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11:夢の話①

 この話の元ネタは、洒落怖スレの「猿.夢」です。

 俺、見て見ぬフリとかスルーも愛情の一種だと思うんだ。

 うん、こんな休みの日の朝っぱらから何、脳が沸いた事言いだしてんだろうな、俺。

 でも、こんなモンが送られてきたら、そう思うこともそれを実行するのもおかしくないだろ?


 えーと、まぁ発端はいつものように俺だ。

 でも今回は別に俺、自分から取り憑かれるような所に行ってもないし、やってもないぞ。

 マジで今回は突然、原因不明、つーか正体も不明だよ。

 なんなんだ、あの夢は。


 昨日というか一昨日か。一昨日さ、スッゲー嫌な夢を見たんだよ。

 夢の中で俺は、気がついたら知らない駅のホームにいたんだ。

 何故かこの時点で、あ、これは夢だってわかったよ。普段、夢の中で夢だって自覚することなんてないのにな。

 で、その駅は普通のホームなんだけど、来た電車は普通じゃなかった。


 何か、遊園地とかにありそうな電車だったな。

 車両がトロッコみたいな感じで、一両につき一人しか乗れなくて、先頭でお猿が運転手してるような感じのあれ。

 それが駅のホームに入ってきて、アナウンスが流れるんだ。


「間も無く~、電車が~発車しま~す。

 この電車に乗ると、×××××××××××ま~す」ってやたらとノイズ混じりで最後の方がよく聞き取れなかったんだけど、なぜか俺は乗らなくちゃいけない気がして、後ろから三番目の車両に乗ったんだ。


 そのまま知らない景色を眺めながら乗ってて、特に面白みのない夢だなーと思い始めた頃に、またアナウンスが流れたんだ。


「次は~、活け造り~、活け造り~」


 変な駅名だな。つーか、駅見えてないんだけどって思ってふと俺の後ろを見てみたら、俺以外誰も乗ってなかったはずなのに、後ろの車両二つに、それぞれ一人ずつ乗ってるんだ。

 それも、妙に顔色が悪くて目の焦点が合ってない、無表情の人間が。


 びっくりして前を見てみたら、さっきまで乗ってなかったのに、前にも人がいるんだよ。

 もちろん、前の乗客は顔色とか見てないんだけど、なんとなく後ろの奴らと同じ生気のない雰囲気を感じて、これはただの夢じゃない? また俺、変なもんに巻き込まれた! って気づいた。


 とにかくやばい雰囲気ビンビンだから、次の駅で降りよう。駅もやばそうだけど、逃げ場がないここよりマシだって、逃げる算段を立ててたんだけど、立てるだけ無駄だった。


 後ろから男の絶叫が聞こえて反射的に振り返ったらさ、一番後ろの車両に乗った男が、赤ん坊よりは大きいかなってくらいの小人に群がられてた。

 その群がる小人は、男の腹をそれぞれが持つ刃物で掻っ捌いてたんだ。


 ここで、俺はあのアナウンスの意味を理解したよ。

 あれは駅名じゃなくて、この電車に乗ってる俺たちの殺し方だって。


 男はまさしく、魚の活け造りみたいに内臓を小人にもぎ取られて動かなくなったよ。

 それを見て俺は、必死で覚めろ! 起きろ!! って祈って願い続けた。

 ただの夢ではないけど、夢であることは間違いないって確信してたから、目が覚めたら殺されずに済むと思ったんだ。


 でも全然夢は終わらないで、またアナウンスが流れ出した。

「次は~、抉り出し~、抉り出し~」って。


 今度はアナウンスの直後に、すぐ後ろの車両から絶叫。

 もう俺は情けないけど、顔を上げられなかった。

 上げなくたって、後ろの車両の女が何されてるかがわかってたから。


 顔を上げられずに頭を抱えて泣きながら、起きろ起きろ! 覚めろ! 夢から覚めろ!! って祈り続けるんだけど、やっぱり女の絶叫が聞こえなくなっても目は覚めなくて、またアナウスが流れてきた。


「次は~、挽き肉~、挽き肉~」


 そのアナウンスの直後、俺は髪を鷲掴みにされて、顔を上げられたよ。

 真っ白いフードをかぶって口しか見せない小人が、俺に群がって、両手両足を掴んで、黄ばんだ歯を剥き出しにニヤニヤ笑って、俺の頭をいつの間にか俺の目の前に置かれた機械に近づけるんだ。


 扇風機みたいに幾つもの刃物が回転してる、フードプロセッサーみたいなものに俺の頭を突っ込もうとして、絶叫したわ。


 そのタイミングで、目が覚めたんだ。

 目が覚めたというか、目覚まし時計が落ちてきて俺の頭に直撃して起きた。

 けっこー痛かったはずなんだけど、もうちょっとで鼻が刃物に当たるってくらいギリギリだったから、目覚ましが当たった痛みなんか気にならないくらいに心臓がバクバクいってたし、全力疾走したみたいに息も苦しくて、起き上がれなかったよ。


 でも、目が覚めてここは自分の部屋のベッドの上だってわかると、現金なことにやっぱりあれはただの悪夢だったんじゃないかって思えてくるんだ。

 目覚めるタイミングも、絶妙だったし。


 だから俺は水でも飲んでもう一回寝ようと思って、上体を起こした瞬間、聞こえたんだ。


「逃げるんですか~? 次は~、逃がしませんよ~」


 あの電車のアナウンスの声が、耳元で。


 当然、そんなもんが聞こえたらもう寝てられるわけもないから、その時はまだ午前四時だったけど、そのままずっと起きてたよ。

 で、寝不足と恐怖でフラフラしながらも学校に行ったら、ちょうど校門で会った羽柴に、いきなり「どうしたの、ソーキさん!?」って心配された。


 珍しく目を見開いてスッゲー驚いた顔をしてたから、そこまで目のクマが酷いのかって呑気に思ってたけど、羽柴には俺の顔や手足に妙に小さな血の手形がいくつもついてるのが見えてたそうだ。

 そりゃ心配するし、驚くわな。


 で、また羽柴に頼るのは嫌だったんだけど、頼らずに解決する方法が俺にあるわけないし、羽柴がずーっと俺を睨みつけて、俺が話すまで俺の後ろをついて回るから、話したよ。洗いざらい全部。


 ……羽柴さ、何故かアナウンスの挽き肉~、挽き肉~のくだりで、「ハンバーグ?」とか言ってきたんだけど、なんて返せば良かったんだろうな?

 つか、何故言った。


 まぁ、羽柴の天然はほっといて。

 とりあえず全部話したら、羽柴はいきなり俺のデコに自分のデコをくっつけたんだ。

 熱を測るような感じで。


 正直、この瞬間は悪夢ありがとう!! とか思った。

 たぶん、実際に人は死んでるし、俺も命の危機だけど、しょうがないじゃん!

 羽柴のまつげは超長くて、顔に当たった髪はサラサラでした。

 ものすごい、いい匂いもしました。ごちそうさまです。


 ……うん、今のは忘れてくれ。

 で、10秒くらいくっつけてから離して、羽柴はやっと不機嫌そうな顔をいつもの無表情に戻して言ったよ。

「もう大丈夫」


 そう言ってあいつはさっさと自分の教室に戻っていったよ。

 で、大丈夫だって言われたけど、だからと言ってはいそーですかと、納得して寝れるわけねーよ。

 羽柴のことは信頼してるけど、あいつの大丈夫は自分がなんとかするから大丈夫って意味だし。


 羽柴に任せっきりはしたくなかったから、俺は寝たくなかったんだ。

 寝たら、あの夢が俺から羽柴のところに行ってしまう気がしたから。


 でも、さすがに22時間不眠で俺は限界を迎えて、昨日というか今日の午前2時あたりで寝ちゃったんだ。


 それで、寝たらまたあの夢の始め、駅のホームに俺はいるんだよ。

 この時は、あぁ良かった。まだこの夢は俺の夢だ。羽柴のところに行ってない。って安心してたよ。

 あとは、このまま電車に乗らなければいいって思ってた。


 電車なんかに乗るつもりは当たり前だけど本当にもう、一切合切なかったよ。

 なのに、駅のホームに電車が来て止まったら、俺の足は勝手にそっちに向かうんだ。

 後ろから三番目の車両、挽き肉の車両に。


 ホームで聞こえたてたアナウンス、今度はノイズがなかったよ。



「間も無く~、電車が~発車しま~す。

 この電車に乗ると、とても恐ろしい目に遭いま~す」


 忠告遅いわボケー!! つーか、聞かせる気初めからなかっただろ! って、素でマジギレして突っ込んだわ。

 そんな俺の突っ込みを無視して、俺の足は車両に乗り込もうとするんだけど、そんな俺を押しのけて、乗ったんだ。

 羽柴が。


 お前が、俺の夢に来ちゃうのかよ。

 どんだけチートなんだよ、お前。

 そんなこと、言ってる余裕なんてなかった。


 羽柴に肩を掴まれて押しのけられて尻餅をついてる間に、羽柴は車両に乗り込んで、扉は閉まった。

 そしてそのまま、電車は発車したんだ。


 羽柴は無表情で、俺に向かって手を振ってた。

 俺はその手を振り返すこともできずに、見送ったよ。

 それしかできなかった。


 ……羽柴が何かチェーンソー持ってたのは気のせいだと言い聞かせて、見送るしかできなかったよ。


 で、俺は土曜だっていうのに朝の6時に起きた理由は、羽柴からこんなラインが届いたからだ。


『ハンバーグ作ったよ』


 ……何で朝っぱらからこんなメッセージ送ってくるんですかね、あいつは。

 こんなん送られてきたら、何の? という疑問を飲み込んで、そりゃ良かったとしか返せねぇよ!

 うまかった? とか、俺も食べたい! なんて絶対に言えねぇ!!



 * * *



『……食べる? とか、美味しかったよとか、そういう追撃メッセージが来ないことを祈るわ。マジで』


 羽柴無双は多分だいたい予想出来るだろうと思い、予想できないオチを模索した結果、羽柴が何か恐ろしいことをなんか言ってる……


 一応、羽柴の名誉のために言いますが、食べてませんよ。


 そして次回は、羽柴さんの瞬殺集です。

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