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9:守護霊の話

 今日はオカ研の活動日でさ、顔だしてきたよ。

 風守先輩のことがあっからちょっと気まずかったけど、先輩本人は俺が見学に来た時と同じ、面倒見のいい先輩に戻ってたし、羽柴にも色々失礼なことを言ったりやったりしたことを謝ってたから、行って良かったよ。


 つか、あんなことあってあっさり厨二病が治って、ちゃんと部活に出て、羽柴にも謝る先輩って結構メンタル強いな。

 流石に、羽柴が「小説はもう書かないんですか?」って聞いた時は、頭を叩いてたけど。

 うん、羽柴。そこは殴られとけ。お前が悪い。


 で、その話を変えようとしたのか、先輩が羽柴本人の守護霊はどんな人って聞いてたよ。

 それは俺も気になったからそのまま聞いてたら、羽柴には守護霊はいないとさ。


 何か、羽柴は霊感ある無し関係なく、何もしてなくてもある程度霊を弾く家系らしい。

 それが悪霊か害のない浮遊霊か守ってくれる良い霊かは関係ないから、守護霊がついてくれない代わりに、いなくてもさほど支障はないってさ。


 あっても霊感がある分、自分でなんとかするとか言ってたな。

 うん、なんとかしてますね。確かに。

 なんとかしすぎだけどさ。


 で、そのままオカ研メンバーが守護霊の話で盛り上がって、羽柴にみんなの守護霊を見てもらうことになったんだよ。


 あ、ちなみに俺は守護霊ってあんまり見えないんだ。害のない浮遊霊も。

 俺、全然霊感をコントロール出来てないから、俺と波長の合う奴か霊の方から俺に関わってこないと見えないんだよね。

 守護霊って基本的にその守ってる相手しか興味がないから、その守護霊と俺の波長が合ってないと俺は見れないんだよ。


 だから、霊視は羽柴に任せてみんなを見てもらったら、ほとんどの人は死んだじーちゃんばーちゃんやご先祖様っぽい人達だったんだけど、何人か面白い守護霊がいたよ。


 まず、部長の信濃(しなの)銀杏(いちょう)先輩。

 この人が顧問の雪村先生に次ぐオカルトマニアで、本物の霊体験がしたいの一心で部活やってる人なんだよ。


 で、その人の守護霊は、ものすごい強そうな農家のまだ若いおにーさんらしい。

 部長の家は代々を遡っても農家じゃないらしいから、ご先祖様じゃなくて、部長のご先祖様か前世に恩か何かがある人じゃないかって羽柴は言ってた。


 その農夫のおにーさん、オカ研メンバーの中で一番守護霊として強いらしい。

 鎧兜の武将が守護霊の部員もいたのに断トツで強いって言い切ってさ、どんな農夫だよって俺が突っ込んだら、羽柴はしれっと言ったよ。


「『北◯の拳』の『ケン◯ロウ』にそっくりな人」


 部員全員が納得したよ。そりゃ強いわって。

 っていうか、もしかしてその守護霊さんも除霊するときは物理なんじゃね?

 誰か一人くらい、術とかお札で除霊してくれよ……


 次に面白かったのは、副部長だな。

 副部長は部長の双子の弟で、名前は紅葉(こうよう)さん。

 この人はオカ研で唯一、オカルトに興味がない。むしろ怖い話が嫌いな人なんだけど、ねーちゃんである部長に無理やり入れられて、巻き込まれているらしい。

 かわいそすぎる。


 そんな紅葉先輩の守護霊は、昔飼ってたコーギー犬。

 紅葉先輩はもちろん、部長も嬉しそうだったよ。

 二人が生まれる前から先輩達の家で飼ってた犬らしいから、本当に家族同然だったんだって。


 で、その犬は生前から臆病で自分より小さなチワワにも怯えて、飼い主の後ろに隠れるような犬だったみたいで、守護霊になってからはその性質ゆえに危険察知に優れてるって。

 だから、紅葉先輩が何か嫌だなって思うものは守護霊の犬の警告である可能性が高いから、嫌だなと思ったものは避けた方がいいって羽柴に忠告されてた。


「俺はビビリだから、それは助かる」って紅葉先輩は喜んでたんだけど、羽柴が付け加えた忠告で頭を抱えてたけどな。

「その犬、本当に臆病だから、人間からしたら全くたいしたことないものでも警告してくるくせに、いざ危ない目に直面したら、守護霊としては役に立ちませんよ」だってさ。


 つまり先輩は、危ない目から避けまくったら何にもできなくなる可能性が高く、警告を無視したら守護霊の方がビビって守ってくれないのか。

 意味があるんだかないんだかわかんねーな。


 まぁ、頭を抱えてたけど、家族同然の犬が側に今もいて、守ろうとはとりあえずしてくれてるのは嬉しい事だと自分を納得させてた。

 すっごい、遠い目をしてたけど。


 んで、大爆笑が雪村先生の守護霊だ。

 先生はオカルトマニアだから、すげーワクテカ顏で「俺は? 俺は?」って急かして聞いたら、羽柴は真顔で言ったよ。


「アシカ」


 言われた瞬間、時が止まったわ。

 たっぷり30秒はかけた沈黙を破って、先生は絞り出すような声で「……アシカ?」ってオウム返ししてたよ。

 それにやっぱり真顔で、羽柴は「アシカ」って返すし。

 何なの、あのカオス。


 そこでやっと、部員が爆笑。

 先生、アシカを昔飼ってたの? いや、アシカをきっといじめっ子から浦島太郎のように助けたんだろうとか、口々に勝手なことを言いまくったわ。

 先生は何か紅葉先輩以上に真剣に頭を抱えて、アシカに守護される心当たりを探し始めるし。

 もっかい言うけど、何、あのカオスは。


 真剣に悩みだした先生をフォローしようと思ったのか、風守先輩が「きっと、先生の前世がアシカだったんですよ!」って言い出したら、さらにみんな爆笑。

 笑ってきっとそうだ、そんでその守護霊のアシカは前世の嫁だとかまた好き勝手言いだして、もう収拾がつかなくなってきだした頃に、羽柴はポツリと爆弾発言投下。


「もしそうなら、先生は結婚できないかも」


 ……今度は沈黙が1分くらいは続いたな。

 羽柴が言うには、守護霊が前世の恋人とか奥さんや旦那だった場合、めちゃくちゃ相手が好きだったからこそ、生まれ変わっても探して見つけ出して守ってるわけだから、守護霊としては強いらしい。

 で、そんだけのことをするくらいだから、たいていが嫉妬深くて、恋人を作らせないように、結婚が出来ないように邪魔するのがよくある話だってさ。


 ……流石に、今度は誰も何も言えなかったな。

 人間の霊ならともかく、アシカが生涯の嫁って……

 羽柴は、あんまり強い守護霊じゃないからたぶんそんなんじゃないって言ってたから、その言葉に縋ろう。

 ……先生が早く、可愛いお嫁さんに恵まれますよーに。


 あぁ、あと俺の守護霊も見てもらったんだけど、何か変な結果だった。

 俺には守護霊が間違いなくいるんだけど、羽柴には見えないらしいんだ。


 羽柴とよっぽど相性が悪いのかなと思ったけど、気配は感じるのに全く見えないのは初めてらしくて、羽柴は首を傾げてたよ。


 弱い霊なら確かに見えないことが多いけど、意識して見ようと集中したら見えるはずだから、逆に神や精霊とか高位の存在かもねって言われて、ちょっと嬉しかったけど多分それはねーよな。


 そんな立派なもんなら、俺の霊ホイホイをとっくの昔にどーにかなってるだろ。



 * * *



『悪かったわね。その通り、ラップ音とポルターガイストくらいしか出来ない、全然高位なんかじゃないですよーだ』


 部長の守護霊の元ネタは、なんか笑える霊体験スレの「ゴ.ル.ゴ.マ.タ.ギ」です。


 オカ研の部員は総勢10人程ですが、作中に出てくるのは今回名前が出てきた人達くらいです。

 そもそもこの人達、第1話で反省してるし元々見えてる地雷は踏まないソーキの代わりに、肝試しやらこっくりさんやら一人かくれんぼなどをやらかしてくれるキャラがいないと、話が続かないので出しました。

 なので全員、トラブルメイカーと認識してもらえたら、名前は覚えなくてもいいかも。


 次は、クラッシュしてないホラーです。

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