ツカサの憂鬱
今回、ルカのもう一つのキャラが明らかに!!
――イタリア、とあるレストラン――
ツカサが約束の時間待ち合わせ場所に行くと、ルカが早速料理を堪能していた。
ルカの飯なしデーが終わって、彼にとっては久々の食事である。ちなみに、どうしても外せない用事があったため時間が遅くなってしまい、今日は外食だ。
薄暗い落ち着いた感じの小さな庶民派レストラン。今は夕食時のため、少し混雑はしていたものの、レストランはレストラン。がつがつと元気に料理を食べ続けるルカは、若干浮いて見えた。
「どうよ?久々の食事は」
苦笑しながらルカの目の前の席に座ると、ようやく彼は料理から目を離した。
「ん?めっちゃおいしい」
「よかったな」
ツカサは頬杖をついて、ピザやパスタを頬張るルカを見つめた。
「ん~、ボ~ノ~」
子供の様にはしゃぐルカ。唯一子供と違うのは片手にワインがあるところだろうか。
「ツカサは食べないの?」
「俺は少しつまむくらいでいいよ。誰かさんの四次元胃袋のせいでまだ金が足りねぇから」
「・・・それはそれは申し訳ない」
「そう思うのならその四次元胃袋をなんとかしてくれ」
「はは・・・それは無理かも」
ぱくぱくぱくぱく。話しながらもルカは食べ続ける。
(今何皿目だ?)
冗談ではなく、こいつなら特大サイズの牛一頭ぺろりと食べられそうだ。
飯なしデーは無意味だったか・・・。むしろいつもより食べる量が増えている。
(こんなことなら飯ぬきにするんじゃなかったな・・・)
後悔していると、ルカが視線を料理に向けたまま話しかけてきた。
「ねえ」
「ん?」
「ツカサって日本人でしょう?」
「片方はアメリカ人だけどな」
「日本のピザっておいしいの?」
(また食い物の話か・・・)
ツカサは半ば溜息まじりの声で言った。
「そりゃ本場には負けるが、そこそこうまいんじゃねぇの?」
「食べたことないの?」
「日本で生まれたけど、物心ついたときには日本にいなかったからな」
「ふ~ん。あ、おじさんペスカトーレここ~」
「まだ食うのかよ・・・」
すでにテーブルは料理でいっぱいだ。二種類のピザ、パスタ、ラザニア諸々。これがすべてこいつの腹の中入るのだから恐ろしいことこの上ない。
「で、お前これからどうするんだ?」
ぽいっとエビの身を口に放り込む。あ、エビィ、とルカが恨めしそうに言ったがそんなの気にしない。
「お前、何かいい情報ないの?」
「ないよ。最後のがガセネタだったんだもん。でも、さすがに探さないとやばいかなぁ。お金すっからかん」
他人事のようにさらっと言ってくれるが、もとはといえば、すっからかんなのはこいつのせいだ。
(・・・腹立つ。誰のせいだと思ってるんだ?こいつ。かわいらしい顔して生意気だし・・・人をなめてんのか)
ツカサが不満なのはそれだけではない。
「お前、その生意気な口塞いでやろうか」
彼は重度の――
「え~?ツカサの唇でぇ?」
『変態』、である。
「ガムテープでだ、馬鹿」
どこでどうまちがったというのだろうこの変態。もう慣れたが(慣れって恐ろしい)毎回溜息ものだ。
こいつといると溜息の量がものすごく増える。
まあ、だからといって悪いことだらけではないが。
「照れてんの~?へ~可愛い~」
っち・・・この間と立場が逆だ。
単純で扱いやすい馬鹿かと思えば、変態スイッチがはいると扱いにくくなる。最初はよく苦労した。
あのときは・・・ああ・・・今は思い出したくない。頭が痛くなる。
「ツカサー?目がいっちゃってるんだけど・・・。俺のせいか」
そうだよ、お前のせいだよ。
「話を戻さなくていいのー?ツカサー?」
そうだったそうだった。
さてさて、どうしたものか・・・。このままでは移動するための金も危うい。この食欲旺盛なガキは腹に石でも突っ込んで何とかなるとして、『仕事』がないなら金がはいらない。・・・当然だ。
んん~・・・どうしよう。
真剣に考えていると、相手にされないことにしびれをきらしたのか、ルカが少し大きめの声で呼びかけてきた。
「ねえ、ツカサ」
「あ?え、うわ!」
突然ぐいっと頭を引き寄せられる。互いの鼻がつくぎりぎりのところで止まり、ルカが悪戯っぽい笑みを浮かべた。
内緒だよ、と子供が友達に秘密を話すような雰囲気。
が、やっているのは大人である。・・・少々気味が悪い図だ。
その状態でやんわりと人差し指を唇にあて、ルカが静かに呟いた。
「いい『お仕事』見つけちゃった」
(キスされるかと思った・・・)
(ん~?襲ってほしかったぁ?)
(死ね!この変態!)
BLじみてきましたが、BLではないです。
ルカさんはただの変態です。振り回されてるツカサがかわいそう・・・。(笑)
今のところほのぼのですが、シリアスになると真面目に『かっこいい!!』・・・になるはずです。
次回もよろしくお願いします。