太陽系小説
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「ハルト、最終チェックだ。メインスラスター同調、重力制御、オールグリーン!」
宇宙船のコックピットに、幼馴染のソラのはつらつとした声が響いた
ハルトは操縦席の計器類を指差し確認し、眼鏡のブリッジをクイッと押し上げて不敵に笑う
「よし、探査船『ステラ・パトロール号』、いつでもいけるよ。人類の故郷から太陽系の最果てまで、一気に駆け抜けるグランドツアーの始まりだ!」
彼らが挑むのは、太陽の圧倒的な重力に縛られた、奇跡の天体ファミリーを巡る強行突破航路
「カウントダウン、3、2、1……発進!」
轟音とともに船体が一気に加速する。窓の外、漆黒の宇宙空間にまず躍り出たのは、太陽のすぐ傍らを猛スピードで周回する【水星】だ
「うわあ、近い! 太陽が地球で見るより何倍も大きく見えるわ!」
ソラが遮光シールド越しに目を丸くする。大気がほとんどない水星の表面は、クレーターだらけの荒涼とした岩石の世界。昼は400度を超える灼熱、夜はマイナス170度の極寒という、まさに極限の星だ
「じっとしてたら焼き尽くされるよ! 次は『地獄の双子星』だ!」
ハルトが舵を切ると、眩い黄金色の輝きを放つ【金星】が姿を現した
しかしその美しさとは裏腹に、星全体が分厚い二酸化炭素の雲に覆われ、猛烈な温室効果と硫酸の雨、そして90気圧という絶望的な高圧が襲いかかる
船体シールドが激しく火花を散らす
「ここも長居は無用だ、一気に内星圏を突破する!」
探査船は、生命の青い輝きを放つ【地球】を横目に通り過ぎ、次に赤錆色に染まった【火星】へと到達した。かつて水が存在したとされる乾いた大地には、太陽系最大の火山「オリンポス山」がそびえ立っている
「ここまでは岩石と金属でできた『地球型惑星』。さあソラちゃん、シートベルトをしっかり締めて! 太陽系の境界線に入るよ!」
前方に現れたのは、無数の岩石が乱気流のようにひしめく無法地帯【アステロイドベルト(小惑星帯)】だ
かつて惑星になり損ねた無数の欠片たちが、進路を阻むように漂っている
「ハルト、左から直径3キロの小惑星が接近中!」
「避けてみせるさ!」
ハルトは見事なハンドル捌きで、迫り来る岩石の間を全問大正解のルートでひらりと潜り抜けた
アステロイドベルトを突破した瞬間、世界は一変した。ここからは、明確な地面を持たない巨大なガスと氷の巨人が支配する【外星圏】だ
「……大きい。これが、太陽系の王……!」
ソラが息を呑んだ
目の前に君臨したのは、地球が1300個も丸ごと入る超巨大ガス惑星【木星】だ。渦巻くアンモニアの雲と、巨大な嵐の目「大赤斑」が不気味に蠢いている
木星の強大な重力に引き込まれそうになる船体を、ハルトはあえてその重力を利用して加速する「スイングバイ」で一気に前方へと弾き飛ばした
加速に乗った探査船の前に、今度は宇宙最大の芸術品が姿を現す
光り輝く美しい巨大なリングをまとった【土星】だ
「きれい……氷とチリの粒が、こんなに美しい輪を作っているなんて」
ソラがうっとりと見惚れる中、探査船はさらに外周へと突き進む
そこから先は、太陽の光すら希薄な極寒の闇
メタンのガスによって美しい青緑色に輝く【天王星】は、なぜか自転軸が横倒しになったまま不気味に回転している
そしてそのさらに奥、太陽系の最果てに位置する【海王星】では、時速2000キロを超える超ド級の暴風が吹き荒れていた
「水・金・地・火・木・土・天・海……! 8大惑星、すべて走破したわ!」
ソラがひまわりのように微笑み、ハルトの手をぎゅっと包み込んだ
窓の外の遥か彼方には、かつて惑星の列に加わっていた準惑星・冥王星や、尾を引きながら太陽へと向かう彗星の姿が、静かに彼らを見送るように佇んでいた
「僕たちの太陽系は、こんなにも広くて、こんなにも個性的で面白い」
ハルトは操縦桿を握り直し、未知なる宇宙の深淵を見つめた。二人のグランドツアーは、まだ始まったばかりだ
乙
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