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太陽系小説

作者: 遊ぶ人
掲載日:2026/11/08

太陽系小説

 太陽系小説


「ハルト、最終チェックだ。メインスラスター同調、重力制御、オールグリーン!」


 宇宙船のコックピットに、幼馴染のソラのはつらつとした声が響いた


 ハルトは操縦席の計器類を指差し確認し、眼鏡のブリッジをクイッと押し上げて不敵に笑う


「よし、探査船『ステラ・パトロール号』、いつでもいけるよ。人類の故郷から太陽系の最果てまで、一気に駆け抜けるグランドツアーの始まりだ!」


 彼らが挑むのは、太陽の圧倒的な重力に縛られた、奇跡の天体ファミリーを巡る強行突破航路


「カウントダウン、3、2、1……発進(イグニッション)!」


 轟音とともに船体が一気に加速する。窓の外、漆黒の宇宙空間にまず躍り出たのは、太陽のすぐ傍らを猛スピードで周回する【水星】だ


「うわあ、近い! 太陽が地球で見るより何倍も大きく見えるわ!」


 ソラが遮光シールド越しに目を丸くする。大気がほとんどない水星の表面は、クレーターだらけの荒涼とした岩石の世界。昼は400度を超える灼熱、夜はマイナス170度の極寒という、まさに極限の星だ


「じっとしてたら焼き尽くされるよ! 次は『地獄の双子星』だ!」


 ハルトが舵を切ると、眩い黄金色の輝きを放つ【金星】が姿を現した


 しかしその美しさとは裏腹に、星全体が分厚い二酸化炭素の雲に覆われ、猛烈な温室効果と硫酸の雨、そして90気圧という絶望的な高圧が襲いかかる


 船体シールドが激しく火花を散らす


「ここも長居は無用だ、一気に内星圏を突破する!」


 探査船は、生命の青い輝きを放つ【地球】を横目に通り過ぎ、次に赤錆色に染まった【火星】へと到達した。かつて水が存在したとされる乾いた大地には、太陽系最大の火山「オリンポス山」がそびえ立っている


「ここまでは岩石と金属でできた『地球型惑星』。さあソラちゃん、シートベルトをしっかり締めて! 太陽系の境界線に入るよ!」


 前方に現れたのは、無数の岩石が乱気流のようにひしめく無法地帯【アステロイドベルト(小惑星帯)】だ


 かつて惑星になり損ねた無数の欠片たちが、進路を阻むように漂っている


「ハルト、左から直径3キロの小惑星が接近中!」


「避けてみせるさ!」


 ハルトは見事なハンドル捌きで、迫り来る岩石の間を全問大正解のルートでひらりと潜り抜けた


 アステロイドベルトを突破した瞬間、世界は一変した。ここからは、明確な地面を持たない巨大なガスと氷の巨人が支配する【外星圏】だ


「……大きい。これが、太陽系の王……!」


 ソラが息を呑んだ


 目の前に君臨したのは、地球が1300個も丸ごと入る超巨大ガス惑星【木星】だ。渦巻くアンモニアの雲と、巨大な嵐の目「大赤斑」が不気味に蠢いている


 木星の強大な重力に引き込まれそうになる船体を、ハルトはあえてその重力を利用して加速する「スイングバイ」で一気に前方へと弾き飛ばした


 加速に乗った探査船の前に、今度は宇宙最大の芸術品が姿を現す


 光り輝く美しい巨大なリングをまとった【土星】だ


「きれい……氷とチリの粒が、こんなに美しい輪を作っているなんて」


 ソラがうっとりと見惚れる中、探査船はさらに外周へと突き進む


 そこから先は、太陽の光すら希薄な極寒の闇


 メタンのガスによって美しい青緑色に輝く【天王星】は、なぜか自転軸が横倒しになったまま不気味に回転している


 そしてそのさらに奥、太陽系の最果てに位置する【海王星】では、時速2000キロを超える超ド級の暴風が吹き荒れていた


「水・金・地・火・木・土・天・海……! 8大惑星、すべて走破したわ!」


 ソラがひまわりのように微笑み、ハルトの手をぎゅっと包み込んだ


 窓の外の遥か彼方には、かつて惑星の列に加わっていた準惑星・冥王星や、尾を引きながら太陽へと向かう彗星の姿が、静かに彼らを見送るように佇んでいた


「僕たちの太陽系は、こんなにも広くて、こんなにも個性的で面白い」


 ハルトは操縦桿を握り直し、未知なる宇宙の深淵を見つめた。二人のグランドツアーは、まだ始まったばかりだ


 乙

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