第二百三十九章 マリ、地球に帰る
海坊主の機械獣を全機撃墜すると、「これが目にも止まらぬ早業ね。陽子さんの真上にいますよ。」と、何処かで聞いた声が通信機から流れて来ました。
陽子は、「えっ!嘘!まさかマリさん?」と驚きました。
マリは、「私の声を覚えていてくれて有難う。紅葉、私の戦闘艦に着艦して。陽子さんの艦と間違わないようにね。外観は同じですので。それと、私を地球まで送ってくれた大型多目的艦の艦長が、宇宙戦艦より探査能力に優れているので、海坊主の基地と本部の探査をしてくれています。」と現状を伝えました。
マリの戦闘艦に乗りこんだ紅葉は、マリから、戦闘艦の操作方法を教わりました。そして、「一人でできない所は、声に出せば、コンピューターが反応します。基本的にこれだけ大きい戦闘艦でも一人で操作可能です。但し、音声認識と指紋照合システムに加え、DNAもチェックしている為に、この艦は私にしか操作できません。紅葉専用の戦闘艦は、大型多目的艦の中にあります。私の成績が優秀でしたので、紅葉のテストは、大型多目的艦の艦長が代理でテスト可能です。合格すれば、その場で、紅葉の音声と指紋とDNAを登録可能なように、技術者が搭乗しています。戦闘艦の操作方法を覚えたら、大型多目的艦の艦長の所に行きますよ。という事ですので、陽子さん、紅葉を連れて行きますので、後はお願いします。」と今後の事を説明しました。
紅葉は、「陽子さん達も戦闘艦の艦長ライセンス取得テストの時に、テレジア星に行ったのでしょう?私だけ行けないだなんてずるいわよ。」と不満そうでした。
マリは、「テレジア星まで片道、テレジア星人は数秒ですが、地球人は体力的な問題から数時間掛かります。今は宇宙旅行している場合じゃないでしょう。我侭言わないの。」と宥めて地球を離れました。
陽子は刑事に、「あ~あ、言いたい事だけ言って、さっさと行っちゃったわね。兎に角、着陸するわね。」と戦闘から解放されて気が抜けていました。
着陸した陽子と刑事はマスコミにもみくちゃにされましたが、陽子がスピーカーで丸東組を捜査している、警察、消防に対して、「今からタイムマシンで修復します。早く外にでないと、時間の渦に巻き込まれますよ。その他、近所の方も、ご迷惑を掛けて申し訳御座いませんでした。修復希望の方は申し出て下さい。タイムマシンを使用して、数分で戻せます。」と丸東組に警察が入って行った為に追い払おうとしました。
陽子は、戦闘艦に乗り込み、丸東組上空から、再度スピーカーで、「只今より、タイムマシンを使用します。」と忠告して修復を開始しました。
戦闘艦から、光の帯びが出力されて、ゆっくりと移動しました。移動した後は完全に元通りになっていました。
謎のUFOだと言っても、相手はやくざの組長なので本気にしていなかった警察や消防は慌てて退避し始めました。
その後着陸した陽子は、再びマスコミにもみくちゃにされました。マスコミの興味は、やくざの組事務所から、ハーケン号や謎のUFOが出現した事でした。
マスコミの質問に陽子は、「何故、ハーケン特別隊の航空部隊だけ基地が発見されなかったのかは、皆さんも見ていたので、もう、解っていると思いますが、私達、丸東組内部にあったからです。まさかここがばれるとは思っていませんでした。マリさんは、海坊主に狙撃された時に、今後も狙撃される恐れもあり、近くにいる人を巻き込む可能性もあった為に、死亡した事にして、私達がここで匿っていました。それ以来ずっと、ここに住んでいます。そして、皆さんが、謎のUFOと呼んでいる、この戦闘艦は、テレジア星・・・・」と説明していると、コスモスより通信が入りました。
「陽子さん、菊枝さん、海坊主に襲われたらしいですね。大丈夫ですか?大型多目的艦のサクラ艦長が海坊主の基地を探査してくれました。その結果、小惑星に約五十ありました。五十と言っても、小惑星自体小さいので基地自体は小さいのですが、あちこちに点在しています。そして大きな基地が、土星の衛星タイタンと、冥王星にありました。どちらかが、本拠地だと思われます。紅葉さんも、サクラ艦長のテストに合格した為に、いま技術者のフジコさんが、音声や指紋やDNAなどの登録を行っています。それが完了すると、紅葉さんが自分の戦闘艦で訓練して、感覚を掴んだ所で、海坊主との最終決戦に臨みます。敵の基地が多過ぎる為に、菊枝さん、陽子さん、と時間が取れれば、渚さんにも戦闘艦で、この作戦に参加して頂きたいです。」と依頼されました。
陽子は、その内容を不信に感じて、「技術者のフジコさんって、博士の事ですよね?博士は医者って言っていませんでしたか?もし、そうだとすれば、何故自分の大型探査艦で来なかったのですか?」と首を傾げました。
コスモスは、「博士は私達と違い天才なので、医者・技術者・科学者のライセンスを持っています。現在地球は、海坊主との交戦状態にある為に、戦闘能力が殆どない大型探査艦を使用するのは、危険だと判断して、アネゴの大型多目的艦に同乗したと聞いています。」と返答しました。
陽子と菊枝はマスコミに、「いつ出撃するかは不明です。同行したければ戦闘艦二隻とも開放しておきますので、どちらかの戦闘艦に乗っておいて下さい。案内表示にしたがってコックピットまで進んで下さい。但し命の保証はできません。戦闘艦内部は撮影して頂いても良いですが、案内表示板で示されている場所のみにして下さい。場所によっては地球の環境になってない場所や肉食ペットがいる場所もある為に、命の保証はできませんし、他のマスコミの方も巻き添えになります。誰かがそのような場所に入ろうとすれば、命がほしければ止めて下さい。皆さん一緒にティラノサウルスほどの大きさの肉食ペットのおやつになりますよ。」と説明しました。
出撃するまでマスコミは二手に分かれて、一方は、戦闘艦に乗り込み、内部の撮影と、出撃後の戦闘の様子などを取材して、もう片方は、ハーケン特別隊と丸東組について、取材しましたが、ハーケン特別隊は秘密部隊の為に、取材不可能でしたので、主に丸東組について取材しました。
丸東組の資金源は主に風俗関係なので、丸東組に関係のある風俗嬢などにインタビューして、話を聞きました。
風俗嬢は、「私達の生まれ故郷は治安が悪く、無法地帯です。殺人などは真っ昼間に堂々とショーとして行われています。私は、競りに掛けられて、もう少しで生きた状態で、観客の前で解剖される所を、丸東組が競り落としてくれた為に、助かりました。風俗嬢をして、競り落とした金額を丸東組に返却すると、開放してくれます。私達の生まれ故郷では、丸東組は神様です。いつも手を合わせて、“早く助けに来て下さい。”と祈っています。何故、世間は丸東組を目の仇にするのですか?私と同じ風俗嬢が、お金を貯めて、“あと十万円で、自由の身になれる”と喜んでいたのに、警察に摘発されて、強制送還されました。その風俗嬢は、観客の前で檻に空腹のトラと一緒に裸で入れられて、観客の見ている前で、トラに食い殺されたそうです。何故、あなた方は、私達を殺そうとするのですか?丸東組の邪魔をしないで下さい。あなた方は、ルールとか口先ばかりで、無法地帯は怖くて誰も助けようとしないではないですか?丸東組の邪魔をするのでしたら、あなた方が助けに来て下さい。丸東組は、そんな危険な無法地帯にでも、助けに来てくれます。」とカメラに向かい、涙ながらに訴えていました。
アナウンサーは驚いて、「それは、本当ですか?私達は、丸東組は、やくざの中でも特に恐いやくざだと聞いていますよ。」と再度確認しましまた。
風俗嬢は、「丸東組は人命救助として活動しています。今の組長はエスベック病の手術に世界で始めて成功した梅沢陽子さんです。丸東組が病院などから足が付かないのは、昔から世界的名医が組員の手当てをしていたからです。陽子さんが組長になる前は、神の手を持つと噂されていました東城菊枝先生が手当てしていたそうです。やくざの縄張りなどは無視して活動している為に、やくざ同士の争いに巻き込まれる事が多いのですが、丸東組は人命を軽視するやくざ相手ですと遠慮しませんし許しません。丸東組と争ったやくざは、何故か何処に隠れても必ず突き止められて、丸東組に拉致されて、その後の行方は誰も知りません。今迄、組長を暗殺しようとしたやくざは何人もいますが、暗殺しようとしたやくざが行方不明になり、組長は無傷です。やくざに恐がられています。色んなやくざが丸東組を恐がっている為に、それを見聞きした人が、そのように感じたのではないですか?私達にはとても優しいお兄さんみたいな人ばかりですよ。今考えると、丸東組のバックにはテレジア星人という科学の発達した宇宙人が付いていたからかも知れません。行方不明者も宇宙へ連れ出されたのかもしれませんね。」と返答しました。
アナウンサーはカメラに向かい、「丸東組の実態が解ったような気がします。ハーケン特別隊と何か関係があっても不思議ではないような気がして来ましたが、皆さんはどう感じましたか?」と喋っていました。
その後、コスモスから、紅葉の準備ができた為に、すぐに出撃すると連絡が入り、菊枝と陽子も出撃して行きました。渚は執刀中でしたので、後程、出撃するようにとメールを残しておきました。
次回投稿予定日は、1月8日です。




