さばえたいよう
昔その場で思いついて友達に話したところ、
友達が笑い転げていた話が元になってます。
自分でも何が受けたのか分かりませんが、
あなたが読んで確かめて下さい。
ちょっとした息抜きにどうぞ。
都市伝説だと思っていた。
実際にそれを見るまでは。
ゴールデンウィークに、友達2人と金沢から京都へ旅行することになった。
友達が運転する車に乗って、僕は後ろの席、もう1人は助手席に乗った。
運転する友達Aが僕に聞いてきた。「お前、車で福井を通るのって初めてだっけ?」
「うん、電車でならいくらでもあるけど。」
「じゃあ、ちょっと覚悟しとけよ。」助手席に乗っている友達Bが脅すように言ってきた。
「な、何だよ……何かあるのか?」
「なければいいんだけど、な。」Aの顔が一瞬暗くなった。僕は気のせいだと思っていた。
僕たちはいろいろ話しながらドライブを楽しんでいた。ところが、ある標識を見てAが緊張してきた。「どうか今日は出ませんように……!」
Bも何故か祈っていた。「お願いします、お願いします……!」
そして。
急に外がぱあっと明るくなったと思うと、ギラギラした感じのものが後ろから車に迫ってきた。
「しまった!見つかった!」Aが叫んで、慌ててサングラスをかけた。
「”奴”か!お前もこれをかけろ!」Bに無理やりサングラスをかけられた。
僕は何の事だか分からず、後ろを振り返った。
空には太陽が……2つ?
え?何これ?
「馬鹿!目を合わすんじゃない!そいつは”鯖江太陽”だ!」
こ、これが……あの……?
”鯖江太陽”。
車で福井県鯖江市に入ると現れる、鯖江市の守護神。
地元の人や地元に利益をもたらす人を《本当の太陽》と同化してそっと歓迎する一方、地元に利益を還元しないもの・不利益をもたらすものには容赦なく襲い掛かるという。
何故車だけに襲い掛かるのか?その仕組みは分からない。北陸自動車道はパーキングエリアにほとんど止まらないための怨念と言う説もある。電車だって止まらない特急があるのに、それだって地元に利益還元してないだろう、と突っ込みたくもある。Aが見たある標識とは、鯖江市に入ったというものだったのだ。
目を付けられることはめったになく、またたとえ見つかったとしても見逃してくれる車もあるという。だからほぼ都市伝説化していた。
しかし僕たちの車は敵判定されてしまった。いろいろ考えてもしょうがない。
どうすればいいか?
早く鯖江市から出るしかない。
僕たちはスピードを上げて、早く領域から脱出するよう願っていた。
「もっとスピード出ないのかよ!」BがAをせっついた。
「これ以上は無理!ハンドルが持ってかれる!」
「背中が熱い!熱いよう!」僕はたまらず叫んだ。
どんどん丸く光る塊が車に近づいてくる。
「あと少し!あと少しで!」
「あ、”越前市”の標識だ!」
「早く!早くううううぅぅぅぅ!」
その塊が車に接触しようとしていたその時。
「た、助かったぁ……。」みんな胸をホッとなでおろした。あれだけスピードを出していたのに事故らなかったのは幸いだった。
後ろを見ると、太陽は1つだけ。明るさも熱さもさっきまでとは段違いだ。
「な、何だったんだよ、一体。」僕は考え込んだ。
「俺らにも知らねーよ。」
「ただ気を付けろとは教習所で教わるけどな。」Aが言った。
「それって、ここを避けるって発想がないってこと?おかしいじゃないか!」僕は声を荒げた。
「どうしても高速道路を作る時に避けて通れなかったんだと。それに地元には害がないし。現れること自体が奇跡みたいなもんだからな。」
「そんな、滅茶苦茶な……」
「俺達は運がなかった、それだけだ。」Bが諦めムードで言った。
「でもさ、」僕は気が付いた。「帰りもここ通るんだろ?それまで僕らのこと覚えられてたらどうすんだ?」
「また鬼ごっこだろうな……」Aがもうそのことには触れたくない、といった表情で呟いた。
「国道8号線は?」僕は何とか対抗策を探そうとしたが、Bの一言で打ち消された。
「前に見つかった時に試したよ。俺達、その時に目を付けられたのかもしれないな……」
悪いな、と言った顔のA。その表情は今でも忘れられない。
遠回り出来なかったのでまた通るしかなかったが、幸いにも、帰りには遭遇しなかった。京都でお参りしまくって【交通安全】のお守りも買いまくった成果だろう。
”鯖江太陽”。
それは今も天空で輝いてるかもしれない。
本当の太陽に紛れて。
余り”奴”のことを気にしない方がいい。
狙われるかもよ?
この話はフィクションです。
そうだと言ったらそうなんです……よね?




