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8:窓にまつわる小ネタの話

 ……あのさー、バスの窓にどう見ても車にはねられて死んだっぽい男の霊が、へばりついてたらどうする?

 ……うん、これ、何年か前に遠足のバスであったことなんだよな。


 どっかのトンネルを通り抜けたら、何か窓に手足も首も変な方向に曲がった男がへばりついてて、俺は飲んでたお茶でむせたよ。

 俺の反応で羽柴もその男に気づいたんだけど、あいつさ、何やったと思う?


 そのへばりついてる窓の席の子に、座席をちょっと譲ってもらって、目潰し。

 窓を開けて目にブスッ! と指を突き刺してたよ。第一関節くらいは余裕で入ってたな。


 そのまま幽霊は、ムスカ状態でバスから落ちて消えたよ。

 羽柴は消えたことも確認しないで、自分の席に戻っていきました。

 せめて確認くらいはしようぜ、羽柴さんよ。


 それから、こんなこともあったな。

 小5だったかな?

 その頃の友達がマンションに引っ越したんだけど、そのマンション、決まった曜日の決まった時間に飛び降り自殺する霊が見えるらしくて、運悪く友達の部屋の窓が落ちてくるその霊が見える位置だったんだよ。


 しかもそいつ、霊感なんてその頃も今もないのにその霊と波長があったのか、友達の親には見えないのにそいつ本人にははっきりくっきり見えるらしくて、もうかわいそうなくらい憔悴しててさー。


 で、俺を経由して羽柴になんとかしてくれって頼んできて、羽柴もあっさり了承して、その霊が出てくる日に羽柴がそいつの家に行ったらしい。

 俺は行かなかった。霊ホイホイだから、行って取り憑かれたら面倒になりそうだから来ないでって言われたからな。


 で、次の日になんとも微妙な顔してる友達に、解決したかを訊いたよ。

 友達はさらに微妙な顔して、教えてくれたんだ。


 あいつ、窓を開けておいて、落ちてくるタイミングを見計らって、友達の家にあったどっかのお土産の木刀を飛び降りする霊に突き刺したらしい。


 いつもビビる友達を見てニヤニヤしながら笑って落ちる霊が、ゴフゥッ!? とか言って落ちていってさ、また落ちてくるようならこうやってやればいいって言って、羽柴は帰って行ったらしい。

 いや、そんな度胸ないからお前に頼ったんですけど?


 ちなみに、その霊は来週から位置を少しずらして、お隣の窓から見える位置で落ちるようになったらしい。

 羽柴を恐れたんなら、成仏したらいいのに。

 なんで飛び降りにそんな命をかけてるんだ?

 もう死んでるのに。


 俺はほぼ無関係なのに、何か友達のお隣さんに謝りたくなったよ。

 お隣さんの家族が全員、零感(ぜろかん)なのが、唯一の救い。


 あぁ、これは最近の話なんだけど、なんか羽柴が掃除の時間にいきなり窓の外を箒でバシバシ叩きだしたって話を聞いたんだ。

 羽柴はクラスの奴らには、虫がいたから追い払ったって言ったらしいけど、……羽柴の霊感を知ってるやつはもちろん、信じねぇよ。


 俺も信じてなかったから訊いてみたらさ、何か血まみれの男が登ってきて、窓から教室に入ろうとしたから箒で落としてたらしい。

 虫だって言ったのは、クラスメイトに気を使ったとか霊感を隠したいからじゃなくて、落ちまいと壁にしがみつく男が虫みたいだから、虫扱いでいいやと思ったらしい。

 何もよくありませんよ、羽柴さん。


 そして、これが今日の話。

 日直で遅くまで残っていた俺と、同じく日直で残っていた羽柴。

 教室の鍵を返しに職員室に行った時に、たまたま会ったから一緒に帰ろうとして、職員室を出て下駄箱に一番近い階段まで渡り廊下を歩いてたんだ。


 そしたら、渡り廊下の向こうで女の子の頭と手が見えたんだ。

 廊下の突き当たりで、倒れてるように頭と腕と肩くらいしか見えてなかったな。

 俺は、女の子が倒れてる! と思って、思わず駆け寄ろうとしたら羽柴に止められたよ。

 マジで俺、学習してないよな。


 羽柴に止められたことに気づいたのか、廊下の向こうで倒れてた女の子はゆっくりと顔を上げて、手を動かして、這いずって出てきたよ。


 女の子には、下半身がなかった。

 いわゆる、てけてけがいたんだ。

 そのてけてけは、そのまま手の動きだけで猛スピードで俺たちの方に向かってきて、俺は悲鳴を上げた。


 俺が悲鳴をあげてる間に、羽柴は窓を開けて向かってきたてけてけの襟ぐりを猫の子をつかむようにして持ち上げて、そもまま流れるように窓から外にポイッ。


「ぎゃあああってえぇぇっ!?」みたいな感じに、俺の悲鳴は恐怖から驚愕にシフト。

 俺の悲鳴で職員室から先生か何人か出てきたけど、羽柴はしれっと、ゴキブリか出ましたって言って誤魔化した。

 てけてけゴキブリ扱いかよ。


 悲しいことにもう羽柴のやらかすことに慣れてる俺は、もうつっこむのも面倒臭かったから、羽柴の誤魔化しに乗って、そのまま一緒に帰った。


 ……何で、いきなりこんな話をしたと思う?


 さっきさ、俺の部屋の窓がなんか音するなー、虫が窓にぶつかってるのかな? と思って、俺は殺虫剤片手にカーテンを開けたんだよ。


 そしたら、窓の外にいたんだよ。

 羽柴が窓から落としたてけてけが。


 俺はびっくりしてかすれた悲鳴をあげながら、……何をしちゃったと思う?

 とっさに持ってた殺虫剤を顔面にぶっかけて、窓から落としちゃった。


 落ちた後に窓から下を見てみたけど、何にもなかったから、諦めて去ったのかな?

 それならいいんだけど。


 っていうか、羽柴にいつも物理で除霊するのはお前しかいない、むしろお前だけであってほしいって言ってたのに、俺もやってることが羽柴と変わらなくなってきてることに衝撃だよ。

 自分で対応できるようになったのは成長なんだけど、……欲をいえばもっとかっこいい対応と成長をしたかった。



 * * *



『……ど、ドンマイ?』


 ベタなホラー展開や、定番の怪談系は、長々と続けても面白くないので、こういう小ネタ集にしてゆきます。

 どうせ、この手の話は全部羽柴がしばいて終わりですから。


 ……しまった、どの話でもそうだ。


 次の話は、ゆるいコメディです。

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