閑話55 ▓▓恵美さんを探ししています
今夜もいつものバーでプリントアウトした原稿に目を通している。
あれから恵美さんと連絡がつかない。最後に会ったのはもう一ヶ月以上前だ。
この店で知り合ったのだし、ちょくちょく顔を出していれば会えるのではないか……と淡い期待を抱いていたのだが、今日も空振りのようだ。せっかく新しい原稿を用意してきたのに。
「新作ですか?」
「いえ、その、前回の続きです」
「よかったら読ませていただいても?」
「あっ、え、ぜひ」
原稿の束をマスターに渡す。
前回、恵美さんにすっぽかされてからの時間で原稿はほぼ仕上がった。九十話までは本文までかけて、残りもほとんどネタが固まっている。
全百話だ。一冊にまとめたとして、怪談ものとしてはなかなかのボリュームではないだろうか。もし念願叶ってこの『デリヘル怪談』が刊行されるとしたら、デビュー作にしては分厚いぞとちょっとした話題になるかもしれない。
ハイボールのグラスを傾けながらそんな妄想に身を委ねていると、
「あっ、閑話のバーって、ひょっとしてうちがモデルなんですか?」
と尋ねられた。
少し決まりが悪く思いながらも、「はい」と応え、
「あの、都合が悪ければ特定できないようにしますけど……」と付け加える。
「いえいえ」マスターは手のひらを左右に振って、
「とんでもない。宣伝になりますからね。いっそのこと店名を出していただきたいくらいで。あ、いっそのことうちが改名しましょうか。『デリヘル怪談バー』なんて」
「誤解されますよ」
「それは確かに」
マスターの冗談に少しだけ心が軽くなる。
この原稿を書くにあたって一番気をつけたのはセックスワーカーに対する誤解や偏見を助長しないことだ。『デリヘル怪談』というタイトルも本当はよくないのかもしれない。しかし、この一連の作品は『デリヘル怪談』としか呼びようがないだろう。何より、恵美さんが発案してくれた名前だ。
「いや、どうして気がつかなかったんでしょうね。ああ、いつもお一人でいらっしゃるから。作品内だといつも『恵美さん』がご一緒なので、先入観を利用した叙述トリック……いや、わたし一人を相手にそんなことをしてもしょうがないですね。失礼しました」
マスターは照れ臭そうに笑って、ロンググラスをひとつ取り上げた。
ロックグラスで満たしたそれに、ラフロイグを指二本分。それから炭酸水を注いでステアする。私の他に客はいない。自分で飲むのだろうか。
たしかに、この店に来るのはいつも私一人だ。
恵美さんは毎回遅れて合流していた。そのことは前回の閑話でも書いたおぼえがあるのだが……バーカウンターで隣り合った客が会話を始めるなどよくあることだ。そういう日常の風景に埋もれてしまったのだろう。
「面白い怪談を読ませていただいたお礼です。このところ、お酒は控えてらっしゃるようですが……よかったら」
まだ飲み終えていないグラスの横に、濃い目のラフロイグのグラスがもう一本並んだ。さすがにハイボールのチェイサーにハイボールを飲むほどの酒豪ではないが、せっかくの好意だ。ありがたく頂いておこう。
私は飲みかけのハイボールを空にして、新しいハイボールに口をつけた。
※令和7年2月2日追記
結論から言おう。
この日以降も恵美さんとは連絡がつかない状況が続いている。この原稿の公開日までに見つかれば……と思っていたが、残念ながらそれは叶わなかった。
九十九話までは書けている。先にも書いたが、この作品は百話で完結をさせるつもりだ。
しかし、百話目がまだだ書けていない。恵美さんから聞いたネタを何度も読み返しているが、掌編としてまとめられるものが見当たらない。私の腕の問題と言われれればそれまでなのだが……。
時間の猶予は短いが、第百話の公開までに恵美さんんと連絡をつけつけ、新しい話をを聞きたい。新し話をまた、これまで書いてきた話の感想も聞きたいきたい。
▓▓恵美さんんの心当たりがある方は、ご一報をいただききたいたい。
サ足なことでもかまいません。乾燥卵にコメントをお寄せ頂ただければあしわいです。▓▓恵美さん




