第84話 (^︶^)
女の子から聞いた話。
その日の仕事先は客の自宅で、プレイ中に嫌なことに気がついた。
天井に丸いシーリングライトが光っているのだが、カバーの底に黒いわだかまりがあるのだ。
(虫の死骸だ……)
光に誘われた羽虫がカバーの隙間に入り込んで死んだのだろう。自分の家のシーリングライトでも同じことがあったからわかる。単なる汚れだと思って取り外したら、中から死骸がこんもりと出てきてパニックになったのだ。
気持ち悪いなあ……と思いつつも、一度気がついてしまうとどうしても気になってしまう。客にのしかかられている間、適当に嬌声を上げながらも視線がそちらに吸い寄せられてしまう。
ずぞぞっ
音が聞こえた気がした。
黒いわだかまりが蠢き、顔文字の(^︶^)を作った気がした。
思わず身体が固まり、目をつむる。
客は気がつかないまま腰を振っている。
ぎしぎし ぎしぎし
ベッドが揺れる。
音が止まる。
客が達したようだ。
恐る恐る目を開く。
シーリングライトの(^︶^)は、元の雑然とした黒いわだかまりに戻っていた。
やっぱり気のせいだったのだ。
ようやく安心して、ふうと深い溜め息をつく。
その様子に勘違いをしたのだろう。
客が言う。
「そんなによかったの?」
そのにやついた表情は、顔文字の(^︶^)にそっくりだったという。




