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女マネの田中さん  作者: レシオ
2/2

田舎のバスは整理券システム

雨足はいくらか大人しくなってきていた。

しかしそれは一層、私と先輩との間に流れる沈黙を浮き彫りにしていた。


バス停のある国道は、真っ直ぐ一直線に伸びている。山と畑とジャスコくらいしかないこの地域の車通りは少ない。道の果てへ目を凝らしても、まだバスらしき影は見えなかった。


先輩は一度声をかけたきり、こちらを気にかける様子は見せなかった。スマートフォンを取り出していじり始めた。

ゲームをしているのか、メールか、ネットを見ているのか、はたまたこの気まずい状況をツイートしているのか。

どんな理由にせよ、スマートフォンをいじり始めるということは、私と話す意思は無いということだ。

私は先輩の行動に対し、特に不快感は抱かなかった。

むしろ、ありがたいとさえ感じていた。


先輩が話かけないでいてくれるなら、私も会話の糸口を探さないで済む。

後輩という手前、先輩のようにこちらから会話を続ける努力を放棄するような行動を取ることは出来なかったが、この場合なら問題ない。そして、この先輩を知らないという事実がバレる事も無い。

バスに乗りさえすれば、それまでこの空気を耐え切れば、後はそれぞれ席に座る。そしてどちらかが先に最寄りのバス停に着いた時に軽く会釈する。それで終わりだ。先輩の名前は後でこっそり調べておけばいいのだ。完璧だ。


そうこう考えているうちに、目の前にバスがやって来た。

勝った。私は小さく右手を握り、先輩に続いてバスの整理券を手に取った。


バスの中はむわっとした湿度の高い空気が流れていた。雨ということもあってか、田舎のバスにしては珍しく、人が多かった。

前方の座席は全て埋まっており、私は後方の2人用の座席に詰めて座った。


そして私は驚愕する。

それは凄く滑らかで、一瞬たりともぎこちなさを感じさせない、自然な動作だった。

恋人か、あるいは慣れ親しんだ幼なじみのように。


私の隣に、先輩が座った。

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