第91話 エレベーターの女
女の子から聞いた話。
客先はとあるマンションの七階だった。特別古いわけでも新しいわけでもない、ごくごく普通のマンション。オートロックなどはない。
エレベーターに乗り込み、七階のボタンを押す。
がこんとぎこちない音を響かせてエレベーターが上っていく。
ランプが点灯する。二階、三階、四階。
がこん
なぜか四階で停まった。
上に行くエレベーターなのに、なぜだろう。
ドアが開く。
薄暗い通路が広がっている。
切れかけの電灯がぱちぱちと明滅していた。
その先に、白いワンピースの女が立っていた。
下ろした前髪で顔は見えない。
彼女が間違って「上」ボタンを押したのだろうか。
ドアが閉まる。
七階に上がる。
客先に行って、九十分の仕事を終える。
エレベーターに乗り、一階のボタンを押す。
六階、五階、四階。
がこん
エレベーターが四階に停まった。
またあのワンピースの女がいた。
女が乗り込んで、後ろに立つ。
髪に隠れてやはり顔が見えない。
エレベーターが動き出す。
五階、六階、七階。
がこん
えっ、なんで上?
七階に戻っていた。
ワンピースの女も降りる気配はない。
誤作動かな、変なの。
再び一階のボタンを押す。
六階、五階、四階。
がこん
再び四階で止まる。
開いたドアの向こうに、ワンピースの女が立っている。
ひっ、と思わず悲鳴が漏れそうになる。
ワンピースの女がまたひとり、後ろに立つ。
背格好もそっくりで、顔が髪で隠れて見えないのも同じ。
冷気がじわじわと背筋を上ってくる。
ドアが閉まる。
五階、六階、七階。
がこん
また?
意味がわからない。
彼女は慌ててエレベーターを出る。
「あの、階段で降りるんで」
なぜか言い訳を口にしてしまう。
四階で降りればいいのに
四階で降りればいいのに
ドアが閉まる直前、女たちがぼそりと呟いた。
長い前髪の隙間から、四つの目がこちらを見つめている。
ドアが閉まり、エレベーターが降りていく。
彼女は非常階段を全速力で駆け下りて、送りさんの車に飛び乗ったという。




