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46:類は友を呼ぶ話

 この話元ネタははなんか笑える霊体験スレの、「理.系.の.先.生」です。

 2日ほど前に羽柴がオカ研で、「今週の日曜日、暇な人は幽霊屋敷に行きませんか?」とか言い出したんだ。


 羽柴は自分から肝試しとかやるわけないのをみんな知ってるから、さすがに「うん、行く行く~」って即答する奴はいなくて、理由を聞いてみたらしきみさんの仕事の手伝いに人手が欲しかったらしい。


 しきみさんの友達で今年の春に家を買ったんだけど、その家がもう完全ないわくつきの家だったらしくて、奥さんが実家に帰っちゃったんだって。


 その友達、オカルトを信じてる人を全然バカにしないしむしろ怪談とかホラー映画が大好きだけど、霊とかオカルトはみんなフィクションだと思ってるタイプらしくて、初めからその家が「出る」で有名だったことを知りつつもそこを買っちゃってさー。


 奥さんもオカルト否定派だったから、そこは別にもめなかったそうだ。

 その「出る」って噂以外は交通の便も良し、治安もよし、家自体は古いけど綺麗にリフォームされてて広いから、信じてないんならそりゃ文句なんかなかったんだろう。

「出る」って噂だけで、実際にそこで自殺やら殺人事件やらが起こった事故物件ってわけでもないらしいし。


 ……ただ、旦那の方は完全な零感だったのに対して奥さんには霊感が多少あったらしくて、奥さんばっかり心霊現象に遭遇しまくったそうだ。


 夜中に廊下で足音がしたり、天井に全身が真っ赤な赤ん坊が這い回ってたり、庭にボールが飛び込んできたかと思ったら生首だったり、二階の窓から女が部屋をのぞき込んでたりと数えきれないぐらいの霊体験をしたんだけど、旦那さんはもちろん奥さんを心配して気を使うけどオカルト否定派かつ自分は何ともないから、精神的な病気かなんかとしか思えなかったんだよ。


 だから、とりあえず精神的な療養のつもりで実家に帰って休むことを勧めたら、奥さん実家に帰ってから心霊現象がピタッとおさまったことで、やっぱり原因は自分の精神じゃなくてあの家だと確信して、それから家に帰らず実家で、「引っ越すか、あの家に憑いてるものを何とかしてくれなきゃ離婚!」と言ってるらしい。


 で、中古とはいえ家を買ってすぐに引っ越しなんかしたくない、霊のことは信じてないけど奥さんの精神安定のために「ここはお祓いしたから大丈夫」っていう、この前の呪いの話とは逆のプラシーボ効果で何とかしようと思った結果が、旧友のしきみさんに依頼だそうだ。


 そんでしきみさんがとりあえず家を見てみたら、家や土地に何かが憑いてるんじゃなくて、元々の持ち主がたぶん人を呪うことを本業にしてた人で、その人が始末しきれなかったのか、それともわざと残したのか、とにかくその家に呪いに使った呪具の類がいっぱい隠されてるせいで、たちの悪い霊のたまり場状態になってることがわかった。


 だから、その呪具を全部見つけ出さないと霊自体をいくら払っても無駄だから、そのいくつあるかもわからん呪具を探す作業に人手が欲しくて、羽柴に頼んでオカ研メンバーに手伝いを要請したのが、ことの始まり。


 事情を知らされたらオカルトマニアな部員が乗ってこないわけもなく、その日に用がある人以外、受験生の部長や顧問の先生まで全員参加。

 俺ももちろん参加して、今日、行ってきたよ。


 どうでもいいけど、オカ研メンバーはしきみさんを見て絶句した後、綺麗に全員ハモって言った。

「羽柴は父親似だったのか」って。

 やっぱ思うよな、あの親子。


 話を戻すけど、……行ってみてしきみさんの友達すげぇと思った。

 もうその家の近所、まだ屋根すら見えてないぐらいの距離ですでに息苦しくて嫌な感じがめちゃくちゃするわ、ビビりの紅葉先輩は顔が真っ青だわ、家が見えたあたりでは雪村先生も風守先輩も顔色悪くして、「何か気持ち悪い」って言ってたぐらいに、やばいもののたまり場だった。


 平気そうなのは羽柴親子と、テンション上がりまくりな部長くらい。部長も、何も感じないんじゃなくって自分でも明らかヤバいというのが感じ取れるのが嬉しかったそうだ。


 ……部長の反応も大物だけど、しきみさんの友達まじですごいよ。

 本気で何も感じてねーの。もう俺からしたら毒ガス同然な空気の中、やたらと朗らかに笑って挨拶して、俺らの分までお茶やお菓子を出してくれたよ。


 ……首のないサラリーマンっぽい霊をすり抜けて廊下を歩いていくわ、床から生えた「死ね」って呟く顔を踏みつけるわ、もう完全に何も見えてないし気付いてない。

 零感でもここまでないのは珍しいわ。


 奥さんの言い分を信じてやらなくて酷い旦那だと正直あそこに行くまで思ってけど、ここまで自分に影響もなく見えないのなら信じられなくて当然だし、むしろプラシーボとしか思ってなくてもお祓いをやろうとしてる時点で、奥さんを尊重してる人だった。


 まぁ、その友達の話は置いといて、とりあえず挨拶もそこそこにみんなでさっさと原因の呪具を探したよ。

 長居したらヤバいってみんなも肌で感じ取ってたから、もうみんな無駄口叩かずテキパキと探しまくったな。


 呪具探しの手順は、まずオカ研メンバーが家の中を探し回って、何か怪しげな物を見つけたら、家主であるしきみさんの友達に見せる。


 それが友達の家のものじゃなかったら、羽柴親子に「家の中にいたらヤバい」と判断されて庭に待機を命じられた、俺と紅葉先輩に見せる。

 霊的に危ないものなら、俺と紅葉先輩が敏感だから、呪具かそうじゃない前の住人の忘れ物かはほとんどすぐにわかるからってことで、その識別役をやらされたんだよ。


 で、俺らが呪具だって判断したものは、同じく庭で待機してる羽柴親子に渡されて破壊されてた。


 ……初めのうちはな、テキパキとやりつつもやっぱりオカルトマニアばっかりだから、なんか呪いの道具に興味津々だし、羽柴親子の壊しっぷりが面白かったからか、その壊すのをみんな見学してたんだけど……なんかさ、押入れの奥とか床下収納の底とかに細工がしてあって、そこらに呪具がつめこまれてて、もうあり得ないぐらい出てくるんだよ。


 探し始めて10分くらいで5つ以上出てきたし、っていうか呪具じゃないただの忘れ物なんか一つも出てこなかった。

 もう呪具が15個目くらいになってから、部長すらもはしゃぐのをやめたし、俺も数えるのをやめた。

 羽柴もしきみさんもそっくりな顔で、「……マジ?」って言わんばかりの顔で引いてた。


 とりあえず、覚えてるだけでも上げてみると、頭に針を刺されまくってハリセンボンみたいになった人形は、しきみさんが頭をぶちっとちぎって中からお札を取り出して燃やしてた。


 ネズミの頭の骨ばっかりがつまった壺は、しきみさんが地面に叩き割って、羽柴が箒と塵取りで回収してゴミ袋に詰めた。


 首を絞められて殺されそうな女の人の絵は、羽柴が蹴りを入れて絵のど真ん中に風穴を開けた。


 お札がびっちりびっちり貼り付けられた小箱がいくつも出てきたけど、それらは全部羽柴かしきみさんが踏みつぶしてた。


 定番の藁人形は10体以上出てきて、この量を庭で燃やしたらご近所迷惑だからってことで、ラップに包んでレンジでチンしてた。意味あんのか、それ? と訊く気ももはやなかったわ。


 そんな感じで、呪具を見つけては壊すを繰り返しまくって、終わったのは3時過ぎてたな。午前10時くらいから始めて、ろくに休憩してなかったから、5時間ぶっ続けでやってたんだけど、疲れはしても一向にみんな、腹は減ってなかった。

 つーか、空腹を感じる余裕もなかったよ。


 まぁ、呪具捜索とその破壊は終わったけど、家の中にたまった霊を祓うって仕事はまだ残ってたから、しきみさんが羽柴にお金を渡して、今日のバイト代としてみんなで近所のファミレスでご飯でも食べろって言って、あの人は一人残ったよ。


 みんな遠慮なくゴチになりますって言いたいところだったけど、初めて感じたであろう悪霊たちの気配に引きずられたのか、食欲がなかったな。


 まぁ、俺はもはや慣れてたから食ったけどな。つーか、食べないとやってられねぇって思った。

 つーかさ、あの友達さん見てて、「類は友を呼ぶ」って本当だなって、思い知らされたよ。


 だってあの人、家からどんどんあり得ないぐらいに明らかヤバい、呪いが実在しないのなら頭がおかしい人が作ったものとしか思えない物がゴロゴロ出てくる中、感想がこの一言だぞ!


「ゴミの分別、大変そうだなぁ」の一言で終わらせてたわ!


 天然が天然を呼びすぎだよ!

 ボケの収拾がつかねぇよ!



 * * *



『あんたも私から見たら、れんげちゃんの類友って感じだけどね』


 私の周りは基本みんな文系か芸術系なので分からないのですが、理系の人ってみんな心霊現象に対してこんな感じなんでしょうか?


 次回は、羽柴さんが無双します。生きてる人間に。

 ……ただの暴力じゃねぇか!

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