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『その縄、魔法につき。〜十九歳の縛術師は、殺さずの技術で乱世を縛り上げる〜』第3話 城からの招き

力を持つ者は、

従うべきか、抗うべきか。

第3話では、

リオネルの「縛る力」が、

ついに王権の前に差し出されます。

彼は英雄でも反逆者でもありません。

ただ、自分の選択を曲げない青年です。

その姿が、

この国に何をもたらすのか――

物語は、ここから大きく動き始めます。


翌朝、城下町の空気はどこか張りつめていた。

通りの先に、騎士の姿が見える。

それだけで、人々は道を譲り、声を潜めた。

「……来ましたか」

リオネルは宿の窓からそれを見下ろし、静かにつぶやいた。

予想はしていた。

あれだけ派手にやれば、放っておかれるはずがない。

ほどなく、扉が叩かれる。

「リオネル殿。騎士団より正式な要請だ」

「城まで同行していただきたい」

拒否権は、ない。

その言い方がすべてを物語っていた。

「分かりました」

リオネルは縄を肩にかけ、部屋を出る。

その背中に、宿の主人が不安そうな視線を向けていた。

王城は、高かった。

石造りの門、広い中庭、整然と並ぶ衛兵たち。

どれもが、彼にとっては馴染みのない光景だ。

「……本当に、場違いですね」

思わず漏れた独り言に、先導していた騎士が眉をひそめる。

「貴様が呼ばれた理由は分かっているな」

「ええ。縄を振り回したせいでしょう」

「ふざけているのか」

「いいえ。事実ですから」

それ以上、会話はなかった。

謁見の間は、静まり返っていた。

玉座の前に立たされ、リオネルはゆっくりと周囲を見渡す。

重臣たちの視線。

警戒、好奇、そしてわずかな期待。

「――そなたが、例の縄使いか」

低く、威厳ある声。

王だ。

「名を名乗れ」

「リオネルと申します」

「年は」

「十九です」

ざわ、と空気が揺れた。

若すぎる――その反応が、はっきり伝わってくる。

「報告では、騎士を無力化しながら、一人も殺さなかったそうだな」

「はい」

「なぜだ」

即答を求める問いだった。

リオネルは一瞬だけ考え、顔を上げる。

「殺す理由が、見当たらなかったからです」

沈黙。

重臣の一人が、苛立ちを隠さずに言った。

「甘い! 力を持つ者が情けをかければ、国は乱れる!」

「殺さなかったのは、慢心ではないのか!」

リオネルは、その声を真正面から受け止めた。

「力を持っているからこそ、選べると思っています」

「縛るか、斬るか。その違いです」

再び、静寂。

王はしばらく彼を見つめ、やがて言った。

「……面白い」

その一言に、場の空気が変わる。

「リオネル。そなたの力、国のために使う気はあるか」

それは、招きであり――試練だった。

「条件があります」

「申せ」

「命を奪う命令には、従えません」

重臣たちが色めき立つ。

だが、王は手を上げ、それを制した。

「よい」

「そなたの流儀のまま、見せてみよ」

その瞬間、リオネルは理解した。

ここからが、本当の始まりなのだと。

城を出たとき、昼の光が眩しかった。

「……やれやれ」

大きく息を吐き、肩の縄を見下ろす。

「また、厄介なことになりましたね」

だが、不思議と後悔はなかった。

遠く、城下町の方角に、見覚えのある淡い外套が見えた気がした。

――フィアだ。

彼女はまだ、こちらには気づいていない。

リオネルは小さく笑い、歩き出した。

縄を手に、

殺さない選択を抱えたまま。


第3話をお読みいただき、ありがとうございます。

王からの招きは、栄誉であると同時に試練です。

リオネルは従属を選ばず、しかし逃げることもしませんでした。

「力を持っているからこそ、選べる」

この考え方は、この世界では決して主流ではありません。

だからこそ、彼の存在は波紋を広げていきます。

そして最後に、フィアの気配。

彼女はまだ物語の中心にはいませんが、

確実にリオネルの選択を見つめる存在となっていきます。

次話では、

王の試練が具体的な形となり、

リオネルの「縛術」が真価を問われることになるでしょう。

引き続き、お付き合いいただければ幸いです。



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