極悪人
俺は拘束具を付けられた上
兵に引き摺られ
宮殿の地下牢まで
連れていかれた。
どっかで似たような事があったな。
ギャハハハハ
ギャラリーは健在か。。。
独房に入れられ転がされる。
さて、どうしよう。
とりあえずは生かしておくみたいだな。
床にカビかけたパンと水の入った茶碗があることから餓死もないか。
『外国の外交団の貴族の娘の拉致』と
『音族の有名人の娘誘拐』
こうして考えると
俺って若しかして、極悪人?
でも、何故すぐ拷問が始まらない?
俺にとってはありがたい事だが。
先ずは『ヤンメル爺さん』と『ダルダロスさん』の位置から捜索するか。
『ソナー』で牢の位置を把握した。
1フロアー当たり独房は15 に大部屋が30。
地下1階から3階まで似たような構造が並ぶ。
大部屋に5名ずつとして総勢500名弱が入れられている計算だな。
また途中途中に牢屋番の詰め所らしきものもある。詰所は6箇所か。。
一部屋10名で牢屋番は60名だな。
城の中の牢という事からして、市中の牢とは性質が違うだろう。他国の捕虜、若しくは自国の政治犯がメインか。
だいたいの位置を把握した上で、
パン目当てでやってきたネズミに極小の「ボンブ」を当て動けなくした。
その上で、名前を「宮殿ネズミ一号」と
名付け「テイム」する。
(すべての人をチェックするのは
時間もないしシンドイな。)
ネズミに憑依し一つ一つ見ていく事も考えたが現実的ではない。
ダルダロス達の心音も知らないしな。
ダルダロスは商館長としての地位があり
セツ男爵と関係も悪く無かったはず。
とすれば牢の中でも、ある程度の待遇を受けているはずだよな?
なら、地下1階の個室を中心に探れば
いいか。
鉄格子の間から抜け出て廊下を走り抜ける。階段を登り、まず端部屋から入る事にした。
扉の隙間から入り込もうとして
そこで固まった。
部屋の四隅に怪しげな紋様が
書かれ
その中央には老人が一人椅子にくくりつけられていた。
『結界じゃな。オヌシもあとちょっと入っていたら、その内に取り込まれていたぞ。』
とコトワリが教えてくれた。
驚いた事にその老人の頭は真緑だった。
「もし、客人」
えっ?キョロキョロ見回すが
俺?宮殿1号しかいない。
「使い魔を操られている御仁の
ことじゃよ。」
(俺のこと言っているのか。)
「御仁が味方か敵かは知らない。
老人の一人言と思い聞いてくれぬか。味方につながるものであって欲しいと願うが。」
「我が名は『サルージオ』緑が一族
魔公第1席のものだ。
『コトワリ』を『巫女サビネ』に
下ろす際、炎が一族『ダルマ』による襲撃に遭い囚われになった。
不干渉条約を結んでいるにも関わらず襲撃とはな。。
『炎の国』は魔族と結びこの地のすべてを統べようと画策しておる。
お客人も気をつけられよ。
そして『ミラーノ』に出来れば伝えて欲しい。音の民と盟を結び、音族を保護するよう。
魔族の王の復活には音が鍵となると。。。
客人よ、これを」
口の中からプッと何かを飛ばした。
『これを『ミラーノ』に見せ
我が名を伝えれば、信頼を得られよう。その後先の話をすれば褒美も得られよう。客人しかもはや望みはないのじゃ。頼む』
こいつが俺をこの世界に引き込んだ
元凶の一人か。。。
まあ、もうあまり恨んじゃないが。
しかもまた厄介事に引き込もうと
しているし。。。
ええいっ。引き受けたるか。
老人を見捨てるのはやっぱり心苦しいしね。