140/259
尊厳
『テイム』した二羽に意識を寄せる。
太陽の向きからすると一羽は北へ
一羽は南へと向かっている。
音の都の方だとすると北か。
夜を徹し馬車を飛ばしたせいか眠い。
とりあえずヒロを説得し北へ急ぐことにする。
【ヒロ】「ところで彼女の事はどうするんだ?」
【俺】「『音の都』に立ち寄り、キルの親の力を借りようと思う。上手くいけば親戚が見つかるだろう。」
その彼女、奴隷となっていた少女は『ご主人さま』が急にいなくなった事に不安を覚えたのかオロオロしている。
【俺】(いわゆる『ストックホルム症候群』ってやつかな。昔、推理小説で読んだ気がする。たしか誘拐された人物が、犯人以外味方はいないと刷り込まれ、最終的に犯人に対し好意や依存を覚える心の病気のことを言うんだったな。
完治には時間がかかるか。
とりあえず『ご主人さま』のいない不安を取り除くことにした。)
【俺】「ご主人さまは用事で先に都へ戻られた。で、代わりに俺達が面倒を見るよう言われたんだ。ついておいで。」
【娘】 「わかりました。ご主人さま。」
ちょっと違う気がするが。
少しずつ人間としての誇りを取り戻してあげよう。