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波乱の幕開け

「う……うぅあう」



日差しが俺の目を焼く。もう朝か、早く起きて学校に……あ、今日から休みだった。



俺は身体を起こそうとして……出来ずに重力が俺の頭を枕へ引き戻す。



自分の身体に違和感を覚え、何故か言う事を聞かない首を頑張って動かし全身を眺めてみる。



ツルツルスベスベっとした16歳にしては異様に短い手と足。潤いがあるのは良いことだが少しありすぎだ。まるで生まれたばかりの赤ん坊の様じゃないか。



あ、そっか。俺転生したんだった。



なら早速やらないといけない事がある。俺は枕に身を委ね、真っ直ぐ上を向いた。



「いああいえうおうあ……(知らない天井だ……)」



これをやらないと始まらないよね?全然舌回ってないけど。



そんな馬鹿なことをやっていると、ガチャッという音が俺の足がある方から聞こえてきた。ドアを開けて誰かが部屋に入ってきたみたいだ。



「あ!シウくん気がついたんだね!」



こちらに走る様にして近づいてきたのは流石にアウラ程ではないが、目元の泣きぼくろが特徴的な若々しい美人さんだった。手には濡れた布を持っている。



特徴といえば、この女性にはその美貌以外にももう一つ目を引く場所がある。それは顔の横についてある尖った耳だ。



これはもしかしてあれなのか?エで始まってフで終わるあれなのか?ていうかなんで俺の名前知ってるんだろう?



俺がウンウン考え込んでいると、ガチャッと再びドアが開く音がし、もう一人部屋に入ってきた。



「サラ、そんなに騒いでどうしたんだい?」



そう女性に話しかけながら現れたのは金髪の優男だった。すごいイケメン。優しそうな顔とは裏腹に腕などを見るとしっかりと鍛えている事がわかる。ちなみに女性の名前はサラのようだ。



「アッくん!シウくんが目を覚ましたんだよ!」


「え、本当かい!?」



イケメンことアッくんが俺の顔を覗き込む。近い近い近い。



「いやーシウが熱を出した時はどうなるかと思ったよ」



どうやら俺は昨日まで熱を出していたようだ。転生の影響かな?サラは俺の看病をしてくれていたみたいだ。



「本当だね。でも良かったよ、熱も下がったみたいだし大丈夫そう」



二人の温かい眼差しが俺に注がれる。ここは安心させるためにも何か言ったほうがいいかな?



「あいあおう、おうあいおううあお(ありがとう、もう大丈夫だよ)」



ついでに笑顔もサービスだ。赤ん坊らしい笑い方できてるかな?



俺の心配は無用だったようで、サラは一層嬉しそうな笑みを浮かべて俺を持ち上げ抱きしめた。



こ、こんな綺麗な人に抱きしめられたら興奮し……ないな。赤ん坊だから当然といえば当然か。



「そうだ!シウくんお腹すいたよね」



そう言い、サラは俺の顔を胸の位置へ持っていく。



これって……そういうことだよな。



黒歴史確定レベルに恥ずかしいことなのであまり思い出したくないが、思ってたより美味しかったです。



授乳(しょけい)の時間は終わり、少し落ち着いた空気が流れた。



さて、ここまでくれば流石に俺でもわかる。



この二人が俺の今世の両親なのだろう。二人とも美形だし、何より優しそうな人達で本当に良かった。



アウラが不安を煽るような事を言うから、結構心配だったんだ。奴隷とかじゃなくて本当安心した。



それに転生するのが生まれてからちょっと経ってからだったのも良かった。サラ……母さんのお腹の中とかだったら軽く発狂していた自信がある。



落ち着いたら一つの疑問が出てきた。



母さんの耳が尖っているのはさっきも言ったが、問題はアッくんの方にある。



耳が尖っていないのだ。ただ母さんの種族がまだ分からないし、男と女で違いがあるのかもしれない。



しかしだ。ここは異種族間で戦争なんてしている世界だ。もし仮に……父さんと母さんが違う種族だった場合、その二人の結婚ましてやその二人の子供なんてどう前向きに考えようとしても嫌な予感しかしない。



嫌な予感というのは得てして当たるものだ。



俺の思考を遮るように、ドォンッ!という音ともに地面が少し揺れる。



「おおぅ!?」



何だ何だ!?



「………結界が壊されたみたいだね。この荒っぽい感じは森の頑固者達かな」


「うん……僕がちょっと行ってくるよ」


「ううん、私も行く!」


「ダメだ!君が行ったらシウはどうするんだ?」


「でも……」



どうやら俺の今世はいきなりハードモードらしい。



「あう!」



俺は母さんに声をかけ、じっと目を見つめる。



母さんもじっと俺を見つめ返す。



短くも長くも感じる時間の後、母さんは一つ頷くと父さんの方に向き直った。



「シウくんも連れてくよ」


「え、何だって!?そんなの危険すぎる!」


「うん、分かってる。でもね?シウくんが言ってる気がするの。連れて行けって。それにここに一人で置いて行くより、私達といたほうが安全だよ」


「だから君がここに残ってくれればいい!そうすれば君もシウも安全だ!」


「ダメだよ!それじゃアッくんが危ないよ!私、私の知らないところでアッくんに何かあったら絶対後悔する……」


「そんなこと言ったって……」


「あう!」



俺は父さんの目を見つめる。



「本当だ……連れて行けって言っている気がする」


「でしょ?私たちの子供を信じようよ」


「…………そうだね。僕達がシウを守れば何の問題もないか」


「うんっ!」



母さんすごく嬉しそうだ。目で訴えかけて良かったな。意味全然伝わってないけど。



俺は一人で残るから行っていいよって言ったんだけどなぁ……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


父さんと母さんは一度部屋を出て、少しして戻ってきた。



父さんは動きやすさを重視したような皮鎧。何箇所か金属で補強してある。そして腰には剣をさしていた。



母さんは黒いローブに身を包み、先端に緑色の綺麗な石がはめ込まれた杖を携えていた。



戦闘用の装備だろうな。あ、やばい。なんか緊張してきた。



母さんがそんな俺を抱えて、三人で家を出る。するとそこには、耳と眦を尖らせた十人くらいの美男美女が待ち構えていた。


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