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不意打ち

っ!?この位置に居続けるのはマズいっ……!



俺の脳裏にこれでもかっていうくらい警鐘がけたたましく鳴り響く。俺は一刻も早くこの位置から逃げるため、上手く動かせない手足を懸命にじたばたさせ、母さんの手からすり抜けようと試みる。



王子の言葉に衝撃を受けていたせいかそこまで母さんの拘束は強くなかった。そのため懸命に暴れていると、それほど時間をかけずズルッと母さんの手から抜け出す事に成功した。



母さんの手という支えを失った俺は、当然の如く重力により自由落下を始める。



刹那の後、俺の頭を掠める様にして、大きな火球がもの凄い速さでさっきまで俺が居た位置を通り過ぎて行った。



もしあそこに居たままだったら………。そう考えると嫌な汗が噴き出すのを感じた。まさに間一髪だ。



ただ、火球を避けたのまでは良かったが、このまま地面に激突するとそれはそれで危ない。だが幸いな事に、俺が手からすり抜けたことに気づいた母さんが地面と激突する前に受け止めてくれた。



取り敢えず当面の命の危機を回避したことで俺は小さく安堵の溜息をつく。



しかし、少々生命力が不安になった俺は、一応確認してみるかと思い、ステータスオープンと小さく呟く。



シウ

種族:人族/森人族

年齢:0(6ヶ月)

lv:1

生命力:3/8 (+4)

魔力:26/26

筋力:2

敏捷:2

器用さ:12

耐久:2

賢さ:20

精神力:15

運:50


スキル

[直感] max

[超直感]max

[料理] 6


称号

[王の選択]

直感系スキルを極めた者に与えられる。

直感系スキルが発動しそれに基づいて行動した場合、能力値に補正がかかる。


[無限の可能性を持つ者]

全てのスキルが習得できるようになる。


[異世界からの転生者]

違う世界から転生してきたものに与えられる。

全ての言語を理解できるようになる。


加護

[輪廻の女神アウラの加護]

輪廻の女神アウラに気に入られた者に贈られる。生命力が元の値の2倍になる。



「………あ、あっうえぇぇっ!!」

………あ、あっぶねぇぇっ!!



ちょっと掠っただけなのに半分以上持ってかれてるんですけど!?これアウラの加護無かったら即死だったぞ!?ったく誰だ、こんな幼気な赤ん坊に火の玉ぶち込もうとする馬鹿は!



今のでかい火の玉は、俺がこの世界に来て初めて遭遇する魔法っぽいものだったが、命の危機に瀕したせいもあってか魔法に対する感動なんてこれっぽっちもなかった。




………いや嘘です。実はちょっとワクワクしてます。俺も使ってみてーとか思ってます。まあ初めての魔法との出会いはもうちょっと穏便に済ましたかったというのも事実だけど。



「シウ君大丈夫!?」



俺をナイスキャッチで受け止めた母さんが、焦った表情で俺の身体をくるくる回しながら見回す。あ、あの……目が……目がぁ……。



一通り見た後目を回している俺に、ちょっと待ってねと一言かけて俺をそっと地面に置き、両手の掌をこっちに向けた。



「この者に癒しを与えよ、"ヒール"!」



母さんがそう唱えると、淡い緑色の光が両手に集まっていく。そして集まった光は次に俺の体へ流れ込んできた。



いきなり流れ込んできた時は少しビクッとしてしまったが、それは暖かく心地よい光だった。



「これでよし!」



気がつくと、目の前に笑顔を浮かべた母さんの顔があった。再び表示させたステータス画面に目を向けると、さっきまで3しかなかった生命力が8に戻っている。



おぉ……これぞ魔法って感じだ。さっきみたいな攻撃魔法も良いけど、こういう治癒系の魔法も使えるようになりたいなぁ。



俺は少しの間、目の前で使われた魔法に感動し、あれこれ妄想していたが、すぐにそんな場合ではないと気を引き締める。



母さんのおかげで生命力の問題は解決したが、また火の玉を撃ち込まれてはたまらない。



俺は犯人を探すため周囲を見渡した。



俺はここで初めて、しっかりと家の周囲を見た事に気づく。先程まで怒涛の展開すぎてそんな余裕が無かったのだ。



ここはどうやら、森の中にある少し開けた場所のようだ。草木に囲まれており、他に家は見当たらない。まさに人里離れた場所ってところだろうか。



何でこんなところに住んでるんだろう?……うんまあ、察しはつくけど。いや、そんな事よりも今は犯人探しの方が先か。



俺は改めて注意深く周りを見渡した。




………見つけた。左奥の茂みに緑色のローブを纏った小柄な人影が立っている。残念ながらフードを被っているせいで、その顔は伺えない。



ローブの色が迷彩の役割を果たしており、今まで周囲の景色に紛れて上手く隠れていたのだろう。今も、もし近くの茂みに逃げられたりしたら見失ってしまいそうだ。もしかしたら、認識を阻害する様な魔法でも使っているのかもしれない。



え、そんな見つけにくい人物をどうして俺が発見できたのかって?それは……



その人物の後ろに立って、その首元に剣を突きつけている父さんがいるからだよ。



父さんがその小柄な人物に何か喋りかけている。ただ距離が遠くて何を言っているかまでは分からなかった。おそらく何者だとかその辺りだろう。相手は俯いたまま何も答えずに黙り込んでいる様子。



そこで父さんは取り敢えず相手の正体を確認しようとしたのかフードに手をかけ、その顔を露わにする。



小柄な体躯からある程度予想はしていたが、その正体は幼さの残る顔つきをした……少年だった。前世の俺と同年代くらい……もしかしたらそれより下かもしれない。



その顔を見て、父さんは目を見開きとても驚いた表情を浮かべた。自分の子供を狙った相手の正体がまだ年端もいかない少年だったというのは確かにびっくりだろうが、果たしてそれだけでそこまで驚くだろうか。



俺が少し疑問に思っていると、そこで漸く黙り込んでいた少年が口を開いた。



相変わらず距離があったためよく聞き取れなかったが、少年が語気を強めたおかげで最後の部分だけは何とか聞き取れた。



「ーーーー裏切り者のくせに!」




…………裏切り者?



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