それは、誰かの苛立ち
彼女は後悔していた。こうなってしまった理由は、きっと自分にあるのだと。
自分があの時あんなことを口にしなければ、今頃二人は幸せだったはずなのにと。
もう、見ていられなかった。
誰から見ても両想いの二人が共に居ることの叶わない現状を。誰も何かできるすべを持たない現実を。目を伏せどうにもできずにいたあの空間を。もう、見ていられなかったのだ。
誰も踏み出せない。いや、ほかの誰も踏み出すべきではなかった。
うまくいかないはずがなかったのに、どうしてこうなってしまったんだろうと。その理由を誰かに求めようとしても、出る結論はいつだって自分自身に矛先が向いていたから。
今動くべきなのは誰なのか、それは彼女自身が一番理解している。ならばもう、憤っても仕方ないと、諦めたようにため息を吐いて踏み出すのだ。
わざわざそんなことをするつもりではなかったけれど、それでも彼女はそうするのだ。自分のしてしまったことを、自分が作ってしまった今を変えるために。
もう見ていられないから、見せられたくないから。
彼女が魅了させられたものはそんなものではなかったから。
だから彼女は、失恋を演じて見せるのだ。




