地図
『サボナ』郊外の広大な敷地の一角にその屋敷はあった。
【ヒロ】「父の屋敷です。」
俺の視線に何か感じとったのか
ちょっと弁解がましくヒロは言った。
【俺】(誰のでも良いのだけどね。)
『納屋がある』と言うのでウルフ達を中に入れた。(さて、早速捜索にあたるか。)
【ヒロ】「人手が必要ですね。」
【俺】(もっともだ。)
「当ては?」
【ヒロ】「家の者を遣いにやって部下を集めさせます。貴方様はどうされますか?」
【俺】(『貴方様』って多分俺のことなんだろうな。)
「キルの家に行って、協力を得られるか当たってみる。」
【ヒロ】「ならば、誰かに『キル』家まで
送らせましょう」
(と、その前に打ち合わせしないと。地図が欲しいな。)
【俺】「地図はないかな?」
【ヒロ】「地図ですか?」
この世界に来て分かったこどだが、
基本、地図は一般に流通していない。
安易に他国に攻められないよう、情報を統制しているからだと思われる。
ただ、護衛なども行う『ヒロ』達ならあるのでは?とふんだ。
案の定、暫くして地図が出てきた。
手書きだ。でも正確に書かれている。
ヒモにスミの棒を付け、鐘を中心に半径5kmの円を書いた。
鷹を日の出方向に向けた時、鐘音は左斜め方向から聞こえた。(北西か。)
ハッキリした音量だったから、鐘のある場所からさほど離れてはいないはず。せいぜい4〜5kmってところだった。
円の内側の南東にある建物を中心に見るか。
公共の建物はまず違うな。バッテンを書いていった。
『ヒロ』が俺の手をジッと見ていた。