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13:肝試しの話②

 この話の元ネタは、なんか笑える霊体験スレの「守.護.死.神」です。

 昨日、肝試しに行ってきたよー。

 まず初めに言うと、珍しく何も起こらなかった。

 超珍しいだろ?

 これも、羽柴と部長の守護霊のおかげだよ。


 行き先は、隣町の廃病院だったんだ。

 医療ミス連発で潰れたとか、気が狂った患者が殺人事件起こしたとか、実は医者が人体実験してたとか、もうめちゃくちゃな噂だらけの廃病院。


 そこに俺と羽柴、部長副部長の姉弟、風守先輩に雪村先生の五人で行ったんだ。

 他の部員は塾とかで都合がつかなかったって言ってたけど、絶対ほとんどがビビったからだ。

 っていうか、なんで部長が先陣を切って参加してんだよ。あんた受験生だろ。


 つーか、俺も参加したくなかったよ。

 病院に着いた時点でスッゲー帰りたかった。

 だってさ、やばい空気がしてたし。

 もう肌にピリピリと、静電気みたいなのをずっと感じてたよ。


 でも羽柴が参加するのに、俺が怖いからやめます、帰りますなんて言えるわけないじゃん?

 それと羽柴が肝試しに条件をつけてくれてたから、まぁ最悪の事態にはならないだろうと思って、帰るのは諦めたよ。


 羽柴は「全員で行動すること」「勝手な行動はとらないこと」を条件に、自分は参加するって言ってさ、除霊出来る羽柴を何とか一緒に来て欲しかった部長や先生は、それを承知したよ。

 部長はちょっと不満そうだったけど、羽柴の真顔無表情に無感情な声で、「不満なら条件を守らなくていいですよ。私は見捨てるだけですから」って言われて、絶対に勝手なことしませんって誓ってた。


 ……行かないじゃなくて、見捨てるってあたりが嫌だな。


 まぁ、そんな条件だったから全員で入れそうな部屋を覗きながら、ぐるりと病院内を一周して終わりだったよ。

 本当に見て回るだけだったから、30分かからなかったかな。


 で、なーんにもなくて、紅葉先輩はホッとして、風守先輩や先生はちょっと残念そうな、でもやっぱり何も出なくて安心したような顔してたんだけど、部長だけがスッゲー不満そう。


「どーして羽柴ちゃんだけじゃなくて、霊ホイホイで有名な日生(ひなせ)くんもいるのに、何にも出ないのー!?」って嘆いてたわ。

 どんだけオカルトマニアなんだよな、あの人は。

 つーか、俺の霊ホイホイは有名なのかよ。初耳なんすけど。


 でも実はその時俺も、不思議に思ってたんだよ。

 その廃病院、入る前からヤバそうな空気がしてて、絶対にタチが悪い奴がいる! って思ってたのになーんにもなかったから。


 つーかそのヤバそうな空気も、病院に入って進んでいくと何故かどんどんなくなっていったんだよ。

 なんつーか、掃除機で悪臭を吸いながら進んで行ってる気分だったな。

 今まで進む程にヤバイ気配がしてくるは数えきれないほどあったけど、ヤバイ気配がなくなるはマジ初めてだから、もう俺にはわけわからなかったな。


 で、その答えは羽柴が答えてくれた。

 ここがダメなら次はあそこーとか、早速次の肝試しを計画する部長に羽柴はしれっと言ってた。


「部長はたぶん一生、霊体験はしませんよ。するとしたら、死ぬときくらい?」


 みんなが羽柴の言葉に首を傾げてたら、部長はこの世の終わり勝手くらいの絶望顔で、どうして!? って羽柴を問い詰めてさ、羽柴、すげー面倒くさそうに答えたよ。


 前にも話したけど、部長の守護霊はかなり強いんだよ。

 で、部長も体質でいうと結構な霊ホイホイらしいんだけど、その守護霊さんが全部守ってくれてるから、部長は零感(ぜろかん)らしい。


 んで、今日も部長の守護霊さんは八面六臂の大活躍をしてたらしい。

 俺は俺と相性が合ってなくて、俺に眼中にない霊はほとんど見えないからわからなかったけど、俺らが回ってる間、守護霊さんはずぅーっと病院内の霊をちぎっては投げちぎっては投げという無双をしていたそうだ。

 ……やっぱりあんたも、除霊方法は物理か。

 もう除霊って実は、物理が一般的なのか?


 ぶっちゃけ羽柴が全員で行動を条件にしたのは、自分が守る為じゃなくて、部長の守護霊に全部任せたかったかららしい。

 だから後で部長の後ろに目を向けて、「利用してごめんなさい。今日は本当に、ありがとうございます」って頭を下げてた。


 それに習って俺や先輩達も部長の守護霊さんにお礼を言ったんだけど、守られてる部長本人が不服そう。

 自分は霊体験したいのに、守護霊の過保護で何にも体験できないのが不満だったみたい。


 その恩知らずな態度に、羽柴は呆れたのか冷たく言い捨ててさっさと帰って行ったよ。

「部長の態度と、浅はかな行動に守護霊の人、かなり怒ってますよ。

 近いうちに、お望みの体験が出来るかもしれませんね」って。


 俺、羽柴の言葉で気になったところがあったから、そのまま先輩達にスンマセン、先に帰ります! とだけ言って、羽柴を追いかけたよ。

 で、聞いたんだ。


 先輩が霊体験をするのは死ぬときくらいってどういうことかを。


 俺の問いに、やっぱり羽柴はいつもと変わらないローテンションで教えてくれた。

 部長、オカルトマニアが高じて、変なおまじないやら出るって有名な心霊スポットに行ったりやったりしまくってて、悪霊に目をつけられてるらしい。

 それを全部、守護霊さんがガードしてるから、あの人が守護霊を辞めたりしていなくなったら、部長が望んだ心霊現象が確実に起こるだろうけど、命の保証は全くできないってさ。


 羽柴は「果てしなく自業自得」って言ってたし俺もそう思うけど、さすがに親しくなった先輩が死ぬとかはマジ勘弁だから、ラインで羽柴の言ってたことを部長に伝えておいたわ。

 伝えて即、羽柴の方にラインで「私の守護霊の好物っなにかな?」とか訊いてきたよ。

 ご機嫌取りより反省しろよ。


 そのご機嫌取りが功を成したのか、それとも守護霊さんが甘いのか、今のところ部長の守護霊は家出してないよ。


 ただ、肝試しに持って行ってたデジカメが、確かに部屋に置いてあったのに気がついたら風呂で水没してたらしいから、これからは厳しくやっていきそうだ。


 そうしてやってくれ、守護霊さん。

 あの部長、「どうせなら目の前で浮かしてほしかったなー」とかほざいて、やっぱり反省してないから。



 * * *



『その守護霊さんと私、仲良くなれそうな気がする』


 部長の守護霊元ネタは「ゴ.ル.ゴ.マ.タ.ギ」ですが、この話の元ネタは「守.護.死.神」です。


 そして羽柴は基本的に除霊は面倒臭いと思ってるので、誰かがやるなら他人任せで自業自得と判断したら躊躇なく見捨てるという、物語の主人公失格娘です。


 次回は、後味の悪い話です。ホラーはクラッシュしましたけど。

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