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38:猫の話

 この話の元ネタは何か笑える霊体験スレの「猫.の.呪.い」です。

 今日が学校始まって最初のオカ研活動日だったんだけどさ、部室行ってまず初めに紅葉先輩が羽柴に、「助けてくれ!」って土下座した。


 もうあまりの剣幕だったから何事かと身構えて話を聞いたら、身構えた分脱力した。

 っていうか、羽柴と部長の初めから心配なんかしてない、呆れてるみたいな白けた顔をしてることに気付くべきだった。


 紅葉先輩さ、お盆の終わりくらいに塾の夏期講習に行く途中で猫の鳴き声を聞いたんだって。

 その時は子猫がみゃーみゃー鳴いてるなとしか思わず、そのまま塾に行ったんだと。

 先輩、昔ノラ猫に引っかかれて手がものすごく晴れて熱出たことがあるから、猫が苦手らしい。


 で、2時間くらい勉強した帰り道、やっぱり同じところで猫の鳴き声が聞こえてきた。

 でも、行きで聞いた時よりものすごく弱々しい鳴き声になってることに気付いて、一度はそのまま無視して通り過ぎようと思ったけど、猫が苦手であって嫌いではないからどうしてもほっとけずに、戻って探したんだよ。


 そんで、道のわきの植え込みの中に、水分補給をしてなかったのかだいぶ衰弱してた子猫3匹と他の猫と喧嘩したのか、誰かに傷つけられたのか、体が血で汚れて息絶え絶えの母猫を見つけちゃったんだって。


 もうこの時点でどうしたらいいか困るのに、紅葉先輩は昔話かなんかで聞いた「猫は最期に見た相手を祟る」って迷信を思い出しちゃったんだって。


 ビビりの先輩は「祟られたくない!」の一心で、子猫と母猫を抱えて近くの動物病院まで走った。

 ここで逃げても、母猫や子猫が死ぬ前に誰か他の人間が見つけて「最期に見た相手」になってくれるとは限らなかったから、「死ななきゃ大丈夫だ!」とパニくってんのかポジティブなのかよくわからんことを考えて連れて行ったそうだ。


 まぁ、結果は母猫病院にたどり着く前に紅葉先輩の腕の中でご臨終なんだけどな。

 でも、子猫の方は病院連れてって点滴してもらって助かった。


 もちろん先輩は母猫に祟られると恐れたけど、足りない分のお金を持ってきてくれた部長に「子猫3匹分減っただけでもいいじゃない。っていうか、子猫見捨てた方が母猫は祟りそうよね」と言われて、やっぱりパニくってんのかポジティブなのかわからん考えに至った。


 この子猫が無事天寿を全うさせてくれそうな里親を見つければ、母猫に祟れずに済むかもしれないと考えた先輩は、とりあえず母猫の死骸は庭に丁重に弔って、子猫の里親をネットやチラシで募集。


 受験勉強の傍ら、しっかり子猫の世話もしてトイレの躾、爪とぎの躾もして、猫飼いたいでーすという人が来たらすぐに渡すんじゃなくて、ちゃんと猫が飼える環境なのか、猫を飼った経験があるか、ないならないでちゃんと予習したかとかをしっかり聞いて、この人ならという人を厳選して、子猫をそれぞれ里子に出した。


 3匹目の里親も決まってこれで安心だと紅葉先輩が思ったら、次の日から先輩の家で妙なことが起こるようになったそうだ。

 先輩の部屋の中や前で、虫やネズミの死骸をよく落ちてるらしい。


 ネズミはともかく虫は勝手に死んだと思うかもしれないけど、ゴキブリやらカマキリやらセミやら結構でかい虫の死骸が、いつの間にか部屋のど真ん中、ドア開けてすぐのところにポツンと置いてあるから、先輩はもちろん家族みんなが毎日のように悲鳴あげたって。


「子猫を里子に出してもダメだった! っていうか、里子に出したことを怒ってる!?」と思った先輩は、庭の母猫の墓にそれまでも毎日線香あげたりして弔ってたんだけど、そこにキャットフードやら煮干しやらをお供えして、どうか許してくださいとさらにお参りするようになった。


 その頃には夏休み終わる直前だったから、新学期始まったら羽柴に除霊を頼もうって思ってたら、ついに昨日、夢を見たらしい。


 夢の中で死んだ母猫を先頭に、何十匹の猫が先輩を追いかけて追いかけて、先輩が逃げきれずに捕まったらその猫たちは先輩を神輿みたいなのに乗せたんだと。


 で、その神輿に乗せられて練り歩かれて、先輩が乗る神輿には虫やらネズミやら煮干しやら生魚やら猫じゃらしやらマタタビやらがどんどん投げ込まれて、気持ち悪いわ生臭いわ猫じゃらしがくすぐったいわという、散々な悪夢だったそうだ。


 そんで、先輩は涙目で言ったよ。

「この猫の祟りを何とかしてくれ!」って。


 羽柴は即答で、紅葉先輩以外の全員が気づいてることを教えて終わったけどな。


「それ、祟りじゃなくて恩返し」



 * * *



『むしろ何で祟りだと思ったのよ』


 元ネタにかなりそのまんまだけど、紅葉先輩にあまりにぴったりだったから書いてみた。


 オカ研メンバーは羽柴とソーキだけじゃ話が広がらないから出しただけだったけど、唯一のオカルト嫌いビビりなせいで、妙に紅葉だけキャラが立ってしまってる。

 キャラ立てするのなら他のメンバーももっと個性的にしたいけど、そうした場合ソーキが突っ込みしきれないな。


 次回も、緩いコメディです。

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