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53:心霊写真にまつわる小ネタの話

 もうすぐうちの中学校で文化祭があってさ、うちの部活はオカ研らしく、「心霊写真館」ってのをやることになった。

 その名の通り、心霊写真とその写真の霊はどういう霊なのかっていう補足を展示しようってことになったんだけどさ、結果として「心霊写真館」と言うより「本物と偽物の見分け方講座」みたいになりそう。


 当たり前だけど、先輩たちが家から持って来たり、親戚・友達から借りたりもらったり、ネットで拾って来た心霊写真のほとんどが偽物だったから。羽柴がばっさり、断言して切り捨ててたよ。

 最近はスマホのアプリとかで簡単に作れるもんなー。


 だけど一応何枚か本物があったし、ちょうど害がない奴だったから一応「心霊写真館」の体裁は取れそう……いや、取れんわ。

 もうすげーよ。何でよりにもよってこれが本物なの!? って写真がそろったからな。

 もう「心霊写真館(笑)」にした方がいいかもしれない。


 だってさ、まず俺が持って行った写真が例のあれだぜ?

 羽柴が俺ん家の玄関で、金属バットでボコって霊に土下座させたあの写真。

 俺、心霊写真は嫌ほど撮ったことあるけど、全部すぐに羽柴から習ったお焚き上げするから、手元に残してる心霊写真はあれしかなかったんだよ!!


 先輩たちは見て爆笑。

 俺が霊をボコってる羽柴を呑気に激写したと思ってたから、もちろん丁寧に説明してやったよ。

 ……それは初め、直立不動の羽柴を撮ったもので、消去を繰り返すごとに復活してはコマ送りみたいに写真の羽柴も霊も動いて、最終的にこうなったってさ。

 みんな絶句してから、羽柴に「どうやったの、これ!?」って訊いてたけど、羽柴は首傾げて「気合い?」って答えてた。

 本人もよくわかってなかったのかよ。


 で、他に特に害のない心霊写真は2枚あったんだけど、その2枚が雪村先生と部長副部長ん家にあったやつ。

 雪村先生が持ってきた奴は、典型的心霊写真。

 先生の友達の結婚式二次会の写真で、先生と新郎や友達やら10人ぐらい肩組んで映ってる写真なんだけど、よーく見たら手が一つ多いんだよ。


 ……けどな、正直その写真見た俺らは、手が一本多かろうが少なかろうがどうでも良かったわ。

 だってその写真、新郎以外が全員女装してたし。

 何か余興で、AKBコスして歌って踊った時の写真らしい。

 先生は「この時、めっちゃ酔ってたから! 酔った弾みだから!!」って言い訳してたけど、羽柴に「衣装用意したのも、酔った弾みですか?」って突っ込まれて、撃沈してた。


 まぁそんな先生は無視して部長が、これは本物なのか、展示しちゃっていいのかを羽柴に訊いたら、肩に手を置かれてる人の守護霊らしいから、問題ないってさ。

 ……ちなみに、その写真に守護霊さんが手だけとはいえ映った理由は多分、「いい年してこんな格好して情けない。もうこれ以上恥をさらすのはやめなさい」って言いたくて肩に手を置いてるんじゃないかって、羽柴が言ってた。


 それ聞いて、先生がやっぱりこれ飾りたくないって言いだしたけど、せっかく数少ない本物なんだからってことで却下されてた。

 せめてもの情けで、映ってる人全員に目線を入れたけど、他の人はともかく先生はうちの生徒なら普通に分るよな……。


 そんでもう一枚が、部長と紅葉先輩が子供の頃にひーばーちゃんの法事で撮った写真。

 親戚一同の集合写真で、法事とは言え3回忌だから暗い雰囲気もないし、3歳くらいの先輩たちがニコニコ笑顔で映ってるし、何か一番奥にうつってるばーちゃんは、言っちゃなんだけどボケてるのか、自由の女神みたいに右手を高々上げてピースサインと、法事でするべきじゃないポーズで映ってた。


 そんな感じの法事とは言えまぁ割と和む写真でさ、変なところは別にどこもなかったんだよ。人の顔っぽく見える影もなければ、手が多いわけでも逆に少ないわけでもない。

 だから、これのどこが心霊写真なんすか? って俺が訊いたら、部長と紅葉先輩が何とも言い難い顔して見合わせてから、指さした。

 自由の女神みたいなポーズのばーちゃん指さして、言ったんだ。


「このひーばーさんの3回忌だった」って。


 お前かよ、ばーちゃん!!

 はっきりくっきり映りすぎだよ! せめて透けろよ! って思ったけど、透けててもやだな。自由の女神みたいなポーズで映る幽霊って。

 何か他の先輩たちが、「外国の心霊写真や動画って、こんな感じだよね」って遠い目して言ってたな。


 もうオカルトマニアの部長も、「これはさすがに、ひーおばーちゃんには悪いけど、喜べない」って言うし、めっちゃビビりの紅葉先輩でさえ「身内だという事を引っこ抜いても、これは怖くない。っていうか、どう思えばいいのかがわからない」って困り果ててたわ。


 そんな感じで、展示することが決まった本物は俺のを含めて3枚だけだけど、実は持ってきてもらった中でもう一枚、本物があったんだ。

 持ってきたのは風守先輩で、親戚に文化祭の出し物の事を話したら、その知り合いから「気味が悪くて捨てられないから、良かったらもらってくれ」って言われてもらった写真らしい。


 まだデジカメって言葉すらなかったんじゃないかなーって頃ので、旅行先で見つけた崖と海を自殺の名所だとは知らずに撮ったら、誰もいなかったはずなのに女が一人くっきり映ってたんだと。

 で、部長たちの写真のばーちゃんレベルではっきり映ってるとはけど、ばーちゃんと違ってあきらか不気味だから捨てられなかった。

 でも、その写真を撮った張本人は今も元気に生きてるから、害はないだろうと思ってもらって持ってきたんだけど、……単にその写真の霊、選り好みが激しかっただけみたい。


 俺が見たその写真は、崖と海を背景に黒い服にぼさぼさの髪をして血走った目の女が、こちらをまっすぐに見てるって写真だったんだけど、他に人にはその女、後ろを向いて顔なんかまったく見えてない写真に見えてたらしい。

 先輩たちと話がかみ合わなくて、俺だけ見え方が違うって気づいてすぐに羽柴の方を見たら、ちょっと呆れたような目で、「本当にソーキさんってモテモテだね」って言われた。

 嬉しかないわい!


 で、その女は完全に俺を道連れのターゲット認定したみたいだったから、羽柴は先輩に「処分しますよ」って許可を求めるんじゃなくて、断言してた。

 先輩も害がないと思って持ってきたもんだから、害があるのならぜひそうしてくれ、むしろ持ってきてごめんって、すげー俺に謝ってた。


 そんで羽柴の除霊が始まったわけだけど、先輩たちは俺が持ってきた写真と同じことをやると思って、何かワクワクしてたけど、あれはデジカメだからできたからフィルムの写真じゃ無理らしい。

 理屈がわかりませんよ、羽柴さん。


 じゃあどうすんのかと思ったら、羽柴はその女が映った写真に指を置いて、そのまま横についっと滑らせたら、……女が羽柴の指の動きに合わせて、引っ張られるみたいに動いて、写真から消えた。

 全員、目玉を丸くして誰もいなくなった写真見て固まってる中、羽柴は普通に「はい」って先輩に写真返してた。


 スマホか!? 羽柴さん、それスマホの画面じゃなくて写真ですよ!!

 やっぱりみんなが、「今のどうやったの!?」って聞くけど、羽柴は真顔で「気合い?」って答えてた。

 あいつもしかして、やってる除霊のほとんどを自分でもどうやってるのか理解できてないのか?




 * * *




『れんげちゃんの気合いは、二次元の壁を超えれるの!?』

スマホみたいに霊を画面から消すのは、絶対にやりたいネタだったので形にできて満足。

しかし自分で書いててなんですが、どうして羽柴さんのチートさは、どれもこれも物理的なんでしょう?


次回は、洒落怖の有名どころをホラークラッシュします。

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