。ゆっくり考えてください・・・以上、通信終わり」



「康太・・本当にお前が打つのか?」

勉が、問いかけてきた。

「いや、やっぱり俺が打とう。お前には、重荷だ」

五十嵐が、そう言ってきたが、俺は

「俺達は、もぅ人殺しなんだ。いきなり、七人増えようが、変わりはない・・

さぁ・・みんな、もう少しで試合開始だ。念のため、周りには警戒しておこう」

言い終わると、ちょうどよく腕時計が、ピピピと鳴り出した。

康太の様子に誰もが疑問を持ったが、全員、丘の上から、周りを警戒した。


耳に装着した無線から大次の声が聞こえてくる。

『岸辺に聞ければいいんだけどな・・』

『ここでの会話は聞けないって言ってただろ。それに、例え聞いていても、あいつは何も教えてくれないさ』

『少しぐらい、教えてくれればいいのに』

『そうだな・・』

長々と大次と勉の会話が聞こえる中、五十嵐の声が割って入ってきた。

『来たぞ。林の俺から見て右の方向、距離350』

『やっぱり、嘘だったのか?』

全員が目視で確認した。林の中に動く人影が何人か確認できる

『・・いや、そうでもないみたいだ』

五十嵐が無線で、どうしてそう言うのかわかるには、しばらく時間がかかった。


暗い林の中を抜け、見晴らしのいい所に現れてのは、戦闘服ではなく、作業服を着た人達だった。

『下りてきてくれませんか?』

向こう側から、そう連絡があった。康太が立ち上がり、丘を下りて行った。

『康太 !!行くな、絶対にあれは何かの罠だ』

無線から勉の声が聞こえる

『勉と大次は、あいつ等の射程距離まで移動しろ!!俺がどうにかする』

五十嵐は、持ち場を離れ康太の後を追いかける。

敵の方に徐々に近づいて行く二人、五十嵐は、ショットガンを構え康太の横を歩くが、康太の方は、腰のホルダーに入ってはいるが、丸腰状態だった。

相手との距離はもう5mもないほどの距離になった時、五十嵐も銃を降ろした。

康太は、覆面を外し、五十嵐も外した。



目の前まで来て、ようやくわかった。

「驚いた。君たちか・・まさか、こんな再開をするとはね・・」

「あの・・ダジャレを言う人は」

「あぁ、部長は、最初の時にね・・」

「それで、どうしますか?」

聞くまでもないが、念のためだ

「あぁ・・コードを教える。例え、死んだとしても、君達を恨んだりしないそれを言いたくて来たんだが、まさか君達が相手だったとは・・」

「どうして、この大会に?」

「うちの小さな会社が破産寸前でね・・優勝賞金に目がくらんだ。けど、こんな戦いをしてまで金なんかいらない。また一からやり直すよ」

「そうですか・・」

「人を殺めてしまったから、元の日常には、戻れないかもしれないけどな。だが、これ以上、人殺しもしたくはない」

向こうから、コードが書いてある紙を渡された

「人を殺したことを・・」

「何だって?」

「人を殺したことを、悔やめるなら、あなた達はまだ人間です」

「あぁ、そうだな・・ありがとう」

俺は、腕につけた。携帯パソコンにコードを入力した。


だが次の日、新聞の誰も気づかないようなところに聞いた事のないような会社の倒産とその家族の無理心中の小さな記事が、載る事になった。



「いいか、もぅ二度とコードなんか打とうとするな・・・あのコードを打つと、手につけた発信器から微弱だが電流が流れる。その電流が、直に脳に到達すると、一瞬にして脳死体の出来上がりだ」

ミーティングルームに全員が集まり、岸辺の溜息混じりの説明を聞いていた。

「覚悟の上だったとしても、まさか家族にも火の粉がかかるとはな・・・さすがに、ひどいな・・」

「どうしてだ?あの人達は、試合で死んだんだぞ!!なのにどうして、家族まで殺されなくちゃいけないんだ」

勉が涙声ながら岸辺に訴える。

「・・おそらく、他の奴等への見せしめだ。ちゃんと武器を使って戦えってな、さもないと・・」

続きを言おうとしたら、椅子で大きな音を立てながら倒し突然、康太が立ち上がった。

「すまん、これ以上は言わん」

「いや、そうじゃない。練習に行ってくる」

康太は、そう言うと部屋から出て行った。

「大丈夫なのか?あいつは・・」

心配する岸辺に、勉が言った。

「無理もないだろ。康太が、あの家族を殺したようなもんなんだぞ」

「いや、あいつ、もしかして・・・いや、何でもない」

「・・なんだよ。途中で止めるなよ 気になるじゃないか」

勉がそう言う中、岸辺は、しばらく黙っていたが口を開いた。

「人を殺すことに、快感を覚えてきたんじゃないのか・・?」

「まさか・・そんな訳ねーだろ !!」

「一瞬戸惑ったが、それは少しだが、心当たりがあるからじゃないのか?いいか・・もし、少しでもおかしい動作が、あったら俺に報告してくれ」

確かに、康太の様子は少しではなく、かなりおかしい所はある。けど・・だからと言って・・

その時、腕を組みながら椅子に座っていた五十嵐が前にある机を蹴り飛ばした。

「そうじゃねーだろ」

五十嵐の声は、相変わらず静かだが怒りが入っているように聞こえた。

「俺も練習に行ってくる」

ロッカーを開け、ライフルを取り岸辺の前を通り過ぎる時に

「あんたの過去に何があったかは、知らないけどな。それを、俺達と重ねてんじゃねーょ。見え見えなんだよ」

そう言うと、五十嵐は部屋を出て行った。静まり返る部屋の中で、岸辺が突然、泣きながら笑い出した。

「ハハハハッ・・・そうだな・・そうだよな、そりゃそうだ。ようやくわかった。どうしてこいつ等に感情移入しちまう訳が・・」

「お、おぃどうしたんだよ。岸辺・・過去ってなんだよ」

「プレイヤーに心配されるなんて紹介者失格だな・・・まぁ、いいお前等の過去を知っているのに俺だけ話さないのも、なんだからな」

岸辺は、制服の左の袖を捲りあげた。すると手首には、俺達が付けているのと同じ発信器が付いていた。

「ど、どういう事だよ。岸辺っ !!なんだよそれ・・」

「俺もプレイヤーだ。いや、だったの方がいいかな」

「はぁっ?意味わかんねーよ」

「話は終わりだ。それじゃぁな」

岸辺は部屋から出て行った。



五十嵐は、受付の前を通り射撃場へ向かう途中だった。

「あれ・・五十嵐君?」

声が聞こえた方を向くと、そこには洋子いて駆け寄ってきていた。

「五十嵐君、どうしてこんな所にいるの?」

「それはこっちのセリフだ。どうしてこんな所にいる」

「うん、実はね・・ここで康太が働いてるって聞いてね。まぁ聞いたというか、聞こえたというか・・・とりあえず、本当なのかなって見に来たの。でも、店員もいないし今日はお休みなのかなって思ってたら、目の前を五十嵐君が歩いてるんだもん。びっくりしちゃった。五十嵐君は、ここで康太を見た事ある?」

しばらく、五十嵐は黙っていたが

「まぁ、ここで待っていたのはいい判断だな」

「え?そうなの」

「あぁ、この建物は、受付をはさんで向かって左側は全て個室になっていて、右側は、一階から接近戦、二階は中近距離、三階は様々なフィールド、四階は遠距離、狙撃場になっている。

荷物とかは、個室に置いて行くから。必ずここを通るんだ」

「へぇ〜詳しいね」

「あぁ、多分、康太なら一階にいるだろ。一緒に見に行ってみるか?」

「本当?ありがと〜」


観戦席から見てみると康太は、接近戦ルームで誰かと戦っていた。

「どっちが康太?」

確かに、両方覆面をしているから、始めてみる人にとってはどっちが誰だとか、見わけがつかない。

「右側の方だ」

互いに正面に構え、ナイフを構えながらにらみ合いが続いていた。相手が、ナイフで突いてきた時、康太はすばやくその手を取り手首を返し、相手を地面に倒して喉元にナイフを突きつけた。

「勝ったの?」

「あぁ・・これで相手が」

相手はナイフを放し、両手を上げ降参する。

その瞬間、康太は相手の喉にナイフを突き刺した。

『ゲーム終了、勝者 井上選手』

康太は、倒した相手には目もくれず、メインゲートに歩いて行った。

「え・・何、今の?」

「ちょっと、ここで待ってろ」

五十嵐は、そう言うと観戦席から出て行き康太の所へ向かった。だが、一歩遅かった。

「なんだ、あのゲームは !!」

五十嵐が、到着する前に言いたかったことを誰がが先に叫んでいた。様子を隠れて見てみると、勉が康太に掴みかかっていた。

「どうして、敵が手を上げる中とどめを刺した?これは、あの試合じゃないんだぞ!!ごっちゃ混ぜにしてんじゃねーよ !!」

五十嵐は、その後は何も聞かずその場を去った。観戦席に戻ると、洋子が席に座って待っていた。

「あ、五十嵐君」

「ここから、下に降りれる。康太もそこにいる」

そう言うと、五十嵐は観戦席から出て行った。



崩れたビルや瓦礫が、入り組む市街地の中、三つの目標物、距離は550。崩れてはいるが、全体を見渡せる古い教会の中に身を潜める。一つ目の目標物に狙いを合わせる。

そいつは、あえて急所を外す。引き金を引くと脇腹に弾を喰らいその場に倒れる。

狙撃に気づき遮蔽物しゃへいぶつに身を隠す。目標物は、倒れている奴を助けようと一人が飛び出し、もう一人が、あたりかまわず援護射撃をする。

身を隠すすぐ横で弾がはじける音がする。すかさず、壁に隠れると後ろの壁に何発も弾が着弾する音と衝撃が伝わってくる。

俺は、撃ちまくる的の頭に狙いを定め、引き金を引く。そして、一人を背負い壁に身を隠そうとする的に標準を合わせ、引き金を引いた。

『シュミレーション終了』

「映像シュミレーション終了」

『確認しました。映像シュミレーション終了します』

すると、市街地が段々と溶けて行き次第に狭い個室に変わった。

五十嵐は、映像を映し出す眼鏡とイヤホンを外し外に出た。


「五十嵐君、すごいね。レベル5のコンピューター3人相手でも、勝っちゃうんだ」

個室を出ると、目の前に洋子が立っていた。

「なんで、ここにいる。康太の所に行ったんじゃないのか?」

「いいの、康太がここにいるって事がわかれば安心だから・・それにしても、この店、人少ないけどここの階は、本当に少ないね」

「あぁ・・狙撃手は、人気ないからな」

「さっき、五十嵐君ぐらいの身長の店員が、五十嵐君と同じ部屋に入って行っただけであとは私達しかいないよ」

「そうか・・・・やってみるか?」

やけにソワソワとする洋子に、初めは黙っていようと思っていたが、目で訴える洋子に、根負けし自分のライフルを洋子に渡した。

「えっ、いいの?」

「あぁ・・でもここは、初めての奴には難しいからあっちだ」

バッティングセンターのように区分けされた所に移動し中に洋子を入れた。

「距離は300m。風とかで、ほとんど影響されないからスコープで目標物をとらえたら、引き金を引け」

外で、目標物の設定をしながら洋子に言った。

「300m?そんなに遠かったら当たらないよ」

「・・・じゃぁ、150」

直立した状態で銃を構える洋子は、なかなか様になっていた。標準を合わせ、引き金を引くと

ガチッっと音がし途中で引き金が止まった。

「引けないよ」

「安全ロックがかかってる。外さないと引き金の少し上の方にある」

「えっ?どこ」

洋子は、安全ロックを探して銃口を自分の頭に向けた

「馬鹿っ、銃口を自分に向けるな !!」

五十嵐は急いで、洋子のいる所へ駆け込んだ。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

毎回毎回ヤベッ・・ネタが尽きた!!とかハラハラドキドキしながらなんとか十話まで行くことができました。

これからもよろしくお願い致します。ご意見ご感想お待ちしています。

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