偽名
【俺】「話?ちゃんと音の都に連れて行くから心配はしなくていいよ?
そこでご主人様に会わしてあげるからそれまで大人しくしていてくれるかい?」
目を見て、ゆっくり噛み砕くように話す。
【娘】「普通の話し方で大丈夫です。奴の目をごまかすため、馬鹿の真似をしていただけですから。」
【俺 】( 今までは演技だったのか。。。)
【娘】「音の都の近くまで行ったら、どのみち彼から逃げ出すつもりでした。
あなた達が味方かどうか判断がつかなかったので続けて演技をしていたのです。」
【俺】「で、話を聞く限り敵ではないと判断した?」
【娘】「そうです。」
【俺】(賢い子だ。)
【俺】「君が今までいた場所には、『大人の女性と子供』は囚われていなかった?」
【娘】「みな音族の子供ばかりでした。」
【俺】「大人は見なかったのかい?」
【娘】「はい。面倒を見てくれる『ドワーフのおばさん』が一人、時々様子を見に来てくれただけです。」
【俺】「食事とかはどうしていたんだ?
そこからみんなで逃げ出そうとは考えなかったの?」
【娘】「食事は年長の子が何とか森中に入り集めて来ました。
『逃げること』。。。
勿論、皆で逃げる事も考えました。
ただ、知らない土地の森の中に放りこまれていたのですよ?
しかも『奴隷契約』をさせられて。
ほとんどの子は
『何らかの事情で親に売られた』
若しくは
『親が死んで里親に引き取られ、売られた』
事情を持つ子なんです。
そんな私たちに帰るところがあると思いますか?
それに奴隷は真名によって主人に縛られるのです。
逃げようとすれば頭を締め付けられ、地獄の苦しみを味わう事に。。。」
【俺】(確かにあれは凄く痛い。ただ、『地獄の苦しみ』とまでは。。)
【コトワリ】(なんじゃ、おヌシ奴隷契約までしたのか。だから『真名』の扱いにはあれほど気を付けるよう忠告したのに。)
【俺】(騙されて。。。面目ない。
でも待て?
あれは『真名』じゃなく『偽名』を使ったはず。コトワリ『偽名』でも
効力は発生するのか?)
【コトワリ】(『偽名』の出来によるだろうな。本物に近い出来であれば
ある程度の効力を持つ。)
【俺】「例えば、コトワリが作った『偽名』なら?」
【コトワリ】「聞く必要はあるのか?」
【俺】。。。(早速、偽名消すか)