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56:テレビの砂嵐の話

 テレビの砂嵐って都市伝説があるんだ。

 っていうか、砂嵐って知らんかな? あれ、アナログ放送でしかならない状態だから、地デジになってからなくなったとかなんとか聞いたんだけど。

 俺もゲームとか映画とかの演出による映像効果でしか見たことないな。


 まぁ、簡単に言うと電波が悪かったり、普通にテレビそのものの故障とかで、画面が言葉通り砂嵐が起こったみたいに灰色の画面にに白い点がそこらかしこに点滅して、ザーッ! って音立ててる状態。

 昔は24時間放送してるテレビ局が少なかった、っていうかなかったから、夜中の3時4時ぐらいはどのチャンネルでもそういう画面になったらしい。


 んで、その砂嵐に都市伝説があるんだ。しかも、複数。

 砂嵐の画面に人影が見えたと思ったら、その中から怪人が現れてテレビの中に引きずり込まれるとか、砂嵐の画面が晴れたと思ったら殺人現場が放送されてて、推理ドラマかな? と思って見てたら自分とか友達の未来だったとか、あとずっと砂嵐の画面を見てたら気が狂うとか。

 ……ずっと砂嵐を見てる時点で、すでに気が狂ってると俺は思うんだけど。


 ま、そんな突込みはどうでもいいか。

 とりあえず、前提はこれで終わり。そして本題だけど、……今時ありえないこの砂嵐の都市伝説を体験しました、俺。

 家の近所の空き地にさ、時々電化製品が不法投棄されるんだよ。

 んで、昨日の朝、学校に行く途中で見たらもう昔の映画とか漫画の中でしか見たことない、箱みたいに分厚いテレビが捨てられてたんだ。

 それ見て俺は、うわっ! 昔のテレビってマジでこんなに分厚かったんだ! つーか画面小さいのにこんなに分厚いって何で!? とか、わけわかんねーことにテンションが上がって、バカなことに近づいちゃったんだよ。


 一応、言い訳しとくけどその時点では何も感じなかったから、近づいたんだからな!

 その時点で、なんか肌がピリッと痛いとか、空気が重く感じるとかあったら回れ右してダッシュで逃げてるっつーの!

 その時は本当に俺にはただのゴミとしか思えなかったし感じなかったら、意味はないけど近づいて触った瞬間、ピリって肌が痛くなって、それと一緒にテレビの電源が入って画面が砂嵐になったんだよ。

 電気コードなんかもちろんどこにも繋がっていない屋外で、だ。


 もうその時点で、またヤバいもんに関わったー! って大後悔しながら、即行で逃げて学校に行った。

 そんで、羽柴に謝りながらそのことを話したよ。

 自業自得としか言いようがないことだけど、またいつもみたいに襲われてから助け求めるよりはマシだし、それにあれに害があるのかないのか、害があるなら俺だけを狙ってんのか無差別なのかもわからなかったから、さっさと話した。

 無差別で害があるのなら、それこそ俺が逃げて何も言わなかったせいで被害拡大なんて、洒落にもならないからな。


 羽柴から少し怒られたけど、幸い羽柴はヤバいものだってわかって近づいたわけじゃないことは理解してくれたから、説教は「気を付けて」くらいの小言で終わったよ。

 んで、俺自身に少なくとも今のところは悪いものが憑いてるとかそういう気配はないから、放課後、一緒にそのテレビを見に行こうってことで、とりあえず今朝の話は終わり。


 それで放課後、羽柴は文化祭の劇でちょい役だけど役者だから練習があって、ちょっと遅くまで学校に残らなくっちゃいけなかったんだ。

 俺は予定なんかなかったし、バカやってそれのフォローを頼んだ立場だったから当然文句なんかなく、羽柴を待って学校に残ってた。


 その時の俺は、もうほとんどテレビの砂嵐なんて忘れてたな。羽柴に害なさそうって言われたから油断しきって、ただ単に羽柴と一緒に帰りたかったから、その理由にちょうどいいぐらいにしか思ってなかった。

 たぶん羽柴も、一緒に帰る理由はともかくとして似たような感じで油断してたんじゃないかな?

 害があるのなら羽柴は俺に限らず誰にだって自分から絶対に離れるなって厳命して、クラスの用事も謝りながら断ってまずは除霊を優先するから。


 だから何も気にせず、羽柴が来るまで教室でスマホでゲームしたり、ネットで動画見たりして暇を潰して普通に待ってたんだけど、窓の外が夕焼けで真っ赤になってきた頃、スマホの画面がおかしくなったんだ。

 ……スマホの画面が、砂嵐状態になったんだ。


 初めに言ったけど、砂嵐って昔のテレビじゃないとならない状態で、スマホだとそういう演出の映像効果とかじゃない限り、どんなに電波が悪くてもスマホそのものがぶっ壊れていても、まずありえないんだよ。

 まぁ、そんな豆知識知らなくても今朝の事を考えたら、ヤバいのは一目瞭然じゃん?

 とっさにスマホを投げてから、羽柴に連絡! とか思ってポケットの中探った俺はアホだ。今、自分で連絡手段ぶん投げただろーが、って直後にセルフツッコミしたわ。


 連絡手段がなんかヤバい、このまま逃げてもいいのかどうかもよくわからんって状態でパニくって、その場でしばらくキョドることしかできなかったんだけど、ザーザー言いまくってるスマホ画面から、ぬぅって人の手が伸びて出てきた瞬間、むしろ逃げなくちゃダメだ! って思って教室飛び出した。

 羽柴は体育館の舞台で劇の練習してるはずだから、羽柴のクラスに迷惑かけちゃうけどそこまで逃げようとダッシュしたら、ちょうど練習が終わってこっちに向かってる途中だった羽柴と鉢合わせたよ。


 ……何でか羽柴、金属バット持ってたけど。

 後から聞いたら、念のためと思って野球部から借りて持ってきたそうだ。……初めから、ボコる気満々かよ。

 まぁもはや羽柴が金属バットやら木刀やらスチール製定規やらを持ち歩いてることに、なんか悲しいけど疑問に思わなくなってきてるんだよ、俺は。

 だからバットを総スルーで、羽柴にスマホが砂嵐になって、何か出てきた! ってことを話したら、俺に鞄を預けて即座に勇ましくバットを構えたよ。


 そのまま羽柴が俺の教室の方に走って行くから、俺も追いかけたら教室には何といえばいいのか……、テレビの砂嵐がそのまま人の形になったものがいたんだよ。

 全体的に灰色なんだけど、やっぱり全体がそこらかしこ白く点滅して、ノイズがうっさい人型なんだけど、目だけは間違いなく人間のもので、その血走った眼でこっちをギョロって睨み付けてきたんだ。

 まぁ、そんなもんにビビる羽柴じゃないのでその人型の変なのは即行、羽柴が頭狙ってフルスイングでぶっ飛ばされたけど。


 机と椅子をなぎ倒して派手にぶっ飛んで、あーいつも通りだなーとかその時の俺は呑気に、現実逃避してた。スマホから変なのが出てきたことに対する現実逃避じゃなくて、自分の好きな子が大の大人くらいの体格の怪人を、おもっくそぶっ飛ばしてるという現実から逃げてました。

 でもさ、いつもと違ってこれで終わらなかったんだ。


 ぶっ飛ばされた人型の砂嵐は、ぎこちない動きだけどすぐに立ち上がって、こっちに向かって来たんだ。

 さすがにそれにはびっくりしたけど、やっぱり羽柴が即座にバッドでぶん殴る。

 ぶん殴って叩きのめして時々蹴ってを何度か繰り返すんだけど、その砂嵐は全然、消えもしなければダメージをくらった様子もないんだ。


 動きは速くないというか、初めからずっとぎこちないから、別に羽柴は苦戦っってわけじゃなかった。 つーか、俺も途中から箒を掃除ロッカーから取り出して応戦できたから、あれ自体は強くないって言いきっていいと思う。


 でも、どんだけ殴ってもノーダメージでこっちにというか、俺に向かってくるんだ。

 マジで何なんだよ、こいつ!? って俺は泣きたくなってきたところで、羽柴がもう何度目かの砂嵐をフルスイングでぶっ飛ばして、俺に謝ったんだ。

「ごめん、ソーキさん」って言ったかと思ったら、いきなりダッシュかけて砂嵐に向かって行ったんだよ。


 何やってんだよバカ! って思わず、いつもの自分を棚に上げて怒鳴っちゃったなー。

 あの砂嵐がさほど強くないってわかってても、やっぱり羽柴が自分から危ないところに突っ込んでいくのは心臓にも気分にも悪いよ。

 怒鳴りながらとっさに箒を砂嵐にぶん投げたんだけどさー、砂嵐は羽柴を無視して俺に向かってきて、羽柴はそんな砂嵐とすれ違いざまに勢いよく足払いをかけて、砂嵐が体勢を崩したところで俺が投げた箒が、うまい具合に砂嵐の片目に直撃。

 奇跡的なバルスが発生しました。


 羽柴はさ、砂嵐が本体じゃないことに気付いてたんだ。

 あの「ごめん」も、今から危ないことをするから心配かけてごめんとかじゃなかったみたい。っていうか、俺でも強くねーなと思えたんだから、羽柴からしたらあの砂嵐に突っ込んでいくことは、危ないことにカウントされてなかった。


 羽柴が謝ったのは、……俺のスマホをぶっ壊すこと。

 ぶっ壊されました。羽柴の金属バットの一撃で、粉々に。


 スマホって、あんな風に粉々になるんだーって、何故か感心した。

 本体がスマホだってことに気付いてたんだけど、高価だし連絡先とかいろんなデータとか消えちゃったら取り返しがつかなくて悪いから、羽柴は砂嵐の方をどうにかできないか粘ってたんだけど、全然無理だったから最終手段で壊したそうだ。


 結果として、スマホが粉々になったことで砂嵐は消えたんだけど、その後羽柴が粉々になったスマホを持って、俺に土下座で謝られた方が、砂嵐に襲われるより俺は困った。

 羽柴は本当に申し訳なさそうで、弁償するって何度も言ったけど断ったよ。


 だっていつも羽柴に助けてもらって、今回もそうだし、事前に危ないってわかるもんじゃないとはいえ、自分から近づいてターゲット認定されちゃったんだから、俺の自業自得じゃん? スマホが壊れたくらいの被害でむしろラッキーだよ。

 そんな感じで慰めて、若干不満そうだったけど何とか納得してもらったよ。


 そのあと、乱闘でめちゃくちゃになった教室を片付けてから、元凶のテレビのところまで行ったらさ、テレビは相変わらず電気なんか通ってないのに電源がついて、画面は砂嵐でザーザー言ってたんだ。

 で、そのテレビの画面、砂嵐ですごく見にくかったけどよく見たらテロップが流れてたんだ。

 下から上に流れていくテロップで、同じ二文がずっと繰り返し流れてたよ。

 俺の名前と、「本日の犠牲者は、以上です」って文が。


 羽柴もそれに気づいて、不愉快そうに「犠牲は、お前の方だ」って吐き捨ててから、やっぱり持ってきてたバットでそのテレビを叩き壊したよ。

 さすがにスマホと違って一撃で粉々にはならなかったけど、スマホと同じくらい粉々になるまで、ひたすら叩き付けてぶっ壊して、粗大ごみじゃなくて不燃ごみとして処理できそうなぐらいの大きさになるまで壊してたわ。

 あそこまで行くと、見てて痛快だな。


 そんな感じで、今日の心霊現象は終了。

 羽柴が壊しちゃったスマホについては、テレビを壊した後に羽柴が俺のオカンに経緯を話して、自分が弁償するってまた言い出したから、いらないって、俺の自業自得なんだから! 自分のお年玉貯金か小遣い前借でなんとかするって! って言って止めておいた。


 そんでオカンは、相変わらず霊をホイホイ引っかける俺に呆れつつも、自業自得ではあるけど仕方がない面もあるからってことで、新しいスマホ代は全額じゃなくて半分でいいって言ってくれた。正直、子の恩情は助かった。

 羽柴にはいつも迷惑をかけてるから、気にしないでいい。どうしても気になるんなら、これから羽柴の負担にならない範囲でバカ息子を助けてやってと羽柴に言って、ようやく羽柴が納得してくれた。


 それで明日、早速スマホを買ってもらえることになったのはいいんだけど……実は、前のスマホが粉々なの、結構ショックで凹んでる。

 羽柴の事は本心から、恨んでないよ。むしろ、もっと早くに壊してくれても良かったのにって思ってる。


 半額は確かに痛いけど、どうせお年玉貯金はオカンとかに言わないと引き出してもらえないから、いくら溜まってるかも実は把握してないから、急な出費って実感はあんまりなくてやっぱり気にしてねーよ。

 そもそも、もうケータイをスマホにしてから三年近くて結構型が古くなってたから、新しいスマホを買ってもらえること自体は嬉しい。


 ……でもな、あのスマホの写真データに入ってたんだよ。バックアップ取ってなかったんだよ。

 この前、オカ研のバカ騒ぎのどさくさ紛れて撮った、羽柴に化けた椚の狐耳付き笑顔の写真が!!




 * * *




『むしろれんげちゃん、壊してグッジョブ。そしてあんたはれんげちゃんに土下座しろ』

地デジ放送が当たり前の世代の人に通じるんだろうか、そもそもソーキが砂嵐を知ってるんだろうか? とか思いながら書きました。

演出による映像効果とかでは出るから、10代でも知ってますよね、砂嵐?


次回も羽柴さん無双でホラクラ話です。

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