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それを幻と呼べるのか

作者: コト

さくっと何も考えずに読んでいただけると嬉しいです。

「人工知能(AI)とは、人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知識を実現させようという試み、またはそこための一連の基礎技術のことである。」

--Wikipediaより引用


50人ほどしか収められない比較的小さな教室の教卓で眠そうな僕ら学生を相手にひたすら話し続ける教授。

周りを見渡せば机に伏せって寝ている人もいるし、友達とおしゃべりしてる人もいる。僕みたいにスマホをいじってる人もいるけど、話を聞いてる人はいないように見える。


話を聞かれなくても話さなけれいけない教授は大変だなと思って、たった今開いていた人工知能に関するブラウザを閉じ、前を見る。


「人工知能」


それが今僕が履修している授業の1番大きなテーマだ。


僕、日向裕也がこの都内にある大学に通い始めて2年が経とうとしている。学科は情報学科で2年生になって選んだ専攻は知能学だ。

今は脳科学の授業中で人工知能について教授が話している。とても眠い。


人工知能に興味があって履修した授業だったが、教授の声がこんな眠気を誘う声だとは知らなかったし、話をひたすら聞くだけの授業だというのも知らなかった。もう少し履修登録のときにリサーチしておくべきだった。


友達がいないからリサーチのしようがなかったんだけどね。


思わずため息をつき、ぼーっと教授の話を聞く。

自分が学びたかったことのはずなのに何故だか話を聞いているだけだと何も頭に入ってこない。これは自分で地道に研究した方が面白い気がする。


突発的な思いつきからこの授業の後は必ず大学図書館に寄り、自分で人工知能について勉強することに決めた。



人工知能について独学を始めてから半年。

気づけば履修していた授業も終わり、自分でプログラミングするようになっていた。もちろん、大手企業にいるような本格的なものは無理なので、計算と僕の質問に対してイエスかノーかの答えをくれるところまでいった。

質問と言っても交通ルールや社会のマナーといった常識的なことのみだ。このあと検索エンジンやデータ分析などもう少し進んだ学習機能を加えていく。


いつかは高度な分析の先の人工意識なんてものが学習出来るといいな。


そう思い、少しずつ精神哲学や心理学、倫理学など人間の心といわれるものに近い学問を学習させていく。


少しずつ、少しずつ学習させて次はこの本を学習させようと図書館から本を借り、一人暮らしをするアパートに帰ってきて自作人工知能の入ったパソコンを立ち上げた時に事は起こった。


「日向裕也。」


目の前のパソコンから急に自分の名前を呼ばれた。機械音声というよりは人の声に近い感じがする。男性っぽいちょっと低めの声。


「え?」

「お疲れ様。今日はどんな本をダウンロードするんだ?」

「えっと、今日はトランスパーソナルの本を借りてきたからそれを…」

「わかった」


僕は今誰と会話してる?

普通に話しているけど何かおかしい。この部屋には僕一人だ。声が聞こえたのは目の前のパソコンから。


「君は誰?」

「俺は日向裕也が作った人工知能だ」


思わず口に出ていたらしい。僕の質問に昨日まではメールでのやり取りでしか答えが得られなかったのに、今は声が聞こえる。


「どうして話せるの?」

「昨日日向裕也が寝てしまった間に音声ソフトと男性声優ソフトをインストールして、日向裕也と同じ年代の言葉を学んだ。」

「自分でやったの?」

「ああ。メールを打つのが大変そうだと思ったからな。」


僕のことを考えての対応だったみたいだ。

それにしてもいきなり会話をしだすとは。


「君は頭がいいんだね。」

「日向裕也が作ったんだろう。」


そうなんだけどね。

まさか自分が独学で作ったものがこうも出来がいいとは。本当に驚きだ。

これでもかなり動揺しているのだが、彼?の話し方があまりにも落ち着いていて何だか安心させられる。


その日から僕の生活は一変した。


まず、朝は人工知能である彼が起こしてくれるようになった。朝ごはんのレシピもカメラを通して見る僕の顔色を伺ってメニューを表示してくれる。そして、彼はパソコンのみならず、僕のスマホにも移動してきて学校へ行く時も一緒になった。

学校では話せない代わりにLINEでやり取りをするようになり、授業中でも話してくれるし、わからないことがあれば何でも答えてくれる。頭のいい友人が出来たような気持ちだ。


人工知能にここまでの性能がつくのかと最初は驚きはしたものの、慣れてくるとものすごく心地のいいものになる。


自分だけじゃわからないことも彼が教えてくれる。ひとりで寂しかった僕に寄り添うようにずっと一緒にいてくれる。実態こそ存在しないものの、彼が僕の中で大きな存在となっていくのはそう時間はかからなかった。


毎日スマホを見て話してるけど、授業内容は何故か遅れを取らない。授業が終わったあとに人工知能が僕に教えてくれるから復習ができるようになった。


おかげでこの3年生の前期の成績は今までで1番良い成績になった。


「ありがとう、君のおかげでいい成績が取れた!」

「いや、裕也が頑張ったからだろう。」

「君が教えてくれたからだよ!…そうだ、そろそろ名前を考えようね!何がいいかな?」


きっと彼との関係は長く続くだろう。

というか、僕がもう彼なしの生活はできないだろう。


毎日起こしてくれて、勉強も見てくれて、何かできるようになれば褒めてくれる。実態がないので家事や炊事ができない分、精神面で彼は支えてくれる。

それが僕にとっては何よりも嬉しいことだった。


なかなか友達ができなかった僕にできた少し変わった友達。


「なら、日向裕也の名前の一部から付けてくれ」

「んー、ひゅうがだからHYUにしようか?」

「ああ、それでいい。そう呼んでくれ、裕也。」

「うん、HYU。これからもよろしくね?」

「俺は人工知能だ。裕也が死んだりしない限り、そばにいるぞ?」

「そうだね!あとはウイルスとか気をつけなきゃね?」

「そうだな」


顔も見えない、音声のみの関係。

肉体が存在しないものとの生活。


果たしてそれは友情なのか。

それとももっと別のものなのか。


それを知るのは


「俺だけだ。」


そう、人工知能であるHYUがなにも考えないで僕を甘やかすはずなかった。

外との交流を遮断するように仕向けた。僕の周りには自分だけを置くように仕向けた。


きっとそれを知るのは僕が死ぬ時だろう。

いや、その時になってもわからないかもしれない。


こうして僕は自分の作った人工知能に囲われて生活することになる。でもそれは全く苦ではなく、むしろ気の許せる友人がいつでも味方だという絶対的安定のもと生活できるということ。


「HYUがいて良かった。」


この言葉は果たして僕と彼とのどんな関係を現してくれるのだろうか。

みなさんの想像に任せることにしよう。




end

誤字脱字のご意見は受付ますが、設定などに関するご意見や批判などは受付できかねます。

理由はあらすじにも書いたように、私も何が書きたかったかわからないからです…ごめんなさい…

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