75:俺が望む話
……三日くらい前に同じクラスの女子が部室に来て、いきなり泣きながら羽柴に頼み込んだんだ。
「お母さんを元に戻して!」って。
いきなりそれじゃ何が何だかわからないから、とにかく落ち着かせて話を聞いたらどうもその子のお母さん、ヤバい宗教にはまっちゃったらしいんだよ。
その子の弟が生まれた時から心臓に持病があって、20歳になるまで生きていけるかどうか怪しいって医者に言われて、現に昔から今も年に何度か入退院を繰り返してるんだって。
……弟を、息子をどうにか助けてあげたいっていう、当たり前の気持ちに付け込まれたんだろうなぁ。
その子や他の家族が気が付いた時には、どっぷりだったってさ。
この辺の詳しいことは、誰も聞かなかった。
俺らが聞いてもどうにかできるものじゃないのに訊くのは、ただの悪趣味だし。本人も言いたくなさそうだったから。
だから何をどう助けてほしいのかを訊いたら、なんかお最初の方は弟の心臓が良くなる、病気が治るって言いながらお母さんはお経を唱えたり集会に行ったり、騙されてるんだろうけど目的を忘れてない信仰の仕方をしてただけど、最近ではお経を唱えたり集会に行くのは一緒なんだけど、何故か弟の病気の回復を祈らなくなったんだよ。
元々お経を一心不乱に唱えてる母親が怖くてその子はお祈り中の母親に近づかなかったんだけど、家事もしない、弟の世話もしない、入院しても見舞いにもいかないでお経を唱え続ける母親にさすがにキレて、ついに昨日「そんなんやってもあの子は全然良くならないじゃん! もうやめてよ!」って泣きながら訴えたんだけど、それも無視して母親は何かをブツブツ唱えてる。
で、怒鳴ってちょっと冷静になって良く聞いてみたら、意味の分からんお経じゃなくて普通の日本語だったんだけど、その内容が「日本、滅びろ。日本、滅びろ」の繰り返し。
しかも異様に血走った目で顔も無表情でずっと呟き続けて、これはもうインチキ宗教ってレベルじゃない! って確信して、その結果が羽柴に泣きながら懇願。
羽柴は、「いいよ」って即答。ここまでは良い。羽柴ならそう言うだろうって思える経緯と内容だったから、予想通りだった。
ただ、その後が問題だった。
羽柴は何故かその子のお母さんに会わせてじゃなくて、その宗教をやってるところに連れていってって言い出したんだよ。
さすがにクラスメイトの方も驚いて、俺や先輩達は必至で何考えてんだバカ! 危なすぎるだろ!! って叫んで、羽柴を止めたよ。
そのお母さんに何かが取り憑いてるだけなら羽柴一人でいつものように解決できるけど、もし洗脳とかマインドコントロールとか人為的に考え方を歪められてオカルト何も関係ないんなら、羽柴が危なすぎるって思ったから、もうクラスメイトの女子には悪いけど止めまくったよ。
どの程度の規模かは知らないけど、その宗教がある程度組織としてやってるんなら中学生が何とかできるもんじゃないって説得すんだけど、羽柴はまったく退かねーの。
しきみさんに頼むのもダメなのか? って訊いても「ダメ」って言って、自分が行く、自分が何とかするって譲らねーの。
……何であんなに羽柴が頑なだったのか、その時の俺には全く理由がわからなかった。
でもな、何でだろうな?
なんとなく羽柴を行かせたら、少なくとも羽柴だけをその宗教の所に行かせたらダメだって思ったんだ。
さっき言ったみたいにオカルト関係ない方法だったら危ないって思ったのは、むしろ後付けなんだ。
何でそう思ったのかは今でも説明できないけど、とにかく俺は羽柴を一人で行かせたくなかったし、目を離したら危ないって思った。
俺にできることなんてほとんどないってことはわかってるのに、羽柴が危ない、俺が何とかしなくちゃって思ったんだよ。
だから、もう羽柴に「お母さんを元に戻して」って頼んだ子もそっちのけで羽柴と喧嘩して、羽柴が譲らないんだったら俺も一緒に行くからな!! って啖呵切っちゃったんだよ。
そしたら意外なことに羽柴が少し迷った様子を見せたんだけど、「……うん。来てほしい」ってまさかの了承じゃなくて頼んできた。
こういう明らかヤバそうなのは、夏休みのあの海の家の件以外だと絶対、羽柴は俺が来ることを絶対に許さないから、妥協するなら自分が一人で行くことだと思ったら、何故か俺が同行することを許したんだよ。
今思うと、羽柴は前にあった羽柴の小2の頃の担任に除霊頼まれた時、俺に一緒に来てくれって頼んだのと同じ理由だな。
止めて欲しかったんだ。いざと言う時に、自分を。
あの時以上に羽柴は、自分を抑える自信がなかったんだよ。
……ちょっとグダグダしたけど、とりあえず俺と羽柴がその宗教の集まりに行くことが決まって、頼んできた子のお母さんに俺らもその宗教に興味があるから今度の集まりの時に連れていってくださいって伝言してもらったら、最近ほとんど会話が成立しなくなってたお母さんが大喜びで俺らを連れていくことを了承したらしく、その集まりが今日だったんだ。
俺と羽柴がそのおばさんの車に乗せられて集会につれていかれたんだけどさー、とりあえず見た瞬間にオカルトがまったく無関係でないことだけはわかった。
おばさんに会った時は空気の重さとか肌に静電気みたいな痛みは感じなかったけど、やたらと頬がこけて顔色が悪くて目の下は隈で真っ黒になって、病人じゃないのが不思議なくらいの見た目なのに、目だけがやたらとギラギラしてて、何度か見た何かヤバいものに取り憑かれてる人そのものだったわ。
もう集会までの移動時間なんて車で30分もなかったはずなんだけど、めちゃくちゃ長く感じた。
おばさんは何か一方的に、日本はダメだ、滅ぶべきなんだ、日本が滅んでもこの宗教を信じてる私たちは助かって救われるとか何とか、ギラギラ光ってるのにどこかうつろな目で電波を垂れ流し続けるからさ、集会場につく前に事故るんじゃないかって不安になって、マジで怖かった。
何か下手に会話して地雷踏んで豹変したらヤバいから、おばさん相手にはもちろん、羽柴とも何も話せなかったし。
……むしろ、話せなくってよかったかも。
話す余裕があったらたぶん、俺は羽柴に訊いてたから。
羽柴はこういう、インチキ宗教が嫌いなのかって。
インチキ宗教が嫌いじゃない人はそのインチキ宗教家本人か、騙されてる自覚のない被害者意外にいるわけないけど、何か羽柴のあの頑な態度とか、宗教関連と聞いて即答で「いいよ」って言ったこととかを思い返したら、羽柴がああいう宗教が嫌いな理由は何かもっと普通とは違う深いところにあるような気がしたんだ。
その予想は当たってたけど、理由に関しては何にも想像できてなかった。
だから、訊かなくて良かった。
羽柴の古傷を抉って、わざわざ話させるなんてことしなくて済んだのだから。
……俺らが連れていかれたのは、普通の住宅街の普通の家。
いや、正確には昔は豪邸って扱いだったんだろうなって思えるくらいに広くてでかいけど、手入れがほとんどされてなくて、庭は荒れ放題、壁は泥だらけでボロボロのおんぼろな家だったけど。
でもとりあえず変な施設でもなければ、どこにも助けを呼べない山奥とかじゃなかったことにホッとしたな。
空き家って言われた方がしっくりくるような家だったけど、教祖の説法だか何だか知らないけど、とりあえず定期的な集会で結構な人がその家に集まってて、そのどれもこれもがおばさんと同じゾンビみたいな顔色と生気のなさなのに目はギラギラでさー、この大人数は羽柴でもマジヤバいから少なくとも俺は、足手まといにだけはならないように頑張ろうって思ったんだけど、家に入った瞬間、俺は膝から崩れ落ちた。
まさかの即行で戦力外は自分でもびっくりだけどさ、何かあの家に入った瞬間、頭がめちゃくちゃ痛いし肌がピリピリどころか全身の皮を剥がされてるような痛みが走ったんだよ。
羽柴がすぐに俺を支えて、自分の髪の毛をくくってたリボンを俺の手首に巻いてくれたらかなり楽になったけど、それでも頭痛の合間に、声が聞こえるんだよ。
子供の声で、「助けて」「痛い」「もう嫌だ」ってとにかく苦痛を訴える声が。
で、なんか説法とかの時間にはまだまだ早かったはずなんだけど、俺が家に入ってすぐに顔色最悪になって座り込んだことが、結果的には良かったんだよ。
羽柴がとりあえず霊障がマシになるように処理しながら、いきなり靴を脱ぐ暇なく座り込んだ俺を見てオロオロする周りの人に、「ここなら、この人の病気を治せると聞きました! どうか治してくだい!!」って叫んだんだ。
そしたら、神社の神官さんみたいな恰好をした人が何人かやってきて、俺と羽柴を一番奥の部屋まで連れて行ったんだよ。
教祖と、「ご神体」がある部屋までな。
あー、別に羽柴は初めからこれ狙いで俺を連れて行ったわけじゃないよ。
俺のあそこまで影響を受けるのは本気で予想外だったらしくて、後ですごく謝られたし。
実際にあれは予想できんって。
俺と、「ご神体」がやたらと共鳴するなんてわかるはずねーよ。
その宗教の教祖は、俺らをその部屋まで案内した神官と同じようで一番派手で豪華な格好をした、胡散臭いおっさんだった。
頭痛いわ「ご神体」とかその後のことが色々と衝撃的だったからあんまり教祖に関しては覚えてないんだけど、何かやたらと早口で日本語の発音がおかしかったから、たぶん日本人じゃなかったと思う。
日本を滅ぼすことを何故か目的にした宗教なんだから、よく考えなくてもそりゃそうだな。
おっさんは俺を見て、この症状は日本人がうんたらかんたらした祟りだか何だかって言ってたけど、耳に入らなかったよ。
おっさんの後ろにある「ご神体」、初めは部屋が暗くてよく見えなかったから阿修羅像的な仏像だと思ってた。……そういや、よくよく考えたらあの宗教は神道と仏教がちゃんぽんしてたな。
まぁ、それはマジでどうでもいいから話を戻すけど、「ご神体」が仏像どころか「像」ですらないことに気付いたのは、羽柴だった。
部屋に入ってまずは羽柴は絶句して、それから絞り出すように呟いてたよ。
「――リョウメンスクナ」って。
蚊が鳴くような声だったのにその単語を呟いた瞬間、教祖のおっさんの言葉が止まって、周りの神官もギョッとした顔で羽柴の方を見た。
で 、おっさんが急に怒ったような顔になって、ものすごく聞き取りにくい早口と発音で「どうしてお前がこれを知ってる!!」って怒鳴りつけたタイミングで、俺は「ご神体」が何なのかをやっと理解したんだ。
……木乃伊だった。
大きさ的にたぶん子供の木乃伊だった。
それだけでも気分が悪いのに、それはただの子供の木乃伊じゃなかったんだ。
俺、初めは阿修羅像かなんかだと思ったって言っただろ。
本当に、阿修羅像みたいな木乃伊だったんだ。
あの木乃伊は、胴体と足は普通なんだけど頭が二つに手が左右に二本ずつだった。
ブラックジャックで見た、シャム双生児って奴だったんだ。
俺がご神体はシャム双生児のミイラだって気づいたタイミングだったかな?
頭がまた家の中に入った瞬間と同じくらい痛くなって、声も甲高い悲鳴混じりになったんだ。
あまりの痛さに頭を押さえて目を閉じたら、映画でも見てるように鮮明な映像が頭に流れ込んできたよ。
流れ込んだ映像はテレビのに画面みたいに二つの視点。でもまったく別の場所からの視点じゃなくて、すぐ隣にいる者同士の視点みたいな感じだったから、誰の視点かすぐにわかった。
……木乃伊の双子の視点だった。
たぶんあれは、双子の生前の記憶だった。
狭い鉄格子の中に閉じ込められて、見世物にされて嗤われて、泥や石を投げつけられてた記憶。
やっと檻から出してもらえたかと思ったら、見世物小屋からもっとヤバいところに売られて、体を縛られて血を抜かれて、飢え死にさせて木乃伊にされるまでの記憶が俺の中に流れ込んできたんだ。
……双子はずっと、互いを励ましてたよ。
どちらかさえいなければこんな目に遭わなくて済んだはずなのに、どっちも相手の事を恨まないで自分さえいなければ良かったんだって責めてた。
あの双子はずっと「助けて」って叫んでたけど、どっちも自分じゃなくて片割れだけでも助けてって言ってたんだ。
それがわかると、涙が止まらなくなってた。
もう俺はクラスの女子とかそのお母さんとかのことも忘れて、あの木乃伊を、あの双子を助けたくて仕方なかった。
そんな俺に、羽柴は言ったんだ。
「いやだ」って、はっきりと。
後で訊いたら俺は木乃伊と共鳴しすぎて、俺自身が自分は良いから片割れだけは助けてだとか何とかを叫びまくって、教祖達も引かせてたらしい。
で、俺というか木乃伊の双子の懇願をバッサリ切り捨てて、俺がえ? ってマヌケ面で羽柴を見たらさ、羽柴はなんかすごく怒った顔してた。
怒っても基本的に無表情だからこそ怖いのがいつもの羽柴なのに、その時の羽柴は眉間にしわをすごく寄せて、歯を食いしばって、拳も力いっぱいに握って俺を睨み付けながら言ったんだ。
「あなたたちはただでさえ切っても切れない一心同体なんだから、片方だけ助かるなんてこと出来るわけないじゃない。
そもそも、あなたたちは自分一人だけ助かって嬉しいの? 喜べるの? 感謝できるの?
犠牲になった片割れに感謝して、その犠牲が傷にもならず、幸せになることが出来るの?」って。
羽柴がそう言った瞬間、俺の中で泣き叫んでた声が消えたんだ。
たぶんあいつの言葉で、あの双子も気づいたんだ。自分たちの望みは、自分だけを助けてと言うよりも、ある意味残酷で身勝手な願いだったことに。
だってさ、相手に見捨てられたり裏切られたらそりゃ悲しいし辛いけど、遠慮なく相手を恨めるじゃん?
でも、相手の犠牲で自分が助かったら、罪悪感でずっとずっと辛いのにもちろん相手を恨めないし、罪悪感で心底楽しいって思うことが出来ないくせに、犠牲にしたからには相手の分まで幸せにならなくちゃって思ってしまう。
それは多分、誰も悪くないのに一番辛くて苦しくて、不幸な生き方だと思う。
羽柴はあの双子を思いやっていたからこそ、双子の願いを断ったんだ。
そのことがわかっても、双子は何も言わなかった。相手の事を大事に思っても、自分を蔑ろにしすぎてきたからたぶん言えなかったんだ。
だから、代わりって言っちゃなんだけど、図々しくて情けないけど俺が言ったよ。
助けて、って。
「いいよ」って、羽柴は答えてくれた。
笑ってはくれなかったけど、すげー怒ってた顔が緩んだのが嬉しかったよ。
羽柴は「いいよ」って言って、俺のでこに熱でも測るように掌を置いた瞬間、ごとっ! って音がして、軽く存在を忘れかけてた教祖が絶叫したんだ。
何事!? って思って見たら、木乃伊の首が二つとももげて転がり落ちて、俺らの方まで二つとも転がってきたから、俺も悲鳴あげたわ。
あの双子の木乃伊は怖いや気持ち悪いよりも心底かわいそうだと思ってたけど、さすがにあれは普通に怖かった。
俺らの足元まで転がってきたかと思ったら、急にピタッと止まって、ぽっかりと開いてる口が動き出した時も、もっかい悲鳴あげた。双子、ごめん。
で、二つの木乃伊の頭が同時に言ったんだ。
「ありがとう」って。
言った瞬間、今度は頭も教祖がパニくって抱きかかえてた体の方も崩れ落ちて、灰みたいになったんだ。
いつもの事だけど、羽柴が何したかは知らない。
でも、いつもの事だからわかる。
羽柴は、俺の頼みごとをきいてくれた。あの双子を、たぶん信者を洗脳する呪いか何か道具にされてた双子を解放してやったんだってことだけはわかった。
だって、あの封後の木乃伊は「ありがとう」って言って崩れるまでの一瞬の間、確かに笑ったから。
その後は……割といつもの羽柴でした。
木乃伊が崩れてパニックになった教祖と神官がキレて羽柴に襲い掛かってきたんだけど、羽柴は足払いでスッ転ばして教祖が窓ガラスに頭から突っ込むわ、掌底で神官の鼻を折るわ、金的をかましてくらってない俺まで内股にさせるわと、相変わらずの最強っぷりを発揮してた。
あの部屋にいたのは全員で5人くらいとは言え、大の大人相手に何であいつは無傷であんな立ち回れるんの?
で、5人全員をとりあえずぶちのめして俺らはその家から逃げ出した。
おばさんほっといていいの!? って思ったけど、羽柴は「子供じゃないんだから、何とかするんじゃない?」って言って、ほって帰ってきちゃった。
逃げ出すとき、何か信者の人たちが「ここどこ?」「何で私、こんなところにいるの?」とか言いながら軽くパニックになってたから、オカルト的な洗脳はやっぱりあの木乃伊が原因でちゃんと解けたみたいだからいいやって俺も思ったけど。
で、車で連れてこられたから道なんてわかんないけど、テキトーにうろついてコンビニ見つけて、そこで駅までの道を訊いて帰ってきて今に至るわけなんだけど……、俺、羽柴と帰るまで道でずーっと話してた。
今日の宗教の事、あの双子の事じゃなくて、どうでもいいことを。
最近退院したリンデンの事とか、冬休みの予定とか、テストが嫌だとか自信ないとかそういう事ばっかり話した。
……本当は聞きたいことがあったけど、羽柴がインチキ宗教をやたらと毛嫌いする理由とか、あの双子に対して何であんなに怒っていたのかとかを訊きたかったけど、……でも訊いちゃダメだった思ったんだ。
……双子に思ってた時の羽柴はさ、すげー怒ってたけど、同時に泣き出しそうに見えたんだ。
……で、何であんなに羽柴がインチキ宗教を毛嫌いするのかはちょっとわかった。
さっき、しきみさんから電話があったんだ。
しきみさん、羽柴のわがままに付き合ってくれてありがとう、危ない目に合わせてごめんって謝ってくれたんだけど、同時に俺に頼み事をしたんだ。
もしもまた、羽柴が同じようにインチキ宗教に関わろうとした時は、俺が側にいてやってほしいって。
いざと言う時は、羽柴を止めて欲しいって言ったんだ。
頼むと同時に、さすがに理由を言わないと意味不明だと思ってしきみさんは自分から教えてくれたよ。
――羽柴のお母さん、さくらさんが死んだのは、インチキ宗教がらみだってさ。
だから羽柴はああいう宗教が嫌いで嫌いで仕方ないから、そしてしきみさん自身も娘はもちろん自分自身も止めることが出来ないから、だから俺に頼んだんだ。
……俺さ、羽柴に何でも話してもらえるようになりたいって思ってた。
それぐらい信頼されたいってずっと思ってたけど、でも、この話に関して違う。
できれば、一生聞きたくない。
羽柴が一生、俺に話すこともなければ、俺が止める必要もないくらいにインチキ宗教なんかとは無関係になって、羽柴がさくらさんの事は覚えててもどうして死んだかなんてほとんど思い返す必要もなくなって欲しいなって、思った。
……そうなるにはどうしたらいいかはわからないけど……、でも、心の底からそう思うんだ。
* * *
『今日みたいにしたらいいよ。
他愛のない日常を、ただずっとれんげちゃんに話してあげて、横でずっと笑っていなさい』
やっと全体の3/4までたどり着いたので、ちょっと羽柴家の事情に突っ込んでみました。
元々考えてあったネタに、結構無理やりリクエストされたネタを組み合わせたせいか無駄に長くなってしまったけど。
次回は今回ほどじゃないけどシリアスにラブってます。




