表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Primula  作者: 澄葉 照安登
第五章 台風一過
58/139

それは、いつかの後悔

 好きな人なんていなかった。

 誰かを好きになれるような出来事はなかったし、こんな人がタイプだなんていう幻想じみた立ち姿すら見えていなかった。

 だから、自分には無縁だと思っていた。もうこれから先、恋なんてできないのだろうと。憧れ羨望しても叶わないのだろうと思っていた。

 でも、そんなことはなかった。特別な日々を過ごした相手は確かにいた。

 一緒に入った傘も、見上げた花火も、交し合った連絡先も。決して幻想なんかではなかったのだから。

 ありえなくなんてない、むしろそれは当然のこと。なのにそれに気付けなかった。

 言ってしまった、そんなんじゃないと。好きではないと。

 時間を戻すことも、過去の言葉を取り消すこともできないのに、思い出すたびに胸の中で誰かが言う。どうして言ってしまったんだと、自分を責めるように問いかけてくる。

 責めても過去は変わりはしないのに。

 もう自覚してしまったから。気付いてしまったから。知らないふりはもうできないから。

 ならもうこの気持ちを、隠すしかない。

 あの時の言葉を真実にするためには、そうするしかないから。


 だから、私はあの人のぬくもりをそっとしまい込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ