第二百二十章 秘密部隊の実態
マリは驚いて、「本当なのですか?機械獣が出現する以前から海坊主は色々と活動していたのですか?」と信じられない様子でした。
上官は、「当時は機械獣もなく、ヘリや戦闘機で上空からスピードの出ている車のドライバーを射殺して暴走車にするなどして混乱させて、その間に海坊主が何らかの作戦行動を取っていました。火事場の泥棒のような手口だ。その暴走車の犠牲者の一人が君の母だ。あの時は、海坊主の戦闘機目撃情報があり、由美子さんがジェット戦闘機で現場に急行している所でした。由美子さんがもう少し早く現場に到着していれば、君の母は亡くなる事はなかったと思います。」と返答しました。
マリは、「由美子さんの歳でまだ現役のパイロットなのですか?」と信じられない様子でした。
上官は、「残念ながら由美子さんも、もう歳なので、その秘密部隊の指揮官で、今は陸上から航空部隊の指揮を取っています。もうジェット戦闘機の操縦桿を握る事はないでしょう。だから彼女の事は誰にも知られないようにしていました。彼女自身も周囲には、航空機は嫌いだと言っている。それをお前がゴチャゴチャと穿り返して、もし海坊主に狙われたらどうする気だ。由美子さんの操縦技術はマリには及びませんでしたが、アメリカ軍のアクロバット飛行チームよりかは勝っていました。軍のパイロットではなく、更に女性なので、秘密部隊のパイロットに最適でした。由美子さんから先日連絡があり、“マリさんが私の卒業した航空学校で私の事を色々と調べていたらしいです。その後喫茶店で会おうと言ってきました。どうやらマリさんに私の事がばれたようです。秘密部隊に迷惑を掛けるといけませんので、私はこの部隊から抜けます。”と言ってきたぞ。秘密部隊を抜けたので、娘がパイロットになる事を許したんだ。」と説明しました。
マリは、「由美子さんが秘密部隊の隊員だとも知らずに余計な事をして申し訳御座いませんでした。しかし、由美子さんは私の叔母になりますので、年齢的に秘密部隊を抜ける潮時だったのではないですか?」と母の妹だから七十台?と考えていました。
上官は、「確かにそうかも知れませんが、由美子さんの指揮能力は優秀でした。ハーケン特別隊は、隊員が家族だった為にチームワークは良かったですか、秘密部隊は腕に自信のあるパイロットを集めている為に、各自それなりの考えを持っていて、皆バラバラに動いて収集がつきません。由美子さんだからこそ上手くまとめていましたが、あのチームをまとめられる人物に心当たりがない。解散する可能性もあります。もし解散すれば、今まで秘密部隊で対応していた機械獣以外の海坊主の対応もハーケン特別隊の任務になるぞ。」と指摘しました。
マリは、「もし解散になれば、その責任の一端は私にもありますので、秘密部隊の隊員はハーケン特別対で引き取ります。もし彼らを上手くまとめられなかったら、ハーケン特別隊は秘密部隊と違って、その存在を公表していますので、その時は由美子さんに相談役として来て貰うわ。」と秘密部隊が解散になった時の対応を考えていました。
上官は、「そうだな。可能であればそれがいいかもしれませんね。隊員をまとめるだけではなく、マリのドジもカバーして貰えるかもしれませんのでね。」と笑っていました。
マリは、「上官!それはどういう意味ですか?確かに私も大きな事は言えませんが、そんなにドジではないですよ。その件はそういう事にして、先程の話で、私の母が亡くなった事故も海坊主が絡んでいたという事ですが、当時の報道では海坊主の事は一切出ていませんでした。確か報道や警察の説明では、持病のあるドライバーが運転中に意識不明になり、暴走車になったと記憶しています。海坊主が絡んでいたのは本当なのですか?」と上官の説明に不信感を抱きました。
上官は、「何だ!その言い方は?丸で私が嘘を吐いているような言い方ではないか!私が信用できないのか?海坊主の事を発表すれば、世間が混乱する可能性があった為に、この件以外でも海坊主に関する事は全て軍が伏せていました。しかし機械獣に関しては、マスコミや世間が騒ぎ伏せられなかった為に、ハーケン特別隊の事は、世間を安心させてパニックを防ぐ意味からも発表しました。」と返答しました。
マリは、「何故アクロバット飛行チームに出撃依頼がなかったのですか?私でしたら間に合ったかもしれないし、もし間に合わなくても母の仇が取れたかもしれない。」と悔しがっていました。
上官は、「今も言ったように海坊主の事は全て伏せていて、秘密部隊で対応する事になっていました。マリは納得できないかもしれませんが、管轄が違うという事だ。消防署の近くで強盗事件が発生しても消防署は出動しないだろう。遠くても警察が出動するだろう。同じ事だ。機械獣出現まで海坊主の件でアクロバット飛行チームに出撃依頼はなかっただろう。それと、由美子さんが対応した中の五十%は、アクロバット飛行チームでも撃墜不可能でした。それにマリ、お前はあの時、両親が事故に遭い乗務できる精神状態ではないと言っていたではないか!そんな精神状態のマリに安心して任せられると思うか?」と返答しました。
マリは、「最初に機械獣が出現した時は、何故秘密部隊ではなく、アクロバット飛行チームに出撃依頼があったのですか?」と不思議そうでした。
上官は、「勿論今までのように秘密部隊が出撃しましたが、由美子さんが交戦して、“私達には無理です。マリさんは私以上のパイロットだと聞きました。マリさんに繋ぐ為に、アクロバット飛行チームの出撃要請をします。”と報告してきたからだ。」と返答しました。
マリは、「それでは、最初に出撃したチームは撃墜される事が解っていながら、私に繋ぐ為だけに出撃したのですか?」と切れました。
上官は、「お前は、彼氏の事になると精神不安定になるな。もっと落ち着いて周りを見ろ!それがお前の最大の弱点だ。私も隊員を無駄死にさせるような命令はしない。機械獣のビデオ撮影が任務だ。」と返答しました。
マリは、「無理な交戦をしたようですが、それはパイロットも知っていたのですか?」と不思議そうでした。
上官は、「当然リーダーにもそれを伝えたが、ビデオ撮影の他に、交戦した記録があった方が良いと無理な交戦をした事が撃墜された原因だ。」と返答しました。
マリは、「彼は何故無理な交戦をしたのですか?彼の操縦技術では撃墜される事はないと思います。」と不思議そうでした。
上官は、「彼はマリと同様にマリの事になると精神不安定になったようです。彼はマリに出撃要請がある事を予想して、マリの為に少しでも多くのデーターを集めようとしたようです。まったく二人とも相手の事ばかり考えて回りが見えなくなっていたのだから。私がマリ達の事に気付いたのは、そのような事が色々とあったからだ。他にも何か心当たりがあるだろう。」と返答して、マリが次郎の事に気付かないように先手を打っておきました。
マリは、「そう言えば色々と心当たりがあります。私には冷静さがないというのですか?」と不満そうでした。
上官は、「由美子さんは自分だけではなく、部下も守る為に交戦を途中で中止したのだ。優秀な指揮官は部下を大切にしている事を知っているか?由美子さんとその部下は、一人も戦死していませんし、撃墜もされていません。」と返答しました。
マリは、「その記録を秘密部隊の由美子さんに見せたのですか?」と疑問に感じました。
上官は、「勿論由美子さんにも見せたが、由美子さんは、“この記録を分析しても私には無理です。”と断ってきたよ。その後マリが撃墜したと聞いて、“さすがマリさんですね。機械獣が生物ではなくて機械だとは私には見抜けませんでした。素早いのは生物だからだと思っていました。”と感心していたよ。」と返答しました。
マリは、「しかし、由美子さんは日本に住んでいたのではないですか?そんな由美子さんにアメリカ空軍の秘密部隊の隊員が務まるのですか?」と不思議そうでした。
上官は、「由美子さんの娘さんから何も聞いてないのか?由美子さんは仕事の関係で日本にいる事は少ない事を。アメリカだけではなく、オーストラリアで海坊主の活動が確認されれば由美子さんは暫くオーストラリアへ出張していた筈だ。」と返答しました。
マリは、「そう言えば、そんな事を娘の広美さんから聞いた事があります。てっきりキャリアウーマンだとばかり思っていました。」と納得していました。
上官は、「マリ、いい加減にしろよ。そんな話を聞いていれば普通は気付くだろう。マリと話をするのは疲れるよ。」と呆れていました。
マリは、「私の母が暴走車に巻き込まれた時に対応したパイロットは由美子さんだったと今聞きましたが、確か由美子さんはその時入院していたと聞きました。どういう事ですか?」とまだ理解できてない様子でした。
上官は、「マリ、お前本当にいい加減にしろよ。本当に解らないのか?その時、由美子さんは海坊主と交戦中だった為に、連絡が取れなかった事ぐらい解るだろう。当然由美子さんの母親は、由美子さんが秘密部隊の隊員である事は知らなかった為に、連絡が取れないとも言えないと思って、入院中だと言ったのだろうと見当は付くだろう。今度から私に質問する時は、じっくりと考えてから質問しろよ。でないと私も疲れるよ。秘密部隊が解散しなくても、由美子さんにハーケン特別隊に来て貰ったほうがいいかもしれませんね。」ともっと確りするように忠告しました。
次回投稿予定日は、10月16日です。