不条理
傭兵は基本忠誠心はない。
『自分の身に危険が及ぶと判断した場合
雇い主を切り捨てる』と聞くが、念には念をいれ夜通し馬車を飛ばし、朝方やっとムチを振うのを止めた。
作戦は大成功だった。
目隠しを捕虜にし、尋問をする事にした。
『肥った音族』の顔を明るい所で見た『ヒロ』の顔が曇った。
【ヒロ】『隊長。。。何故?』
【俺】(こんな肥った隊長がいるのか?)
俺の不審が伝わったのか『ヒロ』は耳打ちをした。
【ヒロ】「護衛隊の文官トップです。」
【俺】(なるほど。実務はまた別にいるのなら納得も出来る。
護衛隊長なら、だれが護衛に配置され、どのルートを通るか知る立場にいるから、今回の黒幕の一人としては適任か。)
【黒幕】「その声はそうか『ヒロ』だな。
こんな事をしてただで済むと思うなよ。
縄をほどき、赦しを乞うなら今命を取るのだけは勘弁してやる。」
【ヒロ】「あなたが黒幕のうちの1人だったとは。音族とは言え、隊の一員であるあなたが。。。今回、団員の『シュー』はあなたのお陰で、森で命を落としたんですよ。」
【黒幕】「お前がどう思おうと、俺はお前達『下等な種族』を仲間などと思っていないからな。それに誰か命を落とした?
知ったこっちゃない。腕が無かっただけだろう。それよりサッサと縄をほどけ、自分の命はともかく、家族の命は大事だろうが。」
【俺】「聞きしにまさるクズだな。」
【黒幕】「まだ一人いたか。こんな奴につくより、ワシにつかんか?音の都までワシを送ってくれれば、褒賞を100シルク出す。破格だろう?」
【俺】「不愉快だ。」
【ヒロ】「彼の処置は私に任せて頂けませんか?」
【俺】「了解」
(俺は所詮この件でも第三者だからな。)
馬車からヒロは黒幕を連れ出て行った。
風に運ばれ
『契約に基づき、自害せよ』
とか
『何故死なぬ?』
とか
『太古の盟約により、ワシを害する事は
出来ないはず』
とか聞こえたあと
『ギャー』
とか
『頼む同じ隊の仲間だろ』
とか
聞こえてきたが、無視した。
それより俺はもう一人の捕虜に興味を惹かれた。
綺麗な顔立ちの子供だ。あちこち痣がある。
【俺】「一緒にいたのは父親か?」
少女は黙って首を振った。
【俺】(そうだろうな。)
【娘】「ご主人さまです。」
【俺】「ご両親は?」
耐え切れなくなったか、泣きだした。
【俺】(奴隷化された子供?)
『キル』も一歩間違えれば。。。
怒りを覚えた。