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39:人形の話②

 今日、メリーさんからの電話があった。

 原因は多分あれだ。朝、ごみ置き場で見た古いビスクドールってやつなのかフランス人形なのかよくわかんねーけど、そういう高くて古そうな人形。


 言っておくけど今回は俺、人形を本当に見ただけだからな。

 触ってもなければ、別にかわいそうとも思ってないからな。古い人形が捨ててあるなーって思ったかどうかも怪しいぐらいで、オカ研の先輩たちが「メリーさんの正体って大体人形だよねー」って言われて、あれじゃね? って思い出したぐらいで、本当に今回は付きまとわれる心当たりはないからな。


 まぁそれはいいとして、放課後いつも通りオカ研で先輩達や羽柴と雑談してたら、電話がかかってきてさー、非通知だったからイタ電だと思って取らないでいたら留守電に切り替わって、そこでメッセージが入ったんだ。


「私、メリーさん。今、3丁目のゴミ捨て場の前にいるわ」ってメッセージを聞いて、俺もオカ研のメンバーもみんな一瞬で固まった。


 で、一番反応が早かったのは部長だったな。


「メリーさんからの電話、きたぁぁぁー!」と、歓喜の大絶叫。


 おい、部長。反応違う。この電話が来てその反応は、メリーさん望んでない。

 そんな突込みが頭に浮かんだけど、言えなかったよ。

 俺と羽柴と紅葉先輩を除いたら、オカ研メンバー全員似たような感じで喜んでたから。


 何か周りの反応のせいで俺の恐怖とか不安はどっか彼方に飛んで行ったけど、俺がメリーさんに狙われてるのは確かだから、部長たちは無視して羽柴にどうしたらいいかを訊いたんだ。

 そしたら羽柴、「とりあえず、壁に背中をくっつけておいたら?」って言われて、言われた通りにしながらその訳を訊いてみた。


 答えは、「最終的に『あなたの後ろにいるの』になるなら、そうしておけば壁にめり込むんじゃない?」だった。


 やめてやれよ! と俺が突っ込むけど、他の部員たちは面白がってずっと壁に背中つけとけって囃し立ててさー、風守先輩が「待って!」って声をかけてきたときは、あぁやっと俺のほかに突っ込みがと思ったら、違った。


「羽ちゃんと日生くんが背中合わせでいたら、メリ-さんが現れてすぐに撃退できるんじゃない?」と、妙にわくわくと輝いた目で言われて、ブルータス、お前もか! になったわ。


 つーか先輩、いつの間に羽柴を羽ちゃんとか呼ぶようになるくらい仲良くなったんすか。

 ちなみに先輩の意見は、もし意表をついて俺の正面に現れたら対応に遅れるからと、却下された。


 そんな感じで騒いでる間に電話第二弾が来て、その電話は羽柴が取ったんだけど、羽柴は少しだけ話を聞いてからこんなこと言い出してた。


「その先右に曲がったところのパン屋で、メロンパン二つ買ってきて」


 何でメリーさんにパシリ頼んでるんだよお前は!

 そう突っ込んだらやっぱり真顔で、「今、2丁目のコンビニの前にいるって言うから、その近くだし、明日の朝ごはんのパン買わなくちゃいけなかったから」って答えるし。俺が聞きたいのはそういうことじゃねぇよ。

 っていうか、メリーさんたぶん金持ってないだろ。


 そして、俺の突っ込みはやっぱりオカ研のオカルトマニア共の悪ノリには通用しない。

 全員で何か、誰が一番メリーさんの電話に面白い対応できるかっていう謎のゲームを始めやがった。


 狙われてる当事者の俺を置き去りに、俺のスマホを順番に回してみんな何か色々言ってたわ。


 部長は「可愛い声ね。お嫁に来ない?」ってナンパ始めるし、先生は「こっちから向かってきた場合どうするんだ? 逆に、逃げまくった場合は? あと、超高層マンションとかなら一階ずつ上がってくるの? それが何十階でも?」って質問攻めするし、紅葉先輩はパニくってメリーさんが今どこにいるのを言う前に「この電話番号はただいま使いたくありません!」って言って切っちゃったし。


 あと、定番だけど「パンツ何色?」って聞いてる人もいたな。羽柴を見習ったのか、「味噌ラーメンとギョーザ二人前」って出前頼む人もいた。


 そんなメリーさんがかわいそ過ぎる対応散々されたせいか、5分おきくらいの感覚で電話がかかってきてたのに、学校の前に到着したあたりから10分待っても、30分待ってもかかってこなくなったよ。


 みんなが何でここまで来たのにかかってこなくなったんだよーってブーイングしてたから、どう考えてもあんたらのせいですって言ったら、さすがにみんな黙った。羽柴は首を傾げてたけど。


 で、もう下校時間だぞーって他の先生から怒られて、俺にスマホを返されて教室出ようとした時、電話がかかってきたんだ。

 俺、その電話を他の人たちにも聞こえるスピーカー状態にして取ったよ。つーか、そうしろって言われた。


 スマホから小さな女の子らしい、可愛いくて高い声で「私、メリーさん」って言った瞬間、今どこにいるってセリフを掻き消してオカ研メンバーがそれぞれ言ったよ。


「メロンパンは?」

「ねぇ、やっぱり日生君じゃなくて私のところに来てよ! 大事にするから!」

「部長ずるい! 私もちょっと欲しいです!」

「やめろバカ姉貴! 来るなよ! 来たら即行人形供養の寺か神社に持っていくからな!」

「日生! 今すぐその場でぐるぐる回ってみろ! メリーさんがその状態で、どうやって後ろに行くかを知りたい!」


 ……そんな感じのことを一斉砲火みたいに言われて、電話の向こうでメリーさんが絶句してたわ。


 何も言ってなかったけど、マジそんな雰囲気感じたから、初めて俺がメリーさんに声かけたよ。

 今思うとおかしいな。俺に電話をかけてきてたのに、初めて対応するのが最後だけなんて。


 とりあえず、メリーさんに「……なんか、ごめん。……もうあきらめて帰った方がいいと思う」って言ったらメリーさん……、涙声で「……うん」って言って電話切った。

 それから、電話はかかってきてない。



 * * *



『そりゃ、もう絶対にかけないでしょうね。何のいじめよ、それ』


 メリーさんってなんでこう、いじられやすいんでしょう?


 次回は洒落怖が元ネタです。最近大人しかった羽柴が久々に物理でいきます。

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