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31:ただひたすら惚気ただけの話

 この話の元ネタは、なんか笑える霊体験スレの「サ.ト.リ」です。

 夏だっていうのに、夏休みだっていうのに、俺の部屋のクーラーが壊れた!

 しかも、今は給料日前だから修理に頼むのは一週間後とか言われた!

 俺を蒸し焼きにする気!?


 寝るときは元々クーラーつけずに扇風機使ってるからいいんだけど、問題は宿題!

 なのに、オカンらはわかってくれねーの。


 宿題するときも扇風機使えって言うけど、扇風機じゃノートや教科書は手で押さえてないとバサバサページがめくられるし、プリントは吹っ飛ぶっつーの。

 つーかさ、ただでさえ勉強て普段使ってない脳みそがヒートアップして熱持ってんのに、クソ暑い部屋で集中なんかでくるわけねーじゃん。


 リビングとかでやってもいいけど、テレビがあるからやっぱり集中できないんだよなー。

 消しててもなんか番組を見たくなるから。


 そんな感じで宿題しない言い訳してたら、オカンに「じゃあ図書館にでも行って宿題やりなさい」って言われて、宿題と筆記用具と往復のバス代だけ持たせて、家から放り出された。

 猫の子掴むみたいに襟ぐり掴んで、マジでぽいっと放り出された。

 せめてスマホも持たせろよ、オカン。


 まぁ、オカンの言うことは当然正論だし、せっかくバス代もくれたし図書館は涼しいから素直に言うこときいて少しは宿題を消化しようってやる気が少しは出たよ。


 でも、バス停まで行ったら、俺がバス停到着寸前にバスが出ちゃった挙句に次のバスまで15分くらいベンチで待つ羽目になって、そのせいで出たやる気が一気になくなった。


 だからといって帰ってもオカンにまた放り出されるのはわかってたから、ベンチでバスを待ったよ。

 で、スマホもないからノートで扇ぎながら、ひたすら暇だなー、クソ暑いなー、アイス食べたいなーとか考えてたら、いきなり隣から「アイス食べたいなー」って呟きが聞こえてマジでびびった。


 いつの間にか、俺の隣に人が座ってたんだよ。

 全然気がついてなかったところで、俺が思ったのと同じタイミングで「アイス食べたいな」って呟きだったから、本気でびっくりして文字通り飛び上がったわ。


 でも、言ってることはこの季節と気温じゃ誰が言ってもおかしくないことだから、やたらといいタイミングだっただけとしか思ってなかった。

 だからその時の俺の感想は、あーびっくりした、だった。


 そしたら、隣の男も「あー、びっくりした」って呟いたんだ。

 俺が思った直後に、また俺が思ったことをそのまんま呟いてた。


 俺が隣でいきなり飛び上がったから、また同じタイミングで同じことを思っただけかな? でも、びっくりした割には棒読みだったな。とか思っていたら、またボソボソとそいつは何か呟いてた。

 呟く内容を理解して、ゾッとしたよ。

 そいつの言ってること、俺が思ったことそのまんまだったから。


 で、俺はすぐに逃げたらいいのに、ビックリしたのと今までの経験上の感覚で今すぐ危険な感じではないなと思って、そのままその男の横でなんかじっと固まってた。


 そいつは見た感じ幽霊じゃなくてちゃんと生きてる人間に見えたし、肌が痛くなったり空気が重くなるような気配もなかったんだけど、よく見りゃやけに毛深くてどことなく獣っぽかった。

 ちゃんと服は着てるんだけど、上はしわくちゃのワイシャツで下はジャージ、靴は農作業で使いそうな長靴っていう、アンバランスどころじゃない格好。


 ぱっと見は言っちゃなんだがただの毛深くて小汚いホームレスのおっさんなんだが、よーく見るとそれにしても変。手の甲どころか指までびっちりある毛とか、やたらと猫背な背中とかが獣っぽいなーとか思ったら、やっぱり思った通りのことをボソボソ呟いてた。


 俺の心を読んでると確信したと同時に、男の正体に検討がついたよ。

 あ、こいつ、「サトリ」って妖怪だ、って。


 そしたらその男が顔を上げて、黄ばんだ歯を剥き出しに笑って初めて俺の心の声を繰り返すんじゃなくて、自分の言葉を喋ったよ。


「そうだ」って肯定を。


 そっから俺、パニくってさー。

 そもそも俺、サトリは人の心を読む以外何をする妖怪か知らなかったから、このまま逃げていいの? スルーしてたらいいの? いっそフレンドリーに話かけちゃう? 羽柴ならどうするんだ? あ、ダメだ。あいつは「真っ直ぐ行ってストレート」戦法をやらかすわとか、心読まれてるってわかってるのに、もう必死で頭を動かして、そいつをどうにかする方法を考えたよ。


 そしたらそいつ、さらにニヤニヤ笑って「その羽柴って女に、助けを求めるのか?」って訊いてきたんだ。

 俺はとっさに心の中で、しねーよ! って答えたら、サトリは「そうだ。しても無駄だ」って言い出して、それに何故か自分でもよくわからないけど俺はキレた。


 いや本当、そいつの言葉の何がそんなに腹が立ったのか、思い返してもよくわからないんだけど、なんかその時はやたらと羽柴がバカにされた! って思って、ムカついた。


 なんかやたらとムカついたから、俺はサトリに向かって、羽柴がてめーに負けるか! 羽柴は無茶苦茶なやつだけど、チート中のチートだ! お前みたいな雑魚妖怪、消臭剤ボトルでタコ殴りするわ! と、我ながら何のフォローかわからない、そもそもフォローかこれは? なことを熱弁してしまった……


 まぁ、熱弁って言っても心の中でたけどな。

 でもな、心の中だからこそ、脈絡のあまりない言葉がポンポンポンって次々出てきてさー、サトリの奴、口を挟むのはもちろん、俺の言葉を繰り返すこともできなかったみたい。


 無駄って何だ、無駄って!

 羽柴はな、「真っ直ぐ行ってストレート」戦法をガチでやれる女だ! つか、あいつは何も考えずに、敵認定した瞬間、攻撃態勢に入れる女だ!

 つーかそもそも、羽柴の心をお前読んでみろよ! 絶対にわけわからねーぞ!

 5年の付き合いの俺はもちろん、羽柴の友達も「あの子がわからない」と諦めの境地に立つほどの、斜め上の思考回路だ!


 あいつのあだ名は「かぐや姫」だけど、このあだ名は超絶美少女だからってだけじゃない! 思考回路が宇宙人って意味が半分以上だ!

 ピッタリすぎるだろ!


 宇宙人ってところが上手いけど、そのまんまの意味でもピッタリなんだよ、このあだ名!

 この前の夏祭りで感動したけど、羽柴の浴衣というか和服は最高だ!

 和服のうなじが最高とかおっさんらが言う意味が今までわかってなかったけど、羽柴を見て理解した!

 何だあの殺人級の色気は! あれだけで俺は死ねるけど、まだ見たいからって生き返るわ!!


 ……ってな感じで、やたらと羽柴についてを一方的に熱弁してたらバスがやってきて、それに気づいて一旦思考が途切れた時、サトリは立ち上がって俺に言ったんだ。


「……すみませんでした」って。


 そのままそいつは、バスに乗らずに去っていったんだけどさー。

 ……これは初めからちょっとからかってただけで、危害とかを加える気は無かったのか、それともなんか俺にやらかす気だったけど、俺の羽柴に対する気持ちにドン引いて逃げたのか、どっちだと思う?



 * * *



『前者でもドン引いたのは間違いないでしょうから、どっちでもどうでもいいわよ』


 元ネタで死ぬほど笑って、これ使ってなんか話を書いてみたいなーと思っていたので書いてみましたが、やっぱり元ネタほど面白くはなりませんでした。


 ちなみに、元ネタでサトリに遭遇した人物は腐女子です。

 こう言えばどうやって撃退したかはもうお分かりのはず。

 元ネタは爆笑できますが、この手のネタが嫌いな方は見ない方がいいです。盛大に、サトリ相手にセクハラしてますから。


 次回は、洒落怖の話が元ネタだけど、原型があんまりないです。

 結構前に名前だけ出てきた人が出てきます。

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